議会での質問・答弁

2020年09月25日

2020年第6回 9月定例会 辞職勧告決議案趣旨説明・提出理由 中森辰一議員

沖宗正明議員
石橋竜史議員
木山德和議員
木戸経康議員
豊島岩白議員
藤田博之議員
伊藤昭善議員

各議員の辞職勧告決議案

藤田博之議員による決議案に対する反対討論


決議案第29号、沖宗正明議員に対する辞職勧告決議案について、提案者を代表して趣旨説明を行います。まず、案文を朗読します。

 これから、本決議案を提案した理由を申し上げますが、それに先立って、今回は7件の提案を行いますが、こうしたことを行うことついての、私たちの考え方の基本を述べておきます。以下申し上げることは、本議会で辞職勧告決議を提案する7件に共通することです。

 第一に、わが国では、公職選挙法で、厳格に選挙活動期間が定められ、様々な禁止規定があり、候補者や支援者が、有権者と時間をかけて存分に政策を訴え意見交換することができません。諸外国では、この点は自由で、我が国も大いに改善すべきだと考えています。
 ただし、票を金で買う買収だけは、世界共通で禁止されています。しかし、わが国では政治と金にまつわる疑惑が数限りなく引き起こされ、選挙に関わっても、カネにまつわる疑惑が繰り返され、また買収として摘発されたものもあります。それが有権者の政治不信を広げる原因にもなってきたと思います。
 公職選挙法では、第221条に、明確に選挙買収を禁止し罰則を科す条項がありますが、それと共に、第199条では寄付行為の禁止というものもあります。
 現金を受け取られた方の中には、政治資金収支報告に寄付として記載したと言われる方もありますが、今回の河井被告夫妻の場合は、個々の議員個人に対して現金が提供されているのであり、裁判での検察側の意見陳述でもそのように述べています。公職選挙法の買収についての規定や寄付についての規定を読むと、様々な逃げ道が用意されているように見えるのですが、それを活用して刑事罰の適用を免れる、現実にはありうるし、これまでもたくさんあったのだろうと思います。

 しかし、選挙に関わって金をばらまいたり、受け取ったりする行為は、それが結果として罪を逃れることができたとしても、そのようなことが横行することは、「清き一票」と言われる、たった一つしかない投票の権利を行使し政治参加するという民主主義の根本にとって、極めて有害であり、一票の権利を行使するしかない一般有権者にとっては、政治への関心を失わせ、諦め、投票の権利を放棄することが広がるといった事態を招きます。
 とりわけ、有権者の負託を受けて活動する我々議員たるものは、そうした行為に対して、たとえ、法律上は罪に問われるまでにはいかない範囲であっても、敏感に反応し、そのような行為を厳しく退ける姿勢が求められているものと考えます。

 第二に、今回の河井被告夫妻による選挙買収事件では、要は、河井被告夫妻の側が持参した現金を受領したのか、受領を明確に拒否されたのかどうか、が評価の分かれ目だと考えます。 もう一つ言えば、この問題が発覚したのは、市民が検察に刑事告発を行った結果です。今回は決議の対象としていない方々も含め、13人の議員の誰一人として、現金を持参した河井被告側の重大な違法行為を、今日に至るまで何ら通報することなく、見逃してこられた。このことも、法に基づいて行政を監視する立場の議員として重要な点ではないかと考えます。
 日本国憲法前文では「国政は国民の厳粛な信託によるもの」と謳っています。国政を広島市政に、国民を広島市民に置き換えればいいと思います。市民の政治に対する信頼を維持することは、我々市議会議員に課せられた重要な責務です。
 従って、議員としての資格にかかわる事柄、今回は公職選挙法違反ですが、で疑惑を持たれた議員は市民に対して十分な釈明ができ、疑惑を晴らすことができなければ、自ら責任をとって辞職するべきです。これは、刑事責任が明確になるかどうかとは別次元の責任です。

 第三に、今回の買収事件で、河井被告側から現金を受け取った疑惑を指摘された人がおよそ100人もいる、その中で40人が首長や地方議員だということが報道されて、多くの有権者、市民の憤激を呼んでいます。その中に広島市の議員が多数含まれていることは、本市議会にとっては極めて重大で不名誉な事態です。
 検察の判断はともかく、公職の議員には政治的、道義的責任というものが、常についてきます。議員たる資格について、私たちの考えを案文の中で指摘させていただきました。今回の事態を受けて、改めて議会の議員がどのような行動をとるべきかを考えなければならないと思います。
 また、疑惑を持たれた40人の政治家のうち、すでに、疑惑が明らかになってすぐの時期に辞職された、当時の安芸太田町長さんを筆頭に8名の方が、政治的、道義的責任から辞職されている中で、13名もの疑惑議員を抱えた広島市議会がどのような行動を行うか、有権者・市民の皆さんからは厳しい目で注目されているところです。
 もとより、辞職勧告決議案には、法的拘束力はありませんが、今回の問題に対する広島市議会の意思を示す機会が必要だと考え、このような決議案を提案いたしました。

 沖宗正明議員についてですが、沖宗正明議員は、2回にわたって河井被告から現金を受け取ったことを認めておられ、その趣旨も選挙のためであることを認識しておられたということです。記者会見で、起訴されれば辞職の方向へ、ということも述べておられますが、法違反を認められた以上は、辞職されるべきであると考えます。
 同僚議員のみなさんの、ご賛同をお願いいたしまして、趣旨説明といたします。


 決議案第30号、石橋竜史議員に対する辞職勧告決議案について、趣旨説明を行います。まず、案文を朗読します。

 本決議案の提案理由についてですが、石橋竜史議員は、記者会見でみずから河井被告からの現金の受け取りを認められました。この金が、公職選挙法上、受け取ってはならないものであることは、議員はご承知であり、だからこそ、無理やり押し付けられたとの趣旨を述べておられます。
 しかし、決議案で述べましたように、議員は不正に対しては断固たる態度をとることが議員たる資格として求められるのであって、相手がどのように大きな力を持ったものであろうと、この度のように違法な金を渡そうとした相手に対しては、違法性を指摘、厳しく抗議し、不正な金は受け取らない態度を貫くことが求められます。議員になるにあたっては、そういう覚悟が求められるのであると考えます。それができなかったということは、大きな力を持った者による違法・不当な行為に屈したということです。
 その場では、無理やり押し付けられたにしても、直ちに返金したわけではなく、市民団体の刑事告発によって、このことが明らかになって問題になった後、最近になって金を返したからそれでいいということにはならないと考えます。また、議員は後援会の力を借りて当選されたのでしょうが、後援会から負託されたわけではなくて、石橋議員の場合は広島市安佐南区の有権者から負託を受けて議員になっておられるのですから、後援会が良しとしたからそれで良しとはならないのだ、ということもよくお考えになるべきだと思いますので、この点も重ねて申しあげておきます。
 これは、有権者・市民から負託を受けて活動する議員の資格が問われることであり、一旦は辞職されるべきものであると考え、本決議案を提案しました。
 ご賛同をお願いして、提案説明とします。


 決議案第31号、木山德和議員に対する辞職勧告決議案について、趣旨説明を行います。
 まず、案文を朗読します。

 本決議案の提案理由についてですが、木山德和議員は、河井被告夫妻が公職選挙法違反の買収の罪で起訴された裁判で、検察によって、河井被告側から買収された者の一人として名前があげられましたし、議員自身が河井被告側からの金を受け取ったことを認めておられます。
 そもそも、公職選挙法は、自らが出席する結婚式での祝儀と葬儀及び葬儀までに自ら持参する香典等を除き、どのような名目によるものも自分の選挙区内での寄付を禁じています。さらに、選挙に関わっての金銭等の授受は、金額の多い少ないによらず、買収行為として厳しく罰せられることは、決議案の通りです。
 公職選挙法第221条第1項の買収についての規定では、違法とする金銭の授受の時期は書いてありません。木山議員に現金が提供された時期には、すでに河井案里氏は4か月後に実施される参議院選挙で広島選挙区への立候補を表明しており、自民党の候補が二人とも当選するには、相当に厳しい選挙が予想されていたことは、私ども、自民党でないものを含めて選挙に関心のある人なら誰でも知っていることです。その候補者や候補者の夫が、選挙を前にした時期に、特定の個人に30万円もの金を渡そうとすること自体、選挙のため以外に考えようがありません。
 その金をいったんは受け取られたわけですが、広島選挙区内の有権者であり、中区の中で影響力を持つ人物個人に対する寄付であることに間違いはなく、また、その金をどのように処理したかに拘わらず、買収の意図を持った違法な金がきれいになるわけではありません。
 河井案里氏が参議院選挙の候補者となったとき以降、どの時期でも候補者と金銭の授受があれば買収に問われると考えなければなりません。河井被告の公判で検察側が、河井克行被告が、「選挙情勢が非常に厳しいものとなると予想した」ことから、「被告人案里への投票及び投票取りまとめなどの選挙運動を依頼するとともに、その報酬として現金を供与することとした」と述べていますが、そのような意図があると、当然考えるべきであったと思います。
 そのような金を受け取ったわけですから、被買収との疑惑は当然です。他の議員について申し述べてきた通り、これは、議員の資格が問われるものと考えますので、辞職勧告決議を提案しました。
 ご賛同をお願いして提案説明とします。


 決議案第32号、木戸経康議員に対する辞職勧告決議案について、趣旨説明を行います。まず、案文を朗読します。

 本決議案の提案理由についてですが、木戸経康議員は、マスコミの取材に対して、河井被告側から提供された金を受け取ったままになっていることを明らかにしておられます。また、参議院選挙応援の意図を感じられたと述べておられます。
 このことは、この金が違法な金であると自覚しておられたということでしょう。政治資金収支報告書に寄付として記載しようと、買収の意図を持って提供された金が正当な金に変わるわけではありません。現金を検察に提出されたとのことですが、政治資金収支報告書に寄付として記載したとも表明しておられ、河井被告側に返却したわけでもなく、このことは河井被告側からの買収に応じたままであるということです。
 これは、議員の資格を問われるものと考えます。他の理由は案文とこれまでに述べたとおりです。
 ご賛同をお願いして提案説明とします。


 決議案第33号、豊島岩白議員に対する辞職勧告決議案について、趣旨説明を行います。まず、案文を朗読します。

 本決議案の提案理由についてですが、報道によると、豊島岩白議員は、河井克之被告から2度に渡って合わせて50万円を受け取られたことを認めておられます。これまでに、他の議員に対する決議案や提案理由で述べたように、当選が極めて困難な選挙情勢の下にある当該候補者の側が、どのような名目であるかに拘わらず、その選挙を4か月後あるいは翌月に控えた時期に、20万円、あるいは30万円というまとまった現金を選挙区内の特定の個人に持ってくることは、極めて異常なことであり、選挙のためとしか考えられないものです。
 また、買収の意図を持った金を、自分の選挙資金として収入に繰り入れても、違法な金がきれいな金に変わるわけではありません。仮に、公職選挙法上は合法だとすることができても、市民の不信を解消できないものと考えます。
 また、豊島議員は、6月に受け取られた金を今年の7月に現金書留で返金されたそうですが、違法な現金提供が行われてから1年以上経ってなお、その金を保有しておられたということは、河井被告側にとっては、被買収者になったということにほかなりません。しかも、今年の7月ということは、市民団体の告発によって大規模な買収事件が発覚した後であり、発覚しなければ返金もしていなかった可能性を否定できないでしょう。
 疑惑を指摘されて、その疑惑を晴らせる説明ができなければ、付託を受けて活動する議員として、責任を取るべきであると考えます。それは法律による刑事訴追があるなしに拘わらず、公職にある政治家としての政治的、道義的責任を果たすかどうかということです。
 私どもは、豊島議員がとられた行動は、残念ながら、議員の資格を問われるものと考えます。他の理由は案文とこれまでに述べたとおりです。
 ご賛同をお願いして提案説明とします。


 決議案第34号、藤田博之議員に対する辞職勧告決議案について、提案者を代表して趣旨説明を行います。まず、案文を朗読します。

 本決議案の提案理由について申し上げます。藤田議員は、マスコミの取材に対して、河井被告夫妻による選挙買収での現金の受領を否定しておられましたが、実際に裁判が始まり、検察によって被買収者の名簿が明らかにされると、一転して受領を認められました。そして、受領した現金は受領したままで返金もされていないことも明らかにされました。検察に渡されたということは、その現金の違法性を認識しておられたということでしょう。
 このようなことは、有権者・市民に対して不誠実であるとの批判を免れないでしょう。
 河井被告の裁判で検察側が明らかにしたところでは、藤田議員に対しては3月下旬ごろと6月1日に河井克行被告が現金を持参したとしています。ひと月後に参議院選挙を控えた候補者の夫が、河井克行氏自身の選挙区とは関係ないところに住む個人にわざわざ金を持参するのは、極めて不自然で、どのような名目であろうと、妻である候補者への選挙に関わるものであることは、容易に察せられることです。
 長年に亘って議員として活動され、公職選挙法にしても熟知しておられたはずの方が、違法な金であると、お考えにならないわけがないと思います。だからこそ、中国新聞の取材にお答えになったように、一旦は断られたわけですし、返そうとされた、ということでしょう。しかし、違法な金だと考えられたとしても、違法性を厳しく指摘され、直ちに返却されなかったことは、結局、違法な行為に加担してしまわれたというほかありません。
 繰り返しになりますが、私たちは、選挙を通じて負託を受けて活動する議員の、有権者、市民に対する政治的、道義的責任というのは、司法による訴追などの処置とは別次元のものであると考えます。
 司法の判断とは関係なく、一旦は職を辞され、さらに議員活動復帰を望まれるなら、改めて信を問う、という態度が求められているものと考えます。
 以上の理由で、辞職勧告決議を提案しました。
 ご賛同をお願いして、提案説明とします。


 決議案第35号、伊藤昭善議員に対する辞職勧告決議案について、提案者を代表して趣旨説明を行います。まず、案文を朗読します。

 本決議案の提案理由について申し上げます。伊藤議員は、河井被告の裁判で検察によって被買収者の名簿が発表されたあとの中国新聞の取材に対して、河井被告側から提供された金について、参議院議員選挙に関わるもの、妻を頼むという趣旨であると思われた、2回にわたる現金の提供について、2回とも拒んだが押し切られた、返す機会を逸した、国会議員との力関係で逆らえなかった、といった趣旨のことを述べておられるようです。
 受領を拒まれたことは、受領すれば法違反に問われる可能性があることを認識しておられたということだと思います。違法な金であることを認識しておられたにもかかわらず、政治的な力関係で、ご自分より強い力をもっている人物に逆らうことができず、結局、違法な金を受け取ってしまわれたということのようですが、それは、買収されたということにほかなりません。公職選挙法では、被買収も厳しく追及され、有罪なら一番軽い量刑でも公民権停止、議員を失職することは、決議案で述べた通りです。
 負託を受けて活動する議員の行動のあり方については、すでに繰り返し申し上げたところですが、伊藤議員は、議員の失職に値する法違反を認識しておられるわけですから、少なくとも現在の議員の職責とは両立しないと考えます。
 まずは、辞職され、さらに議員としての活動を望まれるなら、改めて有権者の信を問われるべきであると考えます。
 以上の理由で、辞職勧告決議を提案いたしました。
 ご賛同をお願いして提案説明といたします。

※いずれも賛成少数(日本共産党・近松吉瀬中原中森藤井、改革ネット・馬庭桑田、創生クラブ・碓井)で否決

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