議会での質問・答弁

2021年09月21日

2021年第3回 9月定例会 一般質問 中原ひろみ議員

1.被爆地ヒロシマの願いを受け止める政府を
①核兵器禁止条約に署名する政府について
②黒い雨被害者の早期の救済について
③被服支廠の活用について
2.「命を守る」自治体の役割を果たすとき
①コロナ禍 公助の力の発揮を 
②学生への直接支援について
3.子どもの最善の利益のために
①ヤングケアラーを早期発見する教育環境整備について
②子どもの一時保護について
③校則について


1.被爆地ヒロシマの願いを受け止める政府を

(中原ひろみ議員)
 おはようございます。日本共産党の中原ひろみです。党市議団を代表して一般質問をします。
 新型コロナウイルス感染症が戦後最大の危機をもたらすなか、菅自公政権は、8割近い国民が「オリンピック・パラリンピックは延期・中止を」と求める声に耳を傾けないまま「自己責任」論と「安心・安全」を繰り返しながら強行しました。
 五輪が始まると、過去最悪の勢いで感染が拡大し、医療崩壊の危機的事態に至り、入院治療を重症者だけに制限した国の方針は、命を選別する最悪・最低の政権の姿をさらしました。
 中等症・軽症患者が自宅に放置され、必要な医療を受けられないまま在宅で亡なくなる方が相次ぎ、一般医療にも影響が出る事態となりました。「助かる命を助けることができなかった」ことは、五輪強行が招いた「重大な人災」だと言わざるを得ません。
 「何より命が大切」の立場にたつならば、今回の五輪開催は間違いであったことは明らかです。
 「命を犠牲する政治でいいのか」という世論に追い詰められるなか、9月3日、菅首相は突然、政権を投げ出す「退陣」表明をされました。この退陣は菅首相一人の問題ではなく、この9年間の「安倍政権・菅政権」を支えてきた自公政治の共同責任を問うものとなっています。新しい総裁に誰がなられても、破綻した安倍・菅政治の枠内では現状を打開する展望は見えてこないというべきです。

①核兵器禁止条約に署名する政府について

(中原ひろみ議員)
 9月8日、野党4党は「新しい政権で実行する」6つの柱からなる共通政策で合意しました。「命を守れない政権は交代を」の声が広がっていますが、どんな政権であれ、被爆地が日本政府に求める2つの緊急の課題についてお聞きします。
 まず、今年1月22日に発効した「核兵器禁止条約」に日本政府は署名すべきということです。
 7月13日現在、禁止条約に署名した国は86ケ国、批准した国は55ケ国へと前進し、国内全ての自治体の33%にあたる588自治体・議会が日本政府に条約参加を求める意見書を採択しています。
 日本世論調査会が今年7月に実施した「平和」に関する世論調査では、71%が日本政府は禁止条約に参加すべきと回答しています。ヨーロッパ諸国では7割~8割が、核保有国のイギリスでも国民の59%が政府に核兵器禁止条約への署名を求めています。
 今年の平和宣言は「核抑止論」を批判し、日本政府に条約批准と第一回の締約国会議への参加を要請されました。さらに、未来を託す若者の「力」に着目された点を評価するものです。が、残念なのは菅総理が式典の挨拶で禁止条約に一言も触れないばかりか、読み間違い、読み飛ばして意味不明な挨拶となったことです。
 原爆死没者、被爆者、被爆地に対して誠に失礼です。今の日本政府に核兵器廃絶へ力を尽くす気持ちがないことの現れです。菅総理は式典後の被爆者との懇談では、「核兵器禁止条約に署名しない」と断言されています。このような言動を継承する日本政府では「核兵器廃絶の妨害者」でしかないと思いますが、市はどのようにお考えですか。

(市民局長)
 菅総理の発言は、従来からの日本政府の方針を示したものであり、唯一の戦争被爆国として、核廃絶というゴールは共有しているとしながらも、核兵器禁止条約への対応については、日本のアプローチと異なることを理由にしているものと受け止めています。
 本市としては、核廃絶というゴールは共有しているとする日本政府も含め、全ての国が政策転換を決意し、核兵器禁止条約に批准する必要があると考えています。

(中原ひろみ議員)
 批准国が一つ増えるごとに条約の権威は高まり、核保有国の圧力となります。国連過半数の97ケ国に達すれば核保有国は一層孤立せざるを得ません。
 来年、ウィーンで開かれる第一回核兵器禁止条約締約国会議は、核兵器禁止条約の発効を力に核兵器廃絶を求める世界の流れを大きく発展させる重要な場です。
 締約国会議への参加を日本政府に要請するとともに、この会議までに、「条約に署名せよ」と被爆自治体として明快かつ強固に求め続けるべきだがいかがですか。

(市民局長)
 今後、核兵器禁止条約の実効性の確保が次なる課題となっていく中で、唯一の戦争被爆国である我が国が同条約を批准するならば、「ヒロシマの心」の世界への発信と、被爆者の方々の核兵器廃絶に向けた取組の後押しにもなると考えています。
 このため、本市としては、これまでも核兵器禁止条約の締約国となることを直接日本政府に要請し続けており、今年の平和宣言においても、一刻も早く締約国となるよう、明解かつ強固に求めたところです。
 今後とも、日本政府に対して、様々な機会を捉えて核兵器禁止条約への参加を働き掛けていくとともに、核兵器はいらないという市民社会の声を世界の潮流にしていくために、市民の平和意識の醸成などの環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。

(中原ひろみ議員)
 また、7月16日に広島を訪問した国際オリンピック委員会のバッハ会長は、そのスピーチで「核兵器」という言葉を一言も発しなかっただけでなく、市長が要請された、平和式典の黙とうに合わせたオリンピックでの対応も否定されました。「一体、何をしに広島市に来たのか」と言いたくなります。
 にもかかわらず、広島訪問の警備費用、約379万円を県と市が折半するのは納得できません。警備費用は国とIOCに求めるべきではありませんか。

(市民局長)
 本市はこれまで「迎える平和」を掲げ、世界の人々、その中でも特に為政者や市民社会に影響力を発揮できる立場におられる方々には、是非、広島に来ていただきたいと呼び掛けてまいりました。
 7月16日のバッハ会長の来広については、要人としての広島訪問であったことから、県とともに警備業務を委託することとし、バッハ会長の広島訪問が、恒久平和を願う「ヒロシマの心」が世界のスポーツ界に広がる一助となると考え、警備費用を県市で折半して負担することとしたものです。

②黒い雨被害者の早期の救済について

(中原ひろみ議員)
 次は、7月14日の「黒い雨」控訴審の人道的で画期的な判決を受け止め、全ての黒い雨被害者を救済する審査基準の改訂を急ぐことです。
 広島高裁は、黒い雨訴訟に関し、広島市長、広島県知事、厚生労働大臣による控訴を棄却し、原告84名全員について被爆者健康手帳の交付を命じるとともに、科学的根拠を主張してきた国の考え方を退けました。
判決は、大雨地域・小雨地域の線引きや、国が定めるがんや白内障など11種の疾病の必要条件も取り払いました。
 「実際の黒い雨降雨地域が宇田雨域よりも広範囲であったと推認されること」「黒い雨を直接に浴びた人は無論のこと、黒い雨を浴びていなくても、放射性微粒子をふくむ水を飲み、野菜を摂取することで内部被ばくによる健康被害の可能性があると指摘」し「原爆の放射能により健康被害が生じることを否定することができない人はすべて被爆者と認める」としています。
 この判決は、これまで「宇田雨域(大雨地域)以外の放射線被ばくはない」としてきた国の被爆者援護行政の根本的見直しを迫るものであり、「内部被ばく」がもたらす危険性を深く認識した判決です。まず、この高裁判決に対する市の見解、受け止めをお聞きします。

(保健医療担当局長)
この度の広島高裁判決は、心身に苦しみを抱えてこられた黒い雨体験者の方々の切なる思いと、黒い雨降雨地域の拡大を長年にわたり要望し、高齢化が進む黒い雨体験者を早急に救済することを目指していた本市の思いを、司法の場から認知し、実現のための論拠を明示していただいたものと受け止めています。

(中原ひろみ議員)
 8月9日、NHKが「原爆初動調査 隠された真実」を放映しました。
内容は1948年~1953年に広島・長崎でアメリカ軍が「原爆の被害と効果」に関する大規模な調査を行っていたこと。爆心地から50キロもの広範囲で残留放射能が計測され「人体への影響」が指摘されていたこと。1950年に米軍が持ち帰ったデータでも、黒い雨(放射性降下物)の影響が示唆されていたこと。米政府は「核兵器が残虐な兵器」として国際法違反に問われることを恐れて調査結果は破棄せよと命じていた事など、資料や映像で伝えるものでした。
 原爆投下から76年、日本政府がアメリカに従い 黒い雨に被災した人々の声を無視しつづけることで、原爆の非人道性を隠蔽してきたことが伝わってきます。国により意図的に置き去りにされてきた黒い雨被害者を救済することは国の責任です。
 市長は平和宣言で国に対し、「黒い雨体験者を早急に救済する」よう求められました。菅総理も、7月27日に「原告と同じような事情にあった方々を認定し救済できるよう検討する」との談話を発表され、閣議決定までされましたが、未だに審査基準を改定していません。
 判決後、300件近い相談が「被団協」や「黒い雨を支援する会」に寄せられ、既に、県に8名、市に9名の方が被ばく者健康手帳の申請をされていますが、国が審査基準を改定しなれば却下されることにならざるを得ません。高齢化する被害者に時間はありません。
 一日も早い救済には、審査基準の改訂を急ぐべきです。いつまで待てばいいのですか。今日まで改訂されない理由は何ですか。市は、審査基準の具体的な改訂内容を国とどのように調整されているのですか。

(保健医療担当局長)
 本年7月27日に閣議決定された内閣総理大臣談話が発表されて以降、本市を始め県内の市町には、手帳交付申請に関する間合せが多数寄せられるなど、多くの方々が制度改正を待ち望んでおり、また、既に申請書を提出された方もおられます。
 こうした状況を踏まえ、「黒い雨」体験者の早急な救済に向けて、今月14日に県と合同で厚生労働大臣に対して、
①高齢化が進む「黒い雨」体験者を早期に救済するための制度改正を急ぎ、改正に向けたスケジュールを示すとともに、遅くとも来年度当初には運用を開始すること
②援護対象とする地域は、最低でも「大瀧雨域」「増田雨域」を合わせた地域とするとともに、これらの地域以外であっても援護対象となりうるよう、控訴審判決を尊重した制度設計にすること
などの要請を行ったところです。
 引き続き、黒い雨を体験された方々の身になって、原告以外の黒い雨体験者の方々を一日も早く救済することができるよう努めてまいります。

(中原ひろみ議員)
 さて、8月2日、やっと黒い雨裁判の原告に被爆者健康手帳が交付されました。が、通常の手帳交付事務の一環として手渡されただけと聞いて驚きました。命がけで裁判までしなければ被爆者と認めてこなかった被爆行政について、市長から直接、被爆者にリスペクトの言葉があってしかるべきではなかったでしょうか。どのようにお考えですか。

(保健医療担当局長)
 被爆者健康手帳の交付は、広島市が国からの委託を受けて行っているものであり、今回、国が上告しないとしたこどから、ようやく原告の皆様に被爆者健康手帳をお渡しすることができるようになったものです。
 今回の対応は、これまでも交付事務に携わってきた市として、原告お一人お一人に対して、医療費や手当などの詳細をしっかりと説明することこそが重要であると考え行ったものです。

【再質問】
(中原ひろみ議員)
 黒い雨について。9月14日に、厚生労働大臣に対して、原告以外の黒い雨体験者の早期救済に関する要請がされています。その中に、遅くとも来年度当初に運用開始を市が求めたというんです。驚きました。なんで半年以上もかかるんですか。広島高裁は内部被曝というものを重く受け止めた判決を出しました。内部被曝というのはしきい値はありません。放射線量が一定の数値を超えたかそれ以下かで被爆者が被ばくしたかを問うものではありません。内部被曝にしきい値がないんですから、原告と同じような状況にある。すなわち同じ地域に住んでいたことが証明されればいいはずだと私は思います。
 76年前に原告と同じ地域、すなわち広島県と市が2010年に発表した黒い雨の降雨図、国の6倍ぐらいの広さがありましたけど、ここに住んでいたことが証明できる方は被爆者として認めるというふうにすれば、上告を断念してからもう2ヶ月経つのに、まだ今から半年もずるずる伸ばすというのは、高裁の判決を全く受け止めていないし、被爆者が亡くなるのを待ってるんじゃないかと言われても仕方がないと思います。
 改めて国に、こんな来年度当初でよろしいですよみたいな生ぬるいことじゃなくて、もっとすぐやりなさい、新しい基準を年内に決めなさいと言えないんですか。

(保険医療担当局長)
 黒い雨に関してのご質問で、年内に決めるということを国に言うべきじゃないかという質問でした。9月14日に我々から申し上げ、国も急いでやるべきだという認識は持ってくれています。当然のことながら我々広島市・県も被爆者の皆さんのご高齢の事を考えると、1日でも早くという思いは強く持ってます。
 そういう中で、総理大臣の談話の中でもありましたけれども、原告の皆様と同じような事情にあった方々については、訴訟への参加不参加にかかわらず認定し、救済できるようにするという内容がございました。その中で原告の皆様と同じような事情、同じ状態ではありませんけれども、同じような事情という、何を持って同じとするかということについても、しっかりした判断基準を作り上げなければいけないということがございます。
 また、この訴訟への参加不参加に関わらず認定し救済できると言ってありますので、認定行為も入れる、何もせずに救済とは言っていません。現在3号の被爆者の方については一旦受診者証をお渡しして、そして病状が発生した時に手帳を交付するという2段階救済でございます。これを一段階救済みたいにするのか、あるいは認定作業をどこまでするのか、そういった点が今回の改正のポイントの一つじゃないかと考えています。
 こうした難易度の高い基準の改正については、やはりしっかりと、国と県と市で議論をしてこの控訴審判決を尊重した制度設計にするというところまで持ってきたいと考えておりますので、しばらく時間かかります。しかし我々も待てない、そういう状況の中では国に対して引き続き一刻も早く基準を作ってほしいと言い続けています。

(中原ひろみ議員)
 黒い雨の被害者はやはり高齢者ですから、時間がないということは私が言うまでもないことです。先ほど難易度が高い基準改正だとおっしゃいましたが、私はどこがどんな風に難易度が高いかよく理解できません。
 エリアであれば、広島市が調査の結果作った国の6倍のところへ住んでいましたって言う謄本か何かでもあれば、そのまま認定されれば済むことなので、何がそんなに難易度が高いのか理解できません。
 とにかく国には時間がないんだから早くやりなさいということを、国が難しいと言ったら、そうですよねなんて言うんじゃなくて、早くやろうと言うことです。
 いろんな問題があるかもしれませんが、一滴も戻さないような制度にしようなんてなかなか難しいことですが、それも目指さなきゃいけないかもしれません。今はもう時間がないんです。早く被害者を広く救済できる方に重点を置いて欲しいということを申し上げたいと思うんですがいかがでしょうか。

(保険医療担当局長)
 その思いは議員と全くございません。引き続きしっかりと対応していきたいと思います。

③被服支廠の活用について

(中原ひろみ議員)
「被爆建物だけでなく侵略戦争の加害の歴史を語る建物としても残してほしい」との市民社会の声が広島県を動かしました。国も所有する1棟の建物調査を実施する方針を打ち出し、「全棟の保存」にむけて一歩前進しました。そこで、被服支廠の活用について提案します。
 被爆76年を迎えNHKが実施された被爆者50人へのアンケート調査で、被爆者の半数が、被爆体験をつづった日記や核兵器廃絶に向けた活動の記録など、個人が所有する資料を公的機関で保管してほしいと考えていることがわかりました。
 まず、少なくない被爆者が海外の被爆者の手紙や被爆体験を聞いた子どもたちからの感想文などを、大切に保管されてきたことに感謝と敬意を表するものです。
 資料の保存や公開について研究されている広島大学原爆放射線医科学研究所の久保田明子助教は、「時間がたってから資料を分析すると、物事の異なる側面が見えてくる可能性か高く、原爆を体験した人の記録は永遠に代えがたい記録だ」と話し、被爆者個人が持つ資料の重要性を指摘されています。
 体験記をはじめとする被爆の実相を伝える貴重な資料を後世に伝えるための対策を急ぐ必要があると思いますが、市の考えをお聞きします。

(市民局長)
 被爆者やその遺族が所蔵する被爆に関わる資料は、後世に原爆の歴史的な事実や被爆の凄惨さを伝える上で大変貴重なものであることから、衣類などの実物資料については平和記念資料館において、被爆体験記などの被爆後の記録に関わる資料については追悼平和祈念館において、積極的な収集に努めているところです。
 平和記念資料館では、寄贈していただく資料が既に被爆から75年以上が経過していることから、適切な温湿度のもとで管理できる収蔵庫において、資料の劣化に十分配慮しつつ、保存に努めているところです。
 今後とも、指定管理者である広島平和文化センターと緊密に連携しながら、貴重な被爆に関わる資料の収集と保存に努めてまいります。

(中原ひろみ議員)
 アンケートに回答した被爆者の82%が「原爆資料館」での保存をあげられていますが、「原爆資料館の収蔵場所はいっぱい」だと聞いています。
 保存される被服支廠において、保管・展示することを検討されてはいかがですか。

(市民局長)
 旧陸軍被服支廠につきましては、本年5月に広島県が所有する3棟について安全対策を実施する方針が示され、また、この度、国が所有する1棟についても安全対策の検討に向けた取組を行うことが示されました。今後、広島県において、重要文化財の指定に向けた取組を行い、その取組の中で活用の方向性も検討していくと聞いています。
 具体的な利活用策については、こうした県による検討を踏まえ、国・県・市で構成する「旧陸軍被服支廠の保存・継承に係る研究会」において議論していくこととしており、その中で、様々なアイデアを出し合い検討していくことになるものと考えています。
 なお、平和記念資料館の収蔵スペースについては、現時点で不足が生じている状況ではありませんが、将来にわたる被爆資料の適切な収蔵管理について、今後、広島平和文化センターと協議していきたいと考えています。

2.「命を守る」自治体の役割を果たすとき

①コロナ禍 公助の力の発揮を 

(中原ひろみ議員)
 長期化するコロナ禍は、政治は「命」を守るためにある―この原点を改めて認識させるものとなりました。
 そもそも憲法13条は、「生命の権利」を掲げています。これは、第二次世界大戦で日本軍が2000万人を超える多数の命を奪うという経験を猛省し、全体主義を否定し「個人の尊重」を何よりも大切にするという決意であり、コロナ禍のもとで政府には「生命の権利」への自覚が改めて求められています。
 ワクチン接種やPCR検査、自粛に見合う補償が証明しているように、「自助・共助・公助」という自己責任論ではコロナ禍は解決できません。「公助」があるからこそ「共助」「自助」が可能になるのです。各個人の「命の権利」を保障するため、各個人の現実に身近で向き合う政治として「地方自治」の役割があります。
 1949年に制定された「地方行政調査委員会議設置法」に基づいて設置された委員会は「市町村最優先・都道府県優先の原則」を勧告しています。コロナ禍で「生命の権利」の尊さを実感する今こそ、この勧告を実体化させ、各個人の生活に現場で向き合う基礎自治体が大きな力を発揮することが求められます。
 市は、国・県の足りない部分を補うためにあるのではありません。市の見解を改めて伺います。

(市長)
 中原議員からの御質問にお答えします。「『命を守る』自治体の役割を果たすとき」のうち、「コロナ禍 公助の力の発揮を」についての御質問がございました。
 本市の市政運営については、従来から国や県が責任を負うべき行政サービスであっても、その提供を基礎自治体の役割とされているものを提供するとともに、地域固有の課題解決など基礎自治体として自らが責任を負うべき行政サービスを提供しているところです。
 そうした中で、今回のコロナ禍での困窮は、国及び県が打ち出した新型コロナウイルスのまん延防止対策によって引き起こされたものであるといっても過言ではなく、困窮している方の状態を緩和又は解消するための直接的な支援は、第一義的には、国及び県において講じられるべきものであると考えています。また、実際に、困窮する市民・事業者に対しては、国及び県において様々な支援が講じられているところです。
 そこで、地域共生社会の実現を目指す本市としては、国や県が行う個人や事業者への直接的な支援の足りない部分を単に補うといった発想に立つのではなく、基礎自治体としての本市の役割を踏まえつつ、一過性のものではなくコロナ禍後の社会のありようも見据えて、地域での支え合い
や、事業者同士が連携した「共助」に主眼を置いた取組こそ重要であると考え、その支援に注力しているところです。
 こうした取組をしっかりと支援することで、多くの市民・事業者が「共助の精神」に立って自分たちの日常生活・経済活動の維持に努めるとともに、困窮する方の支援を一緒に担ってもらえるような状態になるならば、現下の困窮状態を緩和させることはもとより、「共助の精神」に基づく地域共生社会づくりの確実な進展に繋がっていくものと考えています。
 その他の御質問については、関係局長から答弁いたします。

②学生への直接支援について

(中原ひろみ議員)
 また13条は、誰もが「自分自身の幸福」を追求できる幸福追求の権利、すなわち「自己実現の権利」を掲げています。その具体化にはすべての個人のための「教育と学習の権利」が保障されなければなりません。教育・学習権はどのような力によっても否定できない基本的人権の一つですが、コロナ禍の昨年度に退学・休学した大学生は全国で5,800人に上ることが文科省の調査で明らかとなっています。
 一年半以上も続くコロナ禍は日本の未来を担う学生からアルバイトを奪い、多くの学生が一日一食しか食べられない状況に追い込まれています。まともな食事がとれず学業に専念できず単位を落とした学生もあります。オンライン授業で友達もできず、孤立を感じるなどメンタル面でも影響が出ています。
 この学生の窮状を救おうと全国各地で支援が実施されています。例えば、徳島県は、「緊急的な生活支援」として「県内学生とくしまぐらし応援プロジェクト」を立ち上げ、今年6月から県内14の大学、専門学校に徳島産品を月2回、配布しています。学生の徳島での暮らしを応援することで、県との「絆」の強化にもつなげたいとの考えもあるようです。
 広島県内でも、民主青年同盟が取り組んだ「食材や日用品を無償提供する支援」は今年9月14日までに市立大学を含め、県内の11大学で33回、延べ2,029人に利用され、多くの学生から助かったと喜ばれています。
 一方、広島市の支援は、昨年5月に市立大学生の授業料の減免、オンライン授業によるパソコン貸し出し、通信に必要な経費を補助する支援が、実施されただけです。
 今年だけでも3度目の緊急事態宣言が出され、宣言が延長される状況下では、まったく不十分です。
 大学生からは「コロナ禍2年目はより大変になった。預金も尽き、大学の支援だけでは足りない。臨時給付金を再支給してほしい」との声が届いています。何より困窮する学生の救済は、政治の仕事です。
 広島市でも、全国の事例に学び、市立大学生への応急奨学金の増額など直接支援を拡充すべきではありませんか。市の見解をお聞きします。

(企画総務局長)
 先日の質疑において答弁したとおり、コロナ禍にあって、市立大学においては、アンケート調査等を実施した上で、様々な学生支援を行っています。
 例えば、オンライン授業の実施に当たり、自宅等での受講に必要となるパソコン等の無償による貸出や、インターネット環境の整備に必要となる経費に対する補助などを行うとともに、附属図書館の図書の貸出に当たり、自宅等への配送料を大学が負担するなどの支援を行いました。
 特に、生活に困窮している学生に対しては、昨年度及び今年度の2か年にわたり応急奨学金を支給するとともに、今年度は、新たに大学内の食堂や売店で使用可能な金券を配付し、食品等の現物支給も行っているところです。
 このような学生への直接支援は、誰よりも学生の実情を把握している市立大学において、まずは検討・実施されるべきものと考えています。
 本市としては、市立大学が「大学の自治」の中で実施する学生への支援に要する経費のうちく大学自体の運営や教育の質に影響を与える経費について、大学の設置者として、運営費交付金で措置していくべきであると考えており、昨年度は、授業料減免に伴う減収を補てんする経費やオンライン授業の実施に要する経費を運営費交付金で措置したところです。
 なお、市立大学から、議員御指摘のような、本市が学生に対して、直接支援して欲しい旨の要請はありません。

【再質問】
(中原ひろみ議員)
 これは何も学生だけ支援すればいいということではなくて、長期化するコロナ禍で、とりわけ非正規雇用の人たちに大きなしわ寄せがきています。
 学生さんは、市立大学でも7割ぐらいがアルバイトをしている。そして8割ぐらいは寮やアパートで暮らしていると。学生になる時に自立しようと決意します。授業料はアルバイトで稼ぐよとか、アパート代、生活費はアルバイトで稼ぐよと言ってそれぞれ市立大学の学生になられたという方も多いと思いますが、今それができない状況に追い込まれています。
 そこは自助で何とかしろと言っても無理な話です。共助も今たくさんやられてます。ご紹介ましたように様々な団体が学生支援に取り組んでいます。残ったのは公助じゃないですか。市立大学にお聞きしましたら、コロナ禍を理由にした退学者はいないけれども、11名が休学を余儀なくされているとおっしゃってました。
 一人も取り残さないというスローガンがSDGsにありますが、その視点から言ったら取り残してしまいかねない状況じゃないでしょうか。こういう学生さんがいるのに、行政が、大学生が何も言うてこないんだからいいんだというのではなく、市の方から足を運んできちっと支援する、そういう心構えや体制が必要でないかと思います。この辺の認識を伺っておきます。

(企画総務局長)
 市立大学の学生に対する直接支援について答弁します。
 市立大学を始めとして、大学には憲法の基本的人権を保障しております学問の自由を制度的に保障する大学の自治が認められております。この大学の自治は具体的には人事の自治、施設管理の自治、学生管理の自治、研究教育の自治、予算管理の自治があるとされております。一方、本市は市立大学の設置者として資本金を出捐するとともに、その運営に必要な経費について毎年多額の運営交付金を支出してるところです。
 そのため毎年市立大学の経営状況について地方自治法の規定に基づいて議会に報告をいただいています。
 こうしたことに鑑みれば、コロナ禍で困窮する学生の直接支援についてはまず市立大学が行うべきもので、大学自体の運営や教育の質に影響するものについてのみ設置者である本市が引き続き支援をしていくという考えでおります。

3.子どもの最善の利益のために

(中原ひろみ議員)
 今年5月5日は、日本に「児童憲章」が制定されて70周年の記念日でした。「児童は人として尊ばれる。 児童は社会の一員として重んぜられる。 児童はよい環境のなかで育てられる。」 子どもの権利条約が国際的に定められる30年以上も前に、日本は子どもの人間としての権利を宣言しています。この児童憲章を生かす立場から3項目について質問します。

①ヤングケアラーを早期発見する教育環境の整備について

(中原ひろみ議員)
 ヤングケアラーとは、家族等の介護、看病、世話、見守りなど、本来大人が担うと想定される家族の世話を行っている18歳未満の子どもたちのことで、ほかの人に話すことができない「孤立感」を抱えているといいます。
 神奈川県藤沢市が、2016年7月に公立小・中学校等の教職員を対象に実施された「ケアを担う子ども」の調査によると、教職員がヤングケアラーに気づいたきっかけで一番多かったのは、子ども本人の話、朝の登校の様子、子どもの何気ない会話、忘れ物が多いなどから「ケアを担う子ども」ではないかと気づいたと答えています。
 この結果を受けて、藤沢市では2015年から段階的に担任以外に小学校では、児童支援担当教諭、中学校では生徒支援担当という立場の教職員を各学校に一名配置しています。この「担任を持たないみんなの先生」が中心となり、担任一人が抱えていた課題を管理職も含め組織的に対応できるようになり、福祉部門との連携など、支援の幅が広がったと言います。
国が今年3月、中学2年生を対象にしたヤングケアラーの実態調査の結果を公表し、5.7%がヤングケアラーの経験者ということが明らかになりました。
 国の調査結果を受けて市教育委員会は、どのように対応されているのか伺います。

(教育長)
 教職員は、児童虐待やヤングケアラーなどの課題を抱え、悩みや困り感を持つ児童生徒を早期に発見できる立場にあります。
 こうしたことを踏まえ、教育委員会では、学校に対し、ヤングケアラーなどの課題を抱えた児童生徒が在籍している可能性があることを十分に理解した上で、学校生活の様子の観察や教育相談等を通じて、児童生徒の実態を見取るとともに、ヤングケアラーの疑いがあると判断した場合、スクールソーシャルワーカーを活用し、関係機関と連携して、当該児童生徒の支援を行うよう指示をしております。
 さらに、教職員がヤングケアラーへの理解を深め、その早期発見及び適切な対応ができるよう、「ヤングケアラーへの対応について」と題したリーフレットを作成し、本年8月に各校に配布して、教職員への周知に努めております。
 こうした取組を進める中で、学校では、遅刻や欠席が目立つようになった児童生徒について、その背景に家庭内で保護者の介護を行っている状況が確認できたため、スクールソーシャルワーカーが、福祉の関係機関と連携して、家庭への支援、この場合は訪問看護でしたが、これに結びつけたといった事例も出てきております。
 今後もヤングケアラーの早期発見に努め、具体的な支援に繋げていけるようしっかりと取り組んでまいります。

(中原ひろみ議員)
 元ヤングケアラーだった方から話を聞くと、学校が唯一、ケアから解放される場所だったと言います。家に帰れば大変な状況があっても学校に来たら安心できて、ちょっと愚痴をこぼしたり、悩み事を打ち明けたりできる大人がいる場所、それが学校だったというのです。
 学校は、単に学習の場でなく子どもの安心・安全な居場所になっているという事です。そうであるならば、学校がすべての支援策を把握することは困難ですから、当然のことながらスクールソーシャルワーカーの増員や、藤沢市のような「みんなの先生」と呼ばれる教職員の増員が必要です。
 2020年3月に「ケアラー支援条例」を制定した埼玉県の調査では、ケアラーの開始時期は「中学生」の時が最も多いという実態もあきらかになっています。
 かねてから私たち日本共産党市議団は、どの子にも行き届いた教育を保障するため、中学2年、3年生の35人学級を求めてきましたが、コロナ禍での安全な教育環境だけでなく、教師がヤングケアラーを早期に把握する意味からも、中学2年・3年生の35人学級の必要性が高まっているのではありませんか。市の認識をお聞きします。

(教育長)
 現在、本市においては、小学校1年生から中学校1年生までを35人以下学級編制とし、中学校2年生・3年生では、国語、数学、英語を対象に、少人数指導を実施しております。
 中学校2・3年生を35人以下学級編制とすることは、学級担任の目が生徒一人一人に行き届きやすくなることなどから、より望ましい姿であると考えております。
 一方で、これを実現するためには、学級数の増加に伴う新たな教員の採用や教室の確保などの課題もあることから、今後、国の少人数学級に関する動向や、本市の生徒数の推移などに十分留意しながら、検討を進めていきたいと考えております。

(中原ひろみ議員)
 既に広島市は、中学1年生まで35人学級を実施していますが、今年度から国が5年計画で小学校の35人学級に踏み出しました。その為、市の独自財源で加配してきた教員の人件費が毎年1学年ずつ浮くことになります。現在、小学3年生から6年生で35人学級のための人件費はどのくらいですか。この財源を使い、義務教育課程の全学年で正規の学級担任による35人学級にすべきではありませんか。

(教育長)
 本市が独自に行っている小学校3年生から6年生までの35人以下学級のための令和3年度の人件費は、約9億円です。
 次に、この財源の活用のお尋ねについてですが、本市では、将来にわたって「持続可能なまちづくり」を進めていくこととしており、このためには、このケースのような、国と市の役割分担が適切になり、国の財源措置により確保できることとなった自主財源については、本市が推進すべき施策の全体最適のために活用していくこととなっております。
 中学2年生・3年生の35人以下学級については、先程、申し上げたとおり、学級数の増加に伴う新たな教員の採用や教室の確保などの課題もあることから、今後、国の少人数学級に関する動向や、本市の生徒数の推移などに十分留意しながら、検討を進めていきたいと考えております。

【再質問】
(中原ひろみ議員)
 ケアラーを把握するための35人以下学級、この必要性はもう言うまでもありません。改めて確認したいのは、広島市は少人数教育のための段階的プランというものを作っていて、小学校低学年では20人、その他の学年は30人という目標を決めてらっしゃいますけれども、これは現在も生きているのかということと、中学校2年生3年生の35人以下学級をこれまでなかなか前に進めようという答弁ではなく、今の習熟度別授業がいいんだと何回もご答弁された記憶もありますが、少人数教育の意義は大きくなった、ケアラーも含めて子どもたちを把握する意味でも、少人数の方がいいのですから、35人以下学級に中学2年生3年生をも早急にしなきゃいけないという認識があるのかどうかということを聞きたいんですよ。
 初日の質疑でも、オンライン授業で机を大きくしなければいけないんじゃないかというのもありましたが、そういう物理的なことから言っても、35人以下学級にせざるを得ない、もっと市が言うような少人数学級に向かわなきゃいけないということが、今教育委員会にとっては、教育環境整備で大きな課題じゃないかと思いますが、その辺の認識をお尋ねをしておきます。

(教育長)
 学校の少人数学級のお話がございました。中学校の35人学級を早急に実現しようという認識があるのかということですから、思いとすればこれはぜひ早く実現したいという思いでおります。
 それから合わせてさらに今20人学級とか30人学級とかいうお話がございました。おそらく段階を踏むということになると思いますが、例えば広島市議会においても30人学級実現の意見書採択をされています。35人以下学級という次のステップとすれば、また30人ということが出てこようかと思います。
 先程ご答弁申し上げたのは、これを実現したいという思いを持ちつつ、35人以下学級を瞬時にやろうとした時には、今教員を希望する若い人が減っている中で、瞬時に教員を大量に採用する、あるいは教室が瞬時にいくつも必要になるという状況がございます。そういった課題もありますので、今後の児童生徒数の状況を見ながら、どういったスケジュールでやっていったらいいかということを引き続き検討したいと思っております。

(中原ひろみ議員)
 少人数学級の必要性は、異議を唱える人はいないと思います。進めていく形で予算を最優先でつけていただきたい。

②子どもの一時保護について

(中原ひろみ議員)
 2020年10月31日(土)に広島県西部こども家庭センターが児童養護施設に一時保護委託していた10代児童が居室内で倒れ死亡する事件が発生しました。
 この案件は、母親が施設入所に同意しなかったため、保護者との面会を基本的に認めない面会通信制限がされていました。半年を超える長期間にわたり一時保護委託の状態が続き、会いたい母親に会わせてもらえない日々が希望を奪ってしまったのではないかと、推察するところです。
 改めて、亡くなられた児童のご冥福とご遺族にお悔やみを申し上げます。
 広島県はこの事例から学ぶとの立場で、外部有識者を中心とした検証会議を立ち上げ、本年4月23日に検証報告書がまとめられました。
検証で明らかになった最大の問題点は、保護者と児童相談所の意見が対立していたため「子どもの側に立つ第三者に、子どもが意見を述べたり聞く機会が保障されていなかった」など、子どもの権利がないがしろされる実態が指摘されています。
 子どもの尊い命が失われるという痛ましい事件を繰り返さないため、県の検証委員会の提言を広島市に引き寄せ、子どもが安心して過ごせる環境づくりにむけてお尋ねします。
 広島市の児童相談所で一時保護した子どもは何人いますか。そのうち、虐待で施設入所となった子どもは何人ですか。

(こども未来局長)
 令和2年度に広島市の児童相談所が一時保護した子どもは330人で、このうち、虐待により児童養護施設等に入所となった子どもは32人です。

(中原ひろみ議員)
 子どもと利害関係のない第三者機関等が、子どもの相談を受ける機会は確保されていますか。
 子どもに「自分が権利の主体である」ことをきちんと伝えておられるのか伺います。

(こども未来局長)
 児童相談所では、子どもの権利が守られることは大変重要であることから、その意見を最大限尊重することとしており、子どもの支援に当たっては、まず、子どもが主体的に自分の気持ちや希望を話すよう丁寧に伝えています。
 また、子どもの意見などを聴く際には、担当の児童福祉司に加え、子どもの気持ちや思いを汲み取ることのできる児童心理司や、一時保護所などで共に生活する中で子どもの正直な思いを受け留めることのできる保育士・児童指導員、子どもの権利擁護に重点を置いた役割を担う弁護士など、多職種の専門職員が対応し、子どもが話せる機会を確保しています。
 その上で、今後の援助方針などについて、児童相談所と子どもの意向が一致しない場合には、学識経験者や医師、弁護士等で構成する社会福祉審議会児童福祉専門分科会入所措置等専門部会で意見を聴いて対応することとしています。

(中原ひろみ議員)
 日本共産党市議団に匿名の方から「子どもの権利ノート」通称「オレンジノート」についての意見が寄せられました。「オレンジノート」は、子どもが施設内での生活の不安や不適切な扱いを受けた場合に、手紙と封筒を使い、切手を貼らずに投函できる、命綱のノートともいえるSOSレターです。
 しかし、コロナ禍のもとで外出できず投函できないと話されました。この方は、せめて子どもの声、親の声が聴けるように施設内に公衆電話を設置してほしいと求められました。
 改めて「こどもの権利ノート」の活用実態を調査し、子どもの意見表明権が守られるよう改善・検討すべきだと考えますが、市の見解をお尋ねします。

(こども未来局長)
 「子どもの権利ノート」は児童養護施設などに入所している子どもに施設内で権利が守られることなどを説明する小冊子で、複数の相談機関の連絡先を掲載するとともに、切手不要で送付できる本市の所管課宛ての封筒をつけています。
 この権利ノートについては、施設入所が決まった際に児童福祉司から子どもに手渡し、一緒に読みながらその内容や利用方法を説明していますが、活用実態については、今後、児童福祉司が年1回施設を訪問し、子どもと面接を行う際に、改めて利用方法などを理解しているか確認し、必要に応じて改善を図っていきたいと考えています。
 また、議員御指摘のとおり、封筒を投函できない場合も考えられることから、説明の際には、学校の先生に手渡す等、投函以外の方法も伝えるようにしてまいります。

(中原ひろみ議員)
 子どもが親と分離されるもとで、自ら置かれた状況を正しく理解するには、日々揺れ動く子どもの気持ちに寄り添うケアが不可欠です。広島市では児童福祉司、児童心理司、医務官、弁護士など専門家体制の充実とともに、子どもが抱えている問題を専門家チームとして情報共有できる十分な体制と連携がとられているのか伺います。
 また、児童保護機関から独立した組織が子どもの立場に立ち、子どもの意見を聞くアドボケイト制度の活用についてはどのようにお考えですか。

(こども未来局長)
 児童相談所では、児童福祉司や、児童心理司、保育士、児童指導員、弁護士などの専門職員が、情報共有を行い、支援方針などについてそれぞれの立場で意見を出し合うなどしてチームで対応しており、今後もこうした体制の下、子どもの最善の利益が守られるよう取り組んでまいります。
 議員御質問の児童保護機関から独立した組織によるアドボケイト制度の導入については、国において、令和3年5月、学識経験者や弁護士などで構成される「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」のとりまとめが公表され、これを受けて、児童福祉法等の改正が検討されていることから、国の動向を注視していきたいと考えています。

③校則について

(中原ひろみ議員)
 2018年3月に国会でゼロトレランス(子どもの問題行動を寛容度ゼロで取り締まる手法)ブラック校則の問題が取り上げられ、当時の文科大臣は、校則の見直しの必要性を認め、その際には生徒の参加が好ましいと答弁しています。
 しかし、今なお「特定の髪型の禁止」「下着の色は白」など人権侵害ともいえる校則が子どもたちを苦しめている実態が明らかになっています。
 日本共産党が実施した校則アンケートでは、全国の中高生1,453人をはじめ、保護者、教職員2,954人から回答が寄せられました。生徒も保護者も教職員も8割から9割が校則に疑問を持っていると回答しています。
 西広島駅で実施した対話形式のアンケートでも、「疑問に思う」校則のトップはツーブロックなど特定の髪型の禁止でした。「肩に髪がかかったら絶対に結ばなければならない」「うなじが見えたらダメという理由でポニーテールが禁止されている」「靴下も靴も白しかダメという意味がわからない」などの声が寄せられました。子どもたちが一番強く訴えていたのは、「校則は子どもが安心して学校生活を送るためにあるはずなのに、逆に苦しめられている」ということです。教師不信の訴えもありました。
 文部科学省は「学校の決まり等が原因による不登校の児童生徒数は5,572人」としています。厳しすぎる校則は子どもの権利、人権の観点から見直しが必要です。文科省も6月8日に学校や地域の実態に応じて校則を見直すよう通知していますが、市教委はこの通知をどのように受けとめられていますか。

(教育長)
 校則は、各学校が、その教育目的を実現していく過程において、児童生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定めるものです。
 教育委員会としては、令和3年6月8日付の文部科学省の事務連絡にある通り、学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況は、時代とともに変化するため、校則は、その時々の児童生徒の実情、保護者の考え方、地域の状況、社会の常識などを踏まえたものになっているか、各学校において、積極的に見直す必要があるものと考えています。

(中原ひろみ議員)
 教育行政は教育条件整備が大切な任務ですが、同時に「指導助言行政」という教育行政に関する事柄について、大事なことを述べる専門的な指導助言の仕事も担っています。
 社会全体に多様な個性を尊重する流れが増しています。校則が矛盾を深め、子どもたちが声を上げている今、校則の実態を調査し、憲法と子どもの権利条約の見地から子どもたちと率直に話し合い、子どもたちが疑問に感じている校則を見直す立場にたつべきではありませんか。

(教育長)
 校則の決定は、最終的には校長の権限に属するものですが、その見直しに当たっては、児童生徒が話し合う機会を設けたり、保護者からの意見を聴取したりするなど、児童生徒・保護者との共通理解のもとで進めていくことが重要と考えています。
 これまでの事例としては、生徒会執行部の生徒と教員が話し合い、校則で決められていた靴下の色に選択の幅を持たせたり、教員と保護者が協議した上で、生徒の意見を取り入れ、自宅に持ち帰らなければいけない授業道具を大幅に減らしたりした学校があります。
 教育委員会としては、これまでも、学校に対して、校長会等を通じて、校則の見直しに取り組むよう働きかけてき各学校の積極的な取組を促していきたいと考えています。

(中原ひろみ議員)
 また、ある保護者から市立高校の新入生と保護者に「宣誓書」を書かせる理由が分からないとの声が寄せられました。
 市立8校の「宣誓書」を見ると内容は全て同じ文言です。「わたくしは、学校のきまりを守り、心身をきたえ、勉学に励むことを誓います」となっています。「学校のきまり」には生徒が疑問に感じている「校則」も含まれます。この「学校のきまり」を守ることを誓わされる「宣誓書」は提出したくない、「きまり」を守らなければ「宣誓書」を根拠に「退学を強要される」のではと不安に感じると話します。
 この子どもの意見表明をしっかりと受け止めていただき、一人ひとりの生徒の成長を支える教育の場にふさわしく、宣誓書の在り方を検討されるよう求めておきます。

 最後に高校受験についても要望します。
 今年3月に行われた広島県立高校の一般入試(選抜2)を受験した複数の生徒が、受験要項では携帯できないとされているコンパスを机の上に置いていたことから、この行為が不正にあたるとして受験が無効となりました。
 「不正」のレッテルを張られ、人生を否応なく変更せざるを得なくなった生徒だけでなく、ご家族の皆さんの落胆は想像以上だといいます。
 広島県教育委員会は、当該の生徒に対し受験できかった高校への入学の機会を保障することもなく、4月15日には、県内のすべての教育委員会に対し、受験を控えた中学生へ入試時のルールの指導を徹底するように要請しています。
 コンパス一つで子どもの将来を変えさせてしまう厳罰的な指導やルールはあまりにも冷酷と言わざるを得ません。東京大学大学院の児玉重夫教授は、「生徒の多くが人生で初めて挑む関門であり、教育的配慮が必要だったのではないか」と話されています。
 「不要物を机の上にだしていれば、試験監督官が事前に指導し、片づけさせれば済むこと」です。受験生を画一的なルールで縛り付け、厳罰を科す試験の在り方は、子どもの将来にもかかわる重大な人権侵害です。子どもの成長・発達にプラスにはなりません。本事案は県立高校のことではありますが、市立高校の受験においては、受験生がその持てる力を発揮できるような指導をしていただくよう求めておきます。

【再質問】
(中原ひろみ議員)
 校則は身近なものですから、教職員と生徒が率直に話し合える学校の雰囲気がどうしても必要です。宣誓書ですが、高校に入った時に、義務教育から離れ、責任や高校生になったという自覚を高めるためのものだとお聞きしました。けれども宣誓書を書かせる法的な根拠はないと聞きました。改めてその必要性も問われており、宣誓書一枚で自覚が高まればこれほど簡単なことはありませんが、実際はそうではありません。
 逆に宣誓書でいろんな不安を子どもたちが持っているということですから、あり方、その是非も含めて検討いただければと思っております。

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