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2010年10月8日 「オリンピック招致」検討全員協議会 質疑 中森辰一議員

オリンピックの理念と目的について
財政計画について
オリンピックにともなう開発について
厳しい財政状況との整合性について
開催日のあり方について


(中森辰一議員)
 今日は、市民に考えていただく材料を提供するために、この基本計画でひろしまオリンピックが実現できるのかどうかということについて、疑問をただしていきたい。



オリンピックの理念と目的について

(中森辰一議員)
 コンセプトで、核兵器廃絶の夢と被爆地広島でのオリンピック開催の夢とつなげて説明している.
 私ども日本共産党市議団は、議員としても日本共産党員としても、一貫して戦争に反対し、核兵器の一日も早い廃絶の実現に向けて取り組んできた。その活動方針は、われわれの党の綱領にも明記されている。私どもは、今後も核兵器廃絶の実現に向け、さまざまな機会をとらえて努力していこうと考えている。
 一方、私どもの考えでは、オリンピックは、人類の生んだ意義あるスポーツ祭典として守り発展させなければならないと考えている。
 オリンピックは、要するに「スポーツを通じ人種、宗教、政治をこえた諸国民の相互理解を増進し、世界平和と国際親善に貢献する」ことを根本原則としている。オリンピックの開催都市に立候補することは、オリンピックの根本原則の実現に努めることでなければならない。
 計画案では、オリンピックは「核兵器のない新しい時代を象徴するイベントとなるばかりでなく、地球上の全人類がスポーツを通じて相互に理解しあい、より良い世界を創造する『オリンピック・ムーブメント』を具現する一大“スポーツの祭典”そして“平和の祭典”となる」と意義づけている。また、ヒロシマ・オリンピックの招致・開催期間を通じて「核兵器の廃絶や平和の大切さを世界に発信します」とも述べている。
 そのため、「趣旨に賛同する多くの都市と協力し、世界の平和に向けた多様な文化的ムーブメントを平和市長会議のネットワークも活用しながら展開します」と述べている。これは、結局、広島でオリンピックを開催することによって2020年に核兵器廃絶を実現する力にしようということではないか。

(答弁)
 私どもとしては、核兵器廃絶の実現の年である2020年にオリンピックの招致について検討しているところである。確かに2020年のオリンピックの招致が実現できたら核兵器廃絶の力は加速することになると思うが、決して目的として利用しているということではない。

(中森辰一議員)
 オリンピックは、200を超える国と地域が参加する世界最大のスポーツの祭典である。それへの参加を通じて、相互に交流し国際理解を深め、平和な社会を推進しようとするものである。これは、あくまでもスポーツの祭典である。核兵器廃絶が目的ではない。
 しかし、この計画案の中には、核兵器のない新しい時代を象徴するイベントとする、とか、核兵器の廃絶や平和の大切さを世界に発信すると書かれている。そうなると、まずは「核兵器廃絶」があるということで、オリンピックの根本原則を逸脱しているのではないか。

(答弁)
 オリンピックの理念・目的は、クーベルタンが提唱したオリンピックのあるべき姿として、スポーツを通して心身を向上させ、さらに文化、国籍など、様々な差違を超えて友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解しあうことで平和でより良い世界の実現に貢献する、ということである。またオリンピック憲章にある通り、オリンピックの目標としてスポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにある。その目的は人間の尊厳の保持に重きを置く、平和な社会の推進にあるとされている。
 このような考え方を受けて、広島オリンピックの理念において、オリンピックはスポーツの祭典であると同時に平和の採点でもあると掲げている。この理念をふまえて、今回作成した基本計画案に掲げる核兵器廃絶などの平和の原理はオリンピックの根本原則に合致していると考えている。

(中森辰一議員)
 スポーツの祭典であるオリンピックの成功を通じて平和の推進に寄与するということになると思う。その一番最初のところで、まず核兵器廃絶ということが述べられているというのは、いかがなものかと思う。
 「志を共有する複数都市の協力を得て」としているが、「志を共有する」都市とは、平和市長会議の加盟都市や、賛同・応援都市だと思う。しかし、そうした都市とそうでない都市との間に区別を持ち込むことにならないのか。また、サッカー予選会場を招致検討委員会に参加している都市に配置するのも区別、差別とはならないのか。

(答弁)
 今は平和市長会議の4000を超える都市や200を超える招致検討委員会の応援都市にいろいろご協力をいただいているが、これを持って区別を持ち込むという考えはない。
 サッカー予選会場については、2020年のオリンピックのサッカーのIOCの基準が示されていないので、福岡市や東京都などの計画を参考にしながら、観客席数を2万5千ということに設定して、複数の都市の協力を得て会場を配置していて、それをもって区別・差別ということにはならないと考えている。


(中森辰一議員)
 この計画書にはそのように書いてある。招致検討委員会に参加する都市に配置するということが、わざわざ書いてある。それであれば書く必要はないのではないか。広域に配置する会場を含めて「志を共有する」しないに関わらず、適切な施設を選定する、それが当然だと思う。
 オリンピックのあり方についての議論もあったが、これはひとまず置くとして、被爆地で開催するのであろうとなかろうと、あくまで世界最高峰のスポーツ大会であり、オリンピックの根本原則に沿った世界最高峰のスポーツ大会として成功させる責任がある。この計画の出発点は平和市長会議だったと思う。市民は、突然教えられたということになっている。
 今回の計画案をつくるにあたって、専門のコンサルタントに委託をして競技場の配置や交通アクセスの問題、宿泊先の確保について調査もされたと思う。コンセプトにしても、競技場のあり方にしても運営のあり方にしても、「2020年オリンピック招致検討委員会」で検討を重ねてきたとされているが、検討委員会のメンバーいずれも自治体の首長である。
 この計画案には各競技の専門家の意見がどのように反映しているのだろうか。 この基本計画案をつくるにあたって、競技団体や競技者はどのように参画したのか。この内容について、JOCには相談したのか。

(答弁)
 この計画案を作成するに当たって、建築家や都市づくりの専門家、専門分野のコンサルタントに専門的な分野については委託して検討をしている。競技会場の計画についても専門コンサルタントに委託して検討しており、そのようにして作った競技会場の計画図をもとに競技団体に協議に行っている。この内容については、先月上旬にJOCに報告・説明に行っている。


(中森辰一議員)
 今回の検討に、広島の競技者や競技団体などのスポーツ関係者は、どのように参画してきたのか。

(答弁)
 競技団体については、競技会場計画図について意見をいただくのは日本の競技団体になる。地元の競技団体については、計画案を持って東京にある日本の競技団体に行くとの連絡をしている。具体的に個別の内容について協議はしていない。基準であるとかについては中央の競技団体が意見を言う形になっているためである。

(中森辰一議員)
 先ほど、仮設の問題についていろいろ意見が出されたが、これは実現性に関わる問題だと思う。仮設、特設会場で全く問題がないと、すべての競技団体にお墨付きをもらっているのかどうか。

(答弁)
 基本計画案に掲載している競技では、対象となる競技団体は29団体である。この29団体すべてに対して基本方針における競技会場整備にかかる考え方、あるいは基本計画案の資料編に記載している競技会場の配置計画図を説明し協議している。
 その結果、いくつかの団体から施設整備に関する意見はあった。しかし、この案について反対だと言った団体はなかった。今の段階で、保証書のようなものを出すといった必要はないので、実現性を見極める判断材料としては十分な内容になっていると考えている。

(中森辰一議員)
 今回の計画案は、少なくとも市民にとっては「たたき台」といった性格のものではないと思う。非常に短期間の間に、これで大丈夫かどうか判断しなければならない。そういう点では確実性の高いものを示してもらわないといけないと思うので、そういうことを前提に聞いていきたい。
 広島のスポーツ関係者も核兵器廃絶を願わないことはないと思うが、一番協力してもらわないといけないところが、まったく参画していない。最も高い水準の競技環境を求められる大会を開催するのに、基本計画策定に競技団体が参画していないのは、スポーツ大会の成功ということが第一番に据えられていないからではないのかと思う。
 ヒロシマオリンピック・コネクションということが述べられている。核兵器廃絶、これは人類的な課題であり、極めて重要なことであるが、ヒロシマオリンピック・コネクションといった考え方はオリンピックを開催するのに、政治的課題の推進が第一になっていて、世界最高峰のスポーツ競技大会を成功させ、その発展に寄与する、そこに平和な社会を推進するということがあるわけだが、そのためにどうするか、ということが第一になっていないのではないかと思う。
 ここでは、オリンピック選手が主人公であると思う。しかし、選手が主人公になっているのかという点では疑問があるのだがどうか。

(答弁)
 ご指摘の通り、あるいはJOCの方からも、オリンピックは平和の祭典であるとともにスポーツの祭典であり、スポーツマンが万全の体制で競技に臨めるような競技施設にしてほしいというような助言をいただいている。
 そうしたことから、計画を立てるに当たっては県・市レベルの競技団体に、当たるべきところには当たっている。計画づくりに参画していないというご指摘であるが、地元の競技団体を全く無視して作っているわけではない。広島県体育協会、あるいは広島市スポーツ協会、こういったところの理事会、役員会に出向いて説明をしたり、あるいは個別に求められれば出向いて説明をしている。


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財政計画について

(中森辰一議員)
 スポーツ協会は、議会に説明した後に説明を聞いたと言っておられる。
 財政計画について、様々な疑問が出されている。先ほど言ったように、この内容が確実であるということを前提に考え判断していかざるをえないので、確実性の高いものが必要であるということを前提に聞いていく。
 仮設施設を売却するということにしても、1000億円近い寄付金を集めるということにしても、その確実性ということが問題になる。
 昨年、市長に会った際に、広島なら世界中から寄付を集めるということを考えたらどうかと申し上げたことがあるが、それにしても、こうして現実に広島での開催が可能かどうかを、われわれも市民も判断を迫られる場面になってみると、本当に1000億円もの寄付が集まるのかどうか、仮設の売却先は本当にあるのか、財政計画の中でかなり大きな比率を占めているだけに心配になる。
 仮に、広島が開催都市に選ばれた時には、この資金計画を実現しなければならない。そこでは、仮設をどこが買ってくれるのか、そこと買ってくれるという協定を結ぶ必要があると思うがあてがあるのか、どこにどれだけの期間それを保管するのか、
 また、どこがどれだけの寄付を保障してくれるのか、つまりどこかの団体や都市が、うちはこれだけの寄付金を必ず集めて送りますといった確約をとらないと本当は計画を進められないと思うが、いかがか。

(答弁)
 資産売却先としては、今は主に大会組織委員会を想定している。大会終了時点ではすでに次回の大会開催先を決定しており、次回の大会の準備期間を踏まえると大会終了後すぐに解体し、開催地に輸送することができると考えているので、このため一時保管することなく(次回)開催地へ輸送することを想定している。
 1000億円の寄付金集めについては、今後詳細に検討していくこととなるが、例えばアメリカ大統領選挙で効果をあげたとされているインターネットを活用した寄付とか、様々な方法を活用して寄付を集めることを考えている。
 また、先日の第5回招致検討委員会で宝塚市長から提案があった、4000の平和都市市長会議のうち4分の1の1000の都市が、平均(人口)が20万ということなので、その半分の10万人が毎年100円ずつ集めれば、10年間で1億円になるというようなご提案もあった。いろんな手法があると思う。今後新たな手法も出てくると思うので、その中から最善の方法で1000億円を確保していきたいと考えている。


(中森辰一議員)
 この寄付金の規模というのは非常に大きいだけに、まずはJOCのところで一番大きな問題になってくると思う。
 テレビ放映権収入は、東京都が2008年オリンピックに名乗りを上げた時の729億円と同じ額だが、2016年東京がオリンピックに立候補した時は675億円に下がっている。最近は様々なメディアが出てきて、地デジになっているとはいえ、相対的にテレビの地位は下がっていると思う。この見積もりは過大ではないか。

(答弁)
 この額は、東京の例やリオ、ロンドン、シカゴ、そういった直近の例を参考にして計算したものである。基本的にはJOCとも協議した上で、この程度であろうとしたものである。


(中森辰一議員)
 東京よりも増えているわけだから、これは大丈夫なのかという率直な疑問を言った。チケット収入が東京の見積もりに比べると300億円少ない。その代わりポップアップスタジアムの入場料収入があるというのだろうが、これは、まだどうなるかわからない。
 チケット収入が少ないということが、それだけ世界中からのお客さんが少ないということであれば、世界中の人たちと交流するということからすれば少なすぎるのではないか。

(答弁)
 これは基本計画上の、各競技会場の収容人員に一般の観客席数をかけて、さらに平日や土日の入場割合をかけて、それに入場チケット代をかけて算出したものである。東京と比べると実際に収容人数など規模が小さいので、チケット収入は少ないが福岡の例を参考にしながら計上したものである。
 これ以外に、ポップアップスタジアムということで、広島には来れなくても世界で100万人以上の方が、いっしょにオリンピックの興奮を味わっていただけるような仕掛けで、一体感をつくっていきたいと考えている。

(中森辰一議員)
 いろいろ伺うと、世界最高峰のスポーツの祭典というのは、その競技環境に求められる水準というのが非常に高いということを、今更ながら思う。
 オリンピックの場合は、すべての競技会場について、「オリンピック基準」というのがあり、それで厳しくチェックを受けると聞いた。選手が最高の力を発揮できるものでないといけないし、完全に公平な条件が確保されることが必要だということだが、仮設にしても、既存施設にしても競技団体、国際競技連盟のチェックをうけて、これで良しとしたものでないといけないと思うが、すべて「オリンピック基準」にかなっているのかどうか。

(答弁)
 現在作っている競技会場計画図であるが、2020年のオリンピック開催の競技施設の基準がまだ示されていないので、これまでの福岡とか東京の例を参考にしながら、図面をつくっている。福岡や東京を参考に作っているので、オリンピック基準に準じているものと考えている。

(中森辰一議員)
 実際に立候補するとなると、国際競技連盟がチェックを入れてくることになると思うが、実際、東京都の計画でも、陸上競技場の風向きや、バレーボール会場の空調設備の状態、重量挙げの会場の床、ヨット競技場が選手村から遠いなどと指摘されて、修正を余儀なくされたそうだ。
 そうした修正がありうると考えるべきだと思うが、そうした経費はこの財政計画で見積もられているのか。

(答弁)
 今後の競技団体のチェックの中で全く修正がないことはないと思うが、財政計画の中で予備費的なものは見ていないが、今の財政計画の中で収まるよう、様々な創意工夫をして努力していきたいと考えている。


(中森辰一議員)
 予備費的なものはみていないということだ。既存施設の場合は、ビッグアーチも10年後には30年経つ施設になるが、開催競技場も練習場も老朽化を考える必要がある。老朽化への対応、仮設の設置や競技本部の設置などによる一定の改築・改修工事が必要になることもあるのではないかと思う。
 また、すべての既存施設について、「オリンピック基準」にするための改修が必要なものもあるのではないかと思うが、そうしたことは計算に入っているのか。

(答弁)
 練習会場とか既存施設の競技会場、いわゆる通常の施設の管理費についてはその施設の中でやっていくべきものと考えているが、オリンピック開催に伴い必要なものについては、オリンピックで使用する部分の内部改修であるとか現状復旧、これについては大会運営経費の競技施設の仮設のなかに入っている。


(中森辰一議員)
 練習会場もたくさん必要だが、これもIOCなどが一つ一つチェックする。練習会場と言っても競技施設のレベルと大きな差があれば改善要求が出るので改修が必要になる。屋内なら照明の明るさが本当の競技会場と大分違うとなるとただされる。そういうことは想定されているのか。

(答弁)
 練習会場についても、オリンピックの開催に必要な経費については、大会運営経費の中の仮設施設のなかに計上している。

(中森辰一議員)
 大会招致費について、東京の150億円はあまりにもかけすぎだと思うが、リオデジャネイロでも40億円使ったと言われている。
 国内立候補都市が複数あった場合は特にそうなるが、JOCの選考に勝ち残っていくために、いろんな書類の作成であるとか、プレゼンテーションの費用、調査費用といろんな費用が入って、これまでの例では数億円が使われてきた。
 JOCで推薦都市が決まったらIOCから書類提出を求められる。IOC理事会でプレゼンテーションが行われて、3〜4の立候補都市が決まる。その中で、10億円程度のお金がこれまでの例では使われてきた。
 立候補都市になったら、国際舞台で宣伝活動を大規模に開始する。そこでは激しいPR合戦が展開され、そこではこれまで20億円、30億円が使われてきたといわれている。
 広島は知名度が高いのは間違いないが、新しい「地方都市開催モデル」を理解してもらうのには特別の力がいるのではないか。海外に協力を求めるにしてもそのための経費は必要ではないか。宣伝経費は6億円が見積もられているが、これで間に合うのかどうか。25億円で済むというのは過小ではないか。

(答弁)
 大会招致経費については、広島ならではの知名度を活かすことなどによって、少ない経費で効果的な招致活動を行って行きたいと考えている。海外に向けての渉外費としては8億円を計上し、広告費として6億円、合わせて14億円を計上しているが、この経費については広島ならではのPR方法を考えて極力25億円の中で対応していきたいと考えている。


(中森辰一議員)
 大会運営が赤字になった場合どこが責任を負うのかということで、先ほど東京都の例を言われ、(東京では)国と連帯して保証する、国は赤字分をみましょうと言ったと言われたが、広島の場合、東京と大きく違うのは、大会運営経費が1000億円以上大きいということだ。
 そのわけは競技会場の多くを仮設でまかなっていく、それは運営経費で見ていくということだが、そういう運営経費で大きな余分にかかっている分をまかなっていく、そのために(1000億円に上る)寄付であるとか、仮設施設の売却収入が充てられることになっている。これは非常に不確実だということが指摘をされている。
 そうなると、これまでの東京や福岡、その他の諸都市に比べると、赤字になる規模というのが桁違いに大きいのではないかと思う。それだけに、国が全部みると本当に言ってくれるかどうか疑問に思う。
 その点で、先ほど(他の議員への答弁で)関連国内法に従ってということを言っていたが、その内容を教えていただきたい。

(答弁)
 東京の例で申し上げれば、財政保証のほかに、閣議了解という形で、関係省庁から補助金という形で、関税の免除であるとか、アンチドーピングの指導に対する補助であるとか、幅広く各省庁から支援を頂いている。そういう形の財政保証も含めて各省庁から幅広く支援をいただくことによって、極力赤字の補填をしてもらいたいと考えている。

(中森辰一議員)
 ちゃんと寄付金が集まれば問題ないが、本当に集まるのかなという懸念があるから申し上げているのだが、補助金などということになると、そこには規定や基準があると思う。それに基づいて出すということになるので、例えば赤字が500億円になった、それをまるまる保証するというものではないと思う。
 そういうことになると、赤字が出たら、今回の計画の内容に沿って国が100%保証しますという確約をきっちりととってもらわないと市民は安心できない。この点はどうか。

(答弁)
 オリンピックは国を挙げた一大イベントである。従って、赤字が出た場合には、国の方から保証をいただくように、広島のオリンピックらしさ、新しい提案を十分ご理解いただいた上で、協力を得られるように最大限の努力をしてまいりたい。

(中森辰一議員)
 ここは、一番市民が不安に思うところだと思う。もちろん、やるということになれば市民も寄付に応じると思うが、しかし全体の計画の中でいったいどうなるのかということは不安になると思う。どうするか決めるという12月までには、市民は賛成か反対かを考えないといけない。それまでには、ここの部分は明確なものにしていただきたい。
 そのためには、市が判断をするまでに、国と交渉をして、(基本計画案の)財政計画のところに「赤字になったら国が保証することになっています」と、ちゃんと書き入れるということができるようにしてもらいたい。

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オリンピックにともなう開発について

(中森辰一議員)
 それから、交通インフラの整備は一切しないことになっているが、選手団、競技関係者が何万人もおられるが、これらは毎日何らかの移動を行う。これは、完全にスムーズでなければならないだろう。
 観客も宿泊が1日最大8万人とされていて、その何倍もの人が移動することになる。それは、日常の広島市内の交通と並行して行われる。今でも何かあれば交通が問題になるような状況がある。われわれは今の交通システムでなんとか間に合っていると思うが、オリンピックでは観客は移動に手間取るのは問題があるのではないか。
 IOCは、選手・観客の移動に関わるインフラ整備に、混雑・渋滞などの問題で非常に厳しいものを要求するそうだ。相手は広島の人だけではない。日本人だけでもない。広島に不慣れな外国の人が大勢来られることを考えに入れる必要がある。
 オリンピックのことをよく知る方がアストラムラインの広域公園駅に行ってみて、出入口は全面改修が必要だと思われたそうだ。会場までは徒歩ということになっているが、行きの急な登りは高齢者や障害者には厳しいと思う。
 音楽イベントに来た若い人たち4〜5万人を3時間以内で交通処理できた、福岡の例を見ると3時間程度となっている、ビッグアーチの観客を処理するのに3時間でできそうだからOKだと言っている。しかし、ビッグアーチの観客は7万人。このなかに選手や関係者を全部含めてしまうわけにはいかないと思う。
 このような計画でIOCが改善要求をすることはないのか。アテネでは、IOCのチェックでメイン会場の屋根かけを要求されて、屋根かけを実施したそうだ。屋根がないのは問題になるのではないかと思うがこれはどうか。

(答弁)
 会場までの上り下りのことだが、そういった方が乗られた車の寄りつけやすいスペースを設けるとかといった配慮は必要だと思う。観客席は7万人だが、2020年の競技会場の基準はまだIOCが基準を示していないので、福岡、東京の計画を参考にして、仮設スタンド等の規模を設定した。福岡市の場合は7万5千人であった。バルセロナでは6万人で、これについて改善要求が出てくるとは考えていない。
 屋根についても2020年オリンピックのIOCの競技会場の基準は出ていないが、福岡、東京の計画、バルセロナの場合はメインスタンドのみ屋根、今回と同じような形態になっているので、屋根は必要ないと考えている。


(中森辰一議員)
 8月の一番暑いときに行われる。おそらくグラウンドも観客席も50℃くらいになるのではないか。非常に厳しい条件でやるようになる。こういう夏の時期は、日中に競技をやるのは高校野球ぐらいではないかと思う。
 厳しい条件になるということも、競技をやる選手や来てくれるお客さん本位ということも考える必要があるのではないかと思う。このことを指摘しておく。
 仮にオリンピック開催都市になったとしたときに、今は一切整備しないで済むと言っていても、今の交通インフラでいいのかという声が、おそらく出てくるのではないかと思う。
 今、市の財政状況に合わせて道路整備などはやっているが、そういうものを、財政状況とは別に早く整備しろということにならないのか。そういうことは一切しないと断言できるのか。

(答弁)
 この基本計画の案ではオリンピックを開催するために最低限必要な施設のみを整備することを基本としていて、それぞれの道路の整備についてはそれぞれの計画に基づいて整備されると考えている。


(中森辰一議員)
 広島市では、広島駅の南北で大規模な再開発計画が進められている。この中には広島市が巨額の経費を支出する事業も含まれている。財政的に厳しい広島市にあっては、必要なものも進度調整をして、急ぐ必要がないものは置いといて、市民生活に直結し、地元中小企業の活性化につながる事業を優先するべきだと思っている。
 交通インフラの問題と同様、オリンピック開催に間に合わせるために、広島市の財政状況を無視して、短期間で整備しようと言ったことにはならないのかどうか、この点ははっきりと確認しておきたい。

(答弁)
 道路と同じように、あくまでも基本計画案はオリンピックを開催するために最低限必要な施設のみを整備することにしており、それぞれの計画のスケジュールに基づいて実施されると考えている。


(中森辰一議員)
 広島市を代表して答弁されたと思っておく。

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厳しい財政状況との整合性について

(中森辰一議員)
 広島市は、実質残高で7000億円もの借金を抱えていて、その借金払いの経費は毎年600億円を超えていて、これが市民生活のための様々な事業の手かせ足かせとなっている。
 今年度の当初予算では、市税収入が100億円以上減るとしている。そういう厳しい財政状況の中にあって、不況や低い年金で厳しい暮らしをしている市民も大勢いる。
 そうした市民にとっては、52億円といえども大変に貴重だ。その中で招致費が25億円というのが本当にそれで済むかどうかがあるが、仮に招致に失敗したらその貴重な25億円は霧の如く消えてしまうことになる。そんな勿体ない事は許せないという市民も大勢おられる。実際にそういう声をたくさん聞いている。
 この52億円という広島市の負担は、確かにこれまでの開催都市負担からすると少なく抑えていると思うが、それでも、今でも市民に様々なガマンをお願いしている広島市としては、広島市の財政状況との整合性について、キチンと説明する必要があると思うがいかがか。

(答弁)
 今回の基本計画案の中の財政計画は、最小の経費で最大の効果を上げることを旨として、支出の適正化に努めることにより、将来に過度な負担が残らないということを基本方針として取りまとめられている。
 このことは、広島市の財政運営の基本姿勢と整合がとれているものと考えている。本市の財政は今後とも引き続き厳しい状況が続くと考えられるが、毎年引き続きこれまでのように事務事業の厳しい選択であるとか、市民ニーズを踏まえたところに必要な投資の重点化、自主財源のより一層の充実などに取り組み、できるかぎり市民生活にも配慮して予算編成に努めていきたい。


(中森辰一議員)
 今は第3次財政健全化計画をやっている。それだけに、オリンピックを実際に開催することになっても、厳しい財政的なタガをはめていくことが必要だが、それで本当にできるのかとういことが問題になってくる。
 いずれにしても、市は今年中に結論を出すことにしているようだが、あと2カ月余りしかない。だから、議会や市民に対して、基本計画案は、これでできるという確信を持たせてくれるものではないといけない。
 しかし、この計画案はすでに、ホームページに掲載されているが、これを見て積極的にやろうではないかという声はまだ盛り上がってこない。
 これからだというだろうが、この短期間に市民の声を盛り上げ、圧倒的多数の賛成があり、協力しようという盛り上がりができないと、たかだか117万の都市であるだけに、成功はおぼつかないと思う。東京都は、資金は潤沢にあったが都民の賛成が半分しかないということが、選ばれなかったと聞いている。
 市民の最大の関心事は財政問題。市民負担を52億円。これだけ出してもらえたら大丈夫ですとなっているが、先ほど指摘したように、仮に広島でオリンピックが開催されたが収入計画が計画通りにいかなくて赤字になったときに、市民が負担することにはならない、そういう可能性はないということを説明する必要がある。広島市は、この計画で絶対大丈夫ですと市民に保証できるか。

(答弁)
 財政計画については、広島ならではの持続可能なオリンピックの形の提案とか、広島にふさわしいオリンピックをやった場合の財政計画として出したものである。その結果としての52億円であるので、この52億円を前提に進めてまいりたい。


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開催日のあり方について

(中森辰一議員)
 最後に、開催日は8月7日としているが、長崎の8月9日は考慮にないのか。

(答弁)
 8月9日は、11時2分に、競技時間が重ならないよう黙祷をするなどの配慮を考えている。


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トップ議会情報・議員の発言 > 「オリンピック招致」検討全員協議会 中森辰一議員
日本共産党広島市議会議員団
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