議会での質問・答弁

2021年02月15日

2021年第1回 2月定例会・予算特別委員会 包括外部監査結果報告に対する質疑 中原ひろみ議員

(中原ひろみ議員)
 日本共産党市議団の中原ひろみです。会派を代表いたしまして、令和2年度包括外部監査結果報告について質疑いたします。
 この度の包括外部監査は、健康福祉局が所管している三つの扶助費に関わる事務の執行が監査とされました。
 障害福祉に関わる支援事業、生活保護事業、原爆被害対策事業について監査が行われ、その結果、各事業について1件ずつ指摘事項があり、3つの事業を通じて25件の意見が述べられております。
 指摘されているのは、自立支援医療費支給認定の確認手続きの徹底や、被爆者介護保険利用料助成を受けようとする事業者の登録に関する要綱の改正などです。包括外部監査により是正すべき点が明らかになったことは意義あることだと考えるものです。
 しかし、広島市皆賀園について監査人は「赤字が続くようであれば、市は設置主体として事業縮小により、人件費削減を検討課題とすべき」との意見を述べておられます。
 皆賀園は、障害者が自立した日常生活または、社会生活を営むことができるよう、必要な日常生活上の支援と就労の支援を行うことで、障がいがあっても地域で自分らしく生活するために不可欠な事業を行う施設として、市が障害者の福祉の増進を図るという行政責任を果たすため、設置主体となって整備した施設です。働く職員は高い専門性が必要であり、専門性に見合う人件費が手当されて当然だと考えます。
 そのような目的の施設・事業に対し、単体事業で黒字化を図れ、赤字なら事業縮小などと、効率ばかりを求める監査人の意見には賛成できません。監査人はこの事業の目的・意義、行政の果たすべき役割を理解しておられないのではないかと思う次第です。
 今回の包括外部監査は、扶助費に係る事務が対象になりましたが、外部監査人は扶助費を監査のテーマにされた理由を、次のように述べておられます。
 「扶助費は、地方自治体もその費用の一部を負担している。市の一般財源が伸び悩むなか、多額の社会保障関連経費を支出し続けることは財政への負担であろうと推察され、扶助費を始めとする社会福祉関連経費は将来の広島市にとっては対応を取らなければならない分野である」とし、「広島市の厳しい財政状況のなか、限られた財源の有効活用及び効率的な市政運営の実現に寄与するため」と述べ、監査の視点は、経済性、効率性、有効性に適合しているかどうかにおいたとされています。
 しかし、生活保護や障害者福祉は、日本国憲法が全ての国民の命と人権を擁護せよと国に求めている憲法に基づく制度です。一人も取り残さない社会を目指すうえでも、儲けがすべてに優先する新自由主義の考え方を社会保障分野に持ち込んだ監査には違和感があります。
そこでお聞きします。
 市は、監査人がいう「一般財源が伸び悩むなか、多額になる扶助費は財政負担が大きいから削減したい」とお考えなのか、それとも市民の命と暮らし、福祉の向上をはかるうえで不可欠な扶助費、社会保障費は最優先で確保する立場なのか市の基本的な考え方を最初にお尋ねします。

(健康福祉局長)
 高齢化の進展等にともない、社会保障費が増加するなど厳しい財政状況が続く中にあっても、福祉・子育て等の諸施策の充実などの、将来を見据えた取り組みはすます重要になっており、着実に推進していく必要があると考えております。生活困窮、介護、障害などの社会保障に関しましては、市民生活の安定に資する持続可能なものにすべきであることを基本に、国あるいは県の財政支援制度の積極的な活用や、介護予防等の費用の増加を抑制する政策の推進などにより、財源の確保を図りながら、引き続きその充実に取り組んでまいります。

(中原ひろみ議員)
 次に、扶助費の多くを占める生活保護費についてお聞きします。
 監査人からは、自動車の保有に関する文書指導の必要性について1件の指摘と資産調査の記録を残すこと、ケース記録表の改ざん防止の取り組み、生活保護申請書などの日付の確認、ケース診断会議の不正確な日付の解消など10件の意見が出ております。これらの指摘、意見は公平・公正な生活保護事務を行う上では改善されるべき指摘でありますけれども、市は今後どのように対応されるのかお聞きいたします。

(健康福祉局長)
 包括外部監査におきまして指摘または意見のありました事項につきましては、その趣旨を踏まえて、必要な改善等を行い、適切な事務執行に努めてまいります。

(中原ひろみ議員)
 今回の指摘や意見は多忙を極めるケースワークの結果ではないかと思うものです。長引くコロナ禍の影響で、失業者・生活困窮者が増え続ける中、生活保護制度は最後のセーフティネットとして果たす役割は大きいものがあります。菅首相も今国会の質疑の中で「生活保護は国民の権利だ」と改めて認めておられます。
 コロナによる事業縮小で、実質仕事を失った人は90万人にも上るとも言われる中で、今後生活保護制度を利用する市民も増えてくることが想定されます。
 今こそケースワーカーの多忙さを解消し、ケースごとに確実な対応ができるゆとりある環境にしてこそ、失念やヒューマンエラーをなくし、確実な生活保護事務が行えると考えますが、市はどのような認識でしょうか。
 現在、1人当たりのケースワーカーの平均的な担当世帯数をお聞きします。また、最高は何世帯を担当されているでしょうか。
 包括外部監査は、ケースワーカーが家庭訪問する際の個人情報漏洩防止の観点や、効率を高めるため公用のスマートフォンの配備も提案されております。
 ケースワークにおけるICT活用や、ケースワーカー増員で過重な担当世帯数を減らすこと、ケースワーカーの専門性を高めることで、一人ひとりの生活困窮者に応じたきめ細かで確実な事務が可能となるのではないでしょうか。市はどのようにお考えでしょうか。

(健康福祉局長)
 ケースワーカーの多忙さを解消し、ゆとりある環境にしてこそ、確実な生活保護事務が行えると考えるが、市の認識はどうか。現在、1人のケースワーカーの担当世帯数は何世帯か、最高は何世帯を担当しているかについてです。
 本市では、地域の実情等を踏まえた、より適切な保護事務を行うため、ケースワーカーにつきまして、国の定める標準的な職員配置のもとに、高齢者や母子等の世帯種別によるケースワーカーの業務負担を加味した独自の基準を設け、それに沿って配置をしております。
 令和2年12月におけるケースワーカー1人当たりの担当世帯数は平均で89世帯となっており、最も多くの世帯を担当しているケースワーカーは173世帯となっております。
 次に、ケースワーカーにおけるICT活用や、ケースワーカーの増員、専門性を高めることで、きめ細かで確実な事務が可能となると思うがどのように考えているかについてです。ケースワーカーの職務内容は、生活保護申請に係る相談面接や、訪問資産調査、保護費の算定、就労支援など多岐にわたっており、また、認知症やアルコール依存、引きこもり、家庭内暴力など多様化する生活保護受給世帯の状況に合わせて、必要となる専門的な知識・技能も多くなっております。
 本市では、これまでも職員体制の拡充や、制度運用面の観測による業務負担の軽減、職員研修による専門性の向上を図る取り組みを行ってきておりますが、こうした複合的な生活課題を抱える受給世帯に対して、ケースワーカーが就労支援や相談援助といった、自立につながる業務により、注力できる環境を整えていく必要があると考えております。
 このための方策として、生活保護の申請状況を踏まえますと、現時点でケースワーカーの増員といったことは考えておりませんけれども、包括外部監査人から意見のありました、タブレット端末等のICT機器の活用につきましては、ケース記録作成の省力化などの業務改善が期待できますことから、現場のケースワーカーの声も聞きながら、導入を検討してみたいと考えております。

(中原ひろみ議員)
 改めて、扶助費など社会保障関連の監査は、利用者の立場で制度が周知され、有効に利用されているかという視点が必要だと考えるものです。
 なぜなら、早急に解決が迫られている課題として、日本の生活保護の捕捉率、捕捉率とは、生活保護基準を下回る経済状態の世帯のうち、実際に生活保護を利用している割合を言いますが、日本の生活保護の捕捉率は約2割という低すぎる実態になっております。
 世界の捕捉率を見ますと、ドイツは6割、イギリスは5~6割、フランスでは9割に上ります。長年国民に植え付けられてきた「生活保護は恥」という意識や、親族への扶養照会、生活保護世帯へのバッシングが申請をためらう理由の一つになっております。
 国連の社会権規約委員会は、「恥辱のために生活保護の申請が抑制されている」と、日本の現状に懸念を表明し、「生活保護の申請を簡素化」すること、「申請者が尊厳を持って扱われることを確保する」こと、「生活保護につきまとう恥辱を解消する」手立てをとることを日本政府に勧告しております。
 1月28日の衆議院予算委員会では、生活保護申請をためらわせる要因の一つとなっていた扶養照会は「義務ではない」と厚生労働大臣も明言はしたところです。
 このような視点で生活保護業務の見直しを行うとともに、生活保護は国民の権利であることを広く知らせる広報活動を徹底し、必要な人がきちんと保護を受けられるようにすることこそ、生活保護行政に求められていると思いますが、市のお考えをお聞きをいたします。

(健康福祉局長)
 生活保護制度は、国が、生活に困窮するすべての国民に対して憲法に定める健康で文化的な最低限度の生活を保障するものであり、ご指摘の広報活動を含めた業務や制度の在り方につきましては、国民における公平性の確保の観点からは、国の責任において対応すべきであると考えております。本市と致しましては、生活保護の実施機関として、生活保護を必要とされている方がきちんと申請をできるよう、面接時に、制度の趣旨など丁寧な説明を行うなど、引き続き適切な対応に努めてもらいたいと考えております。

(中原ひろみ議員)
 確認させていただきます。社会保障費は充実させたいということでありましたし、持続可能な制度としたいという発言もありました。持続可能と言えばいいというのではなく、使って役立つ制度でないと意味はないんです。
 そのようにするためには、やはり財源が必要です。生活保護などは3/4が国ですから、国の果たす役割は不可欠ですけれども、やはり社会保障費が、今後貧困と格差が是正されるような政策がない限りは、どんどん進んで深刻になるんじゃないかと思っております。
 元々低い年金とか不安定な雇用ワーキングプアというのもありましたけど、やはり低賃金が貧困世帯を生んできました。その上、今回のコロナですから、今は持続化給付金とか、雇用調整助成金とか、小口貸付とかでなんとかやりくりできていても、この制度が終わった途端、皆さん干上がってしまいます。
 これまで以上に生活保護制度を利用せざるを得ない方が増える。そういう時にやはり必要な人がきちっと使えるようにしてほしいと思うわけです。そうなるとやはり財源です。
 私は広島市の依命通達とか財政運営方針を見ていつも辛い気持ちになるんです。なぜかと言うと、社会保障費の増加を抑制するっていう言葉がいつも書かれてるんです。社会保障費を抑制する、増加分を抑制すると書いてあるんです。そしたらもう増やさないってことじゃないですか。現実とは違うんじゃないでしょうか。増えていく社会状況の中で、やはりしっかり救っていくという立場であれば、やはり市としても国に財源の手当てを言いながらも、市もやはり社会保障費に最優先で税金を使うという立場が、どうしてもこれまで以上に必要だと思います。

(健康福祉局長)
 財源の問題でございますけども、生活保護費3/4は国費ということで、あと残りが自治体負担となっております。これらの生活保護事務は平成12年度の地方分権一括法の時に、法定受託事務ということになり、それ以降は基本的には国の制度に則って、全国の自治体が運用するという中で、財源の手当てもしっかりしてくれるということは、指定都市でも毎年要望しております。持続可能なものにするという意味でも、財源の確保は、先ほど国の財政支援といいましたが、積極的な活動によって必要な政策については実行してまいりたいと考えております。

(中原ひろみ議員)
 それから、ケースワーカーを増やさないとおっしゃいました。そんなにはっきり言って大丈夫ですか。現場のケースワーカーさんはショックなんじゃないですか。平均で89世帯、最高は173世帯ということでした。この173世帯のというのは、施設にいらっしゃる方を担当する、施設がたくさんある地域を担当するようなケースは、自ずとその世帯数も多いという説明も受けましたが、それにしても平均で89、約90世帯です。生活保護のケースワーカーは、大体標準的には60という記憶があるんですが、それと比べて広島市はこれでいいと思ってらっしゃるのか、そこの認識を聞きたいです。

(健康福祉局長)
 業務量に応じた配置ということになりますと、生活保護の申請自体はここ数年横ばい、あるいは減ってきているという事態がございます。そうした中でケースワーカそのものを動員するという関係にはございませんけども、生活保護のいろんなご相談の中に、年金であるとか、就業したいう方はいらっしゃいますので、ケースワーカーそのものは増員していませんが、例えば年金の相談員であるとか、就労の支援員とか、ケースワーカー以外の人員を配置して、そういう個別のご相談に応じるような体制を充実してきております。
 89世帯という平均でございます。これは平均値なので上下ございます。おっしゃるように高齢世帯とか施設に長期入院されてる方というのは、訪問の頻度が少なくなったり、支援する制度というのも限られてきますので、そういった意味で世帯数を多くなります。一方で、母子世帯のように子どもさんをお持ちで、仕事が終われば勉学上の支援が必要になるということになると、訪問の回数も増えてきますので、そういったご紹介する支援制度も多い中で、1人当たり母子世帯では64世帯ということで、89よりも少なくしており、業務実態に応じた形で配置しています。

(中原ひろみ議員)
 それから、やはり捕捉率をいかに上げるかということも緊急課題です。憲法25条で保障された健康で文化的な生活を送るという、これ以上の貧困世帯があってはならないという国の基準です。その最低ラインを下回らない、下回っている人は引き上げていく、ここに行政として大きな力を発揮すべきだと思います。
 そのためには広報活動や、様々なバッシングとか、生活保護が恥だという概念を払拭していく取り組みも大いに必要だと思いますが、どのようにお考えですか。

(健康福祉局長)
 これは生活保護に限らず、必要な支援・援助を必要とされている方に適切な福祉サービスを提供することは、生活保護に限らず基本中の基本だと思っております。ですから、広報活動はもとより、生活保護を受けられる前にいろんな自立支援のご相談をされる方はたくさんいらっしゃいますので、そういった初期の段階から丁寧なご質問に努め、必要な方は制度のサービスを受けられるようにしたいと思っています。

(中原ひろみ議員)
 そして何よりも、職場内で相談できる人間関係がどこの職場でも必要です。とりわけケースワークというような、いろんなご苦労を背負い込んだ皆さんに寄り添って、対応しようと思うと紋切り型ではいけません。「こんなケースあるんだけど、どうしたらいいだろうか」と、上司はもちろんですけども、同僚同士で相談できる、ホットな職場でないと、こういう人たちの対応をする職場では、能力が発揮できないと思いますがどうでしょうか。

(健康福祉局長)
 ケースワーカー職員の仕事面での相談ですけど、区役所に配置されるケースワーカーというのは比較的若い職員がたくさん配置されています。なかなかの仕事上のいろんな悩みを相談できるということは、ジョブトレーニングを通じながらというのが基本にはなりますけど、保護課の課長、係長あたりが目配りをしてくれています。われわれも研修を通じて、特に若手の職員が、知識も当然ですけど心のケアも含めてちゃんと業務に従事できるような体制をこれからも心配りしていきたいと思っております。