議会での質問・答弁

2020年06月19日

2020年第4回 6月定例会 議案討論(基本構想・基本計画) 中森辰一議員

(中森辰一議員)
 日本共産党市議団を代表して、第68号議案、広島市基本構想の改定案、及び、第69号議案、第6次広島市基本計画案について、討論を行います。
 提案された新しい基本構想案と第6次基本計画案は、従来のものにあった大型開発事業推進路線がより一層重要な方針として構想と計画の基本に座っており、市民生活優先の施策という、自治体の、本来もっとも重要な施策の推進を阻害する要因を抱えたままになっていると考えるので、反対とします。
 それ以外にも、3点の重要な問題があると考えますので、以下、4点について、具体的に指摘しておきます。

 第一に、持続可能な開発目標、SDGsが各施策に関連付けられていますが、その中でも、今の人類社会にとって最も重要な気候変動による危機を解消するという視点が弱いという問題があります。
 地球環境の変質という問題の中でも、特に地球温暖化による気候変動が引き起こす被害は世界中で深刻な事態をもたらしており、当のわが広島でも度重なる集中豪雨による深刻な災害が繰り返されてきました。
 気候変動の問題は、まさに、人類社会が将来にわたって存続できるかどうかを左右する最も重大な課題の一つであり、広島市民を含めて全世界的な、緊急に解決を迫られている課題です。
 その点では、SDGsが掲げる持続可能な開発目標にとって最も重要な解決すべき課題として、その土台に位置づけられなければならないはずです。
 しかし、この課題が基本計画の中でふさわしい位置づけがなされているとは言えず、クリーンエネルギーへの転換と気候変動への対応として、3つの章に関連付けられているだけです。この課題は、広島市の街づくりの取り組みのすべての分野で位置づけられるべきで、そうなっていないというのは、この課題への、これからの広島市の本気度が問われる問題で、抜本的な修正が必要です。
 第二に、SDGsの中でも、ジェンダー平等の課題はすべての人にとっての公正な社会を築くうえで、きわめて重要で欠かせない課題です。特にジェンダー格差が大きく、この課題で諸外国の水準から大きく遅れている我が国の社会では重要であり、広島市でもその克服は国際都市を標榜するからには極めて重要です。基本構想の中で、平和都市の条件として示された市民生活の安寧はすべての市民にとっての公正性が土台になければならず、ジェンダー平等の実現はその土台にとって不可欠な要素です。したがって、ジェンダー平等の実現の課題は、市行政のあらゆる施策の基本に位置づけられるべきものです。
 そういう観点からみると、基本計画の中でSDGsの17項目のうちジェンダー平等実現の課題は3か所でしか関連づけられておらず、この基本計画では、この課題を1分野の問題と考えていることが読み取れます。第1章から第6章までのすべてにおいて、つまり国際平和文化都市広島の街づくりのすべてにおいて、このジェンダー平等の実現という課題がしっかりと座っている必要があり、この基本計画はそういう観点で大幅に修正するべきです。
 今後そうした考え方で広島市が施策を考えていかれることを求めておきます。
 ただし、そもそも、SDGsについては、広島市は行政ですから、全面的に取り組む必要がありますが、17の目標が市の施策と関連があるかどうかではなく、169のターゲットについて、一つ一つ広島市の施策や実態を点検したうえで、必要なもの、不十分なことや欠けていることを、行政上の課題にあげて取り組むのでなければなりません。
 ところが、広島市のSDGsの掲げ方は個々の市の施策が、結果としてSDGsの目標と関連があったと示しているだけで、SDGsの個々の目標うに新たな行政課題として取り組むということになっていません。質疑で指摘されたように取り組み方が逆になっています。これではSDGsに取り組むことにはなりません。地球温暖化問題もジェンダー問題も表面的で中途半端になっているのはここに問題があると考えます。この問題を指摘し、改めて、SDGsに正面から取り組むことを求めておきます。
 第三に、核兵器廃絶への取り組みは、広島市の使命であり、それに関わる課題は当然掲げられています。3年前、核兵器禁止条約が国連で採択されました。これは、広島市が世界中の核兵器廃絶を求める市民運動と連携しながら取り組んできたことによる極めて重要で画期的な成果です。ところが、基本構想でも基本計画でも、このことへの評価について一言も触れられておらず、これでは、世界中の核兵器廃絶運動にとっても問題があります。
 この成果は、同条約の前文にある通り、広島と長崎の被爆者の皆さんが放射線障害による病気を含めた様々な困難を押して、長年に亘り、粘り強く世界中に核兵器の非人道性と、二度と使ってはならないと訴えてこられたことが世界を動かしたのであり、同時に広島市の多年にわたる訴えを含めた世界中の市民運動が諸国の政府を動かして条約を実現したのです。今後、世界でこうした人々の輪を一層広げていくことが重要です。
 そのためにも、どのようにしてこの条約の実現に至ったのかを跡付け、評価し、それとの連携を一層強化していくという立場が欠かせません。
 基本構想・基本計画では、核兵器廃絶をめぐる後ろ向きの動きが強調されているだけで、ここまで盛り上がってきた世界中の運動や世論の高まりと条約そのものへの評価が一言もないというのは、この文書を起草した人たちは、そういう認識を持っていないということでしょうか。これでは、核兵器廃絶への展望を見出すことはできません。これまでの日本と世界の運動の評価と、それらの運動との一層の連携、これはぜひとも言及すべきです。
 また、「核兵器禁止条約」という文言自体が、いまだ発効していないという評価のところと、発行をめざすとするところの2か所出てくるだけです。
 現在までに同条約を批准したのは38か国までになりました。この条約に署名した国の数は81か国であり、賛成した国と地域は122に上ります。米国、ロシア、中国をはじめ核兵器を保有する大国は、その大きな経済力と政治的影響力を使って、この条約を採択の段階から葬り去ろうとしてきましたし、この条約が発効するのを阻止しようとしてきています。日本政府がその尻馬に乗っているのが、情けないし歯がゆい限りですが、これらの国々はしきりに、条約が発効しても核保有国が参加しない限り条約の実効性はないと言いつのり、条約の意義の否定に躍起です。しかし、このこと自体が、条約が発効し、核兵器の保有が国際法違反となる事態が、核保有国にとっていかに困ることであるかの証拠です。
 同時に、核保有国を核兵器禁止条約に参加させる力にしていくためにも、批准国が発効基準の50か国になることをめざすだけではなくて、賛成した122の国と地域すべてが批准し、国連加盟国の中で圧倒的多数になるようにめざすべきです。核不拡散条約第6条に、核保有国の核軍縮への誠実な努力を義務付けていることからわかるように、核兵器保有国にとっても、日本を含めた核の傘のもとにある国々にとっても、核兵器の存在は人類の普遍的な道徳に反するということは認めざるを得ないことであり、核兵器を持つことは後ろめたいことなのです。条約への参加国をどんどん増やしていくことによって、核兵器廃絶への展望が開けてくるものと考えます。
 こうしたことが抜け落ちているのは大変問題です。なお、先日の本会議で、平和首長会議の次のビジョンについて、3つの項目を目標として掲げるということが答弁で示されましたが、重要な成果である核兵器禁止条約を足場にして、急速に批准国を増やし、国連加盟国の多数派にしていくために、どのように取り組むかという、核兵器廃絶への展望を切り開いていく積極的で能動的な活動方針が必要だと考えます。被爆者の皆さんにとって、あと10年がギリギリでしょう。重要な10年になると考えます。そうした展望を示して積極的に取り組んでいくのが平和首長会議の使命であろうと考えますので、あえて、申しあげておきます。
 第四に、今回の基本構想・基本計画では、200万人都市圏構想を掲げ、その中心都市としてだけではなくて中国地方の中枢都市として、広島市の都市機能を大きく高めていくことと共に、外から企業と人を集めることができる都市をつくるということが、全体の基調となっている問題があります。
 都市機能を高めていくというのは、いま推進されている様々な大型開発事業を進め、さらにそのあとにも次々と巨大開発の計画が打ち出されてくるということでしょう。そのために、広島市のヒト、モノ、カネを優先的につぎ込んでいくことになれば、当然、街づくりの上で市民生活の改善、充実へのヒト、モノ、カネの配分はしわ寄せを受けざるを得ません。そこに、しきりに「自助」「共助」が優先され、強調される理由があるのでしょう。
 しかし、都市は市民あってのものです。広島市は広島市民の暮らしの向上があってこそ発展していきます。広島市で、観光客が集まってくるから広島市が発展するというのはごく一面的な問題です。生活している市民が安心して暮らせている状態があるからこそ、そうした生活者の生活を支え、より豊かな生活のためにと、様々な事業者が集まってきて都市の発展を形づくっていくわけです。本来、そうした市民生活の根本を支えるために、税金を徴収しているわけですから、そもそも税金は市民生活をよりよいものにするために優先して使われなければなりません。広島市では、そういうことを無視して大型開発事業を優先してきたことが巨額の借金を抱え、財政の硬直化を招いてきたことを、繰り返し反省する必要があります。
 新基本構想案・第6次基本計画案では、地方行政のそもそもの根本が間違っていると考えます。
 広島市を中心に24の市町で都市圏を構成し、広島市が中枢機能を高めるんだとしていますが、そもそも、この枠組み自体が、地方に対する国の財源削減を意図したものにほかなりません。広島市だけではなく他の23の市町が、それぞれ独立して発展していくことを考えるなら、それぞれの市町の住民がそれぞれの地域で引き続き安心して住み続けられるための都市機能を十分維持できるような取り組みが必要です。ただ広島市だけが都市機能を高めればいいということではありません。個々の市町が役割分担するといった答弁もありましたが、それぞれが相当に広い地域を抱えている中で、役割分担など極めて限定的とならざるを得ません。そういう中で、広島市だけが都市機能を高めれば高めるほど、周辺の市町から人口を引き寄せる力が働くことになって、逆に、周辺市町を衰退させることになってしまうでしょう。24の市町が共助、助け合うのだと言うなら、政府に対して、地方が自立できるだけの財源を出すように、一緒に厳しく要求するべきです。
 個々の小さい自治体は効率が悪いからフルセットの行政は困難だという議論自体が、地方の自立を阻害する考え方です。私たちは、こういう政府の理不尽な地方いじめのやり方を肯定する考え方自体に反対です。
 さらに、この文書は新型コロナの問題が起きる前につくられたものです。感染症拡大にかかわる文章が追加されてはいますが、それだけで済む問題ではありません。新型コロナへの対応という問題では、私たちも市の取り組みについていろいろと批判もしましたが、多くの市民、中小企業、中小事業者のみなさんが健康の問題を含めて、苦しめられ、今なおその最中にあります。これまでの考え方でいいのかどうか、行政のあり方や街づくりのあり方について、再度検討しなおすことが必要だと考えます。
 今回のパンデミックが終息しても、今後も新たなパンデミックが起きる可能性が指摘されていることと合わせて、いま、世界中でコロナ後の社会のあり方をどうするか、これまで通りではなく、変えなければならないという議論が始まっています。生活のあり方の見直しが呼びかけられていると共に、テレワークの推進によりオフィスの規模の見直しも言われているのに、大規模オフィスを増やす考え方には違和感があります。社会のあり方の見直しが言われているのに、相変わらず、市民生活分野は効率優先で自助・共助を押し付け公助は削減、一方では大規模開発優先という方針で変わらないということでは、コロナ後のことについて何も考えていない、考える気がないということです。
 基本構想・基本計画は、今後10年以上にわたる広島市の行政の基本方針を決めるものですが、コロナ後の地域社会について何ら検討もされていない今回の基本方針には、反対する以外にはありません。

 以上で、討論とします。