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2006年6月28日 厚生委員会 藤井とし子議員の質問(抜粋)

 最初に保育園についてですけれども、まず最初に、先日の本会議の時に、都志見議員が子育て少子化対策についての質問の中で、公立保育園の民営化について質問があったんですけれども、大阪や横浜の判決についての答弁がありました。

 その中で、ちょっと聞きながら、もう少し丁寧な内容というか、きちっと答弁をしていただいた方が良かったかなと思いますので、その点を一つ確認させていただきますが、答弁では民間移管そのものは否定されたものではないという二つの訴訟についてですけれど、保育園の民間移管は自治体の裁量にゆだねられた事項であるとの判断が示されておりというくだりなんですが、実際には大阪の大東市の判決と横浜市とはちょっと違っていますし、はっきりと今回のは、横浜市の場合は横浜市の裁量権の範囲を逸脱、乱用したものであり、違法であるとはっきりと判決はされておるんですよね。

 この間、私も、様々な訴訟が全国でも起こっている、民間移管が進む中で起こっているんですけれども、こういった訴訟になる中で、特に感じるのは、やはり保育園の民営化が本当に児童の健全育成と児童の権利、最善の利益が本当に保障されながらやられているのかという点では、非常にそういった点が問題になっているのではないかと思うんですけれども、その答弁についての確認で一言お願いします。

(児童福祉課長) 
 委員ただいま御指摘ございました、横浜市の保育園民間移管にかかわる件でございますけれども、この訴訟の概要をまず申し上げますと、これは横浜市が市立の保育園を一方的に廃止をいたしまして民間移管したことは違法であるといたしまして、児童の保護者らが横浜市を相手に保育所廃止決定の取消しとその損害賠償を求めているという事件でございます。

 裁判所の主な判断でございますけれども、これは必要とされる行政課題に対して民営化で対処することも選択肢の一つであり、そのこと自体を違法ということはできない。しかし、民営化に当たり保護者の同意が得られない場合には、それを正当化し得るだけの合理的な理由とこれを補うべき措置が講じられることが必要である。

 横浜市の場合、保護者の理解が得られない状況下で、方針の公表から1年足らずで民営化を実施しなければならない特段の事情があったとはいえず、本件民営化はその裁量の範囲を逸脱乱用したもので違法であり、本来であれば保育所廃止処分を取り消すべきであるが、既に2年を経過し無益な混乱を招くので、事情判決として取消請求は棄却するという内容のものでございます。

 現在、横浜市におかれては、東京高等裁判所の方に控訴され係争中と聞いておりますので、本市といたしましては、その裁判の動向を見ながら、慎重に対応をしていきたいというふうに考えております。

 先ほど私も言いましたように、本当に保育園の民間移管、こういったことが、安易に自治体側の都合でどんどんされてはいけないという警鐘でもあると思いますし、ここは本当に慎重に。民間移管自体を私は問題だと思っているので、それはこういう問題があるということをちょっと私は指摘をしたいと思います。

 それで、安佐南区の山本の保育園が、今建設を予定をされておるわけなんですけれども、その中に株式会社も公募の対象にされているわけなんですが、その理由を教えていただきたい。

(児童福祉課長)
 今年度の山本、長束地区における保育園の新設の公募についてでございますけれども、これは保育のニーズの急増と多様化によりまして、待機児童が急増し、待機児童の解消が大都市の緊急課題とされる状況の中で、平成12年3月に国の方が児童福祉施設最低基準を満たす認可保育所をつくりやすくし、待機児童の解消等の課題に各自治体が柔軟に対応できるようにするという観点から、認可保育所の設置主体制限というのが撤廃されまして、社会福祉法人以外の者も設置主体となるというふうに決められたものでございます。

 それを受けまして、本市の方でも、本年度新設の募集をしております保育園につきましても、この通知に沿って実施をしているというところでございます。

 規制緩和でこうなってきたと言われるんですけれども、日本はこれまで措置制度ということで、ずっと保育を守ってきているんですが、なぜ今までそういった社会福祉法人か自治体に限られてきたのかという点では、どのようにとらえていらっしゃるのでしょうか。

(児童福祉課長)
 今おっしゃられました意見につきましては、これは昭和38年の3月19日に当時の厚生省の児童局長通知のところに、その理由というのが挙げられております。
 この理由といたしますのは、いわゆる保育所の設置主体というのは、保育事業の公共性、純粋性、永続性を確保し、事業の健全な進展を図るということを理由にされております。

 しかしながら、先ほど申し上げましたように、その後、社会情勢の変化に伴いまして、待機児童が急増いたしまして、待機児童の解消というのが大都市の緊急課題とされる中で、児童福祉施設最低基準を満たす認可保育所をつくりやすくするため、社会福祉法人以外の者も設置主体として認められたということでございます。

 今なぜということでは、そういうふうに変わってきたからと言われるんですけれども、児童福祉法からいってどうなんでしょうか。

(児童福祉課長)
 児童福祉法の精神から言いましたら、あくまでも児童の処遇の向上を図るということでございますけれども、この度の規制緩和によりまして、社会福祉法人以外の者が設置する保育所につきましても、従来どおり児童福祉法でありますとか、その施設最低基準というものは遵守する義務というものが課せられておりまして、児童の適切な処遇というものは確保されているというふうに考えております。

 児童福祉法でも、今企業でも、社会福祉法人でも、社会福祉法人はまあそれはいいんですけれど、株式会社という点では、私は幾つか問題があるということで、ちょっと今日は参考に是非紹介をしたいなということで幾つか御紹介をしますけれど、営利企業が保育園を運営すればどうなるかということですよね。

 この間も、民間移管にするという点では全国でも企業立の保育園が増えたりしているんですけれども、営利企業が保育園を運営すれば、やっぱり利益を得るのが第1条件になりますから、職員の経験年数を含め人件費を抑えることが必要になってくると思うんですが、そういう中で、本当に子供の健全発達や、又は子供の最善の利益が図れるかどうかという点では、多くの方が問題を指摘されているわけなんです。

 その一つをちょっと紹介しますのは、特に「子どもの権利条約」との関係で非常に全国でも問題になっている点なんですけれども、子供の権利についてはほかの議員も度々言われるんですが、こういう本でちょっと私も勉強したんですけれども、今、国連の「子どもの権利委員会」というところがありまして、そこのドイツのロタール・クラップマンという方が、日本の民営化の問題について調査に日本にやってきて、日本の子供について調査をされたという、その中でいろいろ御指摘をされたことが書いてあるんですけれども、「子どもの権利条約」では6条、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保すると、この条約については、全世界194か国のうち日本も含めて192か国が既に批准をしているんですが、そういった中でクラップマンさんが言うところでは、組織は営利を生み出すために基準を低下させざるを得ない。

 ドイツでは営利企業に教育施設又は福祉施設の運営を許していないというんですよね。それで、民間委託化の問題についていろいろ言っているんですけれども、まず子供の権利から言ったら、どんな小さな子でも子供の意見表明は保障されなければならない。どんなしゃべれない子でも意見を表明したらそれを受け止めて専門的にこうケアができる、そういう専門的な保育士がいると、そういう力量ある保育専門家を安定的につくっていくのは行政の役割だということなんですけれども、日本における民間企業の園で行われているような、低賃金やスタッフが次々入れ替わるような状況では不可能だとはっきりと指摘をされているんです。

 ドイツでも、そういった公的な施設とボランタリーな施設と区別だけをしていて、営利企業に教育施設又は福祉施設の運営を許していないというようなことを紹介しながら、三つの民間委託の問題点を指摘しています。

1つは保育士の地位の低下による保育が単なる子守り程度の仕事になる。
それから2つ目に、企業が株主に対してまず第一義的な責任を有することから、保育士と父母との協働が困難になる。
3つ目により多くの資源を必要とする障害児などの特別なニーズを持つアクセスが困難になると、障害児保育についてはなかなか難しいということになっている

というふうに指摘をしています。そういった中で、企業立保育園と公立や社会福祉法人の保育条件では、こういった児童福祉法から見ても、子供の保育環境を条件として、ふさわしいかどうかということをちょっと聞きたいんですけれども、あくまでも営利企業でも同じように。保育の条件としてはどちらがふさわしいというふうにお考えなのかお聞きします。

(児童福祉課長)
 先ほども申し上げましたけれども、社会福祉法人以外の者、いわゆる株式会社でもそうですけれども、それと設置する保育所においても、児童福祉法でありますとか、国の通知に基づく児童福祉最低基準の遵守義務というものは課せられておりますので、私どもといたしましては、児童の適切な処遇は確保されるというふうに考えております。

 そういうふうに考えておられるということなんですけれども、事実はこうやはり違うということを是非分かっていただきたいんですが、日本の今までの保育制度そのものがどんどん基準を緩和してきて、どんどん詰め込みをして待機児の解消を図ってきた。

 それは子供から見たら、本当に詰め込まれる子供から見たら、この条件が悪くなるということに間違いないわけですから、そういう意味では、日本がこの間、厚労省がこういった保育所業務への企業参入を容認してきたこと自体が、私は元からそこら辺が問題だとは思っているんですけれども、今後また在り方検討で、公立保育園の在り方を検討されていくんだと思うんですけれども、是非「子どもの権利条約」第3条1項、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする」という、こういったことを是非考慮して慎重に検討を進めていただきたいということをお願いしたいんですけれども、その点最後にお願いいたします。

(児童福祉課長)
 委員御指摘のように、「子どもの権利条約」でありますとか児童福祉法の趣旨を踏まえながら、子供にとって最善の利益が考慮されることを念頭に置きながら、今後慎重に進めてまいりたいというふうに考えております。

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