議会での質問・答弁

2023年03月03日

2023年第1回 2月定例会・予算特別委員会 消防上下水道関係 中森辰一

1.土石流災害対策について

(中森委員)
 おはようございます。日本共産党の中森でございます。通告に従いまして一点、土石流のを災害をどうするかということについて質問をさせていただきます。
 これは以前3年前の決算特別委員会だったかと思うんですが、あそこでも一度聞いておりますが、改めて確認をしていきますのでよろしくお願いします。
 広島市ではこの20年余りの間に特筆すべき豪雨災害に3度見舞われまして、一昨年の8月にも規模はそこまで大きくありませんでしたが、豪雨災害が発生して、西区の田方や己斐上でも土石流が発生して甚大な被害がありました。広島市内にはたくさんの土砂災害が発生する可能性のある区域が存在しております。
 まず確認ですが、広島市内に存在する土砂災害警戒区域特別警戒区域というのはどれだけあるのか。災害の発生種類別にまずお答えをいただきます。

(砂防事業推進担当課長)
 土砂災害の危険のある箇所としては、令和5年2月24日時点で、土砂災害警戒区域、いわゆるイエローゾーンは、土石流が2770ヶ所、急傾斜地の崩壊が5012ヶ所、地滑りが5ヶ所となっています。
 また、土砂災害特別警戒区域、いわゆるレッドゾーンは、土石流が2437ヶ所、急傾斜地の崩壊が4714ヶ所となっており、地滑りについては該当箇所はありません。

(中森委員)
 今教えていただいた中で、土石流が発生する区域について聞いていきます。土石流発生の危険区域のうち、実際に土石流が発生すると市民生活や命に関わるということで、発生を防止する、発生しても市民生活に被害が及ばないようにするための防災施設、この場合は砂防堰堤を設置する必要があるということで、これを設置した区域というのは、これまでどれだけあるんでしょうか。

(砂防事業推進担当課長)
 基数でお答えさせていただきます。令和5年1月末時点において、国では134基、県では約330基の砂防堰堤を設置していると聞いています。

(中森委員)
 これを設置するとイエローゾーンに変わっていくということになるんですが、これまで国と県合わせて464基ということですね。それで、市として未だ砂防堰堤が設置されていないところがたくさんん残っているわけですけども、そういう中で、設置する必要がある、市として認めている特別警戒区域はどれだけあるんでしょうか。

(砂防事業推進担当課長)
 砂防堰堤の設置は、砂防法において、国または県が施工するものとされております。設置の判断も本市ではなく、国または県でなされるものでございます。

(中森委員)
 設置の判断は県や国がやるということですが、これは広島市に存在しているわけですので、市としても、特にレッドゾーンで住居がたくさんあるようなところ、災害があったときに非常に甚大な被害がおよぶところはもうわかってるわけですよね。
 そういうところは、市としてもきちんと災害防止対策をやっていく必要があるところということで、認識しておられると思うんですが。 実際に砂防堰堤を設置する計画を立てて、財源の手当を行う、実際に工事を行うということができるまでの段取りというか、手順というのはどうなるんでしょうか。

(砂防事業推進担当課長)
 国または県は、想定する流出土砂量や保全家屋数、公共施設の有無等の整備要件に基づき、設置の可否を判断し、その上で、市町の意見を考慮しながら、着手時期を検討することとなります。

(中森委員)
 それは国や県が勝手に判断をしてやるわけじゃないですよね、おそらく。何も動きがないのに、確かにレッドゾーンだけで広島市では2437、4714ということで合わせて7000を超える危険区域があるわけですけども、こういうものについてどう計画を立てていくのかというと、段取りというものがあろうと思うんですよ。
 現実には、これだけのものをどういうふうにして防止対策を進めていくのかという計画というのは、国も県も持ってないと思うんです。だから、実際に国や県の計画に乗っかっていくところまで到達するためには、どういうことがいるのかということを教えていただきたい。

(砂防事業推進担当課長)
 砂防堰堤の設置を計画に位置づける上で国または県は災害の発生状況でありますとか、重要公共物公共物施設、そういったもののありなし、それからまた地元等の要望等を受けて、必要な箇所について先ほど申しましたような、設置の可否を判断しまして、着手する時期を検討し、計画に位置づけていくという流れになります。

(中森委員)
 実際に今砂防堰堤を設置するための用地買収とか設計が行われ、工事を実施している、そういう計画にのって設置までの取り組みがすすめられているというところはどれだけあるんでしょうか。

(砂防事業推進担当課長)
 国では、現時点で178基の砂防堰堤が計画され、このうち134基が完了しており、残る44基のうち14基が整備中となっています。
 また、県では現時点で70ヶ所で砂防堰堤が計画され、このうち18ヶ所が完了しており、残る52ヶ所のうち15ヶ所で整備中です。

(中森委員)
 計画になったところはもうそれぞれ着実に進められておるということだと思うんですけども、広島市の行政というのは、住民生活に一番身近なところですので、どういうところに防災施設を設置していくのかということはある程度見通しを立てて、国や県と協力しながら着実に進めていくということが必要だと思うんです。
 この事業自体は国の直轄事業であるとか県の事業ですから、市が直接予算を起こして事業をやるというわけではありませんが、先ほど言った市民生活の一番身近な行政として、安心安全な市民生活を確保して保障していくために防災施設の設置、砂防堰堤の設置を着実に進めていくっていうことが必要なんではないかと思うんです。
 ただ現状では、市が勝手に何もないところで、確かに特別警戒区域というのはあるが、そういうところに国や県がどんどんやっていくのかどうかというのはちょっと私はようわからんもんですけどもね。どういう段取りで進められていってるのか。
 6.29災害が1999年に発生して以降、そういう砂防施設の設置が進められてきましたが、現実にはその後の豪雨災害のときに大きな土石流災害が引き起こされた。土石流が流れたところはたくさんあるが、それで家屋等が大変な被害を受けたり人命が失われたりしたところというのは、やっぱりそういう施設がなかったところなんですよ。
 ですから、災害で甚大な被害が及ぶということを防ぐためには、あらかじめそういう防災施設の設置を進めていくのは、欠かせない取り組みではないかなと思うんですよ。
 これを市や国や県というのが先ほど報告していただきましたけども、実際に存在している危険区域、特別警戒区域に比べると、まだまだ一部しかこの問題、進んでないわけですよね。そういうことを考えると、どういうふうに一定の見通しを持って進めていくかということがすごく大事ではないかと思うんです。
 そういう点では、市で実態を見て、地元と協力しながら進めていくということが必要だと思いますが、そういうことを進めていくために何が要るんでしょうか。

(砂防事業推進担当課長)
 委員から地元の協力という言葉もございました。県は整備要件を満たす箇所について、必要に応じて地権者の同意の取りまとめを求めており、本市としては事業を円滑に進めるため、地元からの相談に応じて、関係地権者の把握等、要望書の早期の提出に向けた支援に努めております。

(中森委員)
 これだけ災害が発生しますと、そういう場所を抱えているところはなんとかしなきゃと思われると思うんです。そういうときに早く防災施設を設置してほしいという要望がでてくると思います。要望を出そうと思ったときに、実際に事業計画に乗っかっていくためにはまずはどういう要件がいるのかということを教えていただきたい。

(砂防事業推進担当課長)
 砂防堰堤に係る設置の要望の際には、地権者の同意が必要となります。

(中森委員)
 地権者の同意があればそれでいいのかどうか。

(砂防事業推進担当課長)
 先ほど答弁させていただきましたが、想定する流出土砂量や保全家屋数、公共施設の有無等の整備要件がございます。

(中森委員)
 実際に被害が及ぶ可能性のある区域内にどれくらい家屋があるのか、どのような公共施設があるのかということになるのかと思いますが、家屋数についてどうなんですか。

(砂防事業推進担当課長)
 国または県が行う砂防事業の事業ごとに要件が決まっておりまして、例えば県の通常事業でありましたら、50戸以上等の要件がございます。

(中森委員)
 50戸以上あるというのが基本的には実際に砂防施設を設置していく要件になっていくということなろうと思いますが。地元としては砂防堰堤の設置が必要だということを認識して、設置してほしいという要望を出そうという意志もあるが、なかなか要件が整わないので行政の方に作ってほしいということを要請できてない状況のところがあると思います。
 そういうところに対して行政として必要な支援を行う必要があると思うんですけども、どのようなことを取り組んでいらっしゃるんでしょうか。

(砂防事業推進担当課長)
 地元で要望を取りまとめる際には、必要に応じて公図の見方を説明するなど、関係地権者の把握について支援しています。

(中森委員)
 そこまでなんですよね。一昨年の8月に発生した集中豪雨でも、西区田方や己斐上で土石流が発生して、死者は出ませんでしたが家屋やその周辺に大きな被害がありました。田方の災害発生箇所と己斐上5丁目の災害発生箇所では、いち早く防災施設の設置が決まったようですが、今後どのようにこれは設置が進んでいくんでしょうか。

(砂防事業推進担当課長)
 田方地区および己斐上地区の砂防堰堤については、現在、国において、令和7年度末の完成を目指して砂防堰堤本体を施工中であり、堰堤本体の完成後、管理用道路などの付帯施設を引き続き整備していく予定と聞いています。

(中森委員)
 この2ヶ所については設置計画が決まるのが非常に早かったかなと思っているんですが、どういう経緯でこれは決まったんでしょう。

(砂防事業推進担当課長)
 この2ヶ所については、令和3年8月の大雨による土石流の発生により大規模な被害が発生したことから、本市の国土交通大臣への要望も踏まえ、令和3年9月に国において整備することが決定したものです。

(中森委員)
 災害が発生したから市として作ってほしいという要望を国に出した、それで国がやるということで決まって、今進められておるということなんですね。
 実は豪雨のたびに己斐上3丁目、己斐上で今実際にやっているのは5丁目です。しかし3丁目の方でも土石流が発生しているところがあります。一昨年の豪雨の際も発生したんですが、幸いに被害は一部にとどまっておりました。ここの区域は災害が発生すると、被害が及ぶ下流地域にたくさん住宅が密集しております。これは50戸どころではないんです。住民の皆さんは豪雨の度に指定された避難場所に避難行動をとっていらっしゃいますが、団地の中にある直近の中学校は危険区域の中にありますので使えないということで、だいぶ離れた己斐小学校とか己斐上児童館に避難しなければいけないということで、大変な思いをしていらっしゃるわけです。
 そういうわけでこの地域の方々は豪雨のたびに本当にどうしたらいいのだろうかということで、不安で大変な思いをしながら暮らしておられます。しかしなかなか防災施設の設置に至らないという中で、一番奥にあるお宅の方が、もう待ちきれないということで、自費で上流の方に土どめの堰を独自に設置されたそうです。しかしこれで大きな土石流が防げるということにならないと思いますので、やっぱり行政の力で必要な規模の砂防堰堤を設置する必要があると思います。
 己斐上3丁目のこの区域は、行政で防災施設を設置する必要性というのは多分認識しておられると思いますが、地元の方は防災施設の設置要請というのを行うことができていないんです。その理由は、設置場所に係る地権者が50人もおられて、中には外国に住んでおられる方もある。同意を取ることが困難だということでずっと足踏みをしたままになっているわけです。
 人命に関わる災害が発生する前に対応することが必要だと思うんですが、行政としても設置要望が提出できるようにして、砂防堰堤の設置にこぎ着けられるように支援をしなくてはいけないんではないかと思うんですが、これについてはどうお考えでしょうか。

(砂防事業推進担当課長)
 先ほどご答弁申し上げたように、県においては地権者の同意を得ることが基本であるとの考えであり、本市としては可能な限り要望書の早期提出に向けて支援に努める立場となります。

(中森委員)
 広島では先ほども最初に言いましたように、1999年の6.29災害で佐伯区、安佐南区安佐北区を中心に犠牲者を伴う甚大な土石流災害や急傾斜地の崩壊が発生しました。これが災害防止法が作られる契機にもなったわけですが、それから15年後の2014年に8.20災害が発生して、またしても安佐南区と安佐北区で77名の方が犠牲になる甚大な被害が発生しました。そのわずか4年後の2018年には平成30年の豪雨災害、いわゆる西日本豪雨災害で広範囲の災害に見舞われました。そしてその3年後に先ほど申し上げた、犠牲者は出なかったんですが豪雨災害が発生しております。
 1999年の6.29災害から15年後の8.20災害、4年後の西日本豪雨災害、その3年後の田方や己斐上のような災害ということで、広島で発生する豪雨災害というのは、その発生間隔は段々短くなってきておりまして、もう毎年でも発生する可能性があります。地震災害への備えと合わせて系統的にかつ急いで防災への備えを推進していくということが求められていると思うんです。これはもう共通認識ではないかと思います。
 必要なところになかなか砂防堰堤などの防災施設の整備が進まない。こういう状態を打開するために行政としてやっぱり積極的に様々な努力を進めていく尽くしていくという必要があるんではないでしょうか。
 地域の住民の皆さんが、ここは危険箇所で、いつ大規模災害が発生するかわからないから防災施設、砂防堰堤などを設置してほしいと願っておられるとしたら、行政は特別警戒区域なら当然その必要性を認めているわけですから、本来だったら、災害を防ぐ観点から計画的に防災施設を整備するようにしていく必要があると思うんですね。
 しかし現状は、地元住民から設置要望が出されるのを待っているという状況ではないかと思います。しかも、設置要望を出すには、砂防堰堤を建設する広い範囲の地権者の同意を取り付けるということが必要です。
 これはもう時代が変わっていまして、地元に根付いていた地権者の代が変わって遠方に分散している、中には外国に住んでおられる、こういう社会の事情が最近ずいぶんと変わってきているわけですから、この地権者の同意を取るってのは非常に大きなハードルです。
 一昨年の土石流災害発生箇所の田方や己斐上5丁目でもう設置工事が始まっているというのは、先ほど答弁があったように市が必要だと国に要望して進められているわけですよ。そういうことができるんであれば、少なくとも地元住民が設置を要望している特別警戒区域には、手続きが迅速に進むように支援をする取り組みがいると思います。
 先ほど言いましたように、砂防堰堤たくさん抱えていてやらなければならないところものすごく残っているわけです。先ほども指摘したように、豪雨災害の発生間隔が段々狭まってきておりまして、いつでもどこかで豪雨災害が発生する可能性がある。現実には砂防堰堤などの防災施設が設置されてないところで災害が発生するわけですから、状況を見てどういう対応をしていくことが必要かを考えていく必要があると思います。
 広島市には地域の相当部分が生活していく上で危険な状態に置かれているところがたくさんある。安全安心な生活を市民の皆さんに保障していく上で広島市の行政として積極的に動いていく必要があるんじゃないでしょうか。
 具体的に言いますと、地権者を一緒に探していく取り組みは行政の力を発揮してやっていくということがいるんじゃないかと思うんです。公図を見て、どういう地権者がおられるかもぜひ支援していただきたいし、地権者を探していく取り組みも協力してやっていく。もし見つからないのであれば、設置する必要があるわけですから、法的なハードルを乗り越えていくような取り組みもいるかもしれません。そういう取り組みを含めて、着実に必要なところに、砂防堰堤などの防災施設をきちんと整備されていくように取り組んでいただきたいと私は思っております。
 その一つの例として今日は己斐上3丁目のことをお話させていただきました。ここもぜひ進めていただきたいと思いますが、広島市全体の問題としてどう取り組んでいかれるのかをお聞かせください。

(砂防事業推進担当課長)
 砂防堰堤は先ほど申し上げた整備要件に基づき、国または県が設置の判断をしており、本市としては、近年の頻発、激甚化する豪雨に伴い、土砂災害が増加していることを踏まえ、これまでも関係市町で構成する促進協議会での要望や、本市の主要事業に関する国要望、県への要望等を行ってきました。
 一方でこうした公助となるハード整備には相当の期間を要する状況にあるため、早期避難につながる土砂災害ハザードマップの更新や周知など、自助共助含めたソフト対策も合わせた総合的な対策を進め、ハードソフト両面から災害に強いまち作りに取り組んでいるところでございます。

(中森委員)
 もちろんソフト面はしっかりやって、着実に避難ができるような取り組みっていうのはいると思います。と同時に、実際災害が発生すると財産が失われてしまって、生活の基盤がなくなっちゃうわけですよ。場合によっては人命が失われるかもしれない。そういう事態を防ぐためにも、これは広島市が予算を立てるわけじゃありません。国や県が予算を立てて計画をしていく。その計画をどんどん進めていくように促進するという役割を広島市がやっていく、それは地元と一緒に協力をしながらやっていく、そういうことがいると思います。
 その障害になるようなハードル、法的な枠組みがあるのであれば、それを突破できるような工夫というか知恵を出していくこともいるんじゃないかと思いますので、そのことも含めてお願いしておきます。

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