議会での質問・答弁

2020年06月08日

2020年第4回 6月定例会 報告に対する質疑 中森辰一議員

広島地下街開発株式会社について(法人の経営状況報告第11号)
(中森辰一議員)
 報告書が提出されている各法人のうち、広島地下街開発株式会社について伺う。

1.広島地下街開発株式会社が、シャレオを開業して来年で20年になる。当初の甘い見通しから工事が計画通りにいかず、工事費が大幅に増えたり、見込み通りの売り上げを上げることができずに、開業当初から赤字基調で今日まで運営されてきた。
 もともと、広島の経済界が言い出した事業であるにもかかわらず、まともな経営になりそうにないと見るや、その付けをすべて広島市に、つまり広島市民に押し付けて、最終的には広島市がすべての損失補償を行うという枠組みをつくってしまったことを、私たちは厳しく批判した。
 事業報告書の個別注記表には、債務超過が続いており、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しております。」としており、存続が危ぶまれる厳しい経営状態のままである。このシャレオの事例は、現在進行中の、あるいは新たな、様々な開発事業を構想するにあたっての重要な教訓としなければならないと思う。
 開業後、およそ20年になろうとする今なお、造ったはいいが、存続の危機の状態が続いていることについて、市として、どのような教訓を得ているのか、伺っておく。

(経済観光局長)
 本市の都心部に立地している紙屋町シャレオは、魅力あるまちづくりの推進や安全で快適な市民生活を確保するといった都市機能と交通機能を兼ねる、極めて公共性の高い施設であり、本市として、この重要な施設を健全に運営していくことが非常に重要であると考えています。
 こうした考えのもと、広島地下街開発(株)の経営基盤を長期的に安定させ、今後も、紙屋町シャレオが多くの人々に、安全で快適な魅力ある空間を提供し続けられるよう指導していくことが、本市の役割であると考えています。

(中森辰一議員)
2.次に、事業報告では、昨年度は、テナント売上高は前期比19.6%減となったとしている。そのために家賃収入は減少したが、広告収入の増加とコスト削減の努力で、経常利益を1100万円出したとしている。
 報告書には、本業の収入である家賃収入がいくらで、前期比でどれだけ減少したのか、広告収入がどれだけで、前期比でどれだけ増えて、どう家賃収入の減をカバーしたのか、コストのどこをどう削減したのか、数字が示されていない。これではまともな経営報告とは言えない。これらの数字を明らかにしていただきたい。
 それから、本業にかかわるテナントの売り上げを、前期比でおよそ2割も減退させているということは、そもそもの地下街の存在意義にかかわる問題が深刻になってきているということだ。このことをどのように受け止め、今後にどのような展望を持っているのか、伺う。

(経済観光局長)
 令和元年度の家賃収入は、5億7,426万円で、前期比マイナス3.0%(▲1,772万5千円)、広告収入については、4,364万5千円で、前期比プラス 47.3%(+1,400万6千円)となっています。
 コストの削減額については、人件費1,299万8千円、光熱水費755万9千円などです。
 令和元年度のテナントの売上高は、49億5,108万7千円で、前期比19.6%のマイナスとなっていますが、この主な要因は、近隣商業店舗の建替え完了に伴う仮店舗の退店に加え、軽飲食や生活雑貨を除いて売上の不振が続いていることにあります。
 広島地下街開発では、今後、低迷が続いている衣料品を始めとする物販の売上げを向上させるため、昨春の開始以来、順調にフォロワーが増加しているインスタグラムや、今期から開始するLINEを活用し、「セール企画」や「おすすめ商品」のタイムリーな情報発信に店舗と一体となって取り組むこととしています。
 さらに、常設のストリートピアノ「紙屋町まちかどピアノ」を活用した新たな来街者の獲得や、店舗誘致期間中の空き区画を利用した期間限定の出店など、より一層紙屋町シャレオヘの注目度を高めるため、様々な取組を展開することとしています。

(中森辰一議員)
3.開業以来、これまでの19年間、ずっと厳しい状況が続いてきた。テナントの売り上げが低迷して定着しないことが一番の問題だったと思うが、何が原因だとお考えか、認識を伺う。また、報告書や計画書に掲げてある課題に取り組めば、そうした問題の解決につながるのか、見解を伺う。

(経済観光局長)
 テナントの売上げの低迷は、主力商品である衣料品の売上げが全国的にも低迷していること、大型商業施設の新規出店・増床に伴い施設問競争が激化していることなどが主な要因であると聞いています。
 このため、広島地下街開発(株)としては、経営状況報告書に掲げているように、魅力的で集客力のある店舗の誘致や、SNSの活用による情報発信の強化、誘客のための魅力的なイベントの企画に加え、地上からの誘導サインの設置、来街者が利用しやすい店舗案内サインの改善など、ソフト・ハード両面の様々な取組を組み合わせ実施することにより、誘客促進を図っていくこととしています。

(中森辰一議員)
4.次に、会社の現況に関する事項のところで、我が国の経済環境について、「引き続きゆるやかな回復基調にあり、個人消費も持ち直しの兆しはあるものの、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う自粛要請の影響が懸念される状況にあ」る、との認識が述べられている。
 その認識をもとに、いろいろ対処方策が述べられているが、新型コロナの問題は、予期しない問題だったが、これの終息には数年かかるとの見方が多い。これにかかわる経済への悪影響自体が、少なくとも1年程度では解消しない可能性が大きい。この点について、どのような認識か、伺っておく。

(経済観光局長)
 新型コロナウイルス感染症の影響により、紙屋町シャレオにおいても、店舗の休業や営業時間短縮などが実施され、4月及び5月の売上げは減少し、6月に入って売上げは徐々に回復しているとのことですが、早期の回復は見込めない状況にあります。

(中森辰一議員)
5.また、経済環境については、政府が出した認識に沿って述べられているものと思うが、「緩やかな回復基調」というのは大手の輸出産業の状況を基本にした認識で、重要な一般国民の所得は平均賃金にしても年金にしても減少しているのであって、だから、大規模な金融緩和を繰り返しても世帯当たりの消費は減退が続いていてデフレ傾向のままだ。
 それに追い打ちをかけるように昨年10月から消費税が10%に増税されたために、昨年10月から12月の四半期では、GDPが内閣府の発表で年率にして7.1%ものマイナスという数字がかなり衝撃的に受け止められた。
 新型コロナの問題はあるが、それによる影響が解消したとしても、この日本経済の根本問題は続くわけで、この点を見据えた事業の方向性を考える必要があると思うが、この点についての認識を伺っておく。

(経済観光局長)
 広島地下街開発(株)においては、これまで、安定的なキャッシュフローの確保に努めておりますが、消費者の嗜好の多様化や個人消費の落ち込みな・どの影響により、厳しい経営状況が続いております。
 こうした厳しい状況が続く中においても、将来に向け安定し、持続的な経営を行っていくため、販売促進活動の充実、顧客の拡大、店舗運営の支援強化、経営基盤の強化など、あらゆる視点で経営改善に継続して取り組むこととしています。

(中森辰一議員)
6.また、新型コロナの問題を経験して、日常生活のあり方を含めて社会のあり方の変化、あるいは改革といったことも言われている。以前のような物販事業のあり方が通用するのかどうかも問題になると思うが、この点の認識も伺っておく。

(経済観光局長)
 新型コロナウイルス感染症の影響により、紙屋町シャレオにおいても、物販や飲食、サービス業など、あらゆる業種の売上げに影響が出ているところです。
 今後、新型コロナウイルス感染症がもたらすライフスタイルの変化を捉え、リアル店舗の特性を生かしたインターネットの活用により、顧客の満足度を高めて、売上げ向上につなげるなど、広島地下街開発(株)と各店舗が連携し、しっかりと検討していく必要があると考えます。

(中森辰一議員)
7.次に、すでに20年近くたっている建物であり、構造物の安全などの確保のため、今後修理費等の維持保全の費用が増えてくるものと考える。有形固定資産73億円余りに対して、新年度では、約3億4千万円の減価償却費を計上している。
 実際の有形固定資産の減少額は約1億3千万円であるので、単純計算では、いまの施設をあと50数年使うということだと思う。
 今後、大規模地震への備えや、大規模な豪雨災害などへの備え、年々増加する修繕費などは増える一方だと思う。そういうことも考えると、今の減価償却の規模では追いつかないのではないかと思うが、どのようにお考えか。

8.コンクリートの構造物の償却は、おおよそ70年ということだが、減価償却の額をみると、それ以上使うことが前提ではないかと思う。そこまでこの施設がもつのかどうか、専門的な立場からのお考えを伺っておきたい。

(経済観光局長)
 広島地下街開発(株)では、地下街の施設や設備などの固定資産については、毎年、法定の減価償却額を計上しています。
 また、これらの施設の維持・管理については、長期的に安心・安全で快適な施設として運営するため、2015年度(平成27年度)に「紙屋町シャレオ長期保全計画」を策定し、この計画に基づき、施設や設備の劣化等の進行状況について、定期的に調査を行いながら、より経済的で計画的な修繕・更新に努めています。
 この計画の期間は60年間で、5年ごとに検証を行い、10年ごとに計画の見直しを行うこととしており、より長く利用できるよう、引き続き、適切な維持管理に努めることとしています。

【再質問】

(中森辰一議員)
 こういう施設を作ったけれども、なかなか現実には厳しいという周辺の様々な環境もあると思いますが、広島市が店舗の経営を維持していくという点では、当初から非常に厳しい状況があったと思います。そんな中であえてこうしたシャレオ地下街というものを作ったわけです。こういうもの作ったとことについての教訓はと聞いたんですが、広島市の役割みたいなことを答弁されました。私の質問に対する答弁としては噛み合ってないのではないかと思うんですが、それについて改めて出来る範囲で答弁していただきたい。
 それから、この地下街開発株式会社の果たすべき任務というものはどういうものかということについて、市としての認識を聞かせていただきたい。
 現状でずっと経営危機が続いているわけですが、実際は広島市以外に県と民間の株主企業が8社あります。10社が株主になっています。広島市も中心になっていますが、株主としての経営責任というのは当然あると思います。この経営責任について、個々の株主企業はどのように責任を果たしていくべきであるとお考えでしょうか。

(経済観光局長)
 まず、紙屋町シャレオの経過から何も学んでいないじゃないかということについてですが、広島地下街開発株式会社は議員ご指摘の通り、現在も債務超過の状態が継続しておりまして、平成18年2月議会で承認をいただいた経営改善スキームに基づいて、これまで経営改善に努めてまいりたいと思います。この経営改善スキームに基づいて、同社が長期的に安定した経営をできるよう、また紙屋町シャレオが多くの人々にとって安全で快適な魅力ある施設となるよう指導していくことが、本市の果たすべき役割と考えております。
 紙屋町シャレオは、単なる商業施設としての経済的機能にとどまらず、魅力あるまちづくりといった都市機能に加え、交通機能の改善を目的としてもきわめて公共性の高い施設であるという認識のもとに、運用しています。
 それから、紙屋町シャレオの果たすべき役割ですが、立地が広島市の都心部紙屋町地区です。非常に多くの人が行き交う場所です。そこにおいて商業業務機能などの都市機能の充実強化と地下歩道ネットワークの形成によって歩行者の交通機能の改善強化を図るために地下街を建設し、その管理運営を行っているところです。
 それから3点目ですが、株主については、この3月末は全体で85名になります。地元の金融機関等もおられます。紙屋町において高度な集客の機能があるということは非常に大事だということです。昨年度も、経営状況を金融機関等に説明をしているんですけども、そういった場でも、紙屋町地区の果たす役割というのはご理解いただいています。

(中森辰一議員)
 こういうシャレオのような基本的にテナントに入ってもらい、テナントが利益をあげて、それに基づいて企業経営を成り立たせていくというもの、この点でいうと今後の社会がどうなっていくかというのは非常に大事な点だと思います。今回提出された基本構想の中でも、20年後には65歳以上が1/3を占めるという風なことが述べてあります。消費の主役が縮小していく、あるいはそのあり方が変化をしていくということなんだと思います。この地下街はもっと何十年も使っていくことになると先ほど答弁がありましたが、長期的な視点ということで考えると、人口の構成も変わっていくといったことも、やっぱり非常に重要な要素だと思います。現実には、広島市内では大型店が完全にオーバーストア状態になっています。そういう中でも新たに出店して新たな競争を引き起こすというところもありますし、実際には競争に負けて撤退した大型店もあります。特に都心では、報告書などで述べてある再開発などの新しい条件を生かして客を取り込もうという新規出店というのはこれからも次々とあるんだろうということです。本通りの各店舗もそうですが、そういうところと競争していかなければならないわけです。その上に今回のコロナの問題もあって、通信販売というものの比率も高まってきています。わざわざ店に行かなくても欲しいものが手に入ります。これも大きな競争相手です。現実にはこういった競争に負けてしまっているということではないでしょうか。競争に勝ち抜ける要素は、先ほど魅力の話がありましたが、シャレオに言って、あそこでないとないものを買いに行きたいとか、あのシャレオには魅力があるから、そこに店を出したいとか、そういう特別なものが見いだせていないという状況ではないか。
 そもそもこういう大規模店がひしめく都心で、民間大手と競争しなければならない開発モデルを進めたということ自体が私は誤りだったのではないかと思います。
 一番最初の質問に戻るわけですけども、この点について広島市の認識を改めるということが必要なんではないか。そもそもに立ち返ってきちんと反省をする立場が大事ではないかと思いますのでこの点について改めて伺っておきます。
 それから、そうは言っても現実には作ってしまったシャレオの経営を軌道に乗せて、市民に損失の尻拭いをさせるということがないようにしていかなければなりません。それが地下街シャレオの重要な役割ではないでしょうか。もともとは単なる地下の通り道を作る、地下にアストラムの駅ができるということで、そういう通路を作るというのが最初の計画だったと思います。広島の経済界などの意見で大変な資金を投じて今のような大規模な地下テナント街を作ったわけです。その点では、先ほど申し上げた他の広島市以外の株主にも重要な責任があると思います。お金の問題だけではなくて、こういったところと知恵を出し合っていくこと、そこにそごうとかエディオンといった、物販やイベントに関しては専門的な知見を蓄積している企業があるわけですから、そういうところにも協力を求めていく。周辺の全体の人集めだけじゃなくて、このテナント街をどういう風に魅力あるものにして、どうやって人々を惹き付けて行くのか、どうやってテナントを出したいというような思いを持っていただけるものにしていくのか、そういう知恵を結集していくということが必要ではないかと思います。株主企業が知恵を出し合うという形で協力して、先ほど協力という言葉がありましたけど、そういった形で責任を果たしていくことも必要なんだと思います。
 最終的には広島市が損失補償で収めるという枠組みがいまあるわけですけども、そういう風にしないためにもこういう株主企業にも積極的に責任を果たしていただけるような取り組みを求めていく必要があると思います。以上2点についてうかがいます。

(経済観光局長)
 そもそも建設したことについての反省が足らないのではないかということでございますけれども、紙屋町地下街というのは、都市機能の充実強化と歩行者の安全な通行を目的に建設をしておりまして、非常に極めて公共性の高い施設でございます。市としては平成18年2月に承認いただきました経営改善スキームに基づいて、今後も広島地下街開発株式会社が長期的に安定した経営を行うことができるようしっかりと指導していきたいと思っております。
 それから紙屋町地下街の周辺のテナント街と連携をしながら魅力的なものを作っていくべきではないかということですが、現時点でも紙屋町基町にぎわいづくり協議会というものを周辺の百貨店や量販店等と組み合わせていろいろイベントをされております。
 都心の回遊性で人々を引きつけて楽しい時間を過ごしてもらおうということで、そういった取り組みを今後もしっかりとを続けていきたいと思っております。

(中森辰一議員)
 今の答弁、私の質問とちょっと違うと思うんですが、人々が集まってくるために協力し合う、それはそれでやっていく必要があると思うんですが、そうではなくて、この株主企業としての広島市、県も含めて他の株主企業がきちんと責任を果たしていく、ちゃんと地下街として経営が成り立っていくように、そういう知恵を大いに出して、協力し合って、そして責任を果たしていくということが必要ではないのか。それを求めていく必要があるんじゃないかということを申し上げたんです。

(経済環境局長)
 議員のご指摘を受け止めまして、これからも広島地下街開発をしっかりと指導していきたいと思います。

 

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