議会での質問・答弁

2024年03月26日

2024年第1回 2月定例会・予算特別委員会 意見書案に対する討論 大西オサム

(大西オサム)
 お疲れ様です。日本共産党市議団を代表して、意見書案第7号緊急事態に関する国会審議を求める意見書案に対し、反対の討論を行います。
 この意見書案は、大規模災害や感染症の拡大等、緊急事態に対応できる国作りに向け、憲法のあり方について、国会議論を進めるとともに、国民的議論の喚起を求めています。
 反対の理由の一つは、大規模災害に対しては、既に災害対策基本法や災害救助法、大規模地震対策特別措置法など、対応する現行法があるからです。
 災害対策基本法には、地方公共団体の機能が著しく低下した場合には、国が災害応急対策を応援し、応急措置、救助救援活動の妨げとなる障害物の除去、除去等特に急を要する措置を代行する仕組みを規定しています。
 実際、災害対策基本法は、この間の災害の実態に即し、毎年のように改正が行われています。仮に今の法律が不十分で対応できない場合には、法律を改正すれば済むことです。
 反対の今一つの理由は、新型コロナウイルス感染症の拡大による医療崩壊は、憲法に緊急事態条項がなかったから起きたことではなく、長年にわたる社会保障費抑制政策が日本の医療と公衆衛生を弱体化させ、その矛盾がコロナ危機で一気に表面化したものだからです。
 日本は元々人口当たりの医師数が世界の中でも低水準で医療局提供体制が不足しています。そのような中、政府が地域医療構想を進め、自治体に病床削減を迫り、病床を削減したことで、病床がさらに逼迫しました。
 厚生労働省は昨年再編統合の議論を迫っている436の公立公的病院について、救急医療や手術に対応する急性期病床が、2017年から23年にかけ、全体の3割弱を占める1万831床削減したと有識者の作業部会で報告しました。回復期病床は一定数増えたため、全体では4960床の削減です。
 国の方針に先駆けて、病床削減を進めてきた大阪府では、地域医療構想に基づき、2020年度から23年度までの4年間で472床の高度急性期、急性期病床を削減もしくは、回復期病床などへの転換を行いました。これがコロナ死者数が全国最多となる事態に繋がりました。
 広島県は、地域医療構想をもとに、2014年から25年の11年間で、高度急性期病床を4787床から2989床削減、急性期病床を1万4209床から9118床へと減らす計画を進めています。さらにコロナ禍では、ワクチン接種の遅れやPCR検査体制の不足など、後手後手の対応がとられ、医療機器を加速させました。
 感染症に強い社会をつくるためには、感染症病床や保健所体制を確立拡充し、医師看護師を増やして医療供給体制を拡充することこそ必要です。
 第3に反対する理由は、憲法における緊急事態条項については、内閣と内閣総理大臣に権限を集中するなど、過去に濫用されてきた歴史があるからです。
 ヒトラーは、ワイマール憲法の大統領緊急命令規定を根拠に、政敵の選挙集会の強制解散、機関紙の発禁処分、警察官の政敵への武器使用の容認などを行いました。多数のナチスの政敵を逮捕するなど、大統領非常権限に基づく緊急命令により、ヒトラーの独裁政権が樹立され、その後のユダヤ人の大量虐殺などの重大な人権侵害が行われました。
 こうした歴史の反省を踏まえ、日本国憲法では、緊急事態条項を設けていません。1946年7月2日の当時の金森徳次郎国務大臣は、日本国憲法案に緊急勅令、緊急財政処分、非常大権などの規定がない理由について、次の4点以下の4点の答弁をしています。
 一つ、民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するためには、非常事態に政府の一存で行う措置は極力防止なければならないこと。二つ、非常という言葉を口実に、政府の自由判断を大幅に残しておくと、どのような精緻な憲法でも破壊される可能性があること。三つ、特殊の必要があれば臨時国会を召集し、衆議院が解散中であれば、参議院の緊急集会を招集して対処できること。四つ、特殊な事態には、平時から法令等の制定によって、濫用されない形式で完備しておくことができることです。
 つまり、日本国憲法は緊急事態に行政府への権力の集中で対応するのではなく、あくまでも民主政治を徹底することにより対応すべきだとし、それが可能だとして、緊急事態条項を設けなかったということです。
 近年の大規模災害やコロナ禍でわかったことは、憲法の理念に即した政治を実現することこそ必要だということです。人権を尊重する現行法体制の体系のもと、国民の命と暮らしを守る政治の実現を図ることこそ必要です。
 以上の理由から、本意見書に反対することを表明し、討論といたします。


緊急事態に関する国会審議を求める意見書案

 我が国は、かつてないほどの危機に直面しています。首都直下地震や南海トラフ地震が今後30年以内に高い確率で発生することが予想されますが、東日本大震災や能登半島地震でも明らかになったように、我が国はライフラインの長期停止や行政機関の機能まひを伴う大規模災害に対しては、極めて脆弱です。また、長期にわたり大きな被害をもたらした新型コロナウイルス感染症は、経済活動を始めとする国民生活に深刻な影響を与え、医療従事者や病床の不足により医療崩壊の危機を招くこととなりました。
 こういった大規模な危機に際しては、従来の法制度の下での対応には限界があります。これは憲法に緊急事態に対応するための規定がないことに起因するものです。近年多発する土砂災害により被害を受けた本市としても、感染症や大規模災害などの緊急事態において、国民の生命と財産を守るという国家の最大の責務を果たすための法整備に向け、その根拠となる憲法について国会が建設的な議論を進めることを強く期待しています。
 よって、国会及び政府におかれては、緊急時における憲法の在り方について、建設的かつ広範な議論を促進するとともに国民的議論を喚起するよう強く要請します。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。

※賛成33、退席1、反対19で可決

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