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2009年10月16日 基本構想・基本計画特別委員会 中原ひろみ議員

高速5号線の建設について
学校教育について
原爆ドーム及び平和記念公園周辺地区の重点的景観形成地区について
広島大学旧理学部1号間の保存・活用について
財団法人放射線影響研究所の広島大学工学部跡地への移転について
道州制について


 第125号議案 広島市基本構想および、第126号議案、第5次広島市基本計画について、意見を付して賛成の立場から討論します。

 そもそも、地方自治体の果たすべき仕事は、「市民が主人公」の立場で、どんなに社会情勢・環境が変わろうと、常に憲法をくらしに生かし、「住民の福祉の増進」のために力を尽くすことにあります。しかし、これまでの広島市政を振り返ると、アジア大会を前後して実施された巨大開発によりつくられた借金返済が財政を圧迫し、「非常事態宣言」を出すまでに至りました。そうしたなか、財政再建のためにと設置された公共事業見直し委員会は、「不要・不急の大型開発など土木偏重の市政からの脱却」を示唆したところです。新年度予算でも、過去に作られた借金返済の影響が表れ、一般財源からの返済額は、教育予算の1.5倍にもなり、教育・福祉など市民生活を応援するために、思い切った施策を進めることを妨げています。貧困と格差が広がるなか、子どもの貧困の解消をはじめ、雇用の拡大など市民生活の安心のために、全力をつくすことがこれまで以上に求められます。この立場から、今後10年間の広島市政の柱となる基本構想、基本計画について、基本的には賛成ですが、6点について意見を述べます。

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高速5号線の建設について

 高速5号線については、現在、地盤沈下・土砂災害などについて、客観的、科学的なデータに基づき住民の安全を確認することを目的にした、専門家による検討委員会が開らかれているところです。この検討委員会は、二葉山周辺に暮らす地域住民の生命と財産に多大な被害が及ぶ危険性があるという強い不安の声に応えて、県・市・公社が設置したものです。ですから、検討委員会の審議結果しだいでは、ルート変更や事業そのものが「中止」となることもあり得ます。しかし、基本計画および東区の計画は、「広島高速5号線の整備促進」とあり、どんな結果になろうとも「高速5号線ありき」ということになってしまいます。「いかに安全にトンネルを掘るか」の審議では住民の理解は得られないでしょう。「開発優先・住民や環境は二の次」という従来の考え方はと改めるべきです。検討委員会で、住民を危険にさらす「おそれ」があると判断された場合は、住民の安心・安全を最優先し、きっぱりと中止すべきです。 高速5号線がなければ、二葉の里地区の開発に影響が出るなどの意見もありますが、空港まで、わずか7分しか短縮できない高速道路なのですから、何がなんでも建設しなければならない必要性の高い高速道路ではなく、二葉の里地区の開発への影響はほとんどないと考えます。
 新政権のもとで、公共事業の見直しが進められようとしている今こそ、住民の生命と財産に危険を及ぼし、環境破壊も引き起こしかねない高速5号線建設は中止し、この事業に使われようとしている予算は、市民の暮らしを応援する予算として使うべきだと言うことを申し上げておきます。

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学校教育について

 基本計画には「学校教育の充実」にむけた基本方針として、「ひろしま型カリキュラム」「学校規模の適正配置」などが述べられていますが、教育基本法が「教育の目的」として掲げる「人格の完成」という言葉がありません。これは、広島市の教育の発想・考え方に「人格の完成」を目指すという基本が抜けているのではありませんか。日本の教育制度は二度にわたって国連子どもの権利委員会から「競争と管理」の教育政策に是正勧告を受けています。「改正」教育基本法の施行により、学習内容と授業時間が増えたうえに、「広島ならではの教育」と称して実施されている「ひろしま型カリキュラム」で「英語科」「言語・数理運用科」の2教科を実施しなければならず、子どもと教職員には大きな負担になっています。加えて、できる子できない子を分ける習熟度別授業や、学校間の競争につながる学校選択制では、一人ひとりの子どもの能力や、未来の担い手としての力を養うことはできません。

 特に、学校規模の適正化による学校の統廃合は地域の衰退につながらざるをえません。昔から、「学校を動かすと血の雨が降る」ということわざがあるように、学校は運動会・祭り・文化祭など「地域の核」です。学校があってこそ地域に残って子育てができるのです。その学校をなくすことについては、住民の合意は欠かせませんが、その文言もありません。安易で強制的な統廃合ではなく、住民合意を尊重する立場を貫くことが必要です。言うまでもありませんが、予算削減のための学校統廃合は認められません。
 学力世界一のフィンランドの成果を見れば、学校規模と学力とは関係ないということがわかりますし、全ての子どもは「社会の宝」、一人ひとりを育てるのは「社会の責任」であると、一切の教育費を政府が負担しています。「教育は未来社会への投資」という理念が貫かれています。だからこそ、教育の質が上がり、学力世界一なのです。この視点を広島市も学ぶべきです。市がすべきことは、学校の統廃合などではなく、子どもたちがお金の心配なく学べ、どの子にも行き届いた教育が保障されるように力を尽くすことです。

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原爆ドーム及び平和記念公園周辺地区の重点的景観形成地区について

 先般、司法が「福山市鞆港埋め立て架橋計画」が鞆の浦の、文化的・歴史的価値を壊すとして、埋め立て免許の差し止めを求める画期的な判決を下しました。この判決は、景観を「国民的な財産」として、守るべき価値あるものとしての社会的地位を高めました。鞆の浦の埋め立て架橋計画をめぐっては、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議、つまり「イコモス」が事業中止を求めていたところです。
 翻って、広島市においてはイコモスが、世界遺産である「原爆ドーム」の周辺地区、バッファゾーン内に多くの高層建築物が建設されていることに対し、大いなる遺憾と失望を表明しています。基本計画では「良好な景観の形成」「景観誘導の推進」として、「建築物等の形態意匠や高さなどを厳しく規制する必要がある地区については、条例による規制等を検討する」としていますが、強権的な高さ規制では、地域住民との合意が難しくならざるを得ません。6月議会では、「原爆ドーム・平和記念公園周辺地区景観計画を考える住民の会」から景観計画の白紙撤回を求める請願が出され、議会では賛成多数で可決されています。このことは、いかに原爆ドームが世界遺産であったとしても、そこに暮らす市民の居住権や財産権、生活権を無視した一方的な「景観計画」の押し付けでは、核兵器廃絶の願いを凝縮した人類共通の「遺産」は守れないということです。
 しかし、原爆ドームを世界遺産として後世に伝えるには、バッファゾーンを含めた一体的な保存が不可欠であり、今後は、長期的視野にたって当該地域住民との十分な調整をされ、理解の醸成・合意形成をはかることに力をつくされるように求めます。

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広島大学旧理学部1号間の保存・活用について

 広島大学旧理学部1号館は、1929年4月に開校し、爆心地から1.5キロメートルの距離に位置する被爆建物です。64年前の8月6日の原子爆弾の炸裂により、即死者36名、重軽傷者71名、行方不明1名を数え、留学生の死者をも出しています。まさに、被爆の実相を伝える全人類的な財産というべき価値とともに、戦前戦後の広島の歴史を物語る重要な建物であり、市が責任をもつて保存・活用をすべきことは言うまでもありません。しかし、これまで、広島大学本部跡地の活用について、財政的な問題から民間任せにしてきた感がぬぐえません。基本計画には、「都心における都市機能の集積促進」として、旧広島市民球場跡地の活用と同じレベルで広島大学跡地の活用が述べられていますが、同じ跡地活用でも、この二つの跡地は、それぞれの別の歴史と意味を持つものです。一くくりにした活用は、市の認識を疑われかねません。広島大学跡地の活用については、再度「知の拠点」としての構想を基本に据え、民間が儲けの場として好き勝手な活用に歯止めをかけることが必要です。
 理学部1号館は、被爆の実相をつたえる被爆建物として保存し、かつ、広島の教育の拠点として栄えた歴史を継承した活用が図れるようにすることは、被爆地広島市の重要な仕事です。保存・活用にあたっては、広島平和記念都市建設法を生かし、無償貸与・無償譲渡へと道が開かれるように国に対し、働きかけ「ひろしまの『知の拠点』再生プロジェクト」構想に基づき、市が責任を持って、国・市・大学の三者で保存・活用を検討されるように要望します。

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財団法人放射線影響研究所の広島大学工学部跡地への移転について

 基本計画には、「原爆被爆者援護施策の充実」の基本方針として、「原爆被災調査の推進と被爆実態に関する調査・研究の充実」として、新たに放射線による内部被爆や、黒い雨の実態解明に向けた取り組みを明記されました。これは、核戦争被害の実態をより解明し、二度と核兵器が使われることがない世界の実現に貢献するものになると考えます。
 しかし一方で、基本計画には「放射線影響研究所について、機能の充実や広島市総合福祉センター等との有機的な連携を図るため、広島大学工学部跡地への移転を促進するとしていますが、放射線影響研究所を、今の組織と役割のままで広島大学工学部跡地に移転することには賛成できません。
 そもそも、比治山にある放射線影響研究所の前身である原爆障害調査委員会、ABCCは、占領軍、アメリカ軍の調査機関として、被爆者を強制的に連行して、原爆の被害で苦しんでいるのに、何ら治療することもなく、男女の別なく裸にして、モルモットのような扱いで身体を調べるだけの機関でした。今なお被爆者にとっては屈辱、恨み、憤りなど忌まわしい記憶しかありません。しかも、その膨大な調査研究の成果はアメリカの核兵器開発に使われた、そのことを知れば知るほど、被爆者にとって、到底許すことのできないのがABCCです。
 そのような機関が、いかにアメリカ言いなりとは言え、日本政府の協力で昭和50年まで存在したこと自体が驚きですが、世論の厳しい批判の中で、昭和50年に日米共同運営・共同研究という形の放射線影響研究所に変わりました。
 日本側の担当部門は厚生省、今日では厚生労働省ですが、アメリカ側の担当部門は、エネルギー省です。研究と運営の資金は、今も厚生労働省とエネルギー省をそれぞれ通じて出されています。
 放影研の設立目的は、「平和目的の下に、放射線の人体に及ぼす医学的影響およびこれによる疾病を調査研究し、被爆者の健康維持および福祉に貢献するとともに、人類の保健福祉の向上に寄与すること」となっています。ここに書かれた通りであるなら、アメリカでは、日本の厚生労働省にあたる保健福祉省が担当すべきですが、実際はエネルギー省なのです。
 エネルギー省というのは、アメリカの膨大な数の核実験を計画、指揮し、核兵器開発を推進してきた機関です。核兵器開発を推進してきたところから、研究資金が出されているわけです。
 このように、アメリカの核軍拡を担ってきたところと結びついたままの放影研では、設立目的として書いてある通りに受け止めるわけにはいきません。放影研へと変わった直後の時期の「放影研年報」には、エネルギー省が、放影研の調査計画に対する科学的な指導、運営並びに人材的援助を行うとも書かれています。
 日本側はどうでしょうか。平成3年12月12日、平岡前市長の1期目ですが、この広島市議会の本会議場で、同じ放影研の問題で、日本共産党の石川武彦議員が、当時の衛生局長(天下りの人物ですが、)に対して、核実験を指揮監督しているアメリカの省庁はどこかと、少なくとも市の幹部ならだれでも知っていることを聞いたのに対して、ついに「エネルギー省」という名前を答えることができませんでした。この衛生局長は、あとから、委員会でしぶしぶ「エネルギー省」だと認めざるを得なかったわけですが、議会での重ねての追及に対して、広島市の衛生局長が、「エネルギー省」という名前を口にすることさえできなかったことは、我が国の政府自体が、放影研の問題では、アメリカの政治的意向に唯唯諾諾と従っていたということの証明ではないでしょうか。日本政府にとっても極めて政治的な存在だったということです。現場の研究者たちはそういう意図とは関係なく良心に基づいて調査研究活動を進めてこられたと思います。しかしこの間、政府が19連敗した原爆症認定訴訟で、放影研の研究者が、被爆者を切り捨ててきた政府側の証人として証言を行ったことや、被爆者を切り捨てる論拠とされてきた原因確率論のもとになったのも放影研の疫学調査であり、改めて、「政治的な存在」として放影研が担ってきたことを、反省してみるべきだと考えます。
 9月末に、広島市は「核テロ対策を目的としたアメリカの研究資金の受け入れ」を容認されました。被爆と免疫についての研究は必要ですが、広島市として容認すべきではなかったと考えます。アメリカの政治的意図と関わりのない、国内の自主的な研究資金を獲得するために広島市は尽力するべきではないでしょうか。4月に開かれた地元協議会の席上、放影研の大久保理事長は、「放影研の将来像を考えるとき、放射線医学の国際的研究教育拠点の形成を目指すことが、被爆地広島・長崎が、核廃絶と世界平和を達成しようとする活動に科学的な側面から寄与することになる」と述べておられます。そうなるためには、また、設立目的に沿った研究を進める機関になるためにも、アメリカの頸木から解き放たれて、何の政治的目的もない我が国の自主的研究機関に生まれ変わる必要があります。
 今や、我が国の政治もアメリカの政治も変わりつつあります。広島市としては、この変化を新しい力にして、放影研のあり方の転換に向けて取り組むべきです。そうしてこそ、放影研の移転も実現すると考えます。

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道州制について

 道州制は、もともと、財界が提唱してきたもので、国民や地方にとっての必要性からでてきたものではありません。憲法が定めるくらしや雇用、福祉、教育など国民の基本的な権利を守る国の責任を投げ捨て、その責任を全て地方に押し付けようとするものであり、財源も人もモノも都市部に集中させ、地方と都心との格差をこれまで以上に広げるものです。市の基本計画のなかに明記されている、過疎地を再生させる取り組みに水をかけるものです。
都市と地方の矛盾を広げる道州制は慎重に行われるように求めておきます。

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 最後に一言、申し上げておきます。先の総選挙で、国民が自公政治に変わる新しい政治を探究する時代が本格的に到来しました。障害者自立支援法の廃止、母子加算の復活など、これまで国民を痛めつけてきた悪政が、国民の世論の力で変わりつつあります。
 世界でも、オバマ大統領のプラハでの演説を契機に、核兵器廃絶をめざす世論が広がっています。これらの変化を前向きに進めていく推進力として、広島市政がその役割を積極的に担われることを期待して討論とします。

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