議会での質問・答弁

2020年02月20日

2020年第1回 2月定例会・予算特別委員会 総括質問 中森辰一議員

1.平和行政について
(1)被爆都市ヒロシマの使命について
(2)被爆二世健康診断について
(3)旧陸軍被服支廠をすべて保存するために
2.広島高速5号線シールドトンネル工事の契約額大幅増額について
3.アストラムラインについて
4.サッカー球場の建設費について
5.子ども医療費補助制度の拡充について
6.就学援助の所得基準の見直しについて
7.高齢者公共交通費補助について


1.平和行政について

(1)被爆都市ヒロシマとしての使命
(中森辰一議員)
 日本共産党市会議員団を代表して、総括質問を行います。
 広島市が、核兵器廃絶の実現に向けて先頭に立って取り組むこと、あらゆる努力を行うことが、広島市に課せられた使命であることは、市民共通の認識だと考えます。昨年、広島市が願っていたローマ教皇の広島訪問が実現し、フランシスコ教皇の発せられた言葉に多くの方が感銘を受けられたのではないでしょうか。
 フランシスコ教皇は、「核戦争の脅威による威嚇をちらつかせながら、どうして平和を提案できるでしょうか」と正面から核抑止力論を否定され、核兵器禁止条約の発効への決意を述べられました。ところが、この発言を受けても、我が日本政府は「核抑止力は安全保障の基礎」であると、核兵器禁止条約に背を向ける態度を示しました。核抑止力の傘を求め、かつては、オバマ政権が取り組もうとした核兵器体制の縮小に反対し、逆にトランプ政権が打ち出した核兵器体制の強化の方針には直ちに賛成をした日本政府の、「核兵器廃絶」という言葉がいかにまやかしか、改めて明らかになりました。核抑止力論を掲げることと、核兵器廃絶に取り組むことは完全な矛盾です。トランプ政権が、使うことを前提に、小型核兵器を実戦配備しましたが、これにロシアも中国も反発し対抗しようとしており、新たな核軍拡競争を引き起こしかねない状況になっています。
 フランシスコ教皇は、帰国後、バチカンのサンピエトロ広場での一般謁見で、世界中から集まった信徒を前にして、日本訪問について、「原爆の消えることのない傷を負う日本は、全世界のためにいのちと平和の基本的権利を告げ知らせる役割を担っている」と語られました。教皇の核抑止力論否定の信念は、われわれ広島市民共通の信念でもあります。それに真っ向から反する言動を行っているのが日本政府、安倍政権であることは否定しようのない事実です。しかし、今の政権が何を言おうと、日本の政府には教皇が述べられた特別の役割があり、広島市には、日本政府の姿勢を変えさせる使命があります。
 昨年8月の平和宣言では、被爆者の言葉を借りて、安倍首相に対して核兵器禁止条約への署名を求めましたが、今年は、教皇が示された日本政府の特別の役割を果たしてもらいたいと、広島市民の総意として、広島市民の代表たる市長自身の言葉で、明確に、核兵器禁止条約への署名を求めるべきです。それが、わざわざ広島を訪問してくださったフランシスコ教皇への最高のお礼になるのではないでしょうか。どうされるかお答えください。

(市民局長)
 平和宣言は、被爆体験を根底に、平和を願う広島市民を代表して、市長が、その時々の時代認識を踏まえながら、被爆の実相や核兵器廃絶に向けた決意を宣言の形に凝縮し、広く国内外に訴えることを基本としています。
 核兵器禁止条約については、同条約の署名・批准が多くの被爆者の思いであることから、昨年の平和宣言において、日本政府に被爆者の思いを受け止めるよう、明確に求めたところです。
 今年の平和宣言の内容については、今後、「平和宣言に関する懇談会」のご意見も踏まえて検討することになります。

【再質問】
(中森辰一議員)
 いくつか再度聞きたいと思います。まず最初の質問ですけども、核兵器禁止条約の署名批准を政府に求める問題であります。国内のほとんどの自治体と、世界の6000を超える都市が加盟している平和首長会議ですが、加盟都市の数は着実に多くなってきました。しかし、核兵器保有している国どころか、被爆国である我が国政府ですら動かすことができていない。これが現状であります。いったいこの平和首長会議7800を超える加盟都市の力はどう発揮されているのか、なかなかよく見えないというのが実態ではないでしょうか。
 確かに7800余りの加盟都市を要する平和首長会議の総意として、条約の実現を国際社会にアピールしましたし、国内自治体のほとんどが加盟する平和首長会議として、政府に条約の署名を要請しました。7800という数の力があると思いますけれども、それだけでは政府を動かすことができていないというのが実態です。これはどのようにお考えておられるんでしょうか。
 平和首長会議の総意で政府に要請したとしても、個々の加盟した首長がイニシアチブを発揮して、政府を動かす世論を高めるほどの行動を起こせていないのではないか。その中で会長都市の市長である松井市長が、自分の考えだということで、自分の言葉で政府に署名を迫るような行動を起こさなければ、他の加盟首長もそれに準じた行動しかしないのではないかというふうに私は思うんです。
 地方自治体としては、政府に対して敢えて物申す行動を起こすというのは他の様々な事業では政府との関わりを考えると避けたいというのがやっぱり多くの傾向かもしれません。そういう中で、自ら積極的に条約の実現に動いた広島市長が、こと日本政府に対しては曖昧な態度を取り続けておられると思います。これでは他の首長も思い切った行動は起こさないし、それでは平和首長会議は大きな力にはなかなかなり得ないのではないでしょうか。外国のメンバー都市の首長たちも広島市長の行動を見ているのではないかと思います。核兵器廃絶に向けてリーダーシップを発揮してきた広島市長というのは、核兵器問題だけは必要なら政府とも厳しく対決する構えが必要であります。厳しい姿勢で政府に条約への署名を迫る。そういう行動が取れなければ、この問題での広島市に対する信頼が衰えていくんではないでしょうか。平和首長会議の力は発揮されないのではないか、こういう風に心配をします。市長としては明確な広島市長としての言葉で、政府に核兵器禁止条約の署名をぜひ迫っていただきたい。改めて、この点についてどうされるか答弁を求めます。

(市民局長)
 平和宣言それから首長会議についての御質問でございますけれども、まずあの都市というのは、国防であるとか外交という権能を有していないということがまず前提にございます。そうした中でも多くの方が、多くの住民が住む都市が、世界の中で連携していき、そうした中で市民社会に核兵器廃絶の大きなうねりを作って、その中で為政者に働きかけるということが、核兵器廃絶に遠いようで最も近い道だと思っております。
 こうしたことについては、平和首長会議の各加盟都市の中で共有しているところでございまして、それぞれの個々の取り組みの中で、広島市としても国内加盟都市と総意の下で国に対して要望しておりますし、先ほどご答弁申し上げたとおり、平和宣言においても国に対して明確に求めてきたところでございます。今後ともこういう活動を続けていきたいというふうに思っております。

【再質問】

(中森辰一議員)
 これは質問ではありませんが、広島市の特別な役割ということは強調してきましたけれど、これはイコール広島市長の特別な役割だということをよく考えていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 

(2)黒い雨降雨地域拡大への取り組みについて
(中森辰一議員)
 次に、被爆の実相について、黒い雨降雨地域の事実が政府の公式な考えと違うのは重大な問題です。この点について広島市は独自の調査に基いて、政府が認定する黒い雨降雨地域を大幅に拡大するように要請し続けてきて、松井市長も就任以来、一貫して毎年の平和宣言で、敢えて政府に要請してこられました。しかし、政府は新しい科学的知見を無視し、古い根拠による主張を繰り返す頑なな態度のままです。このような政府に対して、黒い雨に被災した方々が、重い病気を抱えながら、人生の残りがギリギリの状態で政府を相手に裁判でたたかっておられますが、原告のうち既に12名の方が亡くなりました。
 当事者たちが亡くなるのを待っているかのような政府に対して、広島市として、被爆75周年の節目に、改めて厳しい態度で、黒い雨降雨地域の拡大を強く要請するべきではないかと考えます。どのようにされるか、答弁を求めます。

(保健医療担当局長)
 本誌では、これまで、平成20年度に実施した調査で判明した黒い雨降雨地域を第一種健康診断特例区域に指定するよう、本市の主要事業に関する要望や平和宣言などで国に強く求めてきましたが、いまだ実現に至っていません。
 被爆75周年を迎えるにあたり、心身に苦しみを抱える多くの住民の苦悩に寄り添い、一日も早く問題の解決が図られるよう、機会をとらえて、科学的知見重視の国の検討会の結論を超えた政治判断を強く求めてまいります。

 

(3)旧陸軍被服支廠をすべて保存するために
(中森辰一議員)
 次に、旧陸軍被服支廠の建物がどういうものでどういう歴史をもっているか、敢えて語るまでもないでしょう。兵士たちの軍服などの製造や保管など、軍都広島の一面を表した建物です。建物自体が被爆建物として貴重であるとともに、峠三吉の「倉庫の記録」という詩で表現されたように、大勢の被爆者が収容され、まともな手当ても受けられないまま、想像を絶する苦痛と絶望の中で息絶えていった場所です。
 そのような場所として、どのようにそこで被爆者が亡くなっていったか、この建物がどのような目的で建てられ使われていたのか、戦争の事実とともに、加害と被害の実態を世界中の人々に伝えるために極めて貴重な被爆遺跡です。原爆ドームに匹敵するものだと言われる方もあります。
 その貴重な建物を、県が取り壊すと発表したことに対して、多くの人々が批判し保存を求め、市長も保存を求められました。県には、短期間のうちに2000人を超える方々が意見を寄せましたが、その内6割以上の方が全棟保存を求めています。広島市は被爆建物の保存に取り組んできましたが、民間のものではなく公共が保有するものを取り壊すなど、絶対にあってはなりません。危険な状態になっていて保存にも金がかかるということですが、県には、今のようになるまで何もせずに放置してきた責任もあります。
 確かに保存には金がかかりますが、県知事は毎年平和記念式典であいさつを行っている立場です。広島県が被爆県であるとの自覚があるなら、取り壊しを避けるためのあらゆる努力を行うべきで、これは、被爆県としての世界に対する使命です。このことは、国が保有する建物も同じです。
同時に、広島市としても、この貴重な被爆建物を保存活用できるために、あらゆる協力を行う必要があります。広島市がつながる世界中の都市や市民に対して、資金協力を呼び掛けることや、国内の自治体と、特に国に対して、資金援助の要請を県とともに行うべきではないでしょうか。
 どのように取り組まれるか、お考えをお聞かせください。

(市民局長)
 議員ご質問のうち、国に対する資金援助の要請については、昨日川本議員に答弁したとおり、本市には、旧陸軍被服支廠のほかにも大型の被爆建物が複数ありますが、これらを保存・継承していくための保存工事については、現行の国の補助金制度ではその対象に制約があるほか、補助上限額も低く、必ずしも十分とは言えない状況にあると考えています。
 また、旧陸軍被服支廠にかかるその他の呼びかけ等については、今後県において利活用策の検討が具体化していく中で、必要に応じて、本市として可能なことに取り組みたいと考えています。

【再質問】
(中森辰一議員)
 それからこれは質問ではありませんが、7800の加盟都市があるわけです。例えば1都市あたり平均で、それでの都市が、市民から100万円ずつお金を集めてくれれば78億円のお金が集まります。旧被服支廠の建物の重要性、かけがえのなさということをきちんと訴えて、こういった都市に呼びかけていく。そういうことができるのが広島市ではないかと思うんですよ。そういう協力のあり方もあるということを申し上げておきたいと思います。

 

2.広島高速5号線シールドトンネル工事の契約額大幅増額について
(中森辰一議員)
 次に、昨年の12月議会では、高速5号線シールドトンネル工事の約200億円の契約額を87億円増額することの不透明さに対して、市議会からだけでなく市民からも厳しい意見が出されました。私も繰り返し追及してきましたが、どうしても疑問が消えないので、改めて質問します。
 今年の市民と市政1月1日号に、市長と、サッカー日本代表の森保監督との対談が載っていました。この中で、市長は、ルールを守ることがスポーツにも平和にとっても大事といった発言をしておられます。このシールドトンネル工事費契約額の大幅増額は、きちんとルールに則ったものだったのでしょうか。
 第三者委員会の報告には、高速道路公社は、予定価格が200億円の上限を超えれば、入札契約手続きのやり直しが必要であり、公表していた完成時期が大幅に遅れることを恐れたので、200億円で契約手続きを進めたといったことが述べられています。
 また、大林組他のJV側は、300億円の見積もりからはずした100億円分の費用を、200億円での契約後に追加する変更契約がなされるとの認識があったと述べられています。
 その通りだったとすると、仮に本工事が300億円程度かかるものであるなら、当面200億円で契約したのは市民と議会を欺くためだったということになります。この点を市はお認めになるかどうか、お答えください。

(道路交通局長)
 第三者委員会の報告書によれば、当時の公社は、200億円で締結した請負契約には6項目の工事費用は含まれていると主張し、JVは、6項目の工事費用は契約に含まれておらず、契約後に適正額に増額することを当時の公社と合意していたと主張していることから、両者は認識の違いが生じたままで契約を締結したところであり、6項目の工事費用を契約変更により増額する旨の合意はなかったとされています。
 したがって、議員のご指摘は当たらないものと考えています。

(中森辰一議員)
 また、昨年の本会議でも指摘しましたが、数多くの工事契約を行ってきた大林組などが、200億円で有効な契約を結んだら、200億円で契約通りの工事を遂行しなければならない義務を負うことを承知していなかったことはあり得ません。また、公社も当然、そのことを承知していなかったことはあり得ません。ここを「認識のズレ」などという言葉でごまかされるわけにはいきません。
 改めて確認しますが、JV側は、約200億円でのシールドトンネル工事請負契約を結んだ時点で契約通り約200億円で工事を遂行する義務を負ったと考えますが、市は、どのようにお考えか、明確にお答えください。
 一旦200億円で契約してしまえば、200億円で工事を遂行する義務を負うJV側に対して、契約後に増額を行うと、公社が約束をしないのに、JV側が200億円での「本体工事一式」契約に応じることはあり得ない、これが常識的な普通の考えです。
 しかし、こうした約束をしていたとなると、これは完全にルール違反です。「官製談合」だと言わねばなりません。
 同じく、大林組、大成建設、広成建設の3者によるJV側も公社と同様にルール違反です。そもそも、JVを構成する3社のうち、大林組と大成建設は、両者とも揃ってリニア新幹線の談合事件に関わっていますが、いずれも日本を代表する最大手のゼネコンであり、大きなシールド工事の実績があるようです。この両者が、別々に受注に手を挙げて競争するのではなくて、一つのJVに収まり、競争なしになったのも不可解なことです。
 公社とJV側の双方がルール違反をしていたとなると、高速5号線シールドトンネル工事を行うという意思決定とそのための資金調達を決めていた広島市と広島県、市民、県民に対する、重大な背信行為です。
 市長は、「認識のズレ」だったという第三者委員会の報告をこれしかないという拠り所にして、JV側のルール違反、背信行為を免罪・容認した上で、87億円もの大幅な増額を議会多数の賛同を得て承認したわけです。
 本来は、市長としては、二度とこのような問題を引き起こさないために、JV側に対して、広島市はこのようなことは認めないとはっきり意思表示し、200億円での工事遂行を求めるべきではなかったのでしょうか。
 以上について、市長のご見解を伺います。

(道路交通局長)
 第三者委員会の報告書では「本件請負契約時には6項目の工事費用が含まれていなかったと解さざるを得ない。」とされており、公社とJVはこの第三者委員会の判断に沿って増額の対応を行っていることから、議員のご指摘は当たらないものと考えています。

【再質問】
(中森辰一議員)
 それからあの高速道路の問題ですが、第三者委員会の結論をそのまま信じてる人は、これなかなか少ないのではないかと私は思います。それも申し上げておきます。

 

3.アストラムラインについて
(中森辰一議員)
 次に、アストラムラインの延伸事業についてですが、まず、アストラムラインを延伸するルートは、ほとんどが高架橋によることになります。平成29年の「橋、高架の道路等の技術基準」が改定され、大幅に強度を高める必要から、国道2号線高架延伸事業の工事費は当初の約1.5倍になるそうです。アストラムラインは道路ではありませんが、高架橋の設計は、改定された技術基準によることになるのかどうか。なるとすると、570億円とされている工事費は、どれだけ増額になるのでしょうか。

(道路交通局長)
 総事業費約570億円は、平成27年6月に公表したものですが、これは当時の概略設計を基に算出したものです。
 アストラムラインの高架橋については、今後の事業化に向けて環境影響評価や測量など、事業内容の詳細を決める作業を経た後に、具体的な金額を算出することとしているところです。

(中森辰一議員)
 次に、利用者数は採算性の最も重要な要素です。改めて、全体の利用者数の見込みを、五月が丘団地の住民、新しい石内の住宅地の住民、己斐上、己斐大迫、己斐中の住民、その他に分けて、それぞれ、根拠と合わせてお示しください。

(道路交通局長)
 延伸区間に新たに設置する6つの駅の1日当たりの利用者予測で申し上げると、(仮称)五月が丘1駅が2,000人、(仮称)五月が丘2駅が1,000人、(仮称)石内東駅が1,850人、(仮称)己斐上駅が700人、(仮称)己斐中駅が300人、(仮称)西広島駅が4,250人です。
 この利用者数の予測は、国土交通省の「総合都市交通体系調査の手引き」において、新規の鉄道を整備する場合の利用者予測に適した手法とされている4段階推計法により行っています。

(中森辰一議員)
 また、五月が丘団地住民の利用が相当数見込まれていますが、この団地住民にとってのメリット、デメリットについて、お示しください。

(道路交通局長)
 アストラムラインを整備することによる住民のメリットとしては、アストラムラインの西広島駅への延伸により、五月が丘団地と都心部がこれまでの道路に加えて軌道でつながれることになり、沿線の事業所、学校等への通勤、通学など交通の利便性が向上するとともに、五月が丘団地の駅周辺が整備されることで新たな賑わいが生まれることなどがあげられると考えています。
 デメリットとしては、整備を進めることによって、地域の生活環境等に様々な影響を及ぼす可能性があることが考えられますが、これについては、環境基準に適合させることや影響を最小限に抑えることにより対処していく考えです。

(中森辰一議員)
 また、団地の住民が利用しているバスは、アストラムラインの開通によって、便数が減ったり、ルートが変わったりしないのかどうか、市のお考えをお示しください。

(道路交通局長)
 現在、五月が丘団地に関係するバスは、西広島駅行きや西広島駅経由・八丁堀行き、広島高速4号経由・バスセンター行きなどが運行されています。これらの路線については、アストラムラインと競合する可能性があることから、何らかの調整が必要になると見込まれますが、公共交通ネットワーク全体として団地居住者の利便性が向上するよう、今後交通事業者と協議を進めることとしています。

(中森辰一議員)
 次に、大型商業施設、ジ・アウトレットに駅をつくる理由をお答えください。また、駅の設置によってジ・アウトレットには客数の増加など大きな利益が見込まれますが、その利益の大きさに見合って施設側に一定の負担を求めるお考えがあるのか、あるとしたらどの程度の負担が考えられるか、お答えください。

(道路交通局長)
 ジ・アウトレットに設けるアストラムラインの駅と交通広場は、すでに都心部からの5つのバス路線が乗り入れ、多くの市民党に利用されている商業施設が、周辺団地からのバス路線の新設により、近隣の住民にも利用されやすいものとなるとともに、アストラムラインとの結節により、アストラムラインそのものの利用を促進するといった効果が期待できます。
 このことは、ジ・アウトレットにとっての誘客にもつながることから、駅や軌道敷などの設置に関し、施設事業者に対し一定の協力を求めることとしているところです。

(中森辰一議員)
 次に、特に己斐地域の団地住民には、交通が便利になるという期待があります。ただ、己斐地域の駅は終点を除くと沼田別れ交差点付近と己斐上のスーパーフレスタ付近の2か所です。また、駅の周囲の団地はかなりの高低差があります。
 駅周辺の住民にとっては便利になりますが、それ以外の駅から離れた団地住民にとっては、歩いての高低差の上り下り、あるいは高低差に加えて駅が遠くであるなど、あまり便利とは言えない地域の方が多い。特に高齢者にとっては、近くのバス停からバスを利用する方がはるかに便利な地域が多い。この点は、どのようにお考えか、お答えください。
 安佐南区の団地では都心への直通バスのフィーダー化が大きな問題になりましたが、己斐の団地では、アストラムラインの開通後、バス便が影響を受けるということはないのかどうか、明確にお答えください。

(道路交通局長)
 濃い地区の住宅団地は、その多くが丘陵地の斜面に開発されたものであり、現在の十分でない道路状況の中で新たにアストラムラインの駅が設けられることで、高低差があるとしても、駅の整備によって利便性は確実に向上するものと考えられます。
 安佐南区の団地群でのフィーダー課は、安川通りや旧国道54号などの著しい渋滞が問題となっていた中で、アストラムラインの開業を機に、この渋滞を緩和するために実施したものであり、己斐地区へのアストラムラインの延伸に関しては、このような事情がないことから、フィーダー化は想定していません。

(中森辰一議員)
 私は、アストラムラインの建設は別にして、狭くてまともな路側帯もない危険な県道伴広島線の交通の実態を考えると、己斐中央線の建設は必要だと考えています。己斐の住民も早く造ってほしいと願っています。
 ただし、住民の多くから聞くのは、西広島駅でストップするのではダメだということです。西広島駅止まりでは、結局、元の狭い道路に戻って太田川右岸に出なければならず、渋滞は解消せず、危険ないまの県道の代替にはならないというものです。
 現状の交通問題の解消のためには、己斐中央線から西広島駅北側の跨線橋でJR山陽本線を超え、太田川の右岸道路からスムーズに平和大通りに出られるように必要な道路の拡幅と交差点のあり方の検討が必要です。
 己斐地域住民の切実な願いに応えるために、そこまでやる気があるのかどうかお答えください。

(道路交通局長)
 議員のご指摘については、アストラムラインの延伸、また、JR西広島駅の自由通路及び北口駅前広場の整備、さらには、八幡川沿いの己斐石内線の宮島街道までの整備を行うことで交通の分散化が図られるため、確実に問題解消に向かうものと見込んでいます。

【再質問】
(中森辰一議員)
 アストラムラインの問題で己斐地区のバス便のことを聞きました。それについて明確にご答弁がありません。バス便が減少するのではないか、不便になるのではないか、この点についてどうお考えかと言うことを聞きましたので、お答えください。

(道路交通局長)
 己斐地区の団地のバス便が影響を受けるかどうかという質問でございますけれども、己斐地区のバス便については今後交通事業者との協議を進める中で決まってくることでございます。その中で、本市としましては交通公共交通ネットワーク全体として団地業者の利便性が向上するよう協議を進めていきたいと。フィーダー化というのは考えていませんので、本市の方から削減求めるということも考えておりません。

 

4.サッカー球場の建設費について
(中森辰一議員)
 次に、広島市はサッカー専用の新球場を現在の中央公園に建設しようとしていますが、その建設費は突然膨張して最大で270億円だとしています。これまでの議論を聞いていると、さらにどれだけ膨らむのかわかりません。しかし、現状の厳しい財政状況を考えると、いくつもの大規模事業を進めながら新たにサッカー球場建設費を確保するのはたいへん困難ではないでしょうか。
 昨年末に出された、予算編成に関する依命通達では、ゼロベースで、ということや、実質公債費比率が極めて高水準であることから市債の発行抑制が強調されており、事業計画の見直し、計画の作成にあたっての民間活力の最大限活用も要請されています。
 この建設費の確保の問題では、いかに税金の支出を減らすか、いかに新たな市債発行を抑制するかが極めて重要であって、シンプルな設計で建設費を抑制することと合わせて、民間からの拠出金をいかに増やすかが大変重要です。ただし、市民の拠出金は大きなものとはなりえません。そうなると、大企業がたくさん存在する広島では、企業による拠出金の割合をいかに大きくするかが重要です。
 まず、今の財政状況で、サッカー球場の建設費をねん出することが困難な課題なのか、困難ではないのか、そういうなかで、現状で、企業の寄付はどの程度見込むことができるのか、お答えください。
 広島市は30年前から巨額の借金を積み上げながら、大規模事業をたくさん進めてきて、企業活動をよりスムーズにするために、数多くの基盤整備を行ってきました。それによって、広島で活動する企業は多大な恩恵を受けてきましたが、そうした大規模事業の推進によって広島市の今日の財政危機がもたらされました。今回のサッカー球場建設は広島の企業も多くが推進者であったり、賛成している立場だと思います。市は、新たなサッカー球場建設によって広島市がいっそう活性化するとしています。そうだとすれば、広島市で経済活動をする企業にもさらに大きな恩恵が及ぶことになるはずでしょう。
 厳しい財政状況の下で、新たな巨額の工事費確保により市民生活にしわ寄せがいくことになれば、市民の間に新たな対立を持ち込むことになります。広島で活動し大きな利益を挙げている企業による積極的な資金の提供が、プロクラブのホーム球場という点でも重要です。
 国からの補助金がどの程度見込めるかがありますが、国の補助金と個人の寄付金以外の、建設に必要な費用の大半を企業に出してもらえるよう、それこそ、広島商工会議所がそうした目標を持って、資金集めに取り組まれるよう要請するべきではないかと考えますが、市はどのように取り組むお考えでしょうか、お答えください。

(都市整備局長)
 サッカースタジアムの建設に係る財源については、幅広く民間企業や個人から寄付を募るほか、国の交付金の最大限の活用や使用料収入等を償還財源とする市債の発行などにより資金を確保するとともに、広島市及び広島県が協力してその他の資金確保に努めることとしています。
 このうち民間企業からの寄付については、現時点で株式会社エディオンからは30億円、マツダ株式会社からは20億円の寄付の申し出をいただいているところですが、今後、広島商工会議所および他の経済団体を通じて地元企業等から寄付を募ることにしており、これらについては現時点で見直すことは困難です。
 この地元企業等からの寄付については、1月30日に開催したサッカースタジアム建設推進会議において、広島商工会議所会頭から、広島商工会議所が窓口となって調整し、令和2年度には地元企業に正式に資金協力を依頼していきたいとの意向を示していただいていますので、今後の対応について広島商工会議所と協議していきたいと考えています。

 

5.こども医療費補助制度の拡充について
(中森辰一議員)
 次に、こども医療費補助制度を改定して、対象年齢を入院は中卒まで、通院は小学3年生まで拡げるのと同時に、一部負担制度の大幅な改悪がなされたのが平成29年1月です。その際、他都市に引けを取らない制度に拡充するよう求める議会の決議が上がりました。
 以来3年経ちましたが、全国の自治体の9割近くが入院・通院とも中学3年生まで拡充し、広島市との取り組みの差は年々広がるばかりです。
 2002年から16年まで、全国保険医団体連合会が行った全国の子どもの受診データの調査によると、子ども医療費補助が拡大する中で、受診率は少し拡大するが、0~4歳、5~9歳、10~14歳の、どの年齢階層でもレセプト件数はほとんど変わらないこと、国民全体の医療費は37%増えているが、0~14歳の医療費は21.4%の増加であること、時間外加算がつく時間帯の受診がいずれの年齢階層でも減少傾向であることが示されています。つまり、早期受診早期治療で、重症化を抑制し、医療費の増加が抑えられているということです。
 広島市の舟入病院小児科でも、夜間外来の受診状況を見ると、平成28年に比べて、29年でやや減少、30年は7%余りの減少、休日の夜間では、29年がやや増加したものの、30年は10%減少しています。平日のうちに気軽に受診する効果が表れたとみることができるのではないでしょうか。
 こども医療費補助制度の拡充は、全国的な課題であって、本来、国が無償化を進める必要があります。しかし、政府はこの課題には全く背を向けたままです。この間にも、医療費補助の対象外の子どもたちの健康が日々蝕まれてきている状況を、子どもたちにとって最も身近な自治体が見過ごしていて良いのでしょうか。
 昨年10月からの幼児教育・保育無償化によって、毎年32億円、今年度半年だけでも16億円の財源が浮いているではありませんか。
 財源の問題は解消しました。県内の他の自治体と比べてもたくさんの子どもたちの命に責任を負っている広島市として、直ちに、入院だけでなく通院でも、中学3年生まで、子ども医療費の無料化を拡大するのは、都市のあり方として市民生活の安寧を謳っている平和都市広島の使命ではないでしょうか。
 国がやるべきとの原則論は、広島市が子どもたちの命と健康を守るという制度を十分に整備した上で、国に厳しく要求するべきです。それが、自治体というものでしょう。
 いつ、通院も、中学3年生まで拡げるお考えか、お答えください。

(保健医療担当局長)
 こども医療費補助制度については、昨年12月の議会で近松議員にご答弁した通り、本市では、今後、医療制度そのもののあり方も含めて、こども医療費補助制度のあるべき姿を打ち出すよう、国に対して問題提起を行いながら、仮にそれが実現しない過程においても、通院の補助対象年齢の拡大を図ることにより、可能な限り子どもの医療を充実させるべく検討を進めているところです。
 したがいまして、現時点において、時期を明示することはできませんが、こども医療費補助制度の拡充を着実に進めてまいります。

(中森辰一議員)
 なお、先ほど指摘した、子どものために使うべき年間32億円の財源について、どのように活用するのか、いまだに明らかにされていません。よもや、大型公共事業に使おうとしているのではあるまいな、との疑念もあります。昨年、具体的な提案もしましたが、市長としてのお考えを、また計画があるのかどうか、お聞かせください。

(財政局長)
 そもそも子ども・子育て支援施策を含む社会保障費に関しては、国において所要の措置が講じられるのが本来の姿です。にもかかわらず、地方における多様性あるいは自主性の重視という名のもとに地方の自主財源で穴埋めが行われているというような状況にあり、このような状況は一刻も早く解消されるべきものであると認識しています。
 この度の国による幼児教育・保育の無償化に伴い、本市がこれまで自主財源によって負担していたものが軽減されることになったことは、本来の姿に一歩近づくものであり、健全な財政運営を目指す本市としては、これを機に可能な限り裁量的な施策に充当できるよう対処していく必要があると考えているところです。
 こうした中、令和2年度当初予算にあっては、財政の健全性にも配慮しつつ、幼児教育・保育の無償化に伴い軽減された財源も活用しながら、年々増加傾向にございます社会保障等のための義務的支出と将来に備えた社会資本整備等の裁量的な支出がバランスのとれたものとなる用意を用いて編成を行ったところでございます。
 今後も、事業の選択と集中の徹底や経営改革に取り組む中で、社会保障の充実と裁量的な施策に充当することができる財源の確保に努めてまいりたいと考えています。

【再質問】
(中森辰一議員)
 こども医療費補助の問題ですが、子どものための予算が32億円浮いたということについて、別にこれからは特にこの32億円を子どものために活用するという風な考えではなくて、広島市の事業全体に使っていくんだという、そういうお考えだというふうに聞こえましたけれども、やっぱり政府でさえもこの浮いたお金は子どものために使ってもらいたいという要請をしておられるわけですよ。そういう趣旨に応えていくような取り組みをすべきではないのかという風に思いますし、これまで保育のために使ってきたお金って言うのは、これはもちろん市民の要請があってのことではありますけども、しかしそれではやっぱり広島市としての、子どもに対する思いというか、そういうものがなかなか伝わってこないのではないかと私は思います。そういう点では改めて、この32億円という財源を使って、本当は来年度からでも子ども医療費補助制度の拡充ということをきちんとやるべきではなかったかと思いますけども、改めて答弁を求めます。

(財政局長)
 無償化された32億円の使途についてですけれども、そもそも市税等の一般財源というのは、例えば子ども用の予算という形で色を付けて固定的に活用できるという性格のものではございません。
 当初予算の編成におきましても、まずは市税や地方交付税などの一般財源がどの程度見込まれるのか、あるいは財政調整基金などがどの程度活用できるのか、あるいは市債の削減をする中でどの程度の市債を活用していくのか、そういった財源を総合的に整理をした上で、来年度取り組むべき例えば社会保障、今回子ども子育ての関係でも、保育園の受け入れ児童数を拡大したり、園の整備を進めたり、様々な社会保障の経費を充実させる、また将来の活性化につながる社会的資本整備、そういったものをバランスよく考慮しながら必要な施策を組んでいったところでございます。今後におきましても、先ほど申し上げましたように、経営改革あるいは事業の選択と集中、そういった様々な取り組みを進めることによって、ご提案ありましたようなこども医療費補助制度の拡充でありますとか、そういった社会福祉の充実などにも充てていける財源を確保していきたいと考えております。

 

6.就学援助の所得基準の見直しについて
(中森辰一議員)
 次に、最近発表された「広島市行政経営改革推進プラン」の中で、教育委員会から「就学援助制度の適正化」という項目が出されています。ここでは、「平成30年度の認定率は約27%と政令指定都市の中で最も高く、総支給額は約21億円となっている。」「この認定基準の基礎となる生活保護基準額が平成元年度のままとなっていることや、申請者が負担する社会保険料等を二重に考慮する運用になっていることの解消を図る方策について検討し、制度の適正化を図る。」と述べられています。
 この文章を素直に読むと、広島市の認定基準が30年前のままで、甘いので政令市で一番認定率が高くなっている、生活保護基準が、最近だけでも2回も削減されていることによる見直しなどをすれば、認定率は下がるはずだ、というように教育委員会が考えているのではないかと感じます。そこで、伺います。
① 日本国憲法には、義務教育は無償とする原則が謳われていますが、憲法ができた当時からすると経済力も財政規模も何桁も大きくなった今日になっても、無償とはなっていません。68年前に、参議院文部委員会で、政府が、日本の経済力が大きくなったら学用品、給食費などを無償にしたいと答弁しましたが、未だに実現していません。
 他方で、子どもを持つ世帯の経済力の格差も拡大し、生活保護を受けるまでに至らなくても所得状況に応じて、子どもの教育への負担を政府として配慮せざるを得ない世帯がたくさんあり、そうした世帯の子どもたちに必要な教育条件を保障するために就学援助という制度があると認識しています。
 つまり、未だ極めて不十分ですが、憲法にある義務教育は無償との原則を、補完してきたのが就学援助制度だと考えます。憲法の原則通りに義務教育が完全に無償になれば就学援助制度は必要がありません。
 私は、就学援助制度について、以上のように考えていますが、広島市、及び広島市教育委員会はどのようにお考えか、まず、ご見解を伺います。

(教育長)
 憲法が規定している「義務教育の無償」については、文部科学省のホームページに掲載されている法解釈によれば、「国公立義務教育諸学校における授業料不徴収の意味である」とされています。
 一方、就学援助制度は、学校教育法において「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えられなければならない。」と規定されているものです。
 従って、ご指摘は当たらないと考えています。

(中森辰一議員)
② 政令市で最も高い約27%という就学援助の認定率は高すぎるとお考えでしょうか。もし、高すぎるとお考えなら、どのように高すぎるとお考えでしょうか。
(教育長)
 政令市における平成30年度の就学援助の認定率については、最も低い都市で7.7%、単純平均では16.2%となっている中で、本市が27.3%となっているところから、事実として最も高いと捉えています。

(中森辰一議員)
③ 市では就学援助の認定率が年々高くなっていたが平成25年の29%をピークに年々下がってきています。このような認定率の変化がなぜ起きるのか、その要因についてのご見解を伺います。

(教育長)
 本市では、平成8年度以降、認定基準額を変更していないため、平成25年度からの認定率の下降は、対象となる保護者の所得の変化が主な要因ではないかと考えています。

(中森辰一議員)
④ 行政改革というのは、経費削減だけではなく行政サービスを充実・向上させたり、必要に応じて施策対象者を増やす場合もあり得ると考えます。その点で、現行の認定基準を決めた30年前より、生活保護基準が高くなっていれば、認定基準を引き上げるお考えでしょうか。
⑤ 就学援助の認定基準額については、かつて教育委員会と生活保護基準の1.3倍とか1.2倍と言った議論をした記憶があります。教育委員会の説明では、平成元年の生活保護基準額に1.13倍をかけたものに、さらに平成8年に1.014をかける補正を行ったとしています。それでみると30年前の生活保護基準に対して、約1.146倍になります。それは、社会保険料等の負担を考慮したためと説明されています。
 同じような考え方を適用するものとして、たとえば国民健康保険の保険料や一部負担の減免制度がありますが、この制度の所得基準は生活保護基準の1.3倍程度です。これは、生活保護受給世帯と比較して、税金や年金保険料や医療保険料、一部負担などを考えると1.3倍程度が相当だという考え方だと思います。それから考えると、現行の就学援助の認定基準は相当に低いと言わなければなりません。
 さらに、最近の数年間だけ見ても、生活保護基準が2回に渡って引き下げられていますが、この間の教育にかかる費用も生活に必要な費用も減っているわけではなく、物価も特段に下がっているわけではありません。物価が下がっていないのに生活保護基準を引き下げるのは、憲法25条に違反するものです。そのようなことを考えると、仮に、最近の2回にわたる生活保護費の減額を反映するような考え方があるとすると、教育条件を保障する制度としては、大問題です。
 生活保護基準を参考にするなら、就学援助の認定基準は、生活保護基準の1.3倍程度とするべきであり、その上で、仮に国が生活保護基準を引き下げても、市内の食品や日用品、衣料など生活必需品の物価の状況を調査するなどの市民生活の実態を反映した独自の考え方で決めるべきだと考えます。いかがお考えか、お答えください。

(教育長)
 今回の見直しは、就学援助制度において、認定基準額に用いる生活保護基準額が平成元年度のままとなっていること、また、生活保護基準額に一定の係数を乗じて社会保険料等の負担を一部考慮した認定基準額と、所得から社会保険料等を差し引いたものとを比較しているため、社会保険料等を二重に考慮する算定式になっていることから、これらを適正化するために行うものです。
 したがって、まず、1点目の生活保護基準額については、直近のものを反映できるようにする必要があると考えています。
 また、2点目の社会保険料等を二重に考慮する算定式になっていることについては、認定基準額を生活保護基準額の1.3倍とすべき、計数を1.3に引き上げるべきとのご意見ではありますが、社会保険料等の二重性の解消に当たっては、生活保護基準額に乗じる係数の見直しと、所得から社会保険料等の実額を控除するという方法の見直しとの、いずれにすべきかを検討する必要があると考えています。
 なお、就学援助の認定基準額について、市民生活の実態を反映した独自の考え方で決めるべきとのご意見ですが、5年に一度行われる全国消費実態調査のデータを用いて見直されている生活保護基準額をベースに算定することが適切であると考えています。

【再質問】
(中森辰一議員)
 就学援助制度の問題ですけども、来年度からの4年間の財政運営方針、歳入歳出の見直しを進めていくという方針の中で、歳出削減の項目の中にたった一つだけ、就学援助制度の適正化ということがあげてあるわけですよ。そうすると、これを削るんだなというふうに誰でも思います。
 来年度予算の施策の柱の一つも、未来を担う子どもの育成ということがあげてあるわけですよ。それと逆行するようなことをどうして教育委員会が考えるんだろうかというふうに思ったわけです。
 義務教育の無償化、これは授業料だけの無償化というわけにはいかないと思います。国民的な理解というのは、学校に通う費用、学校で子どもたちが過ごす費用、これら全てを無償化するというのを憲法では規定するといっているというのが多くの国民の理解ではないかと思います。
 今おっしゃったことでは、国が勝手に言ってるだけの話で、やっぱりもっと市民の実情に寄り添ったような考え方に転換するべきではないのかなというふうに思うんです。
 それで、私はこの制度の役割を考えると、今のような状況の中で制度の縮小っていうのはありえない。つまり、基準の改訂によって対象者が減るというようなことはあり得んのではないかというふうに思いますけども、改めて教育委員会の考え方について確認をしたいと思います。

(教育長)
 就学援助制度についてお答えをいたします。
 まず今ご質問の中で、広島市の行政経営改革推進プラン素案、歳出削減ということですが、私の認識では、ここでの項目では持続可能な財政基盤の構築という項目の中に、プランの中には入っております。この行政経営改革推進プラン、これを全市的に考えるにあたりまして、教育委員会では、教育委員会が持っている大きないろんな制度の中で、改めて制度の検証ということをしてみようということをやりました。そういう中で、この就学援助制度を見た時に、一つは平成元年度の基準額を基にしてそれに係数をかけるという、ここが非常にちょっと現状と合っていないということと、もう一つ、それをずっと制度の検証する中で言いますと、生活保護基準額に係数を掛けつつ、一方で社会保険料等控除の実額を控除した所得をそれとかけた後のものと比較するということがありまして、この部分については重複があるんではないかという疑問が出ましたので、ここを二つを課題ととらえまして、これの適正化を図ろうというものでございます。具体的には先ほどご答弁を申し上げましたとおり、生活保護基準額に関しては、30年前と比較すると、現在が上がっております。また、そこいらは生活保護基準額ということに関しては初期のものに反映させていくことになるかと思います。またもう一つの二重性ということについては、先ほどご答弁を申し上げましたけども、この二重部分の係数の部分を見直すのか、あるいは実額を控除するという部分を見直すのかは、これを今検討しておるところでございます。対象が減ることはあってはならないということですが、これをやった結果として、総合的に減るのが増えるのか、これはまた今から案を作った上でお示しをしていきたいというふうに考えております。

(中森辰一議員)
 教育において改革というのは、教育条件をよりよく整備するというのでなければならないというふうに思います。就学援助制度というのは、それを土台で支えてきたものであると考えております。ここ数年、先ほども指摘しましたけれども、就学援助の認定率が下がってきているわけです。これは、就学援助必要とする低所得の家庭の子どもがすべて認定の対象となっているとして、低所得な家庭の子どもの比率が下がっているということになります。これをどう考えるかですけれども、今の社会は所得格差がどんどん広がってきているわけです。低所得の家庭ほど子どもを産まなくなってきていると見ることができるんではないかと考えております。そう考えると、子育てにかかる費用を援助する仕組み、これはより充実させる必要があると私は思うんです。就学援助の所得基準を落とすべきではないということと合わせて、やはりこの就学援助の内容をより充実させていくということも必要なことではないかと思います。フランスでは子どもを持つ家庭に充実した現金給付とか、就学支援などの家族給付を行った結果、出生率が人口維持できるほどまで回復していると言われておりますけども、広島市は地方自治体でありますが、国と一緒になって、行政改革というのであれば、内容の充実も是非検討するべきだということを申し上げておきたいんですが、この点についての考えを聞かしてください。

(教育長)
 子どもを産み育てやすい環境を作ること、これは最重要課題でありますし、そういう中で就学援助というのも重要な役割を担っていると認識をしております。その部分について、市としてはいろんな政策を打っています。そういう中で、先ほど申し上げましたが、この就学援助制度についても、将来にわたって持続可能なものにしていきたい。それから、今充実の話がございましたけども。これにおいては、国において例えば入学準備金に関して、国の対応も踏まえて時期を早めるであるとか、単価を引き上げるということも近年やっております。そういったこともやりつつ、ただし制度を検証する中で、課題がありますので、そこの適正化を図りながら持続可能な制度として重要な役割をこれからも果たしていきたいと考えております。

 

7.高齢者公共交通費補助について
(中森辰一議員)
 最後に、来年度予算では、高齢者公共交通機関利用助成制度は廃止となっています。3年前に廃止の方針が示されたことに、広島市の高齢者の多数が反対の声をあげておられたにも拘らず、市は予定通り補助額を6000円から3000円に減額させ、予定通り2年後の今年9月から廃止するとしています。
 ポイント制度に参加してくれとする市に対して、ポイントを得る活動に参加できない高齢者から強い反発の声が上がり、市は、これにだけ応える形で、要介護認定を受けた方を対象にした制度を発足させるというわけですが、その結果、交通費補助への市の年間予算はおよそ5億円少なくて済むことになります。まさに、高齢者福祉に対する思想も何もなく、一般財源の支出を減らすために制度をなくそうとするものではないでしょうか。
 高齢になって友達付き合いも少なくなり、外出の機会が減る方も多いし、ボランティアをする気力もないし、公民館などで他の高齢者と触れ合う機会のない方も多いと思います。そういう人たちでも、病院や買い物には出かけられます。そういう機会が社会と触れ合う機会だし、そこで、日ごろは会わない人と会って話がはずむこともあるでしょう。そのような高齢者にとっては、病院通いや買い物も大事な社会参加の機会です。そもそも、支給された交通費補助をどのような目的で活用しようと自由でなければなりません。制度の目的に書いてある文言を機械的に適用して、この制度を廃止すれば、高齢者の外出の機会を奪うことになりかねません。
 予算説明資料には、制度の廃止とともに創設する要支援・要介護者を対象とした制度は、「外出機会の創出を支援するため」と書いてあります。その目的を、要介護認定者以外の高齢者にも適用すればいいだけのことです。
 現行制度の廃止ではなく、70歳以上の高齢者の「外出機会の創出を支援する」ために、現行制度を維持存続し、金額の拡充を図るべきです。どうされるか答弁を求めます。

(市長)
 現行の高齢者公共交通機関利用女性は、高齢者の社会参加の促進を目的として平成5年度に事業開始し、一定の役割を果たしてきているものですが、制度本来の目的に沿った利用がなされているかどうか検証できないという問題がありました。
 また、本市の状況に目を向けると、少子高齢化の進展、家族形態の変化、コミュニティ意識の希薄化が進むなど社会構造・経済環境が変容する中、「自助」「共助」「公助」の適切な組み合わせによって、地域福祉を再構築していく必要があると考えております。
 こうした認識のもと、現行制度を「高齢者の社会参加を促進する」という制度本来の目的に沿って、より的確かつ効果的に利用されるものへと見直し、高齢者自らが積極的に地域の活動に参加していただける制度へと段階的に移行させていこうというふうに判断したところであります。
 こうした中、ポイント事業については、高齢者の社会参加の促進の効果に加え、健康づくり・介護予防に資する効果や地域団体の活動の活性化に資する効果が認められ、地域に根ざした事業として、多くの方に受け入れられつつあることから、令和2年9月からは、適用対象者を拡大するなどし、事業の全面展開を図っていくこととしたものであります。
 一方で、身体的な理由によりポイント事業への参加が困難な方が一定程度おられること、また、現行制度として障害者公共交通機関利用助成制度があるといったことを踏まえ、新たに、要支援・要介護高齢者を対象に、外出機会の創出の支援を目的とした交通費助成を創設することとしているところであり、現行の制度の維持、存続ということは考えていません。

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