議会での質問・答弁

2023年06月30日

2023年第3回 6月定例会 意見書案趣旨説明 中村たかえ

意見書案第4号 消費税インボイス制度の中止又は延期を求める意見書案の提案趣旨説明

 日本共産党の中村孝江です。提案者を代表して意見書案第4号、消費税インボイス制度の中止又は延期を求める意見書案の提案説明を行います。
 まず、意見書の案文を読み上げます。

 本年10月からのインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入に向けて、インボイス発行事業者の登録申請が行われています。
 これまで課税売上げが年間1,000万円以下の事業者は納税事務負担等に配慮して免税事業者とされてきましたが、インボイス制度の導入は消費税を価格に転嫁できない中小零細事業者やフリーランスにも課税業者になることを実質迫っています。免税業者を取引から排除しかねないインボイス制度は、事業者間のこれまでの取引慣行を壊し、事業者免税点制度を実質的に廃止するものです。

 その結果、アニメ産業や舞台芸術を始め日本の文化芸術振興に大きな役割を果たしてきた人々の活動にも困難をもたらすものとなります。
 このため日本商工会議所や全国中小企業団体中央会、中小企業家同友会全国協議会、全国商工団体連合会、日本チェーンストア協会、公益社団法人日本漫画家協会、一般社団法人日本アニメーター・演出協会、一般社団法人日本SF作家クラブ、協同組合日本脚本家連盟、一般社団法人日本児童文学者協会、協同組合日本シナリオ作家協会、公益社団法人日本図案家協会、一般社団法人日本美術家連盟、一般社団法人日本美術著作権連合、一般社団法人全国青色申告会総連合、日本税理士連合会など、さまざまな団体や個人から制度の実施中止または延期を求める声が上がってきました。

 現在多くの中小零細事業者は、コロナ危機の下でも事業継続、雇用維持に懸命に取り組んでおり、インボイス制度を理解し、事業者登録と経理・書類の変更準備に取り掛かれる状況にはありません。これ以上の負担を課すことは、コロナ危機からの経営再生を阻害する要因につながります。
 よって、国及び政府におかれては、中小零細事業者や個人事業主の事業存続と再生、地域経済の維持のために、下記の措置を講じられるよう強く要望します。

 消費税インボイス制度の実施は中止又は延期すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出いたします。

 続いて提案説明を行います。

 6月14日、インボイス制度の導入中止を求める「増税もう無理!STOP!インボイス全国一揆」が国会正門前で行われ、ピアニスト、映画監督、軽貨物ドライバー、フリーライターなど多種多様な職業の1400人が集まりました。そこで、中小企業家同友会全国協議会・石渡政策委員長が「同友会は”いい”経営環境を作ろうと呼びかけているが、インボイス導入で間違いなく”悪い”経営環境になる。同友会としても凍結・延期を訴え、断固皆さんと反対していく」と発言しています。6月20日には、漫画家志望の芽を摘んではいけないと「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」が衆議院第2議員会館前でインボイス制度中止を求める行動をしました。6月22日には、日本外国特派員協会でアニメ関係者らが会見を行い、「文化のすそ野が削られてしまう」と訴えました。

 日本俳優連合の専務理事で声優・俳優の池水通洋さんは、「個人によって差はあるが、インボイスによって収入の約1割が減収になる。俳優にとって、仕事を続けられるかどうかの判断にかかわる切実な問題だ」と語っています。他にも、ネット通販やフードデリバリーを担う宅配ドライバー、一人親方の建設関係の業者、作家、漫画家、アニメーター、美術や音楽などアーティスト、舞台にかかわるフリーランスの人々など地域経済を支え、文化芸術を支える人々が声を上げています。また、SNSでは、消費者側の市民も含めて、#インボイス増税反対や#○○の私もインボイス増税に反対しますと職業や立場を表明したインボイス制度反対の発信が相次いでいます。

 この背景には、インボイス制度によって、課税業者になりとんでもない増税を受け入れるか、免税業者のままでいれば取引排除や大幅な値下げを受け入れるか、“地獄の二者択一”が迫られることがあります。取引を行う上で弱い立場に置かれた事業者が排除され、地域経済を支える担い手が減っていく危機に対して、多くの事業者や団体が声を上げているのです。

 「クールジャパン」を支えるアニメーターは、約半数がフリーランス契約で、その他も多くが自営業や個人事業主です。アニメーターの平均年収は155万円ですが、課税業者になれば、生活費を削ってでも原則年間14万円を税務署にとられてしまいます。月収一月分相当以上の収入を失うことになります。月刊誌週刊誌の漫画を支えている漫画家のアシスタントの多くは、現状でも年収200万円にいかない人が多い中で、インボイスでさらに収入が減ることになります。これでは、クールジャパンを支える若者がいなくなってしまいます。演劇や音楽を支える大道具や音響などのスタッフの多くはフリーランスとして生計を立てており、舞台を支える人が減ってしまうことで、文化芸術が衰退してしまいかねません。インボイス制度は、文化の担い手や地域経済を支える中小零細事業者やフリーランスを廃業に追い込み、地域コミュニティの維持発展を大きく損なうことにつながります。

 中には、「消費税は預かり金だ、益税だ」という人もいますが、国会答弁でも判決でも、「消費税は物価の一部であり、『預り金』ではない」とハッキリしています。また、消費税は赤字でもかかるもので、インボイス制度の導入により、事実上の免税点の廃止であり増税そのものです。多くの事業者や団体がインボイス制度の中止を求め、せめて延期を求めているのに、それでもインボイス制度にこだわるのは、将来の増税の為です。

 地域経済や文化芸術を担う人々を、コロナ禍や物価高騰の中でも懸命に事業を続けている人々を守り、地域経済を支えるためにも、広島市議会として、国会及び政府に、インボイス制度の中止、または延期を求める意見書を提案するものです。
 ご賛同をお願いして趣旨説明といたします。

 

 

※日本共産党市議団6人と無党派クラブ1人の賛成少数で否決されました。
 なお、自民党市民クラブが提案した意見書案第5号 インボイス制度に関する意見書案は、インボイス制度を円滑に進めることを求めるもので、日本共産党市議団6人と無党派クラブ1人は反対しましたが、賛成多数で可決されました。