議会での質問・答弁

2020年05月27日

2020年第3回 5月臨時会-2 議案討論 近松さと子議員

 日本共産党市議団を代表して、提出された第58号議案令和2年度広島市一般会計補正予算第2号について、意見を付して賛成の討論を行います。
 市内での新型コロナウイルスへの新たな感染者も確認されなくなり、政府の緊急事態宣言が、一か月半を経て全面解除されました。改めて施設で療養されている方の一刻も早い回復を願うばかりです。宣言を解除できたのは、外出自粛と休業要請にこたえた市民のみなさんの努力、医療や関係機関のみなさんの昼夜を分かたぬ奮闘の結果です。
 今回の予算案では、PCR検査体制の拡充や感染した入所者を介護する施設職員への特別手当、社会福祉従事者や介護事業者への支援や市立大学生や留学生への支援につながる経費などを組まれた点は、十分な内容とは言えませんが、評価するものです。
 多くの専門家が第2波は不可避だとしている中で、今こそ次への備えがもとめられています。その上で、今回上程された補正予算案について、以下3点について意見を付します。
 第1は、安心して経済活動ができるように、医療・検査体制を強化することが必要です。
 検査体制の拡充の必要性について、湯崎県知事は「感染が拡大したら抑えていく受動的な対策ではなく、積極的に感染者を探し感染を囲い込んでいかなければならない」と述べ、感染の再拡大を防ぎ社会経済活動を守っていくには、積極的感染拡大防止戦略への転換を目指すとしています。次の感染の波が来たら、県の財政が持たないと述べて並々ならぬ決意を示し、17道府県の知事とともに、国が主導してPCR検査や抗原検査などの検査数を劇的に増やしていく必要があると訴えました。積極的な検査の拡充は、感染拡大を防止し、安心して経済活動に取り組むためにもどうしても必要です。
 この間、国が検査を抑制する方針に固執する中、検査の仲介役である保健所も長年の削減路線の下で、過重業務によりパンク状態になりました。そのため、医師が「検査が必要」と判断した患者も検査が受けられない状態が続きました。今後、感染症対策の要である保健所の体制強化を求めるものです。
さらに、この際、要望したいのは、検査を受ける以前の段階での 「発熱難民」を生まない体制を準備していただきたいということです。私たちに寄せられた事例は、発熱したので、新型コロナ感染を心配して、保健所の相談センターに相談すると「かかりつけ医」に相談するよう指示されました。そこで、近所の「かかりつけ医」に電話で受診したい旨を伝えましたが、断られました。別の病院にも電話をしましたが、そこでは、帰国者接触者外来の病院名を告げられ、受診するように勧められました。
 医療機関の中には、出入り口を別にしたり部屋を分けたりするなど新型コロナの感染防止体制を十分とれないところが少なくありません。また、高齢者など感染リスクの高い患者が多いという事情もあります。そのため、やむなく、発熱患者の受診を断っていると思われます。
 こうした発熱難民を生まないように、熱がでた市民が安心して受診できる発熱外来の設置が必要です。そして、「かかりつけ医」などが、受診を希望した発熱患者に、発熱外来のある医療機関を紹介すれば、「かかりつけ医」を守ることもできます。ぜひ検討していただきたいと思います。
 2番目には、外出自粛や休業要請のために大きなダメージを受けた経済活動を立て直していくことです。そのためにも一刻も早く事業者への損失や収入減少を補てんすることが急がれます。さらに、「新しい生活様式」による感染拡大防止対策は、事業者へ減収を強いることになるためそれへの支援も必要になってきます。
 広島市は、新型コロナウイルス感染症緊急対策のスローガンとして「市民生活や経済活動を守り抜く」ことを宣言し、今回2度目の補正予算も組まれましたが、国や県の「公助」を補完・補強するとする一方で「共助」の精神に基づく地域での支え合い、事業者同士が連携した取り組みへの支援を行うという姿勢です。
 私たち日本共産党市議団が行ったアンケートには、自粛と休業により苦境に立たされた市民から、国や自治体の取り組みが遅い、支援が届かないという苛立ちや悲鳴の声が多く寄せられてきました。5月の初めに届いたものの中には、「融資があるが、企業としてはマイナスにしかならない。家賃・水光熱費・人件費100%助けてほしい。死刑を宣告されているようだ。なんのために税金を払ってきたのか」とまるで、断末魔のような叫びです。広島市当局には、事業者や市民のこうした危機感を共有できているのでしょうか。先ほどのご答弁を聞いていると到底共有できているとは思えません。
 国と県がやるべきで、その通りではありますが、肝心の国の施策が後手後手であるために、緊急事態宣言が解除されて、ようやくマスクや給付金が一部の人に届き始めたという状況です。しかも、国の行う持続化給付金は、前年同月比で売り上げが5割以下に落ち込んだ事業者を対象とするもので、条件が厳しすぎるという声が上がっています。自粛でお花見弁当の注文がゼロだったお弁当屋さんは、どんなにそろばんをはじいても4割減だと、5割という壁を前に店を閉めることも頭をよぎると言います。ようやく、国も、補償をもとめる声に押されて、今日、第2次補正予算を閣議決定し、家賃などの固定費の一部を支援するといわれていますが、遅く成れば遅くなるほど手遅れになってしまいます。
 また、広島県は、4月22日からの休業要請に全面的な協力を行った事業者に10万円から50万円の協力支援金の支給をはじめました。しかし、対象と見込んでいた半数しか申しこみがなく、93億円の予算のうち8億円しか支給されていないと報じられています。申請の期限を今月末から1週間ほど延長するとしていますが、県から正式に支援内容が発表されたのは、前日の21日夕方なのに22日から1日でも遅れて休業した事業者には1円も支給しないという県の頑な姿勢こそが問題です。市も予算の負担をしている事業ですから、苦難に直面し、休業に協力した事業者に届くように改善を求めるべきです。
 このように、国や県の支援が事業者へ届いていない中で、すべてカバーできているとする現状認識こそが問題です。届いていない、カバーできていないからこそ、苦境に立たされている事業者を直接的に支援する「公助」の力を発揮した自治体は、県内を見渡してもいくらでもあるではありませんか。
 今回、第二弾と銘打った飲食店などへの感染防止対策の支援も、5月1日の第一弾の共助の事業に参加している店であることが条件です。市の姿勢は、あくまで、事業者がたすけあう共助の取り組みには補助をだすというものです。かたくなに「共助」の精神にしがみつき、困っている人に共助を強制するようでは、「市民生活や経済活動を守り抜く」ことはできないと思います。これは、文化芸術分野のアーティストに対する支援についても同様です。困っているアーティストに共助の取り組みをおこなえ、そうしないと支援しないというなど余りに高飛車な姿勢ではありませんか。
 市としての「公助」の力を発揮して「一人の個人事業者も一つの店もつぶさない」「ひとりのアーティストも取り残さない」という覚悟を示すべきです。そうでないと苦境に陥った市民は救われないという事を厳しく指摘しておきます。
 3番目に、学校再開に向けて子どもの学びを保障する手厚い体制をとることをもとめます。今回の補正予算で、学校のオンライン学習やテレワークのための環境整備が行われます。オンラインを前提とした家庭学習を拙速にすすめることは、「勉強ぎらい」を増やしかねないという指摘もあります。感染対策のための緊急時の学びを保障する課題と従前から進めようとしていた「教育のICT化」の課題を混在させず、ていねいにすすめるべきです。
この間の長い休校は、子どもたちの成長・発達に深刻な影響を及ぼしています。
 学校再開に当たっては、4月にできなかった新しい出会いの場をていねいにつくり、授業や課題を詰め込むのでなく、また、学校行事も一律中止するというのではなく、学校や教室が子どもたちにとって安心して過ごせる居場所であることが求められます。
 また、感染対策を進め、安全で豊かな学びを保障するためには、今こそ少人数学級の条件整備が必要です。35人・40人学級では「身体的距離」を確保することはできません。当面、教室内の人数を通常時の半分以下にするために、緊急に国に対しても抜本的な人的・ 物的体制準備をおこなうよう求めるべきです。
 最後に、高齢者のいきいきポイント活動の登録団体にタブレット端末を貸しだす事業について一言申し上げます。新しい生活様式を定着させる中で、今後、オンラインでの活動も必要なことだと思います。しかし、今すぐ、急がなくてはならないでしょうか。この事業に充てる予算の1億3千万円は、市財政にとって大事な虎の子である財政調整基金をとり崩したものです。市民や事業者が生きるか死ぬかのような瀬戸際に立たされているときだからこそ、市長も私たち議員も報酬を削減して財源をねん出しようとしているのではありませんか。
 新型コロナ危機の下で「市民生活や経済活動を守り抜く」ことを最優先にして、不要不急な事業は見直し、緊急性にない事業は再検討することをもとめます。
よって修正案に賛成します。

以上をもとめて討論とします。