議会での質問・答弁

2019年07月01日

2019年第2回 6月定例会 総務委員会 近松さと子議員

自衛官募集の事務について

◆近松 委員 
 私は、広島市の自衛官募集の事務についてお聞きしたいと思います。
 市民から、8月15日の市民と市政に自衛隊員の募集の広告が出されていた、掲載されたという声が寄せられまして、その方によれば、これまで市民と市政には掲載されてこなかったんじゃないか、そういうふうに言われたんですけど。今年の2月には、安倍首相が「6割の自治体が自衛官募集に協力したい、だから憲法に自衛隊を明記する9条改定を行って、違憲論争に終止符を打つ」、こういうふうに発言して物議を醸したわけですけど、この市民の方も、平和憲法を変えようとする安倍首相に非協力だと言われたらすぐに言いなりになって、自衛隊の募集広告を出したじゃないか、こんなふうに言われたんです。
 そこでお聞きするんですが、自衛隊員の募集が8月15日の市民と市政に掲載されたのを、私も見ました。これまで、市民と市政には自衛隊員の募集というのを掲載されてきたのかどうか、ちょっとお聞かせください。

◎加賀谷 総務課長[充]市選管啓発課長 
 本市の広報紙への自衛官等募集記事の掲載につきましては、確認できた範囲で申し上げますと、平成8年度から平成14年度までの間、及び平成16年度から平成18年度までの間に掲載を行っています。

◆近松 委員 
 市民の方がちょっと誤解をされていて、今までも掲載はされていたということですが、自衛官募集についてデリケートなと言いますか、そういう安倍首相の発言があったりしたもんですから、そのようにあえて掲載したんじゃないかというようなことを思われたようですが。しかし、平成8年からこの23年間には毎年ではなくて、今言われたのを数えましたら11回、今年を入れれば11回ぐらい掲載されたということになるんですけど。過去に自衛隊員の募集というのを広報紙に掲載しなかったというのには、何か理由があるんでしょうか。

◎加賀谷 総務課長[充]市選管啓発課長 
 近年、掲載してなかった理由について申し上げますと、自衛隊、具体的には広島地方協力本部から、自衛官等の募集に関する広報宣伝についての依頼はありましたけれども、広報紙への募集記事の掲載について、特に具体の依頼はなかったことから行っていなかったものです。

◆近松 委員 
 それでは、今回の8月15日の市民と市政に掲載されたという判断をされたのは、どういう理由からでしょうか。

◎加賀谷 総務課長[充]市選管啓発課長 
 今回の掲載の経緯でございますが、今年度の自衛隊広島地方協力本部からの自衛官募集等に関する事務の依頼につきまして、本市を含む県内全市町に対し、広報紙への募集記事の掲載について、特に具体の依頼があったこと、並びに県内他市町が全て募集記事を掲載している状況を勘案し、本市が行う自衛官の募集に関する広報宣伝の一環として、広報紙へ募集記事を掲載したものです。

◆近松 委員 
 これまで、市も災害救助などで大変自衛隊にはお世話になったという、それから、日頃には、防災計画などで密接に関わっておられるわけで、協力しなければというような認識だったのかというふうにお聞きするところなんですけれども。
 しかし、今の自衛隊の任務というのは、災害救助で活躍する自衛隊員に憧れて入隊したいという自衛隊員の思いとやはり違ってきてるんじゃないかなというふうに思うんです。自衛隊員の募集計画というのがちょうど8月15日の中国新聞にも出ていますが、5年連続で計画割れ、充足率が7割だというふうに書いてあるんですけども、2014年から連続して計画割れなんですが、この2014年と言いましたら、安保法制によって自衛隊の任務が大きく変わって、もはや専守防衛ではなくて、他国を防衛するために海外で武器を使用することが可能になった、こういう時期でもあります。新聞によりましたら、これは栃木県の自衛隊員の募集の相談員さんの話が新聞に出ていたんですけれども、いろいろ勧誘しても、9条があるから安全だということがもう通用しなくなったと嘆いていらっしゃるという声が新聞にも紹介をされました。やはり、少子化で子どもが少なくなったから募集しても応募者がないというのも理由がありますけれども、それだけじゃない。この安保法制など以降の自衛隊の任務が変わったという、こういうこともあるんじゃないかと思います。実際にも呉基地所属の「かが」という護衛艦が、今度は空母化されるというようなことも報道されてます。そして実際には、アメリカ軍と一緒に敵地に殴り込むような訓練も行われているというのも聞いています。自衛隊員の家族の方からも、直接に声をお聞きしました。息子が危険な訓練をしているらしいけれど、海外で血を流すような事態にだけでは絶対してほしくない、こういうような悲痛な声も聞いています。
 ですから、皆さんが募集事務を行っておられる自衛隊というのは、もはや専守防衛ではない、災害救助が主な任務ではないということは、やはり認識していただきたいと思います。
 そして、改めてお聞きしたいんですけれども、市として自衛隊員の募集の事務を行う法的根拠というのは何でしょうか。

◎加賀谷 総務課長[充]市選管啓発課長 
 自衛官等の募集に関する事務につきましては、自衛隊法において、市町村長は、政令で定めるところにより、その事務の一部を行うと定められており、自衛隊法の施行令におきまして、その個別の事務が定められています。また、当該事務は地方自治法に定める法定受託事務とされています。

◆近松 委員 
 自衛隊法の97条で、本来国の行う募集事務の一部を自治体が代行するというもので、この事務の中身というのはいろいろあるんですけれども、昨年、防衛省が自治体に要請したという、国会に出された資料によれば、17項目も募集事務に対していろいろ書かれております。例えば町内会、青年団、婦人会、消防団、理髪組合など、市町村内の各種団体に対する募集広報の協力依頼なんかも市にやってほしい、こんなようなこともあります。市としては、何をどのようにやるのか、誰が判断することになるんでしょうか。ちょっと教えてください。

◎加賀谷 総務課長[充]市選管啓発課長 
 自衛官等の募集に関する事務の具体的な内容につきましては、自衛隊の各地方協力本部から各自治体へ依頼がございますので、その内容を踏まえまして、各自治体において判断をして行っているものでございます。

◆近松 委員 
 昨年、防衛省が自治体に要請した17項目の中の一つとして、自衛隊員の募集に関わって、適齢者の氏名や住所などを名簿にして提供を求めています。名簿として提出している自治体は、全国で36%、54%が住民基本台帳の閲覧のみを認めているというふうなことです。が、冒頭に紹介しました、これが閲覧のみにしているというのが、安倍首相に言わせれば非協力的だということのようです。名簿提供の求めに対しては、広島市としてはどのように判断しておられるんでしょうか。

◎加賀谷 総務課長[充]市選管啓発課長 
 自衛隊への名簿の提供についてですが、自衛隊法施行令、これは第120条になりますけども、それでは、自衛官等の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事及び市町村長に対し、必要な報告又は資料の提供を求めることができると規定されていますけども、これは提供を義務付けるものではございません。また、本市の個人情報保護条例の運用におきましては、個人情報の提供は、相手方が公の機関であっても慎重を期する必要があるとしており、これまで、災害で人命に関わるとして地域を限定して抽出した住民基本台帳の情報を警察に提供した事例、この事例を除きまして、不特定多数の個人情報を外部へ提供した事例はございません。このため、名簿の提供につきましては現時点で行うことは考えておりません。

◆近松 委員 
 ですから、個人情報保護の観点から、自衛隊に対しても閲覧にとどめているということでよろしいんでしょうか、ちょっと再度確認したいと思います。

◎加賀谷 総務課長[充]市選管啓発課長 
 個人情報保護条例の運用に当たって、慎重を期する必要があるということでございますので、現時点では、行うことは考えていないという状況でございます。

◆近松 委員 
 つまり、自治体による自衛隊への名簿の提供が進まないのは、個人情報保護の問題もあるということで、安倍首相が言うように憲法9条が悪いからじゃないということではないでしょうか。
 そして、ましてや今、9条に自衛隊を書き込めば、戦争しない、武力を持たないという9条の前項が死文化してしまう。そうなれば歯止めが外されて、更に自衛隊員の皆さんを危険にさらすことになります。
 応募者が増えないという状況をつくっているのは、政府自身だということを改めて指摘したいと思いますし、国際紛争の解決は9条を生かした平和外交で進めるべきというのが、被爆地広島の立ち位置であるということも指摘させていただきまして、終わりたいと思います。