介護保険 日本共産党はこう考えます |
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おもな矛盾点をみてみる どのような改善が必要か−広島市にもとめられるとりくみ 介護保険制度は、家族介護から社会介護へ、行政が決める措置制度から、利用者が選ぶ制度へ、施設介護から在宅介護へなど、国民受けするキャッチフレーズで導入されました。(介護保険制度の内容は広島市の案内をご覧ください) しかし、いざ介護保険がスタートしてみると、さまざまな問題が噴出してきました。とりわけ、その矛盾が比較的低所得の世帯にしわ寄せされていることが特徴です。その負担の逆進性は、まるで消費税のようです。 政府の負担を減らすのが本当の理由 政府が介護保険を導入した本当の理由は、増えつづける高齢者介護制度の政府の負担を大幅に削減し、政府の責任による医療保険財政の逼迫状況を打開するために、高齢者医療の一部を新たな制度に置き換えることにあったと考えます。 実際、以前の介護費用は、一部利用者負担がありましたが、基本は国が50%を負担していました。介護保険では、利用者の1割負担の残り90%の半分が保険料、残り半分のさらに半分、つまり22.5%の負担へと半分以下になっています。地方行政の負担も同様です。 結局、もともとの高齢者介護費の半分を国民と利用者の負担に置き換えたことになります。この矛盾が、とくに年金暮らしでおおむね所得水準が低い高齢者に押し付けられることになったのです。 上にもどる
早くも滞納者続出 支払能力の実態を無視した保険料の設定により、早くも保険料が払えない人々が出ています。 65歳以上の第1号被保険者では5段階の保険料になっていますが、国が決めた市民税非課税者(たとえ収入がゼロでも)に毎月保険料の支払い義務が課せられ、他方では、どんなに所得が多くても、例えば広島市では4500円以上にはなりません。 保険料を1年以上滞納すれば、利用の際に介護費用の全額をいったん支払わねばならず(9割分は請求をして3ヵ月後に戻る)、1年をこえてさらに半年以上滞納すると介護保険の利用が制限されます。介護が必要な方にとっては生活できないことを意味します。 こうした声を受けて、市民税非課税世帯の保険料を一部軽減する制度ができましたが、一人暮らしで月収7万7千円以下の方の保険料を750円軽減する、きわめて限定的なものです。 保険料も利用料も、まさに制度の後退 1割の利用料は所得に関係ない一律の負担であるため、保険料も払えないような世帯に対しては、介護保険の利用ができない、つまり介護が受けられないことを意味しています。 介護保険以前の措置制度では、たとえば、市民税非課税世帯であれば、利用料は無料でした。介護量が充分だったとは必ずしも言えませんが、以前のほうが所得が少ない人にとっては、安心して介護を受けることができたのです。 この点で、保険料負担にしろ利用料負担にしろ、まさに制度の後退となっています。 介護保険では足りないサービス 以前の措置制度では、建前の上では、在宅で介護を受ける場合、必要な介護を受けることができました。 しかし介護保険では、毎月利用できる介護の量(金額)が、介護度によって制限されています。しかも、最も重い要介護5であっても、寝たきりで、一人暮らしや高齢の配偶者が介護していると言った場合に必要な巡回型のサービスを組み合わせると、多くの場合、足りないという事態が起きています。 現在の医療保険の場合は、病状に応じた必要な医療が制限されることはありません。しかし介護保険の場合は、足りない分を自己負担で補ったり、ボランティアで補ったりできない場合は、在宅生活が不可能ということになります。これでは安心できる介護制度とは言えません。 特養ホーム待機者が急増 そのために、介護保険制度が始まってから短期間のうちに、施設入所しかないということで、特別養護老人ホームへの入所を申し込む方が急速に増大しています。 広島市でも、わずか1年間で待機者が2倍に急増、2362人(介護保険では一人が複数の特養ホームに入所申し込みができますので、その重複を除いた実数です)にもなりました。そのうち、在宅で待機者となっている方の数が957人になっています。 そうした中で、広島市の特別養護老人ホームの増設状況は、平成15年度の目標を前倒しで建設しているとは言うものの、その目標自体が実態から立ち遅れたものとなっています。 劣悪なヘルパーの労働条件 以前は公的介護のヘルパーは、行政の職員であったり、特養ホームなどの常勤職員であることが多く、そうしたヘルパーは、余裕をもって業務を行い、利用者の在宅生活上の相談にのったりすることもできました。 しかし介護保険は、利用者宅での介護に要する実施時間しか支払わず、利用者宅までの往復に必要な時間も一切みないため、相談にのるなどの時間がとれず、利用者への親身な対応がしにくくなっています。 それだけでなく、利用料がかさんだり、毎月の上限の金額が決まっているため、単価が安い家事型ホームヘルプの利用が多く、事業所として採算が合わないため、ほとんどのヘルパーがパートとなり、往復の時間も、記録などの事務作業の時間もきちんと支払われない労働条件におかれています。 その結果、介護保険を支えているパートヘルパーの収入は、月額5〜6万円程度というのがほとんどで、ホームヘルパーの仕事では生活できないのが実態です。これでは、いずれ介護保険制度自体が立ち行かなくなるのではないでしょうか。 パートの方が条件が合う、というような人以外は、ホームヘルパーの仕事で充分生活が成り立つような労働条件にしていくことが必要です。 上にもどる
国の負担を2分の1に 介護保険制度そのものの問題として、その給付のありかたは、現行の医療保険のように、利用者の介護の必要に応じて介護サービスを提供することを原則とするべきです。 また、利用料などの一部負担は、本人と家族の生活を脅かすものであってはならず、保険料は負担能力に応じたものにするべきです。 市民税非課税は、憲法25条の生存権保障の原則を具体化したもので、非課税世帯に負担を負わせるのは、生存権を否定するものです。保険料も利用料も、非課税世帯も本人もゼロにするべきです。 介護保険制度を担うヘルパーなどの労働者が、その仕事で生活が成り立つような、介護報酬と、報酬のあり方に改善する必要があります。さしあたって、国の負担分を運営費全体の2分の1に引き上げ、上記の措置に取り組む必要があります。 さらに、大幅に不足している特別養護老人ホームなどの施設を、国の責任で早急に整備するべきです。 広島市にもとめられるとりくみ 広島市の問題としては、広島市が市民の介護に行政として責任を負う立場を明らかにし、介護保険が抱える問題を解決するための抜本的な制度改善を国に国に強力に要請するとともに、以下の取り組みの実施を進める必要があると考えます。 保険料減免 市民税非課税以下の所得水準の方、65歳以上の保険料区分では第1段階と第2段階、および第3段階の方の保険料を実質的に無料とするような独自制度の設置。 ただし、次の利用料も含めて、独自制度の財源は介護保険特別会計の枠外で、一般会計による高齢者福祉施策のひとつとして、実施することで、介護保険料にしわ寄せされない方策をとる。 利用料減免 保険料と同様の方に対して、実質的に利用料を無料とするような独自制度の設置。 介護量の確保 在宅生活を維持するために必要なサービスが、介護保険の枠をこえる場合は、必要な介護量を提供する、新たな高齢者福祉施策を設置する。 また、現状では採算がとれない家事型ホームヘルプサービスの多くを担っている、広島市福祉サービス公社の役割を、広島市の介護保障制度の中できちんと位置付け、市の責任で公社の健全な運営を確保する。 劣悪なパートヘルパーの給与水準を引き上げ、専門職にふさわしい生活できるものにしていくこととあわせ、希望する人は一定の給与が保障される嘱託に採用する。 特養ホームの増設 今後の増大も見越した現実的な増設目標を設定し、市の責任で早急な建設を進める。 上にもどる |