議会での質問・答弁

2018年02月15日

2018年第1回 2月定例会・予算特別委員会 総括質問 藤井とし子議員

2018年2月21日(水)

 

【発言内容】

1、核兵器廃絶と憲法9条について

2、米軍岩国基地の再編・強化について

3、子どもの医療費補助制度について

4、中学校給食について

5、生活保護について

6、国民健康保険について

7、介護保険について・保険料について

 ・特養ホームの増設について

 ・新総合事業について 

【発言動画】

YouTube 広島市議会動画チャンネル 平成30年広島市議会第1回定例会(2月21日(水))

核兵器廃絶と憲法9条について

(藤井とし子議員)
 昨年、国連で核兵器禁止条約が採択されるという歴史的な一歩を踏みだしました。10月には「核兵器廃絶国際キャンペーン」ICANがノーベル平和賞を受賞するなど、核兵器廃絶への機運が高まっています。
 そんな流れに挑戦するかのように、今年の2月2日トランプ米大統領は使える小型核兵器開発を強く打ちだし、通常兵器でも核兵器で対応するとした新核戦略(NPR)を公表しました。自国の目標達成のためには、何万人もの人間に人道に反する核の被害を与えることも構わないとする米政権の核戦略は、核兵器禁止・廃絶を求める世界の流れに逆行するものであり到底容認できないものです。
 ところが安倍政権はこの非人道的なNPRの発表直後に「高く評価する」と歓迎しました。唯一の戦争被爆国で、核兵器の非人道性を認めながら、アメリカの核攻撃体制の強化を歓迎することは世界と国民を欺くものであり、被爆地への裏切りです。核兵器禁止条約に署名もせず、アメリカの新核戦略を高く評価するというような安倍首相に今年の8月6日の平和式典に参加する資格はありません。
 核兵器禁止条約の署名を拒否するだけでなく、アメリカの新核戦略を評価し歓迎する日本政府の表明を広島市長として認められるのか。直ちに抗議するとともに撤回を求めるべきではありませんか。答弁を求めます。

(市長)
 藤井議員からのご質問にお答えします。「核兵器廃絶と憲法9条について」のうち、「日本政府がアメリカの新核戦略を評価し歓迎すると表明したことに対して、広島市長として認められるのか」についてのご質問がございました。
 米国は、他の核保有4か国とともに、核兵器不拡散条約(NPT)体制に加盟しており、核の拡散を防止し、核軍縮交渉に誠実に取り組むことを約束している国であると認識しています。今回公表された米国のNPRは、核兵器の役割を大幅に強化するという内容となっており、米国としての約束を履行することなく、NPT体制そのものを形骸化させかねないものと考えます。
 ヒロシマやナガサキの惨禍を再び繰り返さないためには、核兵器による非人道的な脅しで国を守るという発想を根底からなくす必要があると考えています。トランプ大統領には、核兵器による非人道的な脅しで国を守るという発想を根底からなくしていただくために、被爆地を訪問していただきたいと思います。そして、一発の原子爆弾がもたらした被爆の実相を深く理解し、平和を願う被爆者の思いを真摯に受け止めていただきたいと思います。
 本市及び平和首長会議としては、市民社会が連帯し、核兵器が二度と使用されることのないようにしていくことが重要であると考えており、核兵器はこの世に存在してはならない「絶対悪」であるという認識を広く世界に広げることによって、日米両政府を含む世界各国の為政者が、核兵器廃絶に向けた取組を前進させるような環境づくりを進めていきたいと考えています。

(藤井とし子議員)
 さらに安倍首相は、我が国が戦争を始めた結果として人道に反する原爆被害を受けたことを忘れ、二度と戦争はしないと誓った憲法9条を変えようと画策しています。
 国連憲章は、悲惨な第二次世界大戦を経て、戦争を原則禁止しましたが、米ソなどの大国のごり押しで一時的なものとしながらも、個別的自衛権だけでなく集団的自衛権までも、認めたため、これを根拠に数多くの戦争が行われてきたことは周知の事実です。
 日本国憲法9条は、国連憲章からさらに踏み込んで、国としても交戦権を否認した戦争のない世界を実現するという人類全体の願い実現に向けた最も先駆的なものです。
 世界に向けて恒久平和を訴えてきた平和都市広島市の市長としての、この点についてのご認識をうかがいます。

(市民局長)
 日本国憲法の前文にうたわれる、恒久の平和を念願するという根幹的な理念や、第9条にうたわれるように、国際社会での紛争の解決や抑止にあたって、武力ではなく対話による平和的解決の道を探ることは、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を願う本市の立場に通ずる、何よりも大切な考え方だと認識しています。

(藤井とし子議員)
 一昨年の9月19日に安倍政権が強行成立させた安保法制は、同盟国であるアメリカが戦争を始めたとき、集団的自衛権を発動して、そのアメリカの側に立って戦争に参加しようとするものであり、その際に派遣される自衛隊は、まさに戦争を遂行する「軍隊としての自衛隊」に他なりません。
 安倍首相が憲法9条の第3項に書き加えようとしている「自衛隊」は、その「軍隊としての自衛隊」です。
 法律の原則では後から書き加えた条項が優先することになっています。憲法第9条2項には、戦力は持たない、交戦権は認めないと宣言していますが、このあとに第3項として「軍隊としての自衛隊」が書き加えられると、これと矛盾する第2項は意味をなさないものとなり、「戦争の放棄」を謳った第9条は戦争可能の条項に180度変えられることになります。つまり日本国憲法は世界に先駆けた平和憲法ではなくなるのです。
 これは、「加憲」などというものではなく、巧妙な平和条項の破壊に他なりません。
 核兵器の廃絶と世界恒久平和を呼びかけてきた被爆地ヒロシマにとって、人道に反する核兵器の廃絶は、戦争を排除した憲法9条と一体です。
 広島市長として、安倍政権が進める海外で戦争する「軍隊としての自衛隊」を書き込む憲法9条改定には反対であると、明確に宣言するべきではないかと考えます。答弁を求めます。

(市民局長)
 憲法改正については、平和宣言などで現行憲法の平和主義の大切さを訴えているところであり、今後のあり方については、現行憲法の平和主義を堅持して現在のわが国があることを重く受け止めたうえで、国会において将来の国の在り方を見据えた、国民の多くが納得できるビジョンを基に、慎重な議論をしていただく必要があると考えています。

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米軍岩国基地の再編・強化について

(藤井とし子議員)
 広島市から西に約40キロメートルの米軍岩国基地には、神奈川県厚木基地の米軍艦載機部隊の移駐が進められており、ほぼ3分2が移ったと言われています。移駐が完了する5月には120機を有する極東最大級の航空基地となります。
 沖縄では、米軍機の事故が県内全域で頻繁に発生し、沖縄県民の怒りと不安が広がっていますが、このことでの最大の問題は、事故が発生しても住民の不安をよそに、すぐに事故機と同型機の訓練が再開されることです。これに対して我が国の政府は、そうした米軍の行動をただ追認しているだけです。今の政府に住民の命と暮らしを守る姿勢は、実態としてありません。 沖縄県の翁長知事は、「政府には当事者能力がない」とまで言っておられます。岩国市では、岩国市長が受け入れを決めるに当たって、艦載機部隊が岩国基地を使って陸上空母離着陸訓練、夜間連続離着陸訓練、空母着艦資格取得訓練、これらはいずれも極めて激しい爆音被害を周辺に及ぼしますが、これらの訓練はしないとの確約があると岩国市議会で答弁されました。 ところが、昨年12月下旬に、日本共産党が直接中国四国防衛局の当局者に会って問いただしたところ、こうした訓練はしないことになっていると明確に表明できませんでした。
 沖縄所属のオスプレイが岩国基地を拠点に熊本の演習場で訓練をするはずが、岩国基地周辺、しかも広島上空も使って訓練をしている実態が明らかになっています。岩国を拠点にするに当たって中国地方で訓練をすることにはなっていないにもかかわらずです。
 昨年12月9日、地上からみて明らかにオスプレイとわかる低空で、井口小学校上空を通って西風新都上空を北の方へ飛び、また戻ってきたことが目撃情報で明らかになりました。
 広島県にも広島市にも何の説明もないまま、墜落事故が相次いでいるオスプレイが、勝手に広島市民の頭の上で低空飛行訓練をしているわけです。「米軍の運用上の都合」を言えば何でもありというのが在日米軍と日本政府の関係の実態です。
 伺います。
 米軍機の低空飛行訓練に関して、広島市に今年度、何件の苦情や目撃情報が寄せられていますか。12月以降の件数と昨年度の件数もお答えください。

(市民局長)
 本市における今年度の米軍機の目撃件数は、2月15日時点で33件、そのうち12月以降は29件です。また、昨年度の目撃件数は5件です。

(藤井とし子議員)
 また騒音の測定器や監視体制はどうなっていますか。

(市民局長)
 本市には、騒音測定器は設置されておらず、市内の米軍機の騒音状況は市民からの情報提供により、把握しています。

(藤井とし子議員)
 こうした事態が現に起きていることに対して、広島市長は米軍当局と日本政府に対して、広島市民の安全確保のために、訓練は認められないと明確に申し入れるべきですが、答弁を求めます。

(市民局長)
 本市としては、わがっ国と米国の安全保障上の問題は、基本的には、国家間の問題として、国民世論を踏まえ、国政の場で議論されるべき者と考えています。しかしながら、米軍機の低空飛行訓練については、騒音問題や事件・事故の発生など、県全体として広域に住民生活への影響が懸念されることから、広島県が、本市を始め県内各市町における米軍機の低空飛行訓練の目撃情報を取りまとめ、年2回は、日米両政府に対し、低空飛行訓練の中止を要請しているところです。
 市民の安全・安心を守る立場から、市民生活に影響を及ぼすような事態が発生しないよう、引き続き広島県等と連携を図りつつ、日米両政府に対し適切な対応を求めてまいりたいと考えています。

(藤井とし子議員)
他方、岩国基地再編強化によって、県内の低空飛行訓練の被害がいっそう拡大するとして、その対策費に充てるために広島県も再編交付金をもらいたいと湯崎県知事が表明し、多くの人々を驚かせました。と同時に、いっせいに反発の声があがりました。
 在日米軍の再編交付金は、言わば迷惑料であり、これを受けとるということは、その迷惑を受け入れるということに他なりません。重大な事故につながる超低空飛行訓練が繰り返されることにたいして、県民は中止を求めているのです。米軍機の低空飛行訓練受け入れと同じ意味である交付金受け取りなど考えられないことです。
 すでにオスプレイが広島市上空で訓練を行った事実で明らかなように、このことは広島市民の安全にも関わることであり、広島市長として、県知事の交付金を受けとりたいとの発言の撤回を要請していただきたいと思います。市長の答弁を求めます。

(市民局長)
 本市としては、これまでも広島県と連携し、日米両政府に対し、適切な対応を求めてきているところであり、県知事の財政措置を求めるとの発言をもって低空飛行訓練を受け入れるということにならないと考えています。したがって、発言の撤回を要請することは考えておりません。

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子どもの医療費補助について

(藤井とし子議員)
 広島県の子どもの生活実態調査では4人に1人が生活困窮にあるという結果を公表しました。子どもの貧困は子育て家庭の貧困問題でもあります。特に子どもの医療費補助については経済的な理由で子どもの医療を受ける権利が阻害されないようにと全国の自治体が独自に補助制度を拡大させてきました。
 広島市も、昨年、入院は中学校卒業まで無料化し、入院費用の心配をしなくて済んだのは前進と言えます。しかし、通院は新たな所得制限まで導入し、窓口負担が増える世帯が生まれるという制度に後退させ、小学校3年生までしか年齢を拡大しませんでした。
 子育て世帯にとっては小学校4年生からはいきなり3割の窓口負担は大変重く、特に、その影響がはっきり現れる例が歯科の受診です。
 県と市が行った子どもの生活実態調査では、虫歯が4本以上ある子どもは生活困難層に多く、小学5年生とそうでない子どもの約5倍。中学2年生では約4倍という調査結果が出されています。歯科医療関係者からも健康な体を作るための土台である子どもの口腔崩壊の深刻な状況について子どもの貧困化との関係を指摘しています。口腔崩壊とは10本以上が虫歯で、特にひどい場合は歯根しかない状態もあります。学齢期の場合、よくかむことが出来ないため、必要な栄養を効率よく吸収できず、あごや体、脳の発達に影響を与える可能性があるといわれています。早期発見早期治療と生活習慣の見直しは医療費削減の大きなカギでもあります。
 子どもの医療費補助制度を他都市に遜色のない制度に今後見直すよう求めた議会の決議にこたえるためにも、子どもの医療費補助の対象年齢を通院も入院と同様に中学校卒業までの拡大を早急に検討すべきと考えますがどうお考えか伺います。

(健康福祉局長)
 子ども医療費補助制度については、平成29年1月の見直しにより、対象年齢を大幅に拡大しており、より多くの子どもの保護者の負担を軽減し、子どもたちの健やかな成長を促すものになったと考えています。
 現在、制度改正の効果等を見定めるため、「子供の健康・医療等実態調査」を行っているところであり、今後、保護者や医療機関に対する調査結果をさらに分析し、また、平成29年診療分のレセプト等のデータ分析により、一部負担金区分ごとの受信状況の比較等を行った上で、その結果を踏まえ、医師会と意見交換を行いながら、必要な制度の充実に向けて検討してまいります。
 その際、国における全世代型の社会保障に向けた議論と本誌の財源確保のあり方を念頭におくとともに、他都市の制度の状況も見つつ、本市の子育て施策全体のあり方を検討していく必要があると考えています。

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中学校給食について

(藤井とし子議員)
 豊かな食生活は、憲法25条で保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の骨格をなすものです。食は子どもたちの心身の成長や人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培うとともに、豊かな人間性をはぐくむ基礎となるものです。まさに生きる力の土台です。特に中学生の時期は生涯の中で最も成長が著しい時期であることから、栄養バランスに配慮した。多様な献立による食事をとることにより、心身ともに豊かな成長が出来るように、有効な施策を展開していくことが重要です。
 こうした視点から改めて、広島市の現在の中学校給食を見てみると64校のうち、43校はデリバリー弁当と家庭からの弁当などの選択制です。残りの21校が自校調理かセンター調理の完全給食です。
 総生徒数約2万9000人のうち約7割がデリバリー弁当などの選択制です。そのうち6割が家庭からの弁当、あるいは、コンビニ弁当や菓子パンです。広島市全体の中学校給食の実際の実施率は生徒数だけでみると58%と100%ではありません。
 デリバリー給食の平均申し込み率は年々減り続け2016年度で40%です。一番少ない学校は15%とクラスで5~6人しか食べていないことになります。残食率も23%と約4分の1近くが捨てられています。
 それぞれが食べているものが違っていては、「おいしいね」と共感することもありません。しかも給食時間はたった15分、ただ黙って掻き込むことを強いるだけの食事は食育基本法で目指す豊かな学校給食とは到底言えません。
 全国では、デリバリー給食は問題が多く、自校調理の給食に変えていく自治体が増えています。
 先日、1年前に3年間ですべての中学校の完全給食の実施を決断をした福山市に行ってきました。2016年学校給食の実施を決め、給食方式を決める際、デリバリー給食は学校給食の基本方針に合わないと、最初から選択肢から外されたと聞きました。つまり、学校給食としてデリバリーは論外ということでした。
 福山市は自校調理方式1校、小学校から配送する親子調理方式27校、センター方式7校とし、2020年までに実施完了する計画です。 
 すでに親子調理方式で実施された加茂中学校では、「中学校では先生が大変なのでは」という質問にも、「想像以上に子ども達が協力しあって力を発揮して驚いた」「こどもたちが落ち着いてきた」「準備から配膳完了まで10分もかからない」「給食は美味しい、温かいもの、冷たいものが適温で食べられる」「家で食べられない献立がうれしい」など好評で、残食も殆どありません。先生方も「みんなが同じものを一緒に食べられてよい」「学校に来辛い子も給食を楽しみにしています」と感想が述べられています。
 調理室の建設費は国の補助金が半分出るので12億円です。大規模な給食センターの建設より、配送コストも考えれば費用も掛かりません。
 伺います。広島市のデリバリー給食の残食率は28年度で23%、自校給食の中学校の残食はほとんどありません。この違いをどう考えでしょうか。

(教育長)
 デリバリー給食は、食中毒防止のため、すべての副食を冷却して提供しています。また、ランチボックスに一人分の決められた量を盛り付けるため、個々の生徒の喫食量に応じた量の調整ができません。
 これらのことなどが、教室でつぎ分ける食缶方式の自校給食と比べ、残食が多くなる要素ではないかと考えています。

(藤井とし子議員)
 福山市では、最初から論外としたデリバリー給食を広島市はデリバリー給食でも食教育は可能だと言い続け、見直すことを否定し続けています。実施後20年になるデリバリーとの選択制の給食を、改めて検証するべきと考えます。
 現在のデリバリー給食は止めて、学校給食の本来の食教育に最も有効な直営、自校調理方式の給食にかえていく決断をするべきです。答弁を求めます。

(教育長)
 本市のデリバリー給食は、平成6年度に施行をはじめ、平成9年度から拡大実施してきたところですが、残食率の高さは、当時から変化はなく、また、最近は、家庭からの弁当が増え、申込率が年々減少している状況にあります。
 また、県内を見ると、議員ご紹介にありました福山市では、小学校の既存の給食施設で調理したものを、給食未実施の中学校に届けるようにするなどして、中学校給食を順次実施しています。一方で、尾道市、呉市、熊野町は平成26年度から、平成28年度の間に、それぞれ本市と同様のデリバリー方式による中学校給食を開始したところです。
 こうした中で、本市における中学校給食の在り方については、他都市の状況も視野に入れながら、提供対象となる生徒数や給食施設の供給能力などの動向に応じて、安全でおいしい給食を安定的に提供できるよう、中長期的な観点から研究をしていきたいと考えています。

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生活保護について

(藤井とし子議員)
 5年前に生活保護基準が切り下げられ、世帯の人数が多いほど大幅に保護費が削減されました。これに対して、憲法で保障された最低生活を下回る暮らししかできないと、裁判まで起きています。厚生労働省は、机の上でどうやって生活保護費を削ろうかと考えているのかもしれませんが、実際に保護を受けている世帯の暮らしは本当に厳しい状況です。
 国は2018年の10月から、さらに今後3年間で最大5%もの大幅な保護費の切り下げを強行しようとしています。67%の世帯が減額の影響を受け、ある40代のシングルマザーの方は「今の規準でさえ、洋服はおろか、下着一枚買えない生活です。昨年の冬は灯油が買えず肺炎になりかけた。これ以上下げたら、死人がでる。引き下げは止めてほしい。」と訴えています。
 厳しい暮らしをしている生活保護世帯に対して、保護費を切り下げる論理は、生活保護を受けていない生活保護基準より所得が低い世帯に比べて、生活保護世帯の方が消費額が多いからもっと保護費を引き下げるというものです。
 生活保護が必要な低所得世帯の内、実際に保護を受けているのは全体の2割から3割程度しかないというのが、我が国の生活保護行政の実態です。保護を受けるべき状態にある低所得世帯が保護を受けていなければ、保護を受けている世帯より消費が少なくなるのは当然です。
 そうした保護を受けていない低所得世帯と比べて消費が多いから保護基準を引き下げるとなると、保護基準は際限なく切り下げられることになります。そして、憲法25条が保障し、政府として責任を負うべき生活水準は際限なく「健康で文化的な生活」からかけ離れていくことになります。
 生活保護行政を実際に現場で担っている広島市行政は、このやり方がいかに無責任なやり方かおわかりだと思います。広島市行政として、今以上の生活保護基準切り下げについてのお考えをお聞かせください。保護基準の再切り下げの撤回を求めるべきと考えますがどうされますか。

(健康福祉局長)
 今回の生活保護基準の見直し案については、国の生活保護基準部会において、専門的かつ科学的な見地から、現行の生活保護基準が生活保護世帯以外の低所得世帯の消費水準と均衡しているか検証が行われ、その結果を踏まえて示されたものであり、減額となる世帯については、その影響を緩和する措置を講じることとされています。
 この見直し案については、国においてナショナルミニマムの確保の観点から議論され、その議論を踏まえ、厚生労働大臣が生活保護基準を定めるべきものであり、国会での議論を見守りたいと考えています。

(藤井とし子議員)
 また、先に生活保護世帯の生活実態の一部をお示ししましたが、いまの生活保護基準が憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しうる水準なのかどうか、広島市としてのご見解をお示しください。

(健康福祉局長)
 生活保護基準については、国において、5年に一度、社会保障審議会の生活保護基準部会で、専門的かつ科学的な見地から評価・検証が行われ、定められているところであり、生活保護法第3条の「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」との規定を満たしているものと考えています。

(藤井とし子議員) 
 最後に、生活保護基準が切り下げられると、各種減免制度の基準や、保育料などにも影響が及ぶのではないかと思います。どのような事業が影響を受けるのか。また、5年前の生活保護基準切り下げの際、これが自治体が実施するほかの制度に影響しないようにとのとの政府の通知が出され、広島市も影響しないようにするとしていましたが実際はどうであったかもお答えください。

(健康福祉局長)
 今回の生活保護基準の見直しに伴い影響が生じうる制度については、本年1月に国から示された資料では、国民健康保険の一部負担金の減免、介護保険料や高額介護サービス費の減免、障害福祉サービスの利用者負担、保育所の利用者負担など、47項目が挙げられています。
 また、このほか、本市の単独事業として、安心電話設置事業、重度身体障害者入浴サービス事業なども影響が生じうると考えられますので、本年10月からの生活保護基準の見直しが決定しましたら、改めて対象となる制度を精査した上で、国の動向等を踏まえ、対応を検討したいと考えています。
 平成25年8月の生活保護基準の見直しに際しては、国からの通知を踏まえ、本市でも、影響が生じうる70事業について該当者の有無を確認し、国民健康保険の一部負担金の減免や介護保険料の減免など、該当者がいた5つの事業で経過措置として減免を実施したところです。

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国民健康保険について

(藤井とし子議員)
 「食べたら払えない 払ったら食べられない」毎年引き上げられる保険料に悲鳴が上がっているのが国民健康保険制度です。
 4月からの県単位化を前に、広島市の国民健康保険事業案が示されました。昨年示された県の試算では、大幅な保険料の上昇になるとされて市民から批判の声が上がりました。国も新制度の導入で保険料が高騰しないように、財政支援を計上し、市町の一般会計の繰り入れの継続を認めてきました。
 今回、一般会計からの法定外繰り入れを6年かけて段階的になくす赤字解消計画が示されました。保健事業などで医療費を削減して保険料を軽減することや、保険料の収納率向上で赤字を減らすとしています。しかし、収納率の目標は示されているものの、医療費削減の目標は示されていません。
 加えて、再来年からの医療費の伸びの見込みは全く示されておらず、医療費が抑えられなければこの分が保険料に上乗せされて、さらなる値上げとなるというものです。
 結局、広島市の示す赤字解消計画は、一般会計繰入削減ありきで、それを加入者に転嫁する国保料引き上げ計画ではありませんか。
 国保は、衆知のとおり半数が仕事を退職した無職者であり、市民の2割が加入する国民皆保険の最後の砦です。その加入者は、低所得が多く、高齢化しているのに他の健康保険に比べても保険料の負担の重いものです。
 新制度の導入を口実に、保険料値上げ計画を押し付けていくことは、市民の暮らしをますます追い詰めるものではありませんか。答弁を求めます。

(健康福祉局長)
 国保は、平成30年度から、県単位で運営されることになりますが、県からは、市民が将来にわたり、安心して必要な医療を受けられるようにするため、国保が安定的に運営され、赤字が生じなきようにしなければならないという考え方の下、6年間で赤字を解消する計画を策定することが求められているところです。
 このような中、本市としては、6年間の赤字解消計画を策定し、収納率工場、医療費適正化等に取り組み、また、財政支援の拡充に伴う国費の確保を図りながら、できる限り保険料の上昇を抑制しつつ、市民が安心して必要な医療を受けられるようにしようとするものです。
 なお、低所得者の保険料については、平成30年度に、法定軽減の対象者が5年連続で拡大されることとなっており、生活に困窮されている方には、保険料軽減や減免制度を適切に運用するほか、必要に応じて、生活困窮者自立支援制度、生活保護制度等につなぐなど、それぞれの、生活の実態を把握しながら適切に対応していきたいと考えています。

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介護保険について

保険料について

(藤井とし子議員)
 安倍政権のすすめる介護削減に対して、全国認知症の人と家族の会は、「介護の実態を無視した報酬引き下げや利用制限に反対する」とのアピールを出して警鐘を鳴らしました。「誰もが必要な時に必要なサービスが受けられる」制度から「いざというときに使えない」制度へ大きく変えられようとしていると指摘し、「まるで、介護保険を使わないことがよいことで、介護を必要とする状態になることが利用者・家族の自己責任だという考えは到底受け入れられない」と厳しく批判しています。
 広島市は、2018年から20年までの第7期高齢者施策推進プラン・介護保険計画案を示しましたが、認知症の家族の会が懸念する「いざというとき使えない」という印象を抱かざるをえません。
 まず、介護保険料の値上げについてお聞きます。
 年金が減り、消費税も医療費も増えるなか、介護保険料の負担がさらに高齢者の家計に重くのしかかります。現在の介護保険料の基準月額5,868円を来年から6,170円に。年間3,624円値上げするとしました。
 2025年には8,400円程度まで上がる推計をだし、サービスを削減しなければ負担増は当然だといわんばかりです。 ところが、広島市の介護保険会計は黒字で、2017年度末39億円の基金(積立金)があります。これまでは基金を全額崩して、保険料引き上げの圧縮にあてていましたが、今回5億円を残すといいます。39億円の基金の全額を保険料引き下げに充てるべきです。
 保険料の値上げを抑えるために基金を全額活用しないのはなぜですか。基金39億円を全額保険料引き下げに充てたら基準月額でいくらになるのか。お答えください。

(健康福祉局長)
 介護保険事業では、国の運用指導に基づき、各年度に生じた決算剰余金は介護給付費準備基金に積み立て、次期計画における保険料の軽減を図るために、その残高を取り崩すこととされており、来年度からの第7期計画においては、本年度末の基金残高見込み約39億円のうち、34億円を取り崩すことにしています。
 国の運用指導では、介護保険事業の運営に必要となる財源を確保した上での基金の取り崩しを認めており、今年度から開始した総合事業や国が進める医療機関の療養病床から介護保険施設への転換などに係る事業費等が計画以上に膨らむ恐れがあることから、その財源として5億円を確保することにしたため、基金の全額は取り崩さなかったものです。
 なお、基金を全額取り崩した場合の保険料の基準月額を試算すると、6,120円程度になります。

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特養ホームの増設について

(藤井とし子議員)
 これまでの2015年から17年の3年間・第6期の計画は、特養ホームを7施設670人分増やしましたが、今回の計画では、3年間で特養ホームを380人分しか整備しないといいます。
 しかし、特養ホームの待機者数は、2017年4月1日現在3,570人、うち要介護3以上は2,470人にのぼります。国は、入所対象者を原則要介護3以上にすると制限しましたが、それでも、高齢者が特養ホームを希望するのは、国民年金でも入れる年金の少ない高齢者にとって頼みの綱だからです。 他の施設に入っている場合でも、高い利用料では入所し続けることができないから特養を申し込んでいる高齢者もいるのです。
 現役世代の年金水準が切り下げられている中、今後単身の高齢者が4人に1人になるといわれています。こうした介護が必要な低い所得の高齢者の終の住まいとして特養ホームをどのように考えているのですか。お答えください。
 380床と整備数を決めた根拠をお示しください。

(健康福祉局長)
 特別養護老人ホームは、居室での生活が困難な中重度の要介護者が、入浴、排せつ、食事等の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理、療養上の世話を受けながら生活する場であり、質の高い介護サービスを提供する上で重要な施設と考えています。
 このため、これまでも入所待機者の状況等を踏まえて整備を進めてきたところですが、第7期計画においては、入所要件が原則要介護3以上の高齢者であることを踏まえつつも、入所の必要性が高い待機者が入所できるようにする方針で整備数を設定しています。
 具体的には、第6期計画と同じく、自宅や介護老人保健施設、病院にいる要介護4と5の方、自宅で一人暮らしをする要介護3の方のほか、今回は、1年程度のうちに入所が必要になると判断されている、自宅の要介護1と2の方や家族と同居の要介護3の方、介護老人保健施設と病院の要介護1から3の方も、入所の必要性が高い待機者に新たに加えています。
 こうした方が第7期期間中に入所できるよう、第6期計画で整備を行い、今後開設する施設の入所枠や、既存施設における退所者数を考慮した結果、380人分の整備を行うこととしたものです。

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新総合事業について

(藤井とし子議員)
 今年度から、要支援1,2認定の通所・訪問サービスは、全国同一基準から広島市が独自に基準を決める新総合事業になりました。ヘルパーの資格のない人でも従事できるとして、これまでの報酬より8割程度に引き下げた基準緩和型サービスという安上がりのサービスを新たにつくりました。これまでのサービスから基準緩和型サービスへの移行を進めていますが、この受け皿が整備されていないと問題になっています。
 12月27日付け中国新聞で基準緩和型に参入した事業者の実態が掲載されました。報酬が2割近く減収になるため、これまでの介護予防事業の事業者のうち、この事業に手を挙げたのは、訪問介護で3割、通所介護で1割といいます。しかも、事業者の規模をみると中小の介護事業所ばかりで、大手の事業者はいません。
 これらの事業者に参入した理由を聞くと利用者が基準緩和型サービスに移行したときにヘルパーや事業所がかわることになれば、不安になるからと答えていました。結局、利用者の不利益を避けるために、苦渋の選択をして、経営基盤の脆弱な中小の事業所が人件費などの不足分を持ち出してでも、この事業を担っているのです。
 そもそも、基準緩和型サービスを担うとされる生活援助員は、何人養成されているのでしょうか。こうした事業者の善意にたより、経営を圧迫している実態についてどのようにお考えですか。さらに、国は、要介護1,2も自治体に丸投げすることを検討していますが、事業者は、これ以上の基準緩和型サービスの受け入れは無理だと答えています。事業者が参入しないような基準緩和型サービスの拡大は、無理があると考えます。
 このサービスへの移行を迫られた高齢者にとって、利用できる事業者がいないとなれば、介護難民になりかねません。これでは、到底持続可能な制度とは言えないのではありませんか。 

(健康福祉局長)
 平成30年1月末現在で、生活援助員研修修了者は43人となっており、新年度から当該研修に係る奨励金を交付する事業を実施し、より一層養成・確保を促進することにしています。
 総合事業の介護サービス事業者によるサービスの報酬単価が事業者の経営を圧迫しているか否かについては、適切な水準として設定したものであり、また、事業開始後間もないことから、今しばらくサービスの提供状況や事業者の動向等を注視する必要があると考えています。
 現在のところ、基準緩和型サービスの影響で、経営困難により、事業所が廃止となった事例は生じておらず、サービスの利用者数に十分対応できるだけの事業所数も確保できていることから、サービスの利用に支障が生じることはないと考えています。

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