議会での質問・答弁

2021年06月21日

2021年第2回 6月定例会 一般質問 中森辰一議員

1.日本が核兵器禁止条約に加盟するために
2.黒い雨裁判について
3.新型コロナウイルス感染拡大での支援について
4.ジェンダー平等の社会へ-生理の貧困の解消を
5.就学援助受給基準引き下げについて

 


日本が核兵器禁止条約に加盟するために

(中森辰一議員)
 日本共産党市議団を代表して一般質問を行います。
 みなさんご承知の通り、核兵器禁止条約が1月22日に発効しました。
 核兵器は、その破壊力だけでなく、人体への深刻な影響が生きている限り及ぶ極めて非人道的な兵器であることが、被爆者の現実の体験を通じて明らかにされ、核兵器は存在してはならないものとの認識が世界中の国々の政府と人々に共有された結果です。
 核兵器禁止条約が発効したことによって、核兵器は、道義的に許されないだけでなく法的に許されないものとなり、広島市を含め、核兵器廃絶をめざしてきた国内外の運動にとって、その主張に法的根拠が与えられることになりました。
 この新しい力を、広島市としてどのように生かしていくお考えか、お聞かせください。

(市民局長)
 核兵器禁止条約は、史上初めて、核兵器を全面的に禁止されるべき対象であることを明確にする根本規範であり、被爆者をはじめ平和を願う多くの人々の労苦が結実した未来への希望です。
 本市としては、この条約を、核兵器廃絶を目指す市民社会における取組の道しるべにするとともに、核兵器はいらないという市民社会の声が世界の潮流となる大きな転換点にしたいと考えています。
 このためにも、世界165か国・地域の8,000を超える平和首長会議加盟都市と連携しながら、為政者が核抑止論から解放され、核兵器廃絶に向けて政策転換を進めるよう促すための環境づくりを進めてまいります。

(中森辰一議員)
 核兵器は、もともと核兵器を保有する5つの大国が、その特権的な地位を維持するために必要としている戦略兵器です。だからこそ、この5大国が一致して、この条約に反対しその強大な力を使って条約の採択と発効を妨害してきました。この条約が成立し発効したことは、市民社会と多くの国々の政府が、大国の妨害とたたかって実現したものです。
 この条約の実効性を確保し高めていくためには、核保有国と核の傘の下にある国々の参加が重要であり、そのためにも、条約への加盟国を増やすことが必要です。
 加盟する国が増えるごとに、それは核保有国への強いメッセージとなり、核兵器に頼る国々の中の核廃絶の運動を励まし、その国の世論に大きな影響を与えます。
 昨年12月7日の国連総会では、核兵器禁止条約への署名・批准の進展を「歓迎する」決議が130カ国の賛成で採択され、禁止条約の賛成国は採択の時の122か国から130か国に増えました。こうした条約賛成の国々が批准にまで進むよう、その世論に働きかける取り組みを市民運動と連携して積極的に進める必要があると思いますが、どのような取り組みをされるのか伺います。

(市民局長)
 本市としては、これまでも、被爆の実相を「守り、広め、伝える」ための取組や「迎える平和」の取組により、核兵器が絶対悪であるとの認識を広めるとともに、平和首長会議の加盟都市と連携して、核兵器禁止条約の成立に向けた要請活動などを展開してきました。
 今後は、核兵器禁止条約を実効性の高いものにしていくために、これまでの取組に加え、為政者を選ぶ側の市民社会に平和への思いを共有し、それに基づいて行動するための文化、すなわち「平和文化」を根付かせるための取組に注力していきたいと考えています。この取組は必ずや、市民社会に平和意識を醸成し、為政者の政策転換を後押しする大きな潮流の形成につながるものと考えています。

(中森辰一議員)
 重要なのが核保有国の同盟国です。同盟国の中で禁止条約を支持し参加する国が出てくれば、情勢を大きく動かす力になりますが、ここでも変化が起きています。昨年9月、NATO加盟国と日本、韓国の22ヶ国、56人の元外相、防衛相らが、自分の国の政治指導者に対して、核兵器禁止条約に加わるべしとの公開書簡を発表しました。核兵器に依存してきた国の政権の中でまさに核兵器問題に関わってきた政治家たちが、このような発言をしているのは大変重要な変化です。
 また、NATO加盟国のベルギーでは、7割近い禁止条約への加盟を求める世論を受け、一昨年の総選挙後の同年12月、下院の外務委員会で国内からの核兵器撤去と禁止条約への加盟を求める動議を可決、下院が政府にしかるべき対応を要請、新しい政権が前向きな姿勢を明らかにしました。さらに、NATO加盟国のドイツでも7割近い禁止条約支持の世論がありますが、メルケル政権の連立与党が今年9月の総選挙の公約に「核の共有からの離脱」を掲げるとしています。オーストラリア、ノルウェー、カナダ、フィリピンでも条約参加を求める世論が7割を超える多数派となっています。
 問題は日本政府です。日本世論調査会が昨年7月に実施した調査では、条約に参加するべきだとの回答が72%に上り、国民多数の意思ははっきりしています。
唯一の戦争被爆国として特別の位置を占める日本政府が、核保有国と同じ主張をするわけにはいかないので、核兵器を持つ国と持たない国との「橋渡し」をするとしています。しかし、「なくす」という考えと「なくさない」という考えを「橋渡し」する中立の論理はありません。「橋渡し」という意味が、双方の立場の国々が条約への是非を超えて核軍縮の話し合いのテーブルに着くことであるなら、「橋渡し」などなくても、国連総会やNPT再検討会議、その準備委員会、ジュネーブ軍縮会議など、いくらでもそういう場はあります。
 「橋渡し」ということが、日本が国連に提出した決議案が多数の賛成で採択されたことだと言うなら、昨年の決議案は、NPT再検討会議での合意を反故にした核保有国の意を受けて、一昨年の決議案まではあった「合意の履行」という文言まで削除したため、「合意を再解釈し、弱め、無視している」「これまでの合意や表現と一致しない」など、禁止条約実現の先頭に立ってきた国々から厳しい批判を浴びる一方、アメリカも中国もロシアもこの決議に背を向けた事実で、「橋渡し」論は破綻しています。最近の日本の決議案は、核保有国に忖度して、主張を年々後退させてきた、核保有大国のお先棒担ぎが実態です。
 本当に日本政府が「橋渡し」をしようとするなら、日本政府自体が禁止条約を支持し参加する方向に転換する必要があります。何よりも、核兵器に依存する立場に立ったままでは、核兵器廃絶をめぐる対立した状況を打開する役割を担うことはできません。
 日本政府の「橋渡し」論は成り立たないことについて、市長のご見解を伺います。

(市民局長)
 「橋渡し」は、一般論として、川の対岸にある地域同士を結びつけるための作業であり、その作業には、水量、水の流れ方、さらには両岸の地域特性に応じて様々な方法があり、その困難さも様々あると考えられます。
 日本政府が表明する「橋渡し」論は成り立たないという判断にはそれなりの理由があると承知していますが、核保有国が核兵器禁止条約に反対する状況の下で、核保有国と非核保有国との分断を解消し、共通の基盤を形成するため、唯一の戦争被爆国として橋渡し役を果たそうという意思を表明していることは大事にする必要があると考えます。
 日本政府には、今後開催される予定の締約国会融において、同会議に出席して議論に貢献するなど、橋渡しとしての役割を果たしていただきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 日本は、日米安保条約を結んでいるアメリカの同盟国であるから、核兵器禁止条約には参加できないのだという意見が広島市議会にもあります。
 この点について、さきの56人の元外相・防衛相の公開書簡では、「禁止条約の締約国として、核武装国との同盟関係を維持することができる。条約にも、それぞれの防衛協定にも、それを妨げるものはないからだ」と指摘されています。また、今年の3月6日に茂木敏充外務大臣が衆議院外務委員会で「法的な理由で禁止条約に入れないということではない」「不参加が我が国の方針だ」と答弁しています。つまり、日米安保条約があっても、政府の方針が変われば参加できることを日本政府自体が認めているわけです。
 日米安保条約の下で、日本に提供される米軍の抑止力の一つが「核の傘」ですが、「核の傘」は、いざとなったら核兵器を使用することを前提にしているので、このもとで禁止条約を履行することはできません。しかし、日本防衛のために、アメリカが核兵器を使わないようにする、ということは、日米安保条約と矛盾することではありません。
 日本が、日本を防衛しようとする場合に、アメリカに対して、核兵器を使うことも、使うぞと威嚇することも要請しない、アメリカが日本に核兵器を配備することを手伝わないし、認めないことにすれば、条約の義務を果たすことができます。
 アメリカは、核兵器を使うか使わないかの選択肢を制約されることは認めないでしょうから、日本との間で、核兵器を使わないという取り決めはしないでしょう。しかし、日本の方が、核兵器には頼りませんと宣言し、その実効性を確保するために、日本への核兵器の持ち込みを認める核密約を破棄し、日本の国是である非核三原則を法制化するなどの措置を行えばいいわけです。アメリカは核密約の存在を認めないでしょうから、日本が破棄を宣言するだけで実現します。
 先の世論調査で言えば、日米安保条約は必要だが核兵器禁止条約には参加するべきだと考える世論が多数派となっています。
 日本政府が、この世論を受け止めて、核の傘に頼らないという政策に転換すれば、日米安保条約のもとでも、日本が核兵器禁止条約に参加できると考えますが、市長のお考えを伺います。
 合わせて、唯一の戦争被爆国日本が禁止条約に加盟する重要性、影響の大きさに鑑みて、被爆都市広島市の使命として、また平和首長会議の会長都市として、日本政府に核の傘から脱却するよう、改めて求めていただきたいのですが、どうされるかお答えください。

(市長)
 日本政府は、唯一の戦争被爆国として、核廃絶というゴールは共有しているとしながらも、核兵器禁止条約への対応については、日本のアプローチと異なることを理由に署名は行わないとの方針を示しています。
 本市としては、いかなる理由であろうと、日本政府を含む各国の為政者が、核抑止に頼る政策は、被爆の実相や核兵器の非人道性を踏まえるならば成り立たないものであることを認識した上で、核保有国や核の傘の下にある国が大きな政策転換を決意し、全ての国が核兵器禁止条約に批准する必要があると考えています。
 今後、核兵器禁止条約の実効性の確保が次なる課題となっていく中で、唯一の戦争被爆国である我が国が同条約を批准するならば、「ヒロシマの心」の世界への発信と、被爆者の方々の核兵器廃絶に向けた取組の後押しにもなると考えています。
 このため、核兵器禁止条約の締約国となることを直接日本政府に要請するとともに、日本政府が核抑止論から解放され、信頼関係を基調とする安全保障体制の構築に向けた外交努力を続けることができる環境づくりが重要であると考え、昨年は、各政党の党首や核兵器廃絶に係る議員連盟の代表者に対しても、一刻も早い同条約への署名・批准に向けて、国会での活発かつ建設的な議論を行っていただくよう要請したところです。
 日本政府に対して、様々な機会を捉えて核兵器禁止条約への参加を働き掛けていくとともに、核兵器はいらないという市民社会の声を世界の潮流にしていくために、市民の平和意識の醸成などの環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。

 

黒い雨裁判について

(中森辰一議員)
 次に、原爆による黒い雨を浴びて以来今日まで、放射線障害によるがんなどで苦しんできた方々が、広島市、広島県、国を相手に闘ってこられた所謂「黒い雨裁判」において、広島地方裁判所が原告の全面勝訴を言い渡したのが昨年の被爆75周年直前の7月29日です。広島市と広島県は結局、国の意を受けて控訴しましたが、被爆から76年目となるいま、高齢の原告の多くが闘い半ばで亡くなられ、解決は一刻を争います。
 広島高等裁判所での判決も、8月6日を目前にした7月14日になされることになっています。そこで、改めて4点について、広島市のお考えを質しておきます。
①広島市が、独自のアンケートや聞き取り調査に基づいて黒い雨地域拡大を国に要請してきたのは、当時、原告たちが生活していた地域にも黒い雨が降り、それに含まれていた可能性のある放射性物質が、現に発症している病気の原因である可能性があると考えたからであり、これが広島市の立場だと理解しています。
 一方で、控訴を主導した国が、地裁の判決は「十分な科学的知見に基づいたとは言えない」と主張していますが、現行制度の対象区域自体、国が言う「科学的根拠」を求めていないし、被爆者援護法で被爆者を規定する法第1条3号も、「放射能の影響を受けるような事情のもとにあった者」と明確な科学的根拠を求めない曖昧な表現となっています。
明確な科学的根拠を求める国の主張に対して、広島市としては同意できないのではないかと考えますが、いかがでしょうか、お答えください。

(保健医療担当局長)
 広島市の立場とすれば、国の主張に対して同意できないのではないかという意見については、そもそも被爆者健康手帳交付事務が法定受託事務であり、第一義的には国の方針に沿って適切に履行すべきものであり、その法定受託事務に関する裁判であることから、本市の主張は、国の主張に合わせて行っているところです。
 なお、仮に、原告を救済する判決が確定したとしても、民事訴訟法の規定により、その効果は訴訟の当事者以外には及ばないため、現行の被爆者援護制度が改正されない限り、全ての「黒い雨体験者」を救済することはできず、事案の根本的な解決は図れないことから、本市としては、根本的な問題解決を目指し、今のような対応を採っているところです。

(中森辰一議員)
②市長が昨年7月13日や8月12日の記者会見で、被爆者健康手帳交付事務は「法定受託事務」であるので、市の立場では国の意向に逆らうわけにはいかないといった趣旨の発言をしておられ、また、「国の手足として動かなければならない立場」であるとの趣旨も述べておられます。
 このことについては、昨年12月の吉瀬議員への答弁で、そういうことはないと否定されたと理解していますが、改めて、この点を確認しておきます。

(保健医療担当局長)
 昨年12月の一般質問において、吉瀬議員の御質問に対し、「本市が独自に控訴を取り下げ、判決を受け入れること自体は、定に違反し、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害しているものと認められるものではない」と答弁いたしました。
 この答弁は、あくまで控訴の取下げに係るものであり、被爆者健康手帳交付事務につきましては、法定受託事務であることから、国の方針に沿って適切に履行していかなければならないという従前からの立場に変わりはありません。

(中森辰一議員)
③昨年12月の答弁では、判決を受け入れると、本件訴訟がいわゆる義務付け訴訟のため、原告に手帳を交付することとなる一方で、原告以外の黒い雨体験者には、本判決の効力が及ばないため、手帳を交付できないという状況が生じるものと考える、と述べています。また、市としては、裁判に参加していない黒い雨体験者をも救済できることが肝要であり、国に対して、「黒い雨降雨地域」の拡大も視野に入れた検証の結論が早期に出されることなどを、求めていくと述べています。
 市が控訴せず判決が確定すれば、原告以外の人たちが救われないぞと、暗に原告と原告以外の「黒い雨体験者」とを分断するような物言いになっています。
 しかし、本当にそうでしょうか。
 法律論では、判決の効力は原告に及ぶだけですから、原告以外の「黒い雨体験者」が手帳申請をした場合、広島市行政は却下処分ができます。
 しかし、仮に、今回の黒い雨裁判で原告勝訴の判決が確定したのち、原告以外の「黒い雨体験者」が手帳申請を行い、その被爆の状況が原告と基本的に同じであると認定できるのに、判決の効果が及ばないことだけを理由に却下処分を行えば、それは違法な処分となりませんか。そうなると新たに却下処分の取り消し訴訟が起こされ、確定判決の原告と同じ被ばく状況であることを無視して却下処分を行ったものとして、原告勝訴となることは明らかではないでしょうか。
 つまり、判決が確定した場合、判決の効力は原告だけに及ぶという理由で、原告以外の「黒い雨体験者」の申請を機械的に却下処分するのは違法となると考えます。
 この点について、どのようにお考えかお答えください。

(保健医療担当局長)
 判決が確定したとしても、審査手続が自動的に変更されるものではないことから、原告以外の「黒い雨体験者」からの申請に対しては、国と協議をしながら審査を行うことになります。

(中森辰一議員)
 黒い雨地域拡大の問題で、広島市も広島県も、そこに「放射線の被害を受けた」と苦しんでおり、且つ放射線の被害を受ける事情の下にあったと考えられる人がいるから、政治的判断をしてほしいと求めてきました。そして、国が求める科学的根拠について、独自の調査も行い、その結果を示しています。しかし、被爆から75年もたって、原告たちがどれだけの量の放射線を浴びたとか、それがどのような仕組みで人体に影響を与えたとかの、具体的な数値などの根拠を求める「科学的検証」など不可能であることは明らかです。
 厚生労働省が設置した黒い雨地域拡大を視野に入れるという検討会では、「科学的根拠」のない地域拡大など認めない立場の意見が強く出されていますし、具体的な検証を行うというワーキンググループは、民間に丸投げのようなことになっていて、いつ結論を出すのかわかりません。このような国のやり方に期待できるものなどありません。
 仮に、控訴審で原告勝訴となった場合は、その時こそ、原告被害者の立場に立って、判決を受け入れるべきだと考えますが、どうお考えかお答えください。

(保健医療担当局長)
 判決後の対応については、第一審と同様に、県や国と協議した上で判断することになると考えています。

【再質問】
(中森辰一議員)
 黒い雨被害者の救済の問題ですが、一刻を争う状況にまで来ています。しかし残念ながら先ほどの答弁は、こういう人たちに対して他人事のように聞こえました。広島市が、本気で原告を含めた被害を訴える人たちに寄り添っていこうと考えているのであれば、今すぐにでも控訴を取り下げるべきだと考えます。
 昨年7月の広島地裁の判決を読んだ時に、その利益は当然原告以外の被害者にも及ぼすことができるものだというふうに考えました。しかしその期待は広島市長の控訴の判断で裏切られたと思っております。そこには、広島市の被爆者行政というものがいつも国の行政の代行機関だという立場から抜け出せない問題があるんではないかと思います。
 かつての救護被爆訴訟も、当時の臨時救護所がどのような状態であったかを考えることもなく、国の基準にもない介助した人数が何人以上などという条件を勝手に設けて、3号被爆の対象から排除していたことを問題にしました。それでも裁判に訴えたからこそ、原告たちが被爆者手帳を手にすることができ、基準も変更されることになったわけです。広島市の被爆者行政はまたあの時と同じことを繰り返しているんじゃないかと思わざるをえません。
 科学的根拠などというものは、国が被爆者をより少なくしたいための単なる理屈にすぎません。科学者と言われる人たちでも、いくら科学的根拠が問題だと言おうと、黒い雨を浴びて放射線の被害を受けたと訴える原告たちの被爆による影響を完全に否定し去ることはできません。否定できないからこそ、市は自らおこなった調査結果をもとにして、国に認めるよう要請してきたんじゃないんでしょうか。
 今さら控訴の取り下げはできないというのなら、せめて高等裁判所で原告勝訴となったら、今度こそ判決を受け入れ、そういう姿勢が必要ではないかと思いますが、このことについて再度答弁をお願いします。

(保健医療担当局長)
 黒い雨の裁判について御質問にお答えいたします。まず昨年の地裁判決につきましては、広島市としては、原告の方々の請求を全面的に容認するもので、心身に苦しみを抱えて来られた黒い雨体験者の方々の長年の切なる想いと、黒い雨降雨地域の拡大目指す本市の思いが司法の場で認知していただけたものという風に受け止めております。
 本市としましては、黒い雨体験者の皆様の高齢化が進んでいる中、黒い雨体験者の切なる思いを踏まえ、裁判に参加していない黒い雨体験者をも救済できることが肝要であると考えておりまして、これまで科学的知見を超えた被爆者援護の立場に立った政治判断について強く求めてまいりましたし、その考え、そして姿勢は変わりございません。
 そうした中での今回の高裁の判決後の対応につきましては先ほどご答弁申し上げましたが、第一審と同様に、市と同様に被告である県や訴訟代理人である国と協議した上で判断することになるということでございます。

(中森辰一議員)
 もう時間がないわけですよ。いつまでかけてやるんだろうかというのが、当事者たちの切実な想いです。
 その点で、高裁の判決は来月14日に出るんですが、その判決に対して行政側がどういう態度をとるのかというのは極めて重要な問題だと思います。
 改めて確認をしておきますが、広島市には、もし原告勝訴ということになった時に、最高裁まで行く選択肢があるのかどうか、そのことをお答えください。
 それから、国の検証をする厚生労働省の検討会を待つということを言ってこられましたが、先ほど言いましたように、これはいつ結論が出るかわからないのではないかと思います。まだ4回目を開いてない。実質議論をしたのは2回しかないんですよ。しかも先ほど言ったような、科学的に検証をきちんと出せないものは認めないみたいな議論だって厳しく出されて、私はこういうものに期待することはできないと思いますが、この結論はいつ出す見通しなのか、あなたは確認できていますか。それもお答え下さい。

(保健医療担当局長)
 最初のご質問で、最高裁まで争うつもりなのかということですが、判決が出ていない現時点ではお答えできません。
 次に、検討会の結論はいつ出す予定なのか、その見通しは聞いてるかということですが、これについては今改めて近日中に検討会が開催されると聞いておりますので、その検討会を踏まえて、できるだけ早期にこの結論を出して頂きたいということは市として申し上げていきたいと思います。
 現時点では、その結論をいつ出されるかというのは私たちの確認してません。

新型コロナウイルス感染拡大での支援について

(中森辰一議員)
 次に、広島県も5月16日から緊急事態宣言地域となり、昨日で解除されましたが、県内全域で飲食店等への時間短縮や休業の要請が行われ、イベントや外出の自粛などで市内の様々な業種が一層厳しい経営に陥っています。
 政府は3度目の緊急事態宣言を受けて、都道府県が事業者を支援する際の費用などとして、予備費5兆円から5千億円の支出を決めましたが、その中で、地方創生臨時交付金の中に、事業者を支援するための特別枠を創設しました。4月28日の国会での答弁で「今までの地方単独事業はコロナ対策全般だったが、今回は、事業者支援にターゲットを絞り、その範囲内で自由度高くお使いいただく」「時短要請を受けていないところも含めて広くお使いいただく」と、この予算化の意義を述べています。
 要するに一部の業種だけでなく、コロナで経営難に陥っている事業者を広く支援することが必要だと認めたわけですが、広島市においても事業継続に困難を来している事業者への支援が重要で急がれます。
 今回の緊急事態宣言等に関わる中小企業庁の一時支援金も月次支援金も、売り上げ減少が50%以上とハードルが高く、利用できない事業者への支援は急務です。自治体として、コロナの影響を受けているすべての事業者に公平な直接支援が届くようにするべきだと考えますが市のお考えを伺います。

(経済観光局長)
 企業の業績や資金繰りの悪化、世帯の所得減などを直接的に緩和するための諸措置については、基本的に国及び県において講じられるべきものと考えています。加えて、そうした諸措置が影響を受けている幅広い業種の事業者に届くようにすることは必要であると考えています。
 このため、本市では、国に対して、指定都市市長会と連携し、緊急事態宣言等の適用の有無や業種に関わらず、影響に応じた公平な経済対策を講じることや既存支援策の要件緩和などを要望しています。また、県に対しては、5月8日からの「新型コロナ感染拡大防止集中対策」の開始に当たり、それにより影響を受ける幅広い事業者への支援について一層の措置を講じるよう要望し、その後、県において、売上が30%以上減少した中小事業者を対象に業種を限定せず支援金を支給することとされたところです。

【再質問】
(中森辰一議員)
 それから、新型コロナによる営業への支援の問題なんですが、これまで繰り返しの公助は国と県、市が共助を支援するんだと言ってこられました。
 しかし先ほども言いましたように、国の支援は売上の状態で線引きをする。県の支援も全事業者というわけではない。そうした制度の狭間で厳しい経営に陥っているのに何の支援も受けられない事業者があるかないか、そういうことをまだ調査も具体的にはしていらっしゃらないのではないかと思います。
 公助が県や国の仕事だということであるなら、そうした実態を調査して、支援策からあふれている事業者があれば、県や国に支援策を提言するぐらいのことはしてもいいんじゃないかと思いますがどうでしょうか。

(経済観光局長)
 新型コロナウイルスの影響を受けた事業者への支援についてのご質問でございます。
 まず国や県の支援を受けられないような事業者については、把握のための調査をしているのかどうかという点でございますけれども、このたびの6月補正予算に計上させて頂きました感染対策等に取り組む事業者への支援の事業でございますけれども、これは立案するにあたりまして、市内の経済団体や業界団体、商店街や金融機関等に中小企業者の方々の実態についての聞き取り調査を行いまして、その結果、飲食業であるとか観光関連業をはじめとして幅広い業種で中小事業者の経営環境は引き続き厳しい状況にあるということを把握した上でこの度の補正予算のの支援策を立案し提案させていただいたところです。
 また、そうした調査に基づいて国へ提言すべきではないかというお尋ねでございますけれども、これにつきましては、これまでも随時ご答弁をしておりますけれども、指定都市市長会と連携いたしまして要望しております。
 直近では5月24日に要望書を出しておりますけれども、その中で、これも繰り返しになりますけれども、各種給付金助成金などの既存の支援策の期間延長、要件緩和、再給付も含めた支援策をより一層充実強化する事、また緊急事態宣言等が適用となる場合には、幅広い事業者が影響を受けることから、業種を限定せず、幅広く給付金を支給するとともに、売上減少要件、先ほどご紹介ありました「50%以上」も緩和することといった要望をいたしております。
 今後も引き継ぎまして、国の支援策の動向や本市の経済状況等を把握しつつ、必要に応じまして国や県に必要な要望を行っていきたいと考えております。

(中森辰一議員)
 コロナの問題で経営困難に陥っているところ、まさに潰れるか潰れないかという瀬戸際にあって緊急性が問題なんです。そういう点では随時必要だと思ったら迅速に国あるいは県に要望していただきたいということをお願いしておきたいと思います。


(中森辰一議員)
 また、新型コロナにより影響を受けている市民に対する支援として、市税や公的保険料等の減免・徴収猶予制度がありますが、今年は、昨年の猶予分と合わせて今年度の保険料の支払いが始まります。3回目の非常事態宣言が出された状況の中で、引き続き減免・徴収猶予の延長が求められます。

 ただし、前年所得の3割以上減少という条件が問題です。昨年はよかったとしても、昨年自体が売り上げや給与収入等が大幅に減少しているので、それよりさらに3割以上減少という条件では、制度を必要としている多くの事業者や市民が利用できないのではないでしょうか。国保料・介護保険料の減免については、所得の比較年度を少なくとも新型コロナ感染拡大以前にするべきですが、どのようにされるか、答弁を求めます。

(保健医療担当局長)
 新型コロナウイルス感染症の影響による国民健康保険等の保険料の減免については、国の通知に基づき、前年の収入に比べて3割以上の減少が見込まれること等を要件としており、令和3年度の保険料の減免に当たっては、令和3年の収入見込みと前年の令和2年の収入を比較するよう制度設計されています。
 このため、本市としては、令和3年度の保険料減免に当たっては、国の制度設計に基づいた対応を行うこととしています。

(中森辰一議員)
 この春大学などに進学した学生たちのなかには、アルバイトをしなければ学生生活を続けられない人たちがたくさんいますが、コロナ感染対策の影響で、アルバイト先を失ったり仕事量が激減したりで、生活に困難を来していることが全国的に問題になっています。広島市内の学生たちの実態について、広島市として調査する必要があると思います。
 学生の食糧支援を行っている団体によるアンケート調査では、「バイトのシフトがなくなった」「月5万円あったバイト料がなくなるなど生活が苦しい」「冷蔵庫は空っぽだ」「食事を抜くことがあった」「野菜不足で口内炎ができやすくなった」など、食費や生活費を切り詰めざるをえず、学ぶための基本的な生活さえ成り立たなくなっている学生の深刻な状況が浮かび上がります。
 市内の各大学を通じて、あるいは各大学と協力して、広島市として、学生の生活実態を調査し、それに基づく具体的な支援策に取り組んでいただきたい。いかがでしょうか、答弁を求めます。

(健康福祉局長)
 感染拡大の影響を受け、経済的に困窮している学生に対しては、既に国がその生活実態を踏まえ、授業料等の減免と奨学金の給付をパッケージで実施する修学支援新制度を設けるなどして支援を行っているほか、これに該当しない学生に対しても大学独自で授業料等の減免制度の拡充が実施されたり、学生へのアンケートを基に応急の奨学金給付や大学食堂で利用できる食事補助券の配付など学生の実情に応じた対応が行われているところです。
 本市としては、学生がいる生活困窮世帯に対しては、従来から実施しているくらしサポートセンター等の相談機関による包括的な支援を行っていきたいと考えています。

【再質問】
(中森辰一議員)
 それから学生への支援の問題ですけれども、いろいろ取り組みをしているところもあります。大学も取り組みをしていると思います。民間団体でもいろいろ支援の取り組みをやっています。ただ、今国が設けている制度は、もうすでにアルバイトで実績のある学生が、アルバイトがなくなった時に使えるわけですが、新入学でこれからアルバイトを始めようとしても仕事がないという学生もいるわけです。ここに対しては国の制度は使えませんから、やっぱり実態はどうなっているか調べた上で必要な措置を考える必要があるんではないか。市としても何か取り組みがいるんじゃないかと思うんですが、この件はどうですか。

(健康福祉局長)
 大学生の支援ということでご質問いただきました。これは実態調査を市としてもというお話ですけども、私の認識では、各大学がアンケートなり実態調査なりをして個別の支援をしっかり行なってると認識しています。
 制度の周知自体は、各大学でホームページあるいはポータルサイトといって学内の掲示板、それから履修登録を行う際等で、これはアルバイトについていてもいなくても、すべての学生にすべての制度を周知しております。その上で、そういった国の給付金を各大学で実施しております。
 国が各大学で実施している新制度を使ってもなお、一定数の生活困窮から脱しきれない学生さんがおられるというのも事実だと思います。ただ、そうしたものは、学生個人の問題というよりも、その学生を含む家計と言いますか家族全体の、世帯全体の問題だろうということで、先ほどご答弁したくらしサポートセンター等の支援というのは、仕事、住まい、それから学業等を含めた、生活再建全般を見据えて、包括的な支援をしていくということで、我々は大学の支援に加えた形でそういう支援を実施していきたいと思います。

 

ジェンダー平等の社会へ 生理の貧困の解消を

(中森辰一議員)
 次は、女性の生理の貧困問題です。新型コロナウイルスの感染拡大が長期化し、雇用状況が悪化する中で、収入の減少が続いている家庭や、アルバイトができずに生活に困窮する学生のなかで、生理用品を買うことができず、交換回数を減らして節約したり、トイレットペーパーで代用するなどの、極めて深刻な実態が明らかになっています。
 生理用品の軽減税率適用などを求めてきた「#みんなの生理」という若者グループによるアンケート結果が3月4日にNHKで報道されました。過去1年間で生理用品を入手するために食事を我慢するなど、金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある若者の割合が20.1%、 過去1年以内に金銭的な理由で生理用品でないものを使ったと答えた割合は27.1%、生理用品を交換する頻度を減らしたと答えた割合は37.0%で、まさに「生理の貧困」の実態が浮き彫りとなっていました。
 子育て支援団体の関係者からは、「子ども用のおむつが買えない」と言うお母さんに、生理用品は大丈夫か聞くと、「実は困っている」「生理用品を満足に買えないので外出できない」などの実態があることも明らかにされています。
 生理用品は、健康な生活を送るための必需品です。学校では保健室に常備しているそうですが、必ずしも必要な全ての児童・生徒が気兼ねなく保健室の常備品を使用できるとは限りません。また、経済的な理由以外にも、小中学生は「自分で買うのが恥ずかしい」「親に頼むのが恥ずかしい」「親が買ってくれない」などの理由で生理用品の入手が困難であるために、経血で服や椅子を汚すことが不安で登校できない児童・生徒もいると言います。これは子どもたちの学習権を奪い、人権侵害にもあたる看過できない問題です。
 まず、この点について市のご認識と、改善に向けた市のお考えを伺います。

(教育長)
 市立学校では、児童生徒から申し出があれば、養護教諭等が必要な数量の生理用品を渡していますが、家庭の事情等で生理用品に困っているにもかかわらず、保健室で受け取ることに抵抗感を持つ児童生徒が存在する可熊性があります。
 このため、先程、市民局長の答弁にありました「ゆいぽ一と」の相談窓口に寄せられる相談内容等を把握し、このような児童生徒の家庭に対する支援や、学校での何らかの支援の必要性について、関係部局と連携しながら、検討したいと考えています。

(中森辰一議員)
 アメリカでは、2019年秋に「生理の平等化」をスローガンに、生理をタブー視せず、誰もが生理用品を入手できる状態にすることを求める大規模デモが行われました。イギリスでも生理用品が買えずに不登校となる女子生徒の存在が問題視され、イングランドの小中学校は2020年1月から生理用品の無償配布を始め、11月にはスコットランドで生理用品が必要なすべての女性が無料で入手できるという法案が可決されました。ニュージーランドでも小・中・高校で無償提供が行なわれます。フランスは、大学の寮や保健施設に無償提供する機械を設置し、すべての学生への無償提供をめざしています。
 日本では、東京都豊島区、千葉県市川市などで、防災備蓄用の生理用品を活用した配布が始まりました。こうした自治体の動きを受け、国は地域女性活躍推進交付金に13億5千万円を追加措置した上で、生理用品の無料配布を交付金の対象に加えました。
 京都市では早速、5月補正で小・中・高・特別支援学校での生理用品の提供などの支援を具体化しましたが、国は「学校での生理用品配布は設置者、つまり自治体の判断」としています。
 この交付金が、広島市にはどれだけ交付されたのか、この交付金をどのように活用されるのか、お答えください。

(市民局長)
 この交付金は、新たに女性相談事業を実施しようとするNPO等の民間団体がある場合に、当該団体に対する自治体からの委託費に充当するため、交付されるものです。本市においては、該当するNPO等がいなかったため、交付金の申請は行っておりません。
 なお、今回、男女共同参画推進センター「ゆいぽ一と」において実施を始めた生理用品の提供は、交付金の対象となりうる事業内容ですが、当該センターは従来より女性のためのなんでも相談を実施しており、その事業の一環として実施し、新たな事業として位置付けていないことから、交付金の申請は行っておりません。

(中森辰一議員)
 「生理の貧困」を解消するには、経済的な理由から生理用品が手に入らず困っていることを口に出せずにいる児童・生徒に配慮した取り組みを急ぐとともに、児童・生徒や若者をはじめ、生理のある人に無償配布することが必要です。まずは、衛生面に配慮しながら、学校の「女子用トイレ」の個室、公共施設のトイレなどに返却不要の生理用品の常備が急がれます。さしあたって、緊急に財源を確保して、こうした取り組みを行う必要があります。どのようにされますか。

(市民局長)
 本市としては、まずは、今回の試行的な取組を通して、困難を抱えた女性の相談を受け、その原因や背景を探るとともに、どのような支援が求められているのかについて把握することが重要であると考えています。

(中森辰一議員)
 また、災害の際の避難所に備蓄されている生理用品はどのくらいあるのか、合わせてお答えください。

(危機管理担当局長)
 現在、災害対応用に避難所等に備蓄している生理用品は約2万9,000個あります。(約980袋)

(中森辰一議員)
 また、児童・生徒に対しては、生理用ショーツの配布も大事です。生理のことを含め心や体の悩みを、気兼ねなく養護教諭らに相談できる環境を整備することも求められます。
 以上についても、市のお考えを伺います。

(教育長)
 児童生徒が生理について相談できる相手としては、同性の養護教諭が考えられますので、毎年行っている新規採用や中竪の養護教諭研修に、「生理の貧困」に関わる事柄を盛り込むとともに、児竜生徒の心や体の悩みに早く気付き対応するこについては、養護教諭だけでなく全ての教職員が心掛けて
おく必要があることから、校長会等を通じ、改めて周知していきたいと考えています。
 また、学校の保健室は、これまでも、気兼ねなく相談できるよう、カーテン等で外からの視界を遮ったり、1対1で話ができる時間を設定したりするなどの配慮をしているところですが引き続き、児童生徒のプライバシー・保護に十分留意するよう、各学校に周知していきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 昨年度、広島市職員で生理休暇を取得したのは、2840人中わずか61人です。日本では性教育や生理に関する教育があまり行われていないことから、生理に対する理解が乏しいのではないでしょうか。生理をタブー視するのでなく、ジェンダー平等を進める一つとして、生理休暇を抵抗なく使えるような教育や基盤を整えることも必要ですが、市のご見解を伺います。

(教育長)
 学校では、性に関する指導については、保健体育科や特別活動等で、また、ジェンダー平等や休暇制度等の労働者の権利については、社会科や特別活動等で、児童生徒の発達段階に応じて行っているところです。
議員ご指摘の生理休暇の問題については、こうした学習をする中で触れていきたいと考えております。

(中森辰一議員)
 これまで個人的な問題としてあまり語られてこなかった生理ですが、女性にとって「生理用品」は社会生活をする上で、なくてはならない必需品です。その生理用品を購入できない、入手できない人がいることは「社会の問題」として解決されるべきことです。
 国に対して、生理用品を非課税とすること、また、継続的に生理用品の頒布がされるような取り組み、法整備なども求めていただきたい。どうされるかお答えください。

(市民局長)
 議員御提案の件につきましては、今回の取組結果を踏まえて、関係する部署と連携しつつ、必要性も含めて検討を行うことになると考えています。

【再質問】
(中森辰一議員)
 生理の貧困への対応ですが、いろいろお答えがありましたけど、具体的な施策はこれからも私どもとしても提案をしていきたいと思っております。
 これは具体的に聞いた数字を私の方から質問の中で入れたんですけれども、広島市役所では3,000人近い職員の中で生理休暇の取得がたった60人そこそこ、これにはびっくりしました。私が労働組合の活動をしていたのは30年以上前ですが、私の職場では生理休暇を取るのは当たり前で、当然のようにそれを保証するために仕事や人のやりくりをしていたんです。当時でも基本的に取得率は100%だったと思います。
 それが率先してこれを保障していくように取り組むべき市役所でたった2%程度しかない。一体どうなってるんだろうかと思います。これは男女共同参画推進という立場からはとても容認できない問題ではないかと思います。生理休暇が1日ではとても足りないという方もいらっしゃると思いますけども、まずはきちんと1日だけでも保証できる職場にしていただきたい。
 男性には関係ないけども女性には生理があるわけです。だからこそ人間社会が続いているわけですよ。そこに十分に配慮できる社会を作るのが男女共同参画の土台ではないんでしょうか。女性特有の問題に適切に対応していくのか、子育てをどう保障するのかというのは、女性の社会進出をすすめ、職場や団体で女性の役職者を均等にしていくことを進めていく上でどうしても必要なことだとに思います。
 まずは全ての女性職員が気兼ねなく生理休暇を取得できる職場環境を作ることに取り組んでいただきたい。これは要望にしておきますのでしっかり取り組んで下さい。

就学援助の認定基準引き下げについて

(中森辰一議員)
 最後に、就学援助の認定基準引き下げについて質問します。
 広島市では、他の政令指定都市と比べても認定率が高いと言いますが、政令市の多くが認定基準を低く抑えていること、制度の周知に問題があるところが多いことから、広島市が他の政令市より認定率が高いからいい、だから認定基準を引き下げてもいいというわけにはいきません。広島市の認定率の高さは、市内の子育て家庭の貧困の実態を反映していることもよく考えるべきです。
 政府が毎年調査している全国の市町村の就学援助の直近の状況を見ると、生活保護基準額に定数を掛けるしくみがない市町村は別として、仕組みがあって生活保護基準の1.2倍以下は22.0%で、広島市の1.146倍はここのランクに入ります。1.2倍を超えるのは全市町村の54%、最高で1.7倍というのもありますが、広島市は少数派です。政令市は他の自治体より、人口当たりの財源が特別に大きいので、自治体の規模の大小を理由にするわけにはいきません。
 一方で、広島市の認定率は徐々に下がっていて、2019年で25.8%。高知県全体とほぼ同じ水準です。
 この認定率が徐々に下がってきていることについて、教育委員会は、経済状態によるもの、つまり子どものいる家庭の所得が上がっているから認定率が下がっているのだ、と答弁しています。
 しかし、考えてみるとこの所得、その元の賃金は名目賃金です。一方で、生活水準に直結する実質賃金は下がり続けています。厚生労働省の統計調査によると、2013年から2020年までの7年間だけでも実に5%も実質賃金が下がっています。そういうときには、その5%を反映して認定基準を引き上げないと、生活の実態は下がっているのに、名目賃金が上がったことを理由に就学援助制度から排除されてしまうことになります。この点をどのようにお考えか、お答えください。

(教育長)
 就学援助の認定基準をはじめ、社会保障など様々な施策の適用基準として用いられている生活保護基準は、5年に一度実施される「全国消費実態調査」のデータ等を基に、物価変動、所得や消費の実態が反映されたものと認識しています。
 したがって、就学援助制度において、生活保護を受けている者に準じる程度に困窮している「準要保護者」を認定する基準としては、実質賃金でなく、この生活保護基準を用いることが妥当であると考えています。

(中森辰一議員)
 広島市で所得を判定する際の基準とする生活保護基準は、先の安倍政権のもとで二度も切り下げられました。
 安倍政権による2013年と2018年の生活保護基準の引き下げは、生活保護に対する拒否感などから受給対象でありながら生活保護を受けない世帯、当然生活保護世帯より低い消費支出にならざるを得ませんが、これと比べたり、生活保護世帯が購入できないようなパソコンや大型テレビなどの価格の実質下落を組み入れた物価下落の偽装までして強引に強行したものです。実際には、今日まで続く円高政策によって、輸入に頼っている食料品の価格が上がり続けるなど、低所得世帯にとっての生活必需品の物価は上がり続けています。
 健康で文化的な最低限度の生活とはいかなるものであるかの科学的検証もなく、保護基準を10%引き下げるとの自民党の選挙公約を実行したものであり、そこには科学的根拠はなく、その結果、いたずらに生活保護受給世帯の生活水準が引き下げられ、多くの生活保護を受けるべき人たちを排除することになりました。
 この生活保護基準の切り下げによって、夫婦と学齢期の子ども2人の4人家族の場合、2012年以前より生活扶助部分だけで月額2万円余りも切り下げられています。2012年以前と比べると、今の生活保護基準は、相当に低くなってしまっているわけです。少なくとも、生活保護と同等というなら、また、生活に困窮する学齢期の子どものいる世帯の学習条件を改善しようと本気で考えるのであれば、生活に欠かせないものの価格が上がっている中で行われた、二度にわたる不当な生活保護基準切り下げに配慮して、それより相当な幅で上乗せをした認定基準になるよう考えるべきではないでしょうか。
 このまま、二度にわたる生活保護基準切り下げに目をつぶって、切り下げられた今の生活保護基準と同等でいいんだと、就学援助制度から生活困窮世帯の一定部分を切り捨てることは、基本構想が掲げる都市づくりの方向性と矛盾するのではないかと考えます。
 ぜひご検討いただきたいのですが、どうされるかお答えください。
 以上、誠実な答弁を求めて一般質問とします。

(教育長)
 先ほど御答弁申し上げたとおり、生活保護基準は、物価変動、所得や消費の実態が反映されたものと認識しております。
 そうした中、今回の見直しに当たっては、就学援助制度における「準要保護者」とは生活保護を受けている者と同程度の者であるという考えの下、認定基準の算定に用いる生活保護基準を直近の令和2年度のものに更新し、生活保護基準に乗じる係数を「1.13」から「1.0」にして、社会保険料控除の重複を解消するとともに、社会保険料等の控除を差し引く取扱いは継続することとしています。
さらに、算定に用いる生活保護基準に、新たに学校給食費や教材代、交通費を加え、生活保護の要否判定に用いる教育扶助の全項目を算入するとともに、学習支援費を対象項目に追加し、認定基準額の充実を図ることとしました。
 令和元年度の実績を基にした今回の見直し後における認定率は24.7%となり、ほぼ4分の1の世帯をカバーしており、また政令市の中では最も高く、「準要保護者」への支援としては、適切な制度になっているものと考えております。

【再質問】
(中森辰一議員)
 もう一つ、就学援助認定基準の問題です。私が言った主旨は、市の行政として、教育委員会の行政としてもそうなんですけども、社会が貧困化している実態をどうとらえて、それに教育という立場でどう対応していくか、こういう問題だと思います。
 広島市の教育委員会に課題があると思うんです。今の答弁を聞きますと、市民生活の実態がどうなっているかということを自分たちの頭で考えようとしてないんじゃないでしょうか。市民生活の実態とは、すなわち子どもたちが成長している家庭の実態ですよ。この家庭の実態にきちんと働きかけて学びの保障をしていこうというのが就学援助制度なんです。 ところが、その学びの保障する相手の家庭の生活実態がどうなっているのか、政府の基準ってのは必ずしもその生活実態を反映してるとは限りません。そこのところを自分の頭でどうなってるかきちんと考えて対応していくのがこの分野での教育行政の仕事の一つじゃないかと思うんです。
 思考停止じゃいけないと思いますので、これはまた引き続き議論をしていきたいと思います。

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