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2010年2月16日 本会議 皆川けいし議員の包括外部監査報告に対する質疑

  「広島市立大学における事務の執行及び資産の管理」に関する監査結果について
  

(皆川けいし議員)
 今回市立大学を選定した理由として、報告書は「この4月からの公立大学法人への移行を前にして、これまでの市立大学への投資に対する成果(費用対効果)などの検証を行うことは、公立大学法人への移行を適切に実現するために有意義だ」と述べています。
 市立大学の法人化について、日本共産党市議団は「学問の府である大学に効率化と競争原理を持ち込み、大学を疲弊させることになる」として反対しました。
 自民、公明政権が「大学の構造計画」としてすすめてきた独立行政法人化のもとで大学運営費が毎年削減され、今多くの国立大学が財政逼迫による教育、研究基盤の弱体化、基礎研究の衰退、大学間格差など極めて深刻な事態に陥っています。
 大学の現場では「研究室や図書館で購入する図書や学術誌が激減した」「実験機器の更新ができず、授業に支障がでている」「教員の研究費は大幅に減額され、年間15万円の研究室も少なくない」「職員の業務は増大し、サービス残業が蔓延している」など悲痛な声が上がっており、日本学術会議も「国立大学法人化と共に、大学の基本的運用資金の定率削減によって大学の疲弊は顕著であり、多様な基礎研究を推進する体制は極めて脆弱化しており、早急な対策を講じることが望まれる」と提言しています。
 ところが、今回の包括外部監査は、市立大学が、これから法人化のもとで「競争に打ち勝つ」ための具体的な「処方箋」を数多く示して、その対策を大学に迫る内容となっています。その特徴は、「効率的運営」と「自主財源の確保」という名目のもとに、授業料減免基準の見直し、学生寮の寮費の値上げ、食堂、喫茶、売店等の値上げ、教員住宅使用料の値上げ、教職員の人件費の見直し、教員研究費の配分枠の見直し、外部資金の獲得強化等々、あらゆる分野にメスを入れて、教職員や学生に大幅な負担増と業績競争を強いる内容となっています。
市の直営化では決してできないことが、「独立行政法人」の名の下にこうしたことがおこなわれるとすれば大問題です。
 まさにわが党が指摘したように、建学以来15年来培ってきた広島市立大学の建学の理念が歪められ疲弊してゆくことを心から憂えるものであります。
 そうした立場から今回の包括外部監査を踏まえ、数点お尋ねします。

 まず、市立大学に対する運営費交付金は市立大学の教育、研究を今後ともしっかりと支える要の予算ですが、この予算は法人となっても、市が責任を持ってしっかりと支えるんだということを約束していただきたいがいかがですか。

(市立大学事務局長)
 広島市立大学法人化に伴う対応についてですが、中期目標については、市が定めて大学に示すことになります。 現在、大学は市と同じ立場ですので、大学が素案を策定し、4月以降は市長部局におきまして、中期目標の最終的な素案が策定されるという流れになります。最終的には6月議会におきまして、中期目標を提案するという流れになります。大学としては、中期目標が市から示された時点で、中期計画の策定に入ることになります。
 法人移行後、大学は自己責任において経営していきます。包括監査結果の様々なご指摘については、法人にとって非常に貴重な意見をいただいていると受け止めています。
 しかしながら、意見交換においては、会計監査人とは意見の対立した局面もありました。大学としては、学生支援の視点について少し違った観点が必要であると考えています。学生支援の充実というのは、法人経営の観点もさることながら、大学運営という意味では非常に重要な視点となりますので、今後とも堅持していきたいと考えています。
 運営交付金については、この度、平成22年度の運営交付金の予算を提案しています。大学の立場としては、法人発足時の運営交付金として必要十分なものと受け止めています。今後ともこういった基本的な水準が維持されることを期待しているところです。

(皆川けいし議員)
 監査報告書のなかにも出てきますが、研究費の予算が、平成12年度を100とした場合、平成20年度は0.319と大幅な減少となっています。そのため、各学部の平均配分額は、国際学部で教員1人当たり年間35万円、芸術学部では48万円、情報科学部では1研究室当たり108.9万円となっています。月に直すと僅か3万円〜4万円です。これでは研究会にも行けない。学術書も満足に買えません。研究費は、大学の命ではありませんか。その費用をなぜこんなに削ってきたのか、その理由を教えてください。

(市立大学事務局長)
 市立大学の教員研究費は、平成18年度予算において、平成12年度予算に対して、約30%の規模まで減額しております。
 これは平成13年度から平成18年度にかけて本市の予算編成方針によるシーリングの対象経費となり、年々削減したことによるものです。
 ただし、平成19年度以降は、市立大学の教育・研究環境を維持するといった趣旨から、平成18年度予算の水準を確保しております。

(皆川けいし議員)
 次に学生の負担についてですが、現在、世界の主要国の大半は、高校だけでなく大学の学費も無償となっています。国連の国際人権規約でも高等教育は無償化すべきとなっています。これは若い世代への投資は、将来社会の貴重な財産になるからという見地に立っているからです。
 ところが日本は世界一高い学費となっています。監査報告書によると、平成21年7月現在で1,739名の学部学生のうち各種奨学金を受けている学生が826名、47.5%となっています。大学院生では55.4%、実に半数以上が奨学金で学業を続けています。 一方、授業料の減免が適用されている学生は、僅か71名、43%しかいません。
 いま多くの大学では、経済的理由で就学困難な学生に対して、減免基準を大幅に緩和するところが、今回の監査意見では、「不要な経費を削減」するために、学費減免基準をもっと厳しく見直すことを提言しています。
 また、現在96名が入っている学生寮の寮費も「独立採算の観点」から見直すことを求めています。現在、学生の福利厚生のために、安い食堂や売店も、後援会運営をやめて、大学直営にして、使用料や高熱水費を上乗せすべきだとも言っています。
 なんでもかんでも「受益者負担」ということで学生に負担を押しつける。こんなことをやったら、市立大学に対する信頼は失われかねません。結果的には大学の評判を落とし、親や受験生から見捨てられ大学間競争にも負けることになりかねません。まさに「貧すれば鈍す」です。
 今でも、様々な援助を受けて学業に励んでいる学生には、さらに暖かい支援こそ必要であり、負担を大幅に増やすなどもっての外です。
 市立大学として、これ以上学生の負担は増やさない、学費の減免規定も緩和して、経済的支援をもっと充実してゆくお考えはありませんか。

(市立大学事務局長)
 近年、大学におきましては、経済的な支援のみならず、学業の継続、就職活動など、学生への様々な支援が重要な課題となっています。
 今後とも学生が安心して学業を続けていけるよう支援制度の充実に努めていきたいと考えています。


(皆川けいし議員)
 監査報告書は最後に広島平和研究所と広大な未利用地の問題についても述べています。法人化に伴って、このふたつの今後のあり方についてどう考えておられるのか、最後に伺って、質疑を終わります。

(市立大学事務局長)
 土地開発公社が保有する大学用地につきましては、大学の教育・研究機能のより一層の充実・向上を図るために必要な用地であると考えており、これまでも、その活用の可能性について検討を行ってまいりました。
 法人化にあたっては、市が定める中期目標に基づき、今後6年間の中期計画を策定することとなっており、教育・研究機能の充実のための施設整備についても、その計画の中に位置づけ、検討していくことになります。
 その活用策としましては、「セミナーハウス機能を持った宿泊施設の整備」や「市民や海外からの教員・学生との協働作業空間ともなる創作・展示施設の整備」あるいは「広島平和研究所の移転整備」など、大学の将来の充実・発展を見据えた施設の整備を、引き続き検討していきたいと考えています。



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