議会での質問・答弁

2021年03月05日

2021年第1回 2月定例会・予算特別委員会 厚生関係 近松さと子議員

・精神障害者医療費支援について
・生活困窮者支援について

精神障害者医療費支援について

(近松さと子議員)
 「この国に生まれたる不幸」という言葉を紹介します。明治時代の精神科医の呉秀三さんという方の有名な言葉です。100年前の日本の精神障害者は私宅監置といういわゆる座敷牢に入れられていて、人権がないに等しい待遇でした。我が国の十数万人の精神病者は、実にこの病を受けたる不幸の他に、この国に生まれたるの不幸を重ねるものというべし。100年前、精神疾患のある人々の置かれた状況をこのように表現して、その後全国各地を実態調査して、精神病院を創設していく草分けとなる方です。
 しかしその後も精神障害者をめぐっては、国際的に批判も受け続けてきました。閉鎖的な医療ですとか、強制入院とか、そして今は社会的な入院というのも大きな問題になっております。
 人権問題が後を絶たないという状況なんですが、地域で暮らす上でも、他の障害者の施策よりも遅れをとっているのではないでしょうか。精神障害者に関わる心ある人は、医療はもちろん、福祉に携わる人もこの国に生まれたる不幸をはないかと常に戒めを持ってこうしたことに当たらなくてはいけないんじゃないかと思っています。課長さんは精神障害者の福祉と医療に関わる仕事をされているわけですが、このことについてどのように受け止められておりますか。

(精神保健福祉課長)
 精神障害者について、他の心身障害に比べるとちょっと遅れたところからスタートしているということにおきましては、やはり非常に厳しいものがあると認識をしております。しかし、近年の本市におきましても精神障害者に対する医療をはじめ、様々な施策に取り組んできておりまして、より一層強めていこうと考えております。

(近松さと子議員)
 ぜひ頑張っていただきたいと思います。実は私も30年ぐらい前に精神障害者に関わる仕事をしておりましたので、このたびは統合失調症の息子さんとふたりで暮らしているお母さんから、医療費の助成の問題で要望を聞きましたので質問させていただきます。
 現在45歳の息子さん、20歳で統合失調症を発病して以来働くことが困難で、家族に支えられて暮らして来られました。息子さんは今、週2日デイサービスに行くことを楽しみにしています。現在お母さんももう76歳になって、亡くなったお父さんの遺族年金と、息子さんの障害年金6万円、その中から食事代を入れてもらって細々と二人で暮らしています。
 統合失調症は、薬をきちんと飲むことで症状が安定して、デイサービスのような支援を受けながら、地域で生活を送ることが今は出来るようになりました。しかし再発というのもしやすくて、長く病院と付き合わないといけない病気でもあります。こうした精神障害を抱える息子さんや娘さんを年金で暮らしている年老いたご両親が支えているという家庭もあるわけです。ぜひ医療費の負担を軽減してほしいという願いが届いているんです。本市の精神保健手帳を所持している方は等級別で何人いらっしゃるのか教えてください。

(精神保健福祉課長)
 本市の精神障害者保健福祉手帳の交付者数は、直近の令和3年1月末現在で総数で1万7661人です。等級別の人数は、1級が1,409人、2級が1万1608人、3級が4,644人となっております。

(近松さと子議員)
 こうした中で、この度新年度予算に新規事業として重度の精神障害者通院医療費助成制度というのができました。
 これは今まで精神障害の方の通院医療費については、精神科のみ公費で負担していただいていました。それ以外の一般診療科、耳鼻科ですとか内科ですとか、そういうものに対しての助成がなかったということで、このたび新しく作られたということなんですけど、これはどうしてできたんでしょうか。

(精神保健福祉課長)
 重度の精神障害者に対する通院医療費助成制度でございますが、このたび広島県が、精神障害者の自立・社会参加を促進するために関係団体との要望を考慮し、まずはより障害程度が重く、医療的な支援の必要性が高い精神障害者保健福祉手帳一級所持者を対象に、一般科診療を含む通院医療費助成制度を創設することとし、同制度を導入する県内市町に助成金の補助を行うことに対応するものです。本市としましては、国民における公平性確保の観点から、国の責任において統一的な助成制度が設けられるように、広島県を通じて働きかけたところでございますが、その実現の見通しが立たない中、今回県の責任による助成制度の創設が提案されたこと、また提案された助成制度は、従来から実施している本市独自の通院費助成制度と組み合わせることで、継続的な通院治療を必要とする重度精神障害者の早期支援に資するということになることから、本制度を創設することとしたのです。

(近松さと子議員)
 県が制度を作ったからというようなことだったんですけど、先ほど紹介しました息子さんは、県外の大学に通っていた時に発病し、お母さんはこれで子育ても終わるとほっとした矢先に下宿先から息子さんがおかしいと連絡を受けて、慌てて精神病院に入院となった時には、本当に地の底に落とされたような気持ちになったとおっしゃっていました。若い頃は入退院を繰り返してきたと言います。この10年ぐらいは落ち着いてきたんですけれども、お父さんが病気になられたことをきっかけに3年前に急性症状が出て、4ヶ月間再入院をされたそうです。食費の保険外自己負担もありますが、1ヶ月で6万円ぐらいかかって、年金生活に息子の入院費の負担というのは大変厳しいと言われました。どうして入院費は3割の負担で何の補助もないのか。精神障害者の入院費の公費助成はなぜないのか、ちょっと教えてください。

(精神保健福祉課長)
 今回創設するにあたりまして、広島県は重度精神障害者の自立社会参加を促進するという観点から、入院を助成の対象外としておりまして、本市としてもこれに沿った対応を行うということにしております。

(近松さと子議員)
 大雑把な表ですけれども、通院費については精神科、そして全ての精神障害者、今度新規事業で、一般診療科については精神保健手帳一級の方のみですけれども、公費負担が行われるということです。しかし入院費については、社会保険以外の自己負担部分は基本的には自己負担をしないといけないということです。今回、重度心身障害者医療費の助成について、身体障害者と知的障害者と同等の扱いのもとに全診療科に広げて、一歩前進しました。
 入院医療費も含めて医療費の助成を行ってください、これは家族会から広島市の方に出された要望だそうです。家族にとって精神障害者への偏見や差別というのは、まだまだ他の障害に比べても根強いものがありますし、当の家族も、そして息子さん娘さん、当事者もなかなか表に出にくい。そして、発病されたのが青年期というのが多いんです。あの身体障害者等の保護者の方はやはり子どもが小さい時からいろいろこの問題に関わって来られましたけれども、子育てが終わってこれから自分の老後だと思った時にいきなり娘や息子が精神障害になって様々福祉制度・医療制度にぶつかるんです。家族会の活動も大変な中でそういう要望を出されているわけなんですが、通院費の補助制度ができたので、これを足がかりにして拡充していくことが必要なんじゃないかと思うんですけど、そこはどう思われますか。

(精神保健福祉課長)
 本市においても、等級を問わず精神科の通院の方の助成についてもしてきております。それで今回は広島県の方が重度に限って精神科に加えて一般科も含めて広島市も採用いたしまして同様に制度を構えて拡充するということでございます。本市としましては、国民における公平性確保の観点から、国の責任において統一的な助成制度が設けられるように、広島県を通じて働きかけをおこなっております。今後もこれは継続して努めていきたいと考えております。

(近松さと子議員)
 広島市には重度心身障害者医療費補助制度というのがありまして、身体障害者や療育手帳を持っている知的障害の方などは、この制度によって医療費が自己負担がないということですけれども、精神障害者の場合は入院費が自己負担であるという、格差を解消していただきたいと家族会の方が願うのは当然だと思うわけです。
 そして2019年には岡山市が単独で市の心身障害者医療費補助制度に精神障害者を加えたと言います。対象は手帳の一級ですけれども、入院費の補助が行われることになった。年間250人を対象に2020年度には3800万円が予算化されたと言います。これまで身体障害者・知的障害者だけだった心身障害者医療費補助事業に精神障害も加えたということです。岡山市には県の障害者への医療補助事業はないんです。それなのに単市で独自に判断して作られたのです。こうした政令市もあるんです。どう思われるでしょうか。

(精神保健福祉課長)
 精神障害者の適正な医療を普及するために、自立支援医療に加えて単市では精神科の通院医療の制度を手帳の要件とせず、自己負担を助成する制度を創設して運用しております。これは他のほとんどの政令指定都市にはない独自の支援制度でございますけれども、今回は1級に関しては、広島市も対応致しましたが、先ほどご紹介いただいたように、岡山市のような例えば重度の精神障害者等に特化した形で、入院と通院の医療費の自己負担を助成している指定都市があるんだろうと思います。
 本市においては精神科の通院に重きを置いて対応してるところと、1級のような重度のところに入院と通院を助成されているところがあろうかと思います。そのように政令市の中でも精神科、精神障害者医療に係る考え方というか、取り組みに差が生じているということは認識しております。

(近松さと子議員)
 政令市で精神障害者への入院費の補助制度があるのは何市でしょうか。

(精神保健福祉課長)
 精神障害者に対する入院費の助成制度を設けている指定都市は15市です。

(近松さと子議員)
 事前にお聞きしましたら、15市でこの補助制度がないのは、札幌・横浜・川崎・京都・広島ということだったんですが、それでよろしいでしょうか。
 1993年には、障害者基本法ができ、身体障害者・知的障害者・精神障害者を障がい者として定義しました。2005年、平成17年には多くの問題点がある法律でしたが、自立支援法はこの三つの障害者を一元的な福祉制度にしていくという方向性も示しました。
 岡山市の担当者は、障害者間の格差を是正して福祉向上につなげ、誰もが住みやすい街の実現を図っていきたいと言っているんです。
 精神障害者も障がい者として認めていくのが世の中の流れだと思うんですがどのようにお考えでしょうか。

(精神保健福祉課長)
 やはり身体障害者・知的障害者と同様に精神障害者も同様に、三つの障害を共通に制度を運用していくことが実際のところだろうと考えております。

(近松さと子議員)
 繰り返しになりますけれども、広島県にも広島市にも、昭和48年、50年近く前から重度障害者の身体障害者や知的障害者の場合は医療費の補助があります。一定の所得制限もありますが、入院・通院も、どんな診療科目でも、医療費を補助するものです。同じ制度に入れるかどうかは別としても、精神障害者の入院費も、この福祉医療的な制度で支援するというのが全国の流れだと思います。政令市の15市がすでにやってるというところを見ますと、岡山市のように一本化するところもあれば、大阪市などは別立てで精神障害者だけでそういう制度を作っているというところもあります。要はこういう入院費に対しても同等に保障してほしいという願いなんです。それについてどのようにお考えですか

(精神保健福祉課長)
 繰り返しのことになりますけれども、本市としても、国民における公平性の確保の観点から、国の責任において統一的な助成制度が設けられるように、これまでも働きかけております。
 その実現の見通しが立たない中で、今回は県の助成制度の創設が提案されております。本市もそれに倣って、独自の通院助成制度と組み合わせることで、重度精神障害者の早期支援に資するため制度を創設することになりました。
 こうした考え方のもとで、精神障害者の入院費も含めた統一的な助成制度については、引き続き国の責任による創設を働きかけていきたいと考えております。

(近松さと子議員)
 国の制度ができればいいということは、これまでも子どもの医療費の議論でもさんざんさせていただきました。でも、それがすぐにできそうにないわけですから、目の前の障害者市民の方が、精神障害者であるために入院費の補助が受けられてないという、この実態を一番身近な行政である広島市がしっかり認識して実現させて欲しいというのが、家族会の皆さんの願いだと思うわけです。 先ほど広島市は確かに精神科の通院費助成というのは幅広くやってこられたことについては評価するものです。だからといって、入院費の障害者間の格差を認める合理的な理由と言えるでしょうか。ちょっと最後にそれを聞いておきます。

(健康福祉局長)
 基本的には政令市で15市がやっております。重度心身障害者医療ではほとんどの都道府県でやっています。裏返して言えば、基本的には全国レベルの制度だということです。やるべき制度だということですから、本市としては、基本的にはこういった精神障害者・身体障害者・知的障害者、この三つが平等に等しく医療費の助成を受けられること。これは一貫した立場であります。
 そのもとで、先ほども言ったように、国が統一的な制度を設けるべきだということで、従来から働きかけを行う中で、今回県がこういった提案をしてきて、市が設けている制度と組み合わせることで、より早期支援につながるということで着手をしたということです。

(近松さと子議員)
 そういう点では、この国に生まれたる不幸がやっぱりまだあるんだなと思いますし、あえて言わせて頂ければ、広島市に生まれたということについても捉えなくちゃいけなくなるんじゃないでしょうか。
 お母さんは最後に言われました。「45歳なら世間では家庭も持って働き盛りだろうと。でも家と病院しか知らない息子を本当に不憫に思う。これから息子はどうなるのか、考えたら眠れなくなるので、考えないようにしています。唯一の贅沢は県北の温泉に入ってゆっくり湯船に浸かること。息子も気持ちがいいねって言ってくれるんです」と。再発させないように気を使っているが、せめて入院費の補助があれば、息子も年老いた自分に気兼ねをしなくていいのに、と思いを語られました。
 国がやるべきといつも言われますけど、市民にとってはどこがやってくれてもいいんです。いつも精神障害者は置いてけぼり。こういう障害者差別をなくそうと、広島市が率先して、国や県に働きかけて説得して欲しいと思います。

生活困窮者支援について

(近松さと子議員)
新型コロナの感染拡大の長期化の中で、失業や雇い止めによる生活が困窮する人が増えています。もう年度末になりますが、非正規労働者を中心に雇止めが増加するんではないかと心配されています。
 長年生活困窮者を支援してきたNPOの稲葉剛氏は、現下の貧困拡大に対応するために、生活保護の手前の支援策の実施と拡充、そして生活保護そのものを利用しやすくする改革が必要だということを強調されています。政府に対しても、こうした反貧困の運動の団体が両方の対策を求めてきたわけです。
 生活保護の手前の支援策としては、社会福祉協議会による生活支援福祉資金特例貸付も行われてきました。緊急小口資金と総合支援資金の貸付の利用者はそれぞれ7,332件、3,559件に上っています。これまで申請しても貸付まで数ヶ月かかって、使えない制度だと言われてきたんですが、今回は新型コロナの対応ということで、改善されて使いやすい制度になりました。
 ぜひコロナ後も、様々な理由で収入が減り、生活に困窮する人は出てくるので、このまま維持をしていただきたいと思います。広島市ではくらしサポートセンターに委託した住居確保給付金の支給事業を行ってきました。この制度の利用件数はどのようになっているでしょうか。

(地域福祉課長)
 令和3年1月末までで1,023件となっており、昨年度1年間における新規の支給決定件数24件を大幅に上回っております。

(近松さと子議員)
 この住居確保給付金の事業は、リーマンショックの派遣切りで仕事も住まいもなくした生活困窮者が多く生まれたことから、支援団体・運動団体が住まいを失わないように給付金をと国に働きかけて生まれた制度だと言いますが、今回それが役に立ったわけです。
 しかしNPO法人のキッズドアという団体の渡辺由美子理事長は、同団体が昨年秋から今年に行ったアンケートでは、家賃や光熱費などの支払いができなかったと答えたひとり親世帯は21%だったのに対して、二人親世帯は37%だったとして、二人親世帯の方が困窮度合いが高いと指摘をしています。
 児童手当以外の公的支援がほとんどなく、政府の貸付も借り切ってしまい、借りられないという人がたくさんいるとして、子育て困窮世帯はもう限界、こうした世帯への給付金を国に求めています。
 本市でも、住宅確保給付金の受給が12ヶ月という期限があるんですが、昨年5月に給付を受けた人は200人余りいるんですけれども、4月末で終了するということになるんじゃないかと思うんですが、今後これらの世帯はどのような見通しを持ってらっしゃいますか。

(地域福祉課長)
 国の制度で何回かの制度の拡充が行われまして、もともと9ヶ月であったのが12ヶ月という形で期間が伸びております。これは新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けての経済対策という形で、特例が更新・拡充されていると認識しております。
 今後の感染状況を踏まえながら、改めてどういった対応をとらえるかということについてわれわれとしても注視をしているところです。
 また住居確保給付金を受けている方の中には、失業者だけでなく、自営業とか収入が著しく減少した方が今回の特例措置として増えております。そのため今後の景気回復の状況においては、そういった自営業の方の収入が回復する可能性もあると思っております。
 一方で国の方としては、住居確保給付金等が終了した後で、その方々が困窮してる時にはくらしサポートセンター等の自立相談支援機関が適切な相談支援を行って、必要な場合は生活保護に円滑に結びつけていくということも合わせて行うようにという形で指示が下りております。

(近松さと子議員)
 国は生活保護があると言うんですけれども、昨日の質疑でも馬庭議員から指摘されている問題があるわけです。私も問題意識が重なってしまったんですけれども質問をさせていただきたいと思います。
 生活保護の申請は増えていないということを言われました。その背景を考えた時に、今の日本は先進国の中で、同じ所得でも生活保護の申請をする人が2割しかいないと。利用率・捕捉率というのが低いという問題があるんじゃないかと思うんです。言い換えれば、もっとも自己責任が問われる国とも言えると思うんです。
 今朝の中国新聞の社説を見ましたら、国が孤立・孤独問題の対策に取り組むというのは大変良いことだけれども、貧困や格差、孤独、自殺を自己責任として捉えず、格差など社会の歪みの表れだと言い続ける必要があるんじゃないか。自己責任論をまず脱せよということが書かれていました。 本当にその通りだと思うんです。それが最も典型的に表れている、生活保護の申請の妨げになっているのが扶養照会であるというNPOの調査結果が出ています。東京で、年末年始に相談に来た生活困窮者に、生活保護についてアンケートを取りましたら、生活保護を利用していない人のうち3人に1人が、利用していない理由に、家族に知られるのが嫌だからと言ったそうです。こうした支援団体が、3万人ぐらいネット署名を集めて厚労省に提出して、扶養照会の見直しを求めています。
 先日、50歳代の男性が共産党会派控室に相談に来られて、生活保護の申請に同行して欲しいと言われました。5年前に失業された方で、直接コロナと関連があるわけではありませんが、年齢に加えて新型コロナの影響で求人がなく、就職活動がうまくいかず、貯金も底をついたということで相談に来られたんです。アパートの隣人と世間話をしたら「生活保護は穀潰しだ」と言われ、ショックを受けて、一人で保護課に行くことはできない、一緒に行って欲しいということでした。
 福祉事務所に行ったら、扶養義務者を書く書類を見てブルブル震え出されました。「90歳の母親には連絡しないでほしい。心臓麻痺を起こす」と言われました。お姉さんがいるんだけれども、「こちらにも連絡してほしくない、家の恥だと罵倒される。連絡されるんなら申請を止めます」と。まさに扶養照会の問題を絵に描いたような話なんです。
 もう一度、扶養照会とはどんなことなのか、ちょっと説明していただけますでしょうか。

(保護担当課長)
 扶養照会は、国の通知に基づきまして、生活保護申請者の扶養義務者について、金銭的・精神的な支援の可能性について確認するために実施するものです。その手続きとしましては、生活保護の申請があった場合に、福祉事務所においてまず保護申請者から3親等以内の扶養義務者の存否及びその扶養義務者の職業・収入等について聞き取りを行い、扶養の可能性が期待されるものについて、保護申請者の了解を得たうえで文書等により扶養義務者に対して扶養の可否について問い合わせているものです。

(近松さと子議員)
 3親等以内の親族に金銭的な援助が出来ないか文書で問い合わせるというものですが、広島市の照会の状況を昨日馬庭議員に答弁されました。
 2019年度は2,068件照会を行って、82件が金銭的援助についてできると答えられたと。この率は4%ということです。
 国は、厚労省が国会で答弁をしたところを見ましたら、3万8千人に問い合わせをして600人が金銭的援助ができると答えていました。これは1.5%ということになるんですけども、同意しなければ保護の申請はできないんでしょうか。

(保護担当課長)
 扶養照会は、生活保護申請者に対する扶養義務者への扶養照会は保護に優先して行われるものとされておりまして、保護の決定の要件ではございません。同意しなければ保護が決定されないということはございません。

(近松さと子議員)
 金銭的な援助の金額なんですけど、実際は5千円とか1万円というのが多いとお聞きしましたが、どんな状況なんでしょうか。

(保護担当課長)
 令和元年度(2019年度)の実績で申しますと、金銭的な援助があった場合の平均的な月額は約2万円となっております。

(近松さと子議員)
 金銭的援助は生活保護費に上乗せをされるんでしょうか。

(保護担当課長)
 生活保護は、国が決めた、年齢とか家族構成に基づいた生活保護の最低生活費というものがございます。生活保護では補足の原理というのがございまして、その方が活用できる収入を全て活用して、不足する部分をお支払いするとなっております。
 議員がご質問されました生活保護費に上乗せになるかということですけれども、生活保護費に上乗せではなくて、最低生活費からこの方の得られる収入、援助が受けられる場合はその援助を差し引かせていただいて、残りの不足する部分をお出しするということになっております。

(近松さと子議員)
 福祉事務所から金銭的援助ができませんかと扶養照会があれば驚いて、自身の生活に余裕がない方でもわずかでもと仕送りをする場合があるかと思うんです。しかしそれは収入として認定されて、親族である生活保護者には渡らないということになります。
 扶養照会をめぐっては国会でも問題になったんですが、厚労大臣が「扶養照会は義務ではない」と答弁してるんですけど、これは具体的にどういうことなんでしょうか。

(保護担当課長)
 厚生労働大臣の発言は、生活保護法において扶養義務者による扶養は保護に優先して行われるものとされていますが、保護の要件とはされていないという旨のことを述べられたものと受け止めております。

(近松さと子議員)
 生活保護の決定を行う福祉事務所の側からすれば、扶養照会、親族が金銭的な援助をしてくれるかどうか調べてからでないと生活保護の決定ができないというわけではない、ということですよね。
 続けて聞きますが保護申請者からすれば、扶養照会は強制ではないということを確認させてください。

(保護担当課長)
 扶養義務者の扶養は保護に優先するものとなっており、要件ではありませんので、扶養照会が義務ということではございません。

(近松さと子議員)
 保護に優先するという言葉がわかりづらいところではあるんですけれども、3親等以内の親族に金銭的な援助を求める扶養照会ですけれども、そもそも扶養する義務というのはあるんでしょうか。また、援助が出来ますかという問い合わせに回答する義務というのもあるんでしょうか。

(保護担当課長)
 扶養する義務はあるのかというところですが、まず生活保護では、他の法律で受けられるものは優先してくださいというのがございまして、民法上の扶養義務の方を優先するようにというのがございます。
 ただし扶養義務の履行については、扶養義務者が扶養しますという意思を示さない限りは、生活保護の方で活用できるもの、すなわち要件とはなりませんので、扶養義務の履行が生活保護上義務かと言われますと、義務とまでは言えないということです。
 それから、扶養照会に対する回答ですけれども、こちらについても回答は義務ではございません。

(近松さと子議員)
 では、扶養照会をしない場合というのはどんな場合ですか。

(保護担当課長)
 扶養照会を要しない例としては、これまでは扶養義務者が70歳以上の高齢者や未成年者、専業主婦などの場合や、20年以上音信不通である場合、DV加害者である場合などが例示されていましたが、国から令和3年2月26日付で示された通知により、20年以上音信不通である場合が10年程度音信不通である場合に改められるとともに、扶養義務者に借金を重ねている場合や、扶養義務者に虐待を受けていた場合などが追加されました。

(近松さと子議員)
 扶養照会の範囲が定められたんですけども、この範囲以外の親族なら、金銭的な援助はできますかという文書を送ってもいいということにはならないのでしょうか。

(保護担当課長)
 扶養の可能性が期待される方について保護申請者の了解を得た上で、文書等により照会をさせて頂いておりますので、強引に照会するということはございません。

(近松さと子議員)
 2月10日、反貧困ネットワーク広島が扶養照会について広島市に要望書を出されました。毎月街頭で相談活動をされているので、比較的若い相談者が多いようです。
 一つの事例で言われたのが、30歳代の車上生活者の男性が、四国に住む母親から金銭的な援助を受けていたと。でも、もういい加減にしてほしいと言われて、これ以上家族に頼れないと生活保護を申請した。しかし扶養照会で家族に連絡が行くと言われて申請を取り下げた事例があったということが紹介されていました。
 扶養照会について、申請者の意向を尊重して運用しているということだったんですけども、そうでない事例が指摘されているんですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

(保護担当課長)
 その方については、扶養義務者への扶養照会を強引に行うということはしておりませんが、ご本人から生活保護を取り下げられたというふうに聞いております。その際に、やはり生活保護は最後のセーフティネットでございますので、扶養義務者との個別の事情を丁寧に聞き取って、その方に寄り添った支援ができるように、扶養照会のことについてはよくよく説明をさせていただくべきであったと考えております。

(近松さと子議員)
 もう一点、反貧困広島の方が指摘されていたのは、福祉事務所に保護の申請に行った際、現場のケースワーカーは援助が期待できるかどうかということではなく、扶養照会を機械的に行うように申請者に説明しているんじゃないかと懸念していました。
 さらに、その扶養照会に日時を要して、2週間以内という法定の保護決定までの期間が遅れるというようなことがあってはならないと指摘をされているんですけど実際どうなんでしょうか。こうした事例があるんでしょうか 。

(保護担当課長)
 扶養照会を機械的に行うように説明しているのかという点ですけど、ケースワーカーに対しては生活課長会、保護係長会議を通じて扶養照会における留意点について周知するとともに、ケースワーカー研修においても、扶養の義務の履行は要件ではないということは繰り返し指導しております。それから扶養照会に日時を要して保護決定が遅れるということは決してあってはならないことですので、この点についても研修等を通じて周知しているところですけれども、仮にもしこのような実態があるということでしたら、改めるように再度研修等を通じて周知を図ってまいります。

(近松さと子議員)
 この問題は現場の方にも徹底していただきたいと思います。
 最後に、生活保護の捕捉率が低いことの背景には、生活保護が恥であるという意識が広く行き渡っていることがあると思います。厚労省のホームページには「生活保護は国民の権利である」と明記してあります。改めてその事を広島市としても確認していただきたいと思うんですがいかがでしょうか。

(市長)
 わが国における社会保障制度のあり方と、家族制度、自分たちの家族をどこまで面倒を見るかという、憲法に規定された義務・権利の調整をどうするかということで仕組まれております。
 国会レベルで法律を議論し、扶養義務といったものも、個別の法律で家族を縛るようなものにしない中で、民法規定でお互い20210305_chikamatsuslideに家族を守りながら家庭生活を守りましょうという義務と、社会的な状況でそういったことができない中で、国が保護するというこの保護法の規定、この適用、個別具体的にどうやって当てはめるかということを現場で基礎自治体の職員はさせていただいております。
 そういった中で、もし家族の中で面倒を見ることができる方がいるのなら、税金という形で国がその方々を全面的に安易に保護するんではなく、出来る限り努力していただいた上で、国民の血税を使って助けると。それを実行してるわけです。それについて具体的な要件を個別事例をあげて確認されておりますけれど、職員としては今言ったような国の定めに沿って厳格に運用させて頂いてるということに尽きると思います。個別については今申し上げた通りです。よろしくお願いします。

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