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2009年6月25日 本会議 一般質問 皆川けいし議員

「核兵器のない世界」と憲法九条を守ることについて
   核兵器廃絶を初めて打ち出した米国の前向きな変化
   世界の流れに逆行する憲法改悪の動き
   被爆の実相の徹底解明を
   被爆2世・3世の把握を急ぐべき
今こそ市は市民のくらしと雇用を守る先頭に立つべき
介護保険10年目を迎えて
   国に国庫負担割合の引き上げを求めよ
   市として低所得者対策に最大限の努力を
   「保険あって介護なし」が一層深刻に
中小零細業者への応援について

(再質問)
残留放射能や内部被曝の影響に初めて光を当てた判決
残留放射能や内部被曝について市民理解深める取組を 
市域外も含めた「黒い雨」実態解明調査を
被爆二世、三世の把握に市として努力を



「核兵器のない世界」と憲法九条を守ることについて

核兵器廃絶を初めて打ち出した米国の前向きな変化
(皆川けいし議員) 
 今、核兵器廃絶と憲法9条を守る運動が重要な局面を迎えています。
 4月5日、米国のオバマ大統領が行ったプラハでの演説は、世界に大きな問題を提起するものとなりました。
 それは、(1)米国大統領として初めて「核兵器のない世界」を追求することを米国の国家目標とすると宣言し、(2)広島・長崎への核兵器使用が人道的道義にかかわる問題であることを初めて表明するとともに、(3)核兵器廃絶に向けた米国の責任について触れ、世界の諸国民に協力を呼び掛けています。
 日本共産党は4月28日、オバマ大統領宛てに書簡を送り、この演説を歴史的意義を持つものとして歓迎の意を伝えるとともに、「大統領のイニシアティブで核兵器廃絶を目指す国際交渉を早急に開始してほしい」と強く要請しました。
 これに対して5月16日、米国政府から「日本共産党の情熱への敬意と日本政府にも協力してもらいたい」旨の返書が届けられました。こうした返書が送られてきたことは、核兵器廃絶に対するオバマ大統領の真剣さと熱意を示すものであり、また、米国政府から日本共産党に対して歴史上初めて返書が送られてきたことは、今、米国社会が大きく変わりつつあることを示していると思います。
 オバマ大統領のプラハ演説を契機として、核兵器廃絶が決して空想的なものではなく、現実のものとなる可能性を多くの人々が感じ出している中で、広島市をはじめとする世界平和市長会議が提唱している2020ビジョンと、それに基づく「ヒロシマ・ナガサキ議定書」の持つ意味が更に大きくなっています。
 特に来年のNPT再検討会議に向けた、これからの一年間の国際世論の動きは重要です。唯一の被爆国、日本で、「核兵器廃絶を目指す国際交渉を開始せよ」の世論を広げに広げようではありませんか。
 同時に、オバマ大統領に「核の傘」の強化しか求められない情けない日本政府に対し、唯一の被爆国の政府として核兵器廃絶の先頭に立つよう強く求めるべきだと思いますが市長の所見をお伺いしたい。

(市長)
 世界の核兵器をめぐる状況は依然として危機的であり、人類はここ数年のうちに「核兵器を廃絶するのか」それとも「全ての国が核兵器を保有するのか」を決断する重大な岐路に立っています。来年5月のNPT再検討会議は、人類の命運を左右すると言っても過言ではない重要な会議になると考えています。
 この会議に向けて1年足らずとなった今、世界の都市や市民、NGO等との連携をさらに強め、2020年の核兵器廃絶の実現に向け、これまで以上に力を尽くさなくてはなりません。
 本市では、これまでも日本国政府に対して、一貫して核兵器廃絶に向けた積極的な外交を展開するよう求めてきました。
 こうしたことを受けて、政府においても毎年、国連総会に核廃絶決議案を提出するなど核兵器廃絶に向けた国際世論の醸成に取り組んで頂いています。
 特に、最近では日豪両政府の主導により設置された「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」が注目されています。
 今月モスクワで開催された第3回会合には、私が招請を受けて出席し、平和市長会議が進める「ヒロシマ・ナガサキ議定書」の採択への協力を求めるとともにヒロシマの心を訴えました。10月に広島で開催される最終会合が実り多いものになることを期待しています。
 また、今年4月のオバマ米国大統領のプラハでの歴史的演説を受けて、中曽根弘文外務大臣が、全ての核保有国に核軍縮に向けた具体的な行動を求めるとともに、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効などによる核実験禁止や、兵器用核分裂性物質の生産禁止等に関し国際社会全体としての取り組みなどを求めた「ゼロへの条件―世界的核軍縮のための『11の指標』」を発表されました。
 その方針には、核兵器廃絶の期限が設定されていないなど不十分な点もありますが、これまで以上に積極的な取り組みを展開されていると受け止めています。
 こうした中、今月中旬には、衆参両議院において政府に核兵器廃絶に向けた取組強化を求める決議が全会一致で採択され、立法府としても核兵器廃絶に向けた積極的な意思を明確に示されています。
 日本国政府には、こうした核兵器廃絶に向けた流れをより確実にする一歩を踏み出して頂きたいと考えており、本市としては、国要望や平和記念式典などの機会に、政府に対し本市が平和市長会議とともに取り組む「2020ビジョン」を全面的に支持することや、核兵器廃絶に向けた積極的な外交を展開することなどを要請してまいります。

世界の流れに逆行する憲法改悪の動き
(皆川けいし議員) 
一方、憲法を守る運動も重大な局面を迎えています。2年前の改憲手続法の成立に続いてこの6月11日、憲法改定に道を開く憲法審査会の規程案が衆議院で与党単独で強行されました。
 核兵器廃絶を求める運動と憲法9条を守り生かす運動は、戦後の日本国民の平和を求める戦いの二つの柱として発展してきました。
 憲法9条には「政府によって二度と戦争を起してはならない」という決意と共に、「核戦争を絶対に阻止したい」という願いが込められており、それを世界の人々に呼びかけたところに、この条文の世界史的な意義があります。
 今、世界は大きく変わりつつあります。軍事力にモノを言わせて、世界を支配する時代は終わりつつあり、どんな問題でも話し合いで平和的に解決する新しい時代が到来しつつあります。今こそ日本国憲法9条の出番となる情勢です。こうした世界の流れに逆らう日本の動きは、「核兵器のない世界」を実現するためにも絶対に許してはなりません。
 国会での危険な動きをふまえて、憲法9条を守ることについての市長の見解を改めてお伺いします。

(市民局長)
 我が国は、過去に対する真摯な反省と新しい日本を建設するという決意の下に、前文と第9条に示された平和主義を基調とする、世界にも類例を見ない画期的な内容の憲法を持つに至ったものと考えています。
 ヒロシマは、憲法前文にうたわれた人類全体の公正と信義を求める心を信頼しようとする考えに立ち、国際社会での紛争の解決や抑止にあたっては、武力ではなく対話による平和的解決の道を探ることが何よりも大切であると考えています。
 日本国憲法第99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と規定しています。
 本市では、平成14年(2002年)の平和宣言で、この憲法第99条を引用した上で、「この規定に従うべき日本国政府の役割は、まず我が国を「他の全ての国と同じように」戦争のできる、「普通の国」にしないことです。すなわち、核兵器の絶対否定と戦争の放棄です。」と述べるなど、毎年、平和宣言で憲法前文と第9条に示された平和主義を基調とする日本国憲法の重要性やその擁護を訴えています。
 このたびの「衆議院憲法審査会規程」の制定に対しても、市長コメントを発表し、国民の多くが納得できる慎重な議論の必要性と、国民の十分な理解を得ず改正スケジュールが加速されることへの危惧を改めて表明しました。
 本市としては、憲法の平和主義の実質が損なわれるような改正案が発議された際に、市民を始め広く国民に適切な判断をしてもらえるよう、今後とも、平和憲法の重要性を様々な機会を通じ訴えていきたいと考えています。

被爆の実相の徹底解明を
(皆川けいし議員) 
 「核兵器のない世界」へ向けた、この間のもう一つの大きな出来事は、一連の被爆者認定訴訟で国の認定基準が断罪され、根本的な見直しが求められていることです。
 オバマ大統領は「世界で最初に原爆を投下した国の道義的責任」に触れましたが、その道義的責任の中には、原爆を投下したということだけでなく、その原爆が長期にわたって人間を苦しめ、殺し続ける悪魔の兵器であることを隠蔽し、核兵器使用と核抑止論を合理化してきたことも含まれなくてはなりません。
 今回の一連の被爆者認定訴訟の勝利が意味することは、そうした米国政府の核政策に追随し、原爆の影響を過小評価する認定基準にしがみついてきた日本政府の基本姿勢そのものが断罪されたところにあります。
 一連の被爆者認定裁判の集大成といわれる東京高裁判決は、(1)線量評価の基礎となるDS86は、残留放射能や内部被曝による線量評価に問題があること、(2)そのDS86を用いた「原因確率」についても、一律に10%、50%の基準値を設定したことは問題であること、(3)放影研の疫学調査は絶対ではなく、慢性肝機能障害及び甲状腺機能低下症も原爆放射線と関連性がある―として、「国の審査方針は判断基準として適格性を欠いており、対立する科学的な知見がある場合には、厳密な学問的な意味における真偽の見極めではなく、それを前提として全証拠を統合して判断すべき」と指摘しています。
 これとは別に、広島市にとっても重要な救護・看護被爆、いわゆる3号被爆者裁判の広島地裁判決も下され、「閉鎖された部屋の中に一定時間滞在すれば、被爆者に接触したかどうかに関係なく室内に滞留した放射線の影響を受ける」とし、「10人以下の救護活動や救護活動に携わらない子どもはダメ」とする審査基準は合理的でないとされました。
 この一審判決を受け入れた市長に敬意を表します。こうして、これまで日米両政府の隠蔽政策によって科学的に明らかにされてこなかった残留放射能による全体像は、原爆投下64年を経て、今ようやく光が当てられようとしています。
 そこでおたずねしますが、この一連の判決を広島市はどのように受けとめておられますか。

(健康福祉局長)
 原爆症認定訴訟の一連の判決では、放射線と疾病との因果関係が否定できない限り原爆症と認定すべきであるとして、国が積極的に認定する疾病としていない甲状腺機能低下症や肝機能障害についても認められるなど、国の認定基準を超えた判断が示されました。
 こうした点において、被爆者がより幅広く救済される内容の判決であると考えています。


(皆川けいし議員)
 国に対して認定基準の抜本的な見直しと、一刻も早い「一括解決」を求めていただきたいが、いかがですか。

(健康福祉局長)
 原爆症認定の問題については、広島市として、これまでも、広島・長崎原爆被害者援護対策協議会、いわゆる八者協などを通じ、国に対して、早期解決を図るよう求めてきました。
 国は、5月28日の東京高裁判決を受け、上告を断念し、解決策を検討すると表明し、6月22日には、2つの疾病が積極的に認定する対象に追加されました。
 本市としては、高齢化し病気に苦しむ被爆者の一刻も早い救済のため、一連の司法判断を踏まえ、この問題が全面解決されるよう、改めて国に強く要望を行います。


(皆川けいし議員)
 3号被爆の認定基準は、いつまでに見直しをされるのか、その作成に被爆者団体や弁護士などの意見を聴くのかどうかおたずねします。

(健康福祉局長)
 3月25日に、広島地裁での3号手帳裁判において、救護看護の認定要件が妥当性を欠くなどとして、本市の行った却下処分を取り消す判決が出されました。本市としては、判決の内容を重く受け止め、また、高齢化した被爆者のことを考慮し、控訴しないこととしました。
 その後、4月14日に広島・長崎の4県・市の被爆者健康手帳の審査担当課長会議を開催し、3号手帳の審査指針の見直しに着手しました。現在、検討作業を進めており、今後、3号手帳裁判の原告弁護団をはじめとする専門家への意見聴取や、厚生労働省との協議を行い、できるだけ早期に新しい指針を定めるよう鋭意努力します。

(皆川けいし議員)
 残留放射能による被爆の全体像を明らかにする上で、「黒い雨」降雨地域の実態解明は残された最も大きな課題といわねばなりません。
 内部被曝と残留放射能の影響を認める立場に立てば、「黒い雨」降雨地域の小雨地域も大雨地域と同じ第一種健康診断受診者証交付地域に指定し、小雨地域の外側についても再調査し全ての降雨地域に手帳交付するのは当然です。
 まず小雨地域を大雨地域と同様の地域に指定させることですが、これまで、広島市も一員である八者協議会は、このことを国に対してずっと要望してきましたが、「新たな被爆地域の指定については、科学的、合理的根拠がある場合に限って認める」という国の厚い壁に阻まれて、未だにこの要望は実現していません。
 しかし、これまで「小雨地域」とされてきた地区の住民が、地域指定の拡大を求めて粘り強く要望活動を繰り返しておられますが、その中の一つ、「佐伯区黒い雨の会」が行った住民の聴き取り調査では、「1才〜9才」までの年齢で「黒い雨」にズブ濡れになった人にガン・肝臓障害、甲状腺障害などの疾病が異常に多く、残留放射能の影響を抜きにしては考えられない結果がくっきりと出ています。
 副会長の小川さんは「小さい頃に黒い雨に打たれた人ほど病気が多い」といっておられます。今回の東京高裁で認定された方の中にも、広島の爆心地から5kmの自宅で会った「黒い雨」による内部被曝の可能性は否定できないとして、肝細胞ガンの認定を受けた方もおられます。
 市は被爆による精神的影響に着目して、これまで1万人アンケート、そして現在3万人アンケート調査に取り組んでおり、それはそれで大切なことだと思いますが、精神的影響の有無にかかわらず、内部被曝と残留放射能の影響を認める新たな知見に立って、被爆地域の拡大をもっと正面から国に迫るべきだと思います。この点での市の見解を伺いたい。
 2点目に「黒い雨」降雨地域の実態解明についてです。
 私どもは、これまで機会あるごとに「黒い雨」降雨地域の再調査を求めてきました。「一体雨がきれいな卵形に降るのか」「雨が川や行政区を境に降るのか」誰が考えてもおかしいこの素朴な質問に対して未だに納得できる回答はありません。
 被爆直後、現地調査に歩かれた広島気象台の北技手も「当時、聴き取りサンプル数がなかったので不確実性を承知で線引きしていった」「今からでも努力すれば、それなりの資料が得られるのではないか」と後日おっしゃっています。現在の卵形の降雨地図をつくった当事者が「不確実なものだ」と認めておられるわけです。ですから誰が考えても再調査をすべきなのです。ところが市はこれまで「検討させてほしい」というだけで一向に動こうとされておりません。
 2000年(平成12年)の2月定例会では、わが党の石川武彦議員が質問時間の大半をこの問題にあて、「地域の見直しの必要なし」とした1991年の「黒い雨専門家会議」の報告書に対する疑問点をあげて市の見解を求めています。
 石川議員が指摘した疑問点は4つ。
 第一は、降雨の実態を調べる上で最も大事な現地調査をせず、シミュレーションだけで確定するのが果たして合理的、科学的と言えるのか。
 第二は、降雨地域確定と放射能汚染に大きな意味を持つ原爆のキノコ雲の高さは12kmとみるのが最も合理的とされているのに、8kmと断定して入力していること。
 第三に、放射性物質の降下範囲に影響を与える原爆投下後の広島の大火災は、午後1時15分までにはほとんど鎮火したとなっていますが、これは当時の多くの証言や広島気象台の宇田博士の調査報告書とも合致しない、全く信用できないでたらめなものであること。
 第四に、どこにどれだけの雨量が降ったかという肝心の雨量分布図がどこにも示されていないこと。
 以上4点をあげて、「黒い雨専門家会議」の報告書は到底真実を究明したものとは思えないと述べましたが、これはいまでも全くその通りです。
 ちなみに、この「黒い雨専門家会議」は人体への影響についても「黒い雨地域における残留放射能の現時点における残存と放射能によると思われる人体影響の存在を認めることができなかった」としていますが、名古屋大学の沢田名誉教授や琉球大学の矢ヶ崎教授によれば、残留放射能は原爆直後の8月30日の集中豪雨や9月17日の枕崎台風などの豪雨で洗い流されており、今となっては、物理的測定は不可能であり、被爆実態を踏まえた生物学的方法が重要になってくる―と述べています。
 ところが専門家会議は、はじめから測定不能と予測できた物理的手法のみに依拠して、それに替わる手法の必要性については一言も述べていません。ここでいう「生物学的方法」とは、文字通り、放射性降下物が降り注いだ地域全体の人々を対象とした疫学調査を行ってこそ可能ということになります。
 この疫学調査と黒い雨の降雨範囲の実態調査は、一体のものとして取り組むことができるはずです。実は、これに近い調査が過去に一回だけ行われたことがあります。
 それは1973年(昭和48年)11月に、広島県と広島市が分担して「黒い雨」降雨地域を一部でも含む被爆当時の17町村の住民を対象にした2万人アンケートです。このアンケートは、降雨地域の実態を明らかにする上で、今でも貴重な手掛りとなり得るはずですが、残念ながら原票は殆ど廃棄されたといわれています。しかし、当時の湯来町がこの原票を小字毎に集計したものは残っています。また後年、気象庁の増田博士が行った膨大な資料もあります。それらを生かせば、もっと真相解明に迫れるはずです。
 「黒い雨」地域の実態解明と言うのは、単に被爆者手帳の交付範囲を拡大してほしいと言うだけの問題ではありません。広島に落ちた、たった一発の原爆ですら、どれほど大きな被害を市民に与え、気象の大きな変化をもたらしたか、残留放射能汚染をどんなに広い地域に広げたかなどの原爆被害の実態を明らかにするという問題であります。
 被爆の実相を明らかにして後世に伝えるのは、広島市の最も崇高な使命であります。そういう点で見ますと、今もって真実の姿が明らかにされていない「黒い雨」地域の問題というのは放っておけません。
 被爆直後に苦労して「黒い雨」の調査を行った宇田博士の哲学は、「災害研究の出発点は現地にあり」というものでした。今こそ、この精神に学び、広島市が先頭に立って、あらゆる手法を駆使して「黒い雨」の実態解明に踏み出すべき時だと思います。このことについての市長の決意をお伺いします。

(健康福祉局長)
 人類初の被爆都市である本市には、原爆被害の実相を明らかにしていく使命があり、その中で、黒い雨の実態解明を進めていくことは重要であると考えています。
 平成3年(1991年)に出された黒い雨専門家会議の報告書においても「今後はさらに研究方法の改良等により、黒い雨の実態解明に努力する必要がある。」とされています。
 被爆後64年が経過しようとする中で、残留放射能などの物理的な検証は困難な状況にあることは事実です。
 その一方で、専門家会議の報告から18年経ち、実態解明のための科学水準が向上している状況もあります。
 こうしたことから、昨年度着手した原爆被爆実態調査研究の一環として、原爆による黒い雨など、放射性降下物等の実態解明に向けて、放射線物理学や気象等の専門家と積極的に意見交換を行い、新たな知見や検証方法等について情報を収集しています。
 一方、被爆地域の拡大については、昭和51年(1976年)に降雨地域の一部が「健康診断特例区域」に指定された後も、本市では国に対し、降雨地域全域を指定するよう様々な機会をとらえて要望してきましたが、未だに実現されていない状況にあります。
 このため、本市では、昨年度、原子爆弾被爆実態調査研究の一環として、被爆者や黒い雨体験者等を対象とした原爆体験者等健康意識調査を実施しました。
 約3万5千人を対象にしたこの調査においては、黒い雨の指定地域(いわゆる宇田大雨地域)以外の場所において黒い雨を体験された方々を対象に含めており、精神健康上の影響だけでなく、身体的影響や黒い雨の降雨状況等についても調査を行っています。
 現在、この調査データの解析作業を進めており、今年度中に取りまとめを行います。
 その結果や、様々や分野の専門家と積極的な意見交換の中で得られた新たな知見等も踏まえて、黒い雨の実態の解明を進めるとともに、国に対し、改めて被爆地域の拡大を要請していきたいと考えています。


被爆2世・3世の把握を急ぐべき
(皆川けいし議員)
 この問題の最後に、被爆2世・3世の問題について市長の見解を伺います。
 現在、市は被爆2世・3世の把握はしていないと聞いています。検診でも、本人が2世といえば検診すると言う状態です。これから高齢化が進む中で、被爆2世が誰かを、市が今把握しておかないと将来困ることになります。
 東京都や神奈川県では、一定の条件で2世の医療費を補償しています。山口県では治療記録もできる「2世手帳」を発行しています。
 広島市として10年後、20年後のことも考え、被爆2世・3世の実態把握を急ぐべきだと思いますがいかがですか。

(健康福祉局長)
 被爆二世と被爆三世への施策については、本来、被爆者と同様に国の責任においてなされるべきであり、その実態の把握については、基本的に国が行うべきであると考えています。
 仮に本市が調査を行う場合、手段としては、過去に本市が被爆者健康手帳を交付した被爆者約22万人を対象に調査を行うことが考えられます。
 しかし、そのうち既に亡くなった被爆者約9万人については、葬祭料を申請した遺族等に対して調査することが考えられますが、個人情報保護の観点から、基本的にはできません。また、市外に転出した約6万人については、被爆者の現住所の把握ができないケースが多いと予想されます。
 さらには、手帳を持たない被爆者の問題もあります。手帳制度が始まった昭和32年度(1957年度)よりも前に亡くなった被爆者など被爆者健康手帳の交付を受けていない被爆者については、親である被爆者を特定し、その子や孫を調査することは困難です。
 また、調査を行った後においても相当数の転入出が予想されるため、結果はすぐに実態とは離れたものになります。
 こうしたことから、被爆二世・三世を把握するためには、市域を超えた調査を継続していくことが必要になります。
 このような大規模で継続性を求められる調査については、被爆二世・三世が全国で居住していることからも、国において実施すべきものであると考えています。


(皆川けいし議員)
 せめて山口県のように、本人が希望すれば病歴も記入できる2世・3世の手帳を発行すべきだと考えますがいかがですか。

(健康福祉局長)
 現在、被爆二世の健康管理に資するため、被爆二世健康診断を行っています。これは、平成13年度(2001年度)から、本市が国の委託を受けて、希望者に対して実施しているもので、昨年度は、約6,400人の被爆二世の方の受診がありました。
 この健診結果は、実施医療機関から受診者個々に通知されており、健診記録を健康管理に役立てるということからも、受診者個々で主体的に管理することが原則であると思います。
 このため、現在すでに、主たる実施医療機関である財団法人広島原爆障害対策協議会において、健診結果を記録し健康管理を行うための「被爆者二世健診成績報告書」という名称の手帳が配布されていますので、本市としては、これを他の医療機関での受診者にも配布できないか、原対協と協議してみたいと思います。

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今こそ市は市民のくらしと雇用を守る先頭に立つべき

(皆川けいし議員)
 今「格差と貧困」の広がりは、市民の間でも本当に深刻です。
 私ども日本共産党市議団は、ハローワーク前をはじめ街頭でも生活相談を行ってきていますが、「一週間水しか飲んでいない」人とか「手持ち金がゼロ」という人たちが本当に多く、ここまでひどいのかと私たち自身もびっくりしています。
 なぜこれまで相談しなかったのかと聞くと、「若いうちは生活保護はダメだと聞いていたから」とか「こうなったのは自分の責任だと思って、なかなか人に相談できなかった」というのです。「自己責任論」が若者たちだけでなく多くの国民を立ち直れないところに追い込んでいるとつくづく思いました。
 相談に来る人はまだいい方です。中には生きる希望を失って自ら命を絶つという人もいます。これだけ豊かだといわれている国で、なぜこうした人が増えているのでしょうか。その最大の原因が雇用の破壊にあることははっきりしています。
 そこで2点だけおたずねします。
 一つは、路頭に迷っているこうした若者や市民に対して、今こそ自治体がもっと積極的に救いの手を差し伸べるべきです。役所に相談に来るのを待つだけではなく、市長を先頭に派遣村のような総合的な相談会を行政としてもやったらいかがでしょうか。私たち議員も喜んで協力します。ぜひ一緒にやりましょう。

(市民局長)
 景気の後退や雇用情勢の悪化により、離職を余儀なくされた市民が生活に困ったとき、適切に相談が受けられるよう、(1)主な相談窓口と支援制度について、広報紙「ひろしま市民と市政」2月1日号と4月15日号に特集記事を掲載するとともに、(2)各区役所総合案内やハローワーク等に、主な相談窓口と支援制度を掲載したチラシを配布するなどして、市民への周知を図っています。
 離職した市民からの主な相談項目である福祉や税金、教育等については、内容が専門的で多岐にわたるため、それぞれの部署で責任を持って対応することが基本であると考えており、今後ともそれぞれの部署で適切に対応します。


(皆川けいし議員)
 二つは、マツダが行ってきた雇用破壊に対して、もっと厳しく「雇用を守れ」といってほしいと思います。
 この間の国会での質疑により、マツダが昨年末から行ってきた派遣切りは法違反だということが明らかになり、これを受けて去る6月4日、広島労働局はマツダに対し「職業安定法第44条」に違反するとして、「派遣切りにあった労働者の雇用安定を行う」よう指導を行いました。
 ところが、マツダはこれに対して「過去に法違反はない」と開き直っています。つまり国の行政処分を認めないと言っているわけですが、こんなことが許されるはずがありません。舛添厚生労働大臣は国会で「申告者を含めた雇用安定の措置がとられることがマツダに是正指導を行う目的だ」と答弁しています。
 広島市がこの3月、市長名で「雇用の安定」についてマツダ社長に申し入れをされたことは評価しますが、今回、労働局からはっきり法違反の指導がなされたことを踏まえて、あらためてマツダに対し、労働局の指導を真摯に受け入れ、雇用の安定と拡大に向けた適正な是正を行うよう申し入れるべきではありませんか。

(市民局長)
 企業に対する労働関係法令の遵守や違法・脱法行為の是正などの指導は国の権限に属するものであり、マツダに対する指導等は、広島労働局において適切に処理されているものと考えております。
 今回の是正指導について、マツダに確認したところ、「広島労働局から、労働者派遣事業及びその受け入れのより適切な運営を確保するための指導を受けました。今後、指導に従って、問題がないか点検・確認し、今回の指導を将来に向けどのように生かすか、真摯に検討していきます。」とのことでした。


(皆川けいし議員)
 また、これに関連して新球場の命名権について伺います。
 新球場の命名権契約では、命名権取得企業に法令違反行為があった場合はどうなっているのか。

(都市活性化局長)
 マツダスタジアムの命名権契約においては、「マツダの違法行為その他マツダの責めに帰すべき事由により、マツダの社会的信用が失墜し、命名権名称等の使用が困難となったと本市が認めたとき」には、本市が契約を解除できることになっています。

(皆川けいし議員)
 他球場で、命名権の契約解除に至った例があるのか。

(都市活性化局長)
 他のプロ野球場において、命名権の契約解除に至った事例としては、過去にフルキャストスタジアム宮城とグッドウィルドームの2例があります。
 これらはいずれも、命名権の契約期間中に、労働者派遣事業者である命名権取得企業が、労働者派遣法で禁止されている業務への派遣を行うなどの法令違反を行ったことを理由に、派遣事業停止命令を受けた事案であり、処分内容は東京労働局から公表されています。
 また、2例とも、命名権取得企業自らが事案の重大性を認めて、契約解除の申し出を行っており、業務停止命令を受けたという社会的影響の大きさに鑑み、契約解除に至ったものと聞いています。


(皆川けいし議員)
 今回、マツダが広島労働局から明確な法令違反の是正指導を受けたが、広島市としてはどのような対応をするのか。

(都市活性化局長)
 去る6月4日にマツダが、広島労働局から労働者派遣法に基づく是正指導を受けたとの報道発表を行いました。
 これについて、本市としてマツダへ確認したところ、同社から次のような回答を得ました。
 「労働者派遣法によれば、マツダへの派遣期間が終了した労働者を引き続き、マツダが期間従業員として雇用する場合においては、当該期間従業員と元の派遣会社との支配従属関係は解消されていることが必要となるが、広島労働局の調査の結果、『こうしたことが充分に確認できず、派遣可能期間を超えているとみなされる恐れがあることから、これらについて違反がないか点検し、違反があれば必要な是正を行うこと。』という指導を受けた。マツダとしては、過去に法の趣旨に反する事例があったものと見なされた可能性があり、引き続き、指導に基づく点検を行っている。」との見解でした。
 さらに、本市として、広島労働局に対して今回の指導について照会したところ、「個別企業の事案に関することで、コメントできない。」とのことでした。
 今回のマツダに対する是正指導については、(1)他球場の命名権契約解除の事由が、派遣事業停止命令等の非常に重い行政処分によるものであるのに対し、今回の事案は指導に止まっていること、(2)社会的にも命名権名称等の使用が困難という状況にはないことから、現時点において直ちに、命名権契約の解除を行う状況にはないと考えています。
 マツダにおいては、今後とも、地場を代表する企業として、また、命名権取得企業として、より一層の法令順守に努めていただきたいと考えています。

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介護保険10年目を迎えて

国に国庫負担割合の引き上げを求めよ
(皆川けいし議員)
 介護保険制度は、この4月で10年目を迎えました。この間、介護サービスの総量は増えましたが、社会保障切り捨ての「構造改革」のもとで、負担増や介護取り上げが進み、家族介護の負担はますます重くなり、1年間に14万人が家族の介護などのために仕事を辞めています。保険料、利用料の負担が重いため、制度を十分利用できない低所得者も少なくありません。介護を苦にした痛ましい事件も相次いでいます。介護現場の劣悪な労働条件の改善も急がれます。
 ところが現在の介護保険は、利用が増えたり労働条件を改善すれば、ただちに利用者の負担増につながる根本矛盾を抱えています。そのため、政府自身も人材不足の改善のために4月から介護報酬を引き上げるにあたり、保険料値上げを抑えるため、これまで自治体には厳しく禁じてきた介護保険会計への一般財源(1,154億円)の繰り入れを決めました。もはや、従来の枠組みの破たんは明らかです。
 介護保険制度で国民の負担が重い最大の原因は、介護保険制度が始まった時にそれまで介護費用の50%だった国庫負担割合が25%とされ、それがさらに実質で22.8%まで引き下げられているからです。国に対して、国庫負担割合の引き上げを強く求めるべきと思いますがいかがですか。

(健康福祉局長)
 介護保険制度は、介護給付に係る費用の半額を公費で、残りの半額を保険料で負担する仕組みとなっています。
 このうち、介護給付費に占める国の負担割合は、原則として、施設系のサービスに係る費用については20%、居宅系のサービスに係る費用については25%となっています。
 本市では、国の負担割合について、従来から、第1号被保険者の負担が過大とならないよう、国による財政措置の拡充を要望してきているところであり、引き続き要望してまいります。

市として低所得者対策に最大限の努力を
(皆川けいし議員) 
 その上で、現行制度のもとでも利用者のために改善できることは、自治体として最大限努力することを求めます。
 まず第一に、所得の少ない人が公的介護から排除されてはなりません。今年度は基金の取り崩しによって保険料がわずかに値下げされましたが、重い負担に変わりはありません。
 現行の保険料は、所得の少ない人ほど負担割合が重くなっており、例えば一人暮らしで年金以外の収入があって合計所得が400万円の人の保険料は99,656円で所得に対する割合は2.49%ですが、年金収入が80万円の人の保険料は34,168円で所得に対する割合は4.2%と高くなっています。
 本来なら、所得の少ない高齢者は保険料、利用料を免除し、お金の心配をせず介護が受けられる仕組みにすべきですが、せめて負担割合が同程度となるように保険料の減免制度を更に見直すべきではないですか。お考えをお伺いします。

(健康福祉局長)
 本市では、保険料の所得段階が第2段階又は第3段階で収入等が一定水準以下の生活困窮者について、第1段階相当額に保険料を減免しているほか、失業や入院等により前年に比べて収入が大きく減少した方についても保険料を減免するなど、低所得の方に対して、所得状況等に応じた負担の軽減措置を講じています。
 ご指摘の所得に対する保険料の負担割合の問題は、制度の根幹に関わるものであり、本来、国において対応すべきものであることから、今後とも、低所得の方の保険料について、所得状況等を踏まえ負担軽減の拡大を図るよう、国に対し要望してまいります。

(皆川けいし議員)
 低所得者対策の2番目は特養ホームの問題です。
 国は今後、特養ホームの新設はユニット型などの個室しか認めないとしています。4人部屋の場合、市民税非課税世帯で1か月5万円程度の負担ですが、個室は8万円から10万円以上になり、低所得者は入れません。せっかく待機者対策で特養ホームをつくっても、お金がある人しか入れないのでは不公平であり、介護保険の役割を果たせません。
 ユニット型個室でも、今の4人部屋と同じ負担で入れるように制度改善を国に要望するとともに、当面は市が独自の助成を行うべきだと考えますが、どうされるかお答えください。

(健康福祉局長)
 特別養護老人ホームにおける利用者負担は、提供されるサービスに応じた額とされていること、また、多床室の利用者負担とのバランスをとる必要があることから、ユニット型個室の利用者負担を多床室と同水準に当初から設定することや、本市独自の助成制度により同水準とすることは適当でないと考えています。
 低所得の方に対する利用者負担の軽減措置としては、社会福祉法人利用者負担軽減制度、高額介護サービス費の支給、特定入所者介護サービス費の支給があり、低所得の方のユニット型個室の利用者負担についてもこれらの制度により、既に一定の負担軽減になっているところです。
 しかしながら、低所得の方にとって、ユニット型個室の利用者負担はなお大きく、一層の負担軽減が必要であると認識しています。
 このため、低所得の方の利用者負担軽減について、一層の拡大を図るよう、国に対して引き続き要望してまいりたいと考えています。


(皆川けいし議員)
 低所得者対策の3番目は保険料滞納者への給付制限についてです。
 現在、介護保険料滞納者は何人で、そのうち介護が必要にもかかわらず給付制限されている人は何人いますか。その人たちは現在どうされていますか。

(健康福祉局長)
 介護保険料の滞納者数は、6月13日時点で7,783人です。
 介護保険の給付制限については、介護保険法等の規定に基づき、(1)保険料を1年間滞納した場合には、本人がサービス提供者に利用料を一旦全額支払い、後から、市が9割部分を本人に給付する「償還払い」、(2)保険料を1年6か月滞納した場合には、償還払いとなる9割部分の一時差止め、(3)保険料を2年間滞納し、徴収権が時効消滅した場合には、利用料負担の3割への変更―といった措置がとられます。
 本年3月末時点で、要介護認定を受けて給付制限の対象となっている方は27人で、いずれも、利用料負担が3割となっている方であり、そのうち、介護サービスを利用している方は9人です。


(皆川けいし議員)
 広島市は昨年、国保の資格証明書の発行を原則やめました。高齢者や子供から医療を取り上げることはできないということです。それなら高齢者から介護を取り上げることもやってはなりません。これから団塊の世代がどんどん1号被保険者になってきます。滞納者も増える可能性があります。いつまでも「滞納者には給付制限」という対応では事態を一層深刻にするばかりです。
 滞納克服に取り組むのは大切なことですが、現に給付制限で必要な介護を受けられない人たちへの救済措置を考えるべきではないでしょうか。お答えください。

(健康福祉局長)
 介護保険制度においては、やむを得ない特別の事情により救済する必要があると認められる場合には、給付制限を行わないこととされています。
 そのため、本市では、給付制限に該当する可能性のある利用者については、区役所健康長寿課において個別に事情を伺うなど、適切に対応し、給付制限がかからないよう努めています。
 具体的には、低所得の方等に対しては、保険料の減免制度を適切に運用するとともに、「償還払い」になる可能性のある方には、一定額の保険料の納付や今後の納付の約束をしていただくことにより、給付制限がかからないようにしています。
 こうした取組の結果、本年3月末時点で、「償還払い」や「一時差止め」となっている方はおられません。
 また、滞納期間が2年を経過し、徴収権が時効消滅した期間がある方についても、個別に事情を伺い、生計を支えている方の収入が失業等で著しく減少する等特別の事情がある場合には、給付制限は行っていません。
 介護保険の給付制限は保険料の滞納期間に応じて行うものであることから、まずは保険料の滞納が生じないような取組が肝要であると考えており、今後とも、保険料の納付折衝に積極的に取り組んでまいります。


「保険あって介護なし」が一層深刻に
(皆川けいし議員)
 大きい2番目として「保険あって介護なし」という状況を作らないことです。必要な介護が受けられず苦しんでいるのは低所得者だけではありません。
 この点で指摘しなければならないのは、この4月から変わった「要介護認定制度」の問題です。調査項目の判断基準が大きく変わったため、これまでの「全介助」が「自立」にされるなど、これまでよりも軽く認定された例が全国で続出し、大問題となっています。
 例えば、寝たきりの人は車いすなどに乗ることがないから「介助なし」で「自立」とされる。食べる時、小さく切る、ほぐす、皮をむく、魚の骨を取ってあげるなどは介助に含まれないから「自立」、口から全く食べず中心静脈栄養のみの場合も「介護なし」で「自立」。髪の毛のない人、短い人は整髪の必要性がないから「介助なし」で「自立」。薬を飲む時間や量を間違えても、自分で飲むことはできるから「介助なし」で「自立」。数え上げたらきりがないくらい、非常識で非人間的なものとなっています。
 横浜市では、一回の審査会で更新した37人中15人、実に4割の人が従前より軽い要介護度になり、そのうち半分近くは2段階も下がったそうです。北海道のある自治体でも204人のうち60人、3割が軽くなり、重くなったのはたったの6人、3%だけだったそうです。
 「あまりにもひどい」という全国的批判の中で、政府は慌てて検証委員会を立ち上げ、その結果が出るまでは、希望する人は従前どおりでよいという暫定措置を発表しましたが、それなら検証結果が出るまで、新規の人も従前の認定基準で判断されるべきです。
 国に対して認定基準の見直しと、それまでは新規の人も従前の認定基準で判断するように求めるべきだと思いますが、いかがですか。

(健康福祉局長)
 今回の要介護認定方法の見直しは、審査結果のばらつきを防止し、要介護認定の平準化を図ることなどを目的に行われています。
 この見直しに係る経過措置は、更新申請者を対象に、その希望に応じ、従前の要介護度とすることにより、引き続き安定的な介護サービスの利用を可能とし、利用者の不安などを解消するために設けられたものです。
 国においては、経過措置の実施とあわせて、見直し後の要介護認定結果等を検証した上で、必要に応じて迅速に再見直しを行うことにしています。
 本市としては、こうした国における検証の動向や、本市独自に実施している見直しに伴う影響の分析結果などを踏まえ、国に対して、早期に検証を行った上で、制度改善の必要があると認められる場合には、再見直しを行うよう、要望してまいりたいと考えています。

(皆川けいし議員)
 2つ目は、今回の介護報酬の引き上げはいいことですが、そのことが利用者の負担増となって跳ね返っている現状を改めなくてはなりません。
 介護報酬の引き上げが、なぜ利用者の負担増になるのかというと、介護サービスの費用上限額が従来通り据え置かれているからです。そのため、例えば要介護2の人が、これまで上限額いっぱいで訪問介護など5つのサービスを受けてきたのに、介護報酬の割合が高くなったため4つのサービスしか利用できない。これまで週2回ヘルパーに来てもらっていたのに週1回しか来てもらえなくなったため、我慢するか、あと1回分を全額自己負担するしかない。
 あるヘルパーさんは利用者から「あなたたちの待遇が良くなるのは本当にうれしいど、その分、私たちが我慢しなければならないんですね」と言われて悲しかったと言っています。介護の現場でこのような対立が生まれるのは、今回の報酬引き上げの趣旨にも反します。
 そうならないためにも、費用上限額の引き上げを国の責任で行うよう強く求めるべきです。また、現場で起こっているこういう矛盾を事業者任せにせず、行政が責任を持って利用者に説明すべきだと思いますがいかがですか。

(健康福祉局長)
 介護報酬の改定に伴う利用料の変更などについては、制度案内のパンフレットに記載して、介護保険料の通知書にも同封し、被保険者全員に送付するとともに、本市ホームページにも掲載するなど介護保険サービスの利用者を始め広く市民の皆様に周知を図っています。
 今後とも、出前講座等様々な機会をとらえて周知を図るとともに、利用者や市民の皆様のご理解をいただくよう努めてまいりたいと考えています。


(皆川けいし議員)
 同時に、上限を超える介護サービスがその利用者にとって必要ならば、1割負担でできるよう市の責任でサービスの上乗せをする必要性がありますが、どうされますか。

(健康福祉局長)
 本市における平成20年(2008年)10月の提供サービス分に係る利用者の支給限度額に対する平均利用率は、54.6%となっており、今回の介護報酬改定に伴い、一律に支給限度額を引き上げる必要はないと考えています。
 しかしながら、利用者を個別に見た場合、支給限度額を超える介護サービスの利用が必要な方もおられると考えられます。
 本市においては、従来から低所得の方を対象に、認知症等により支給限度額を超過する費用の一部について、独自に助成を行っており、今回の介護報酬改定により新たに影響を受ける低所得の方についても、この助成制度の対象となることについて周知を図ってまいりたいと考えています。


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中小零細業者への応援について

(皆川けいし議員)
 今回補正予算として緊急経済対策が提案されていますので、詳しくは質疑に譲りたいと思いますが、「小規模修繕登録者制度」のさらなる改善充実についておたずねします。
 50万円以下の小規模な公共事業への中小零細業者の参入を広げるこの制度は、現在6都道府県411自治体に広がり、不況で苦しむ零細業者にとって一条の光となっています。
 広島市でも2005年度から始まり関係者に喜ばれていますが、まだまだ制度の趣旨が十分生かされていません。
 例えば一昨年度、小・中学校全体では、対象工事2,634件のうち小規模登録事業者に発注されたのはわずか2%弱、58件しかありません。市全体でも、該当事業のうち、件数で7.2%、金額で8.3%という低さです。
 そこで要望ですが、(1)この制度をもっと使いやすくするために、さらに条件を見直すこと。(2)この制度について関係業者に周知徹底するとともに、改めて関係全機関にも周知徹底すること。特に学校や保育園を所管されるところでの周知徹底を強めていただきたい。(3)登録業種に土木・造園も含めること。(4)新潟市などがやっているように上限額を現在の50万円から100万円に引き上げること。
 以上、要望します。当局のお考えをお聞かせ下さい。

(財政局長)
 小規模修繕契約希望者登録制度は、小規模修繕を効率的に発注するため、施設の修繕契約のうち、予定価格が50万円未満で、壁のひび割れ補修、雨漏りの応急処置、土間やタイルの修繕など内容が簡易でかつ履行確保が容易で、機能回復を目的とするものを対象に、平成17年度(2005年度)から実施しています。
 この制度への登録は、本市の競争入札参加資格者への登録とは別に登録する必要があり、重複登録はできません。また、登録種別は、建築関係が壁・防水、建具、内装や左官など11種別、設備関係が空調や電気など5種別で、合計16種別となっています。
 この制度の事業者への周知については、3年に一度の登録替えや年2回の追加申請時に、本市のホームページや広報誌を通じて登録申請の方法をPRしています。また、各局、区役所及び教育委員会等に対しては、登録者名簿の更新に併せて、この制度を活用するよう周知しています。今後も、この制度の周知に努めていきたいと考えています。
 議員ご提案の登録種別の追加や対象金額の引き上げについては、この制度が、あくまで競争入札参加資格者登録制度の例外的な制度であること、技術職員でなくても容易に履行確認ができる小規模な修繕を対象としていること、現行の50万円未満の修繕が基本的には受注者1人で実施できる限度と想定していること、これまでの実績をみても、1件当たりの平均額が約12万円という実態があることなどから、慎重に検討する必要があると考えています。


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再質問

残留放射能や内部被曝の影響に初めて光を当てた判決

(皆川けいし議員)
 色々と答弁をいただいたが、このたびの原爆被爆者の裁判が投げかけた点について、広島市として深刻に受け止めているのか。その思いが伝わってこなかったというのが私の感想です。
 今回の裁判が投げかけたのは2点あると思う。
 まず一点目が、64年間ほとんど解明されてこなかった、私は意図的に隠蔽されてきたと言っているが、残留放射能や内部被曝が人体に与える影響について、初めて光が当たったことです。
 この問題に対して、地元の放影研も含めて、これまで正面から解明されてこなかった。前に秋葉市長の名前で放影研にそういう問題も研究テーマにしてもらいたいと申し入れたことは承知しています。
 今度の裁判は、一発の原爆が人体にどのような影響をもたらすのかという点が、六十数年経ってまだ解明されていないということが問われたものです。
 もう一点は、人体への影響は、過去の問題ではなく、現在でも被爆者の体を蝕み続けているという点です。
 単に、社会保障的な観点ではなく、国家補償的な観点で被爆者問題は行われるべきだと裁判で冒頭に謳われています。この点は非常に重いと受け止めています。
 もう一度、今回の裁判が投げかけたものについて、被爆地の広島市としてどのように重く受け止めているのかという点を伺います。

(健康福祉局長)
 今回の判決について、これまでの国の認定基準を超えて新たな判断が示されたと認識しています。その根拠として、被爆者がおかれた立場、今までであれば、明らかに原爆症だと確証がないと難しかったが、疑いがある者は救おうという動きがあるのだと思います。
 そういった意味で、今までよりも被爆者が幅広く救済される内容だと思います。その内容も踏まえて、今後の対応について、この問題が全面解決されるよう、国に対して強く要望を行いたいと考えています。


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残留放射能や内部被曝について市民理解深める取組を

(皆川けいし議員)
 新しい知見という言い方をしているが、残留放射能や内部被曝について、色んな科学的知見がこの間発表されています。ただ、このことは、ほとんどの市民に十分知られていない。そこで提案ですが、平和研究所など関係団体とも連携して、シンポジウムや講演会等を開いて、残留放射線や内部被曝について市民的な学習を含め理解を深めることを、広島市として取り組んでいただきたい。

(健康福祉局長)
 新しい知見について、色々な関係者、専門家をあたりながら、新しい知見を集めているところです。そういった状況の中で、シンポジウム、講演会を、今ある情報だけでも行ったらどうかとのことですが、そのことについては、今の時点で即答はできませんが検討してみたいと思います。

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市域外も含めた「黒い雨」実態解明調査を

(皆川けいし議員)
 黒い雨について、実態解明は重要だと受け止めているとのことですが、結論としては、情報収集をしていきたいとの答弁でした。
 今、3万人アンケートをしているが、健康調査の項目も入れていただいており、これは貴重な資料になると思う。
 しかし、残念ながらこの3万人アンケートは市域内の調査になっている。実際に黒い雨が降ったのはもっと広範囲です。増田博士の調査によれば、島根県境まで降ったとの聞き取りもある。これは広島県が一緒にやる以外にない。過去も県と市が一緒にやってきた。市域外も含めて調査しないと実態解明に迫れないことははっきりしています。
 生物学的手法が大事だ。物理学的手法は難しいと市も認めているが、それではどういった形で真相に迫れるか。いろんな手法を含めて、あらためて検討するべきだと思うが、この点について市の決意を伺いたい。

(健康福祉局長)
 市域内の調査だけでは意味がないのではないかという点ですが、今回の原爆被爆実態調査研究は市域内がメインではありますが、黒い雨の範囲を考えると市域外にも広がっていることから、広島県の協力も得て、市域外も調査対象としています。実際に県調査の関係で言うと、1,237件発送し、678件の有効回答がありました。

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被爆二世、三世の把握に市として努力を

(皆川けいし議員)
 被爆二世、三世の問題は、本会議で質問したのは今回初めてだと思う。調べてみると、東京、神奈川、山口ではちゃんとやっている。十分とは言わないが、自治体として二世、三世の問題を取り上げていこうとする姿勢が現われています。
 国の責任は国の責任であるが、広島市として、把握する必要があると思う。市として、何ができるかという点で、この問題を迫っていただきたいと思うがどうか。

(健康福祉局長)
 被爆二世、三世について、市ができることから実施すればいいのではないかとのことですが、基本的にはさきほど答弁したとおり、本来は国の責任において行うべきものと考えています。
 仮に、本市が単独で実施した場合、さきほど答弁したように様々な課題があります。それと同時にこの調査が極めて限定的かつ一過性の調査となるので、調査の目的と必要性、得られる効果や結果について、市民の理解を十分に得る必要があります。単独で実施するだけの効果があるのか今後の研究課題としたい。


(皆川けいし議員)
 原爆の実相がどのようなものか、客観的に迫っていかないといけない。
 残留放射能の問題は現在の問題です。なぜかと言うと、チェルノブイリの問題、劣化ウラン弾の問題、これらは残留放射能や内部被曝の影響が大問題となっている。そのためにも、広島が真相を明らかにしていくのは人類に対しての責任だと思います。
 二世、三世の問題もそうです。今から十年、二十年経っても、どのくらいの人数がいるのか、健康状態はどうか、などの記録が市には何も残らないことになる。市として正式に資料が残っていない。このことを、あと二、三十年後に問われたら市として困ると思う。
 ですから、今のうちにやるべきことはちゃんとやっていただきたいということをお願いして終わりにします。

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