トップ議会情報・議員の発言2009年第5回12月定例会 議員発言 >一般質問・中森辰一議員


2009年12月14日 本会議 一般質問 中森辰一議員

 予算編成過程の公開について
 公契約について
 雇用対策について
 DV対策について
 障碍(がい)者施策について
 発達障碍(がい)者への支援対策
 子どもの権利条例について



予算編成過程の公開について

(中森辰一議員)
 まず、予算編成と情報公開について質問する。新政権の事業仕分けは、そのあり方や結果については議論があるにしても、国民的な注目を浴びた。市長は今月の記者会見の席で、広島市でも第三者による事業の見直しを行うお考えを表明された。全国の自治体でも事業仕分けが行われているが、これらは市民に予算の編成過程を公開する時代になっているということではないか。予算編成過程の公開そのものも、すでに様々なやり方で多くの自治体が取り組んでいる。
 これは、各局からどのような予算要求が行われ、それがどうなったか、例えば予算が大幅に縮小されたら、なぜそうなったかなどの情報を市民に明らかにする取り組みである。
 北九州市では、来年度予算の編成過程の公開が既に始まっている。すべての部局が予算要求の考え方と重点事業ごとに予算要求状況を公開して、11月18日から1ヶ月間の期間を設けて市民意見を募集している。先週紹介された札幌市は、さらに詳しい説明をつけて11月20日に公開している。つまり、少なくとも11月下旬には来年度の予算要求状況について、われわれ議会もその状況を知ることができるということである。
 来年2月中旬に予算案が発表されるまでは、その状況を議会も知ることができない広島市の現状からすると、議会にとってもじっくりと来年度予算について検討する時間が与えられるということで、議会での予算の議論そのものが変わる可能性がある。
 また、市民が市の財政の見通しの状況を知ることを含めて、次年度の予算の編成状況を途中で知ることができ、それに対して意見を出すことができる、また当局がそれに対して回答を行うということも、市民の行政への参画という点で大変意義のあることだと考える。
 市民意見の募集も含めて、こうした取り組みを取り入れてはどうか。お考えを伺う。

(財政局長)
 先日も渡辺議員に答弁したとおり、本市では、本年度当初予算から、新たに、「主要事業の要求・査定状況」という資料を作成し、主要事業に係る各局等からの要求額と最終の予算額とを対比させるとともに、その査定理由を公表しました。今回の取組によって、本市の予算編成過程の透明化につながったものと考えています。
 一方で、予算要求状況の公開については、予算編成段階における予算要求の内容に、市としての方針決定がなされていないものや国等の予算編成の動向に大きく左右されるものが含まれているなどの課題があります。
 このため議員御質問の市民の意見募集も含め、どのようなタイミングでどのような情報を提供するのがよいかについて、他都市の状況も踏まえながら、引き続き検討してまいりたいと考えています。


―再質問―

(中森辰一議員)
 予算編成過程の公開について、検討しようという方向ですが、既に何年も前から政令市の中でやっているところがあります。そういう状況をみていただき、いろいろクリアする課題はあると思うのですが、来年度予算から実現できるように、ぜひ取り組んでいただきたい。この点を取り組まれるのかどうなのか再度答弁いただきたい。

(財政局長)
 先ほどご答弁申し上げましたように、予算の要求内容を公表するに当たりまして、いろんな課題がございます。引き続き検討してまいりますけれども、来年度の予算からたちまちちょっとできるかどうかということは、ここでは明確にお答えできませんが、引き続き検討はさせていただきます。


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公契約について

(中森辰一議員)
 次に、公共事業の入札のあり方について質問する。かつて公共事業では、談合がたびたび摘発され、予定価格が公表されていないのに、大きな工事になるほど99%といった高い落札率が多く、いつも談合の疑念がつきまとっていた。私どもはこういう状況に対して、談合のできないしくみへの改革を求めた。
 しかし、最近は件数が少なくなって競争が激しくなったために、きわめて低い落札が大変目立つようになった。過当競争だと思う。
 公共事業をやる意義は、市民生活に必要な施設をつくって、市民福祉を前進させ、市民生活の安全、安心を確保することと同時に、民間企業に発注してやってもらうことで、地域の仕事をつくって、地元企業の成長を支える、さらに市民の雇用の確保と生活の安定に役立つなど地域経済対策としての役割を果たすところにもあると考える。
 言うまでもなく、入札を行う前提は、最小の費用で最大の効果をあげることにあるが、安ければいいということにはならない。あまりに低すぎる価格では、そうした役割を果たせない。
どのようなものにも、適正価格というものがある。入札する企業が競争して、価格での努力をするが、その際に、会社が健全に継続できるだけの利益が必要だろうし、現場で働く労働者が自分と家族の生活を十分に維持できるだけの賃金が必要で、それらが組み込まれた落札額になる必要がある。
 現在実施されている低入札調査基準価格制度では、工事ごとに決められた低入札調査基準価格を下回っていても、材料費や人件費などを調べてみて労働関係の法律にも違反しない、行政側として予定された内容のものができる、と判断されると、いくら低くてもOKということになる。
 そうしたら、予定価格や設計価格というのは一体何かということになる。現状では、果てしない低価格競争の中で公共事業が行われ、地元企業の経営にも現場労働者の生活にも深刻な影響を及ぼす、果ては工事の品質にも実際は影響しているかもしれない。
 下請け会社まで含めた適正価格での公正な契約関係、その中での公正な労働条件をどう実現するか。現状は、改めて改革が必要になっていると考える。
 まず、この現状について、どのように認識しておられるか伺っておく。

(財政局長)
 あらかじめ設定した調査基準価格を下回って入札された、いわゆる低価格の状況については、低入札件数の全体に対する割合が平成19年度(2007年度)までは約20%から約30%で推移していましたが、平成20年度(2008年度)においては約40%となっています。なお、低入札の平均落札率を見ると、約70%であり、それには大きな変化はありません。

(中森辰一議員)
 次に、この問題を労働条件の面から考えてみると、まず憲法25条が保障した最低生活の基準、生活保護程度の水準が確保されるかどうかがある。生活保護水準の収入を得ようとすれば、どの程度の日給、時給が必要か。結論を言えば、30歳代夫婦と小・中学生2人の4人家族の場合の生活保護水準の所得を20日〜25日働いて得るとすると、日給で12,000円〜15,000円程度になり、時給では1,500円〜1,800円程度となる。それでは実際に公共事業ではどの程度の賃金が想定されているのか。
 毎年度、国土交通省と農林水産省による2省協定労務単価が職種ごとに示されているが、今年度は普通作業員で12,800円程度、特殊作業員で15,000円程度、12職種平均で13,700円程度、専門職を含めた50職種平均で16,700円程度。これは全国どこでも低入札が蔓延しているために年々単価が下がり続けてきた。
 もはや国が決めた労務単価自体が生活保護水準ギリギリになっている。しかも、この数字は税込み、社会保険料込みの名目賃金だから、家族構成によっては実質的に生活保護水準を下回っている。これが公共事業の予定価格を決める時の労務単価の現状である。
 生活保護基準を下回らない賃金を求める声が、全国で広がっているが、この点で国が示した設計労務単価の基準は、現実にはこれを下回るわけにはいかない水準になっている。
 公共事業を発注する広島市当局として、こうした実態はよく承知しておく必要があるが、異論があれば答弁を求める。いかがか。

(財政局長)
 低入札価格調査の対象となった工事については、入札時において、元請業者及び下請業者の労務単価を確認するとともに、履行後においても同様に労務単価を確認しています。
現時点で把握している今年度の発注工事の状況を見ると、例えば、普通作業員の労務単価は、平均で約12,400円となっています。
 この平均単価は、農林水産省と国土交通省が公共工事の積算に用いるため定めた広島県の普通作業員の労務単価13,300円に対して93%となっており、決して低い単価ではないと考えています。
 また、工事の品質確保については、工事の施工段階において、監督業務の強化や中間検査を実施することにより、仕様書で求めている品質の確保を図っており、これまでの完了後の実績を見ても、低入札案件だからということで、工事の品質が劣っているものはありません。


(中森辰一議員)
 公共事業の入札の現状であるが、先日の決算特別委員会で昨年度の状況を聞いたところ、1,000万円未満の工事の場合4分の1が低入札で落札し契約している。1,000万円を超えて5億円未満の工事では6割が低入札で契約している。5億円以上となると4分の3が低入札で契約している。実態として広島市の公共工事の多くが低い落札率で行われている。大きい工事ほど低入札だということは、たくさんの下請け、孫請けの事業者がそのしわ寄せを受けているということだ。
 こういう実態は当然のこと、公共工事の現場で働く労働者の賃金に深刻な影響を及ぼすことになる。低入札で請け負われた工事現場では、国が示した労務単価を大幅に下回る賃金で働かされているのではないかと思う。それは結局生活保護水準の生活を保障できないものになっていると思うが、どのようにお考えか答弁を求める。
 低入札が常態化するようになると、公共工事を担う中小、零細企業の経営にも大きな影響を及ぼすことになる。昨年度でも予定価格の6割を切る契約があったということだが、表向きは、その工事で応札業者や下請け業者が赤字にはならないという文書があったとしても、労働者の生活を無視して賃金をぎりぎりまで落とせる業者、下請け会社に赤字でも請け負わせることができる業者が仕事を取れるということになっているのではないかという疑念がある。
 こんなことを続けていたら、技術の伝承も困難になり、工事の品質も保てなくなっていくのではないか。広島市はそういう懸念を持っていないのかどうか、答弁を求める。
 こうした中で、全国で初めて、千葉県野田市が公契約条例を実現して注目を浴びている。この条例では、前文で「低入札価格の問題によって下請の事業者や業務に従事する労働者にしわ寄せがされ、労働者の賃金の低下を招く状況になってきている。」との認識が示され、第1条で「この条例は、公契約に係る業務に従事する労働者の適正な労働条件を確保することにより、当該業務の質の確保及び公契約の社会的な価値の向上を図」ると述べている。
 特徴は、工事や製造の請負の場合は国が示す設計労務単価を勘案して、それ以外の契約の場合は市の職員の給与を勘案して、市長が決めた最低賃金を守らせようとするものになっていること、下請けの労働者や派遣労働者に対してその最低賃金の支払いの責任を元請け企業にも課している点である。
 野田市は、この条例をつくるにあたって、国の法律に反することがないかについて、国会議員の質問主意書への政府の回答で確認していて、法律に反しない範囲のものとしてつくっている。広島市としては、この条例についてどのように評価しておられるか伺う。
 一方、地元の企業が受注する機会を増やしたり、極めて低価格の入札が地元企業の経営を追い込んだりしないように、様々な取り組みが行われている。
 東京都日野市では総合評価方式で、災害の時に緊急工事を引き受けてくれる企業を入札で優遇することで地元企業が受注しやすくしている。
 また、広島県の県北地域では、過当競争を避けるために最低制限価格制度を適用する範囲を広げてほとんどの工事で適用するようにしたり、最低制限価格水準を引き上げている。
 果てしない低価格競争は企業を疲弊させ、現場労働者の賃金を際限なく最低賃金まで押し下げていく。そのことは、地域経済にとっても大きなマイナスではないか。
 こうした問題を改善するために、
  1. 野田市に倣って、広島市でも公契約条例を設置すること。この点は、4年前に市議会として各会派共同提案で公契約法をつくるよう求める意見書を採択していることをお考えいただきたい。つくる際は、原則として予定価格が1,000万円を超える公契約を対象としてはどうかと考える。
  2. 公契約条例適用に至らない価格の公契約案件は、最低制限価格制度を再度導入すること。その最低制限の基準は、労賃や材料費などの実情をよく調査して決めたらよいのではないかと考える。
  3. 日野市のように、地元で災害の時に緊急の復旧工事を引き受けてくれる企業には、入札上の優遇措置を設ける。
以上の3点を提案するので、実現に向け検討を求める。前向きな答弁を求める。

(財政局長)
 1. 公共工事の施工に携わる労働者の労働条件については、建設業法や労働基準法、その 他の労働法規に定められており、一義的には、元請業者がみずから適正に実施するとともに、下請業者の適正な雇用についても、元請業者が指導・支援することが求められています。
 このため、本市としては、入札参加段階から請負業者に対し、関係法令を遵守するための注意事項を文書により細かく明示しています。例えば、労働条件等を明示した文書を被雇用者に交付することなど、みずから適正な雇用管理を行うとともに、すべての下請け業者に対して同様の指導を行うことを求めています。
 また、低入札価格調査の対象となった工事については、最低賃金を上回る額で必要な労働費が確保されているかどうか確認することなどにより、建設労働者の適正な労働条件の確保に努めています。
 議員御指摘の公契約条例については、労働者の良好な労働条件の確保を目的としており、その趣旨は十分理解できますが、その実現については、労働基準法や最低賃金法、その他の関係法令の整備によることが望ましいと考えています。なお、導入をしています野田市においても同様の見解をお持ちだそうです。
 本市におきましては、引き続き現行の低入札価格調査制度の中で、労務費の状況の把握に努めるほか、受注者に対して法令遵守を徹底していきます。

 2. 議員ご指摘の最低制限価格制度ですが、この制度は、業者の行った見積内容等を考慮せず、入札価格が最低制限価格を下回ったときは、自動的に失格とする制度です。これに対して、低入札価格調査制度は、業者の行った見積内容を調査することにより、個々の業者の企業努力で適正な履行が可能なことが確認できる制度であることから、本市は、この制度を採用しています。
 これまでの施工後の元請業者からの報告では、工事施工後の業者の事情のよるものを除いて、赤字となったものや労務単価が著しく低いものはなく、また、工事の品質低下につながっている状況もなく、仕様書で求めている品質は確保されています。
 こうしたことから、引き続き、現在の低入札価格調査制度のもとで、労務費の状況も含めて業者の実態の把握に努め、制度の適切な運用を図ってまいります。

 3. 本市の災害協力事業者として登録している業者については、建設工事競争入札参加資格登録時に、等級区分(ランクづけ)の基となる数値を加点し優遇しています。また、これまで工事成績優良業者に限定した工事の入札を行っていましたが、昨年度から、この工事の入札に本市の災害関連工事を請負った業者も参加できるようにし、受注機会の拡大を図っています。

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雇用対策について

(中森辰一議員)
 次は雇用問題である。昨年来の不況で急速に失業者が増え続けている。政府の「貧困・困窮者支援チーム」は雇用保険が切れても就職できないままの状態で年末を迎える人が23万人に上るとの推計を発表した。広島市内でも数千人の規模でこうした状態に追い込まれるのではないか。
 国や県と連携しながらも、広島市として早急な雇用対策に取り組むべきである。大企業を含めた企業に対して、雇用継続の要請、新規雇用の要請、とりわけ新卒者の雇用に関して、広島市の将来にかかわる問題として、積極的に行動するべきである。

(市民局長)
 景気は一部に持ち直しの動きが見られますが、雇用情勢について見てみると、例えば、県内の高等学校等卒業予定者の来年の就職内定率は、本年10月末現在59.6%であり、前年同月に比べ12.6ポイント下回り、大幅に悪化しています。
 また、本年10月の県内の有効求人倍率は0.55倍と低い水準に止まっており、完全失業率は高止まりするなど、雇用情勢は依然として厳しい状況にあります。
 本市としては、このような厳しい雇用情勢を踏まえ、今後、雇用の維持・確保について、国、県と連携し、広島商工会議所等の経済団体に対して要請したいと考えています。


(中森辰一議員)
 同時に、市の職員でも団塊の世代の退職が問題になっている。特に技術の継承をしていく必要のあるところは、そういうことも踏まえて市職員の計画的な採用を進める必要がある。業務の効率化などをやってきているが業務の総量は減っているわけではなくむしろ増えているのではないか。職員数はかなり減らしてきてすでに限界状態で、心理的に追い込まれたり体を壊したりする職員もが増えているのではないか。
 退職者分はきちんと補充すると共に、業務量に応じた職員数にしていくべきである。以上についてどのようにされるか答弁を求める。

(企画総務局長)
 本市では、いわゆる団塊の世代が大量に退職する時期を迎えていることから、退職者の補充や退職者の持つ知識、技術の継承を図り、市民サービスの質の低下を招かないようにする必要があります。
 また、本市では、「行政改革計画」に基づき、職員数の削減に取り組んでいます。こうした中、職員採用に当たっては、生活保護世帯数の増加など増大する行政ニーズを踏まえつつ、退職者の補充を行うとともに、教員、消防、医療技術職など一定数の職員配置を要する職種の要員を確保するための採用を行っています。
 退職者の持つ知識、技術の継承という面では、非常勤職員として再雇用することによる退職者のノウハウの活用や各職場で作成している業務マニュアルの充実などを行っています。
今後とも、こうした取組を行い、市民にとってより満足度の高いサービスをきめ細かく提供できる執行体制の確保に努めてまいります。


(中森辰一議員)
 こうした中で11月30日に政府が実施した、雇用に加えて、住居、生活費の確保などについての相談をハローワークで受けるワンストップサービスを試行実施した。評価はいろいろだったが、その中でも当座の生活を安定させる住宅の確保と生活費の確保の相談は重要だと思う。しかし、いずれもワンストップサービスでは相談だけで、改めて役所に出向いて手続きをする必要があった。特に生活保護は切羽詰まった状態で来られる場合が多く、申請まで行う必要があったと思う。そもそも生活保護の申請は申請書を出しさえすればいいはずで、改めて出直さなくてもその場で必要なことを聞き取ることはできる。
 このワンストップサービスは、継続して実施するべきで、広島市としても実現に向けた取り組みをするべきであることと、生活保護の窓口は(紹介、相談に終わらず)申請まで実施するべきだということについて、市のお考えを伺う。

(健康福祉局長)
 今回の「ワンストップ・サービス・ディ」の施行実施にあたって、国から示された業務実施要綱により、生活保護については、相談業務を行うこととされていました。
例外として、生存が危ういなど直ちに保護の必要があると認められる場合は、申請を受け付けることとされていました。
 今後の「ワンストップ・サービス・ディ」の実施にあたっては、新たに示される実施要綱に基づき業務を行うことになります。
 なお、今回の施行実施においては、生活保護の対象となる方に対しては、申請先の福祉事務所を案内するとともに、相談内容を福祉事務所に引き継ぎ、申請手続きがスムーズに行えるように対応しております。

(中森辰一議員)
 一方、東京の足立区では、11月30日から3日間、自殺対策としてのワンストップサービスを実施した。失業者の2割が自殺しようとする危険があると言われている。我が国ではすでに年間の自殺者が3万人を超える事態が10年以上も続いていて、「広島市うつ病・自殺対策推進計画」によると、2006年の自殺者数は230人に上る。また、自殺未遂者数は既遂者数の10倍程度であること、とりわけ男性自殺者の急増の背景として、雇用・経済環境の悪化を挙げている。職を失いお金が尽きたのに、相談する方法を知らないために状況を打開するすべを見つけられず、精神的に追い込まれている人が大勢いるということである。
 こうしたことから、失業者対策としてのワンストップサービスだけでなく、増え続ける自殺対策として、ハローワークでワンストップサービスを実施する意義が大変大きいのではないかと思う。広島市での有効な対策の一つとして、関係者と協議してこれを実施してみてはいかがかと思うが、お考えを伺う。

(健康福祉局長)
 11月30日の「ワンストップ・サービス・ディ」は、広島県内では、ハローワーク広島及びハローワーク広島東で施行実施され、本市は職員を派遣し、生活保護、住宅手当及び心の健康についての相談を行いました。利用者は、両ハローワークの合計で36人であり、アンケート結果では、約8割の人が、メリットがあると回答しています。国は、年内に再び「ワンストップ・サービス・ディ」の実施を予定しています。
 本市としては、求職中の貧困・困窮者が抱えている生活や住まいの問題の解決に向け、早い段階で支援することは、自殺を未然に防ぐことにもつながると考えており、次回は、生活保護及び住宅手当の相談に応じる職員を派遣します。
 なお、「心の健康相談」については、今回の試行では、保健師を2人派遣しましたが、利用者は2人と少なく、その相談内容も、必ずしも保健師が相談に応じる必要のある内容ではなかったことから、次回は、本市からの派遣は考えておりません。
し かし、当日、精神衛生面での相談が必要と思われる方がいた場合には、連絡を受け、区の保健センターや精神保健福祉センターの職員が、ハローワークに出向くなどして、相談に応じたいと考えています。
 来年1月以降の実施については、国において検討中ですが、本市としては、次回の結果も踏まえて、可能な限り協力をしたいと考えています。


(中森辰一議員)
 もう一つ、雇用を増やす施策として一つ提案がある。
 市として、失業した方が介護職の資格をとり、介護の職場に就職できるように支援することである。そうした職業を紹介し、資格を取れるまでの間、生活費の支援を行う。
介護保険の実施で介護事業所はかなり増えたが、介護職が足りない問題があるということと、認知症の人を積極的に受け入れてくれる施設やデイサービス事業所は、まだかなり不足している。これは社会として必要なサービスであって、広島市行政としてこの分野の充実に取り組む必要がある。
 事業所を増やす取り組みと一緒に、担い手を増やす取り組みを積極的に推進することで雇用対策としても効果を上げていく、そうした取り組みを提案する。いかがか。

(健康福祉局長)
 失業者の介護職の資格を取得させ、介護事業所への就職を支援する施策については、広島県が、広島県雇用創出基金の事業として、本年7月から実施しています。
 具体的には、介護関係の資格を有していない休職者を、6か月間、広島県内の社会福祉施設に人材派遣会社から派遣して就労の機会を確保するとともに、その間にホームヘルパー2級の資格を取得させることにより、派遣期間満了後の介護職員としての就労に結び付ける事業です。
 認知症の方を積極的に受け入れる施設等の充実については、本年2月に策定した広島市高齢者施策推進プランに基づき、平成21年度(2009年度)から、期間中に特別養護老人ホーム360人分、グループホーム504人分、認知症高齢者デイサービス264人分の整備を促進します。
 さらに、介護基盤の緊急整備を盛り込んだ、国の「経済危機対策」を踏まえ、同プランの計画期間中に、追加で特別養護老人ホーム120人分の整備を促進するため、本会議に施設整備補助に関する補正予算案を上程しています。また、グループホームについても、追加で162人分の整備を促進します。
 こうした、認知症の方を受け入れる施設等の充実により、雇用の創出を図ってまいります。

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DV対策について

(中森辰一議員)
次に、配偶者や恋人からの暴力から、命と人間性を守る課題である。昨年行われた内閣府の調査では、夫からの暴力で、命の危険を感じたという女性が4.4%、20代、30代で交際相手の暴力で命の危険を感じたという女性が3%に上っている。日ごろ、私たちの目にはなかなか見えにくいが、女性の25人ないし30人に1人が、男性からの暴力で命の危険にさらされていたということになる。
9月定例会の議案審議での答弁では、DVの相談件数は2004年度で634件であったが、2008年度は936件ということで、「大変増加の傾向にある」ということだった。DVは子どもへの虐待とも結びついていて、世代を超えた「暴力の連鎖」にもつながっている。DV防止と被害者支援はたいへん大きいし急がれる課題だ。
 広島市では、2007年のいわゆるDV防止法の改正によって市町村の努力義務とされた配偶者暴力相談支援センターが今年設置され、DV防止と被害者の支援に関する基本計画が今年度中に策定されることになっている。広島市は国際平和文化都市として、全国の自治体の先駆となるような取り組みを期待するものである。
 まず、広島市の基本計画について伺う。基本計画策定の進捗はどのような状況か。基本計画を策定するメンバーはどのような人々か。広島市の基本計画は、独自に現状と必要性を調査し、既存の基本計画に横並びのようなものではなく、広島市独自のものをつくろうとすることになっているのかどうか。
 また、その調査は単なるアンケートではなく、被害者たちの生の声をきちんと聞いて、暴力被害の生々しい状況と、どのように心が追い詰められていくのかをリアルに知るところから始めるべきだと思う。
 また、そうした人たちへのこれまでの支援が適切なものであったかどうかを丁寧に聞くべきだと思う。さらに、行政が動き出す前から、被害者たちを手弁当で支援してきた民間の支援団体が大きな役割を果たしてきたが、そうした団体の意見を聞くべきだと思う。そのようにしてこそ、実情に即した適切な計画ができると考えるが、どのような調査が行われたのか、またそうした調査を行うお考えはあるのかどうか。以上について答弁を求める。

(市民局長)
 DV防止・被害者支援基本計画は、男女共同参画審議会の中に、DVに関し造詣の深い大学教授や弁護士など委員8名による検討部会を設け、本市のDV 防止・被害者支援の現状と課題等について審議いただいています。
 さらに、民間シェルター、弁護士会、県警などの関係機関を構成員とする「広島市DV対策関係機関連絡会議」からもご意見をいただいています。
 調査については、本年8月、市内在住の20歳以上の男女3千人を対象として実施した「男女共同参画に関するアンケート調査」の中で、DVに関する調査項目を設定し、市民のDV被害の状況を調査しました。
 またDV被害者の生活状況、支援制度の利用状況、必要とする支援内容等を把握するため、現在、DV被害者本人へのアンケート調査を民間シェルターや母子自立支援施設等を通じて実施中です。この、アンケート調査に回答いただいたDV被害者の中でヒアリングに協力いただける方から直接ご意見をお聞きします。
 今後、こうした調査結果や審議会及び関係機関からのご意見等を踏まえ、本市の実情に即した計画となるよう取り組んでいきたいと考えています。


(中森辰一議員)
 次に、相談支援センターの体制は大変重要だと考えるが、9月補正で設置が決まった時点では平日の日中だけの体制となっていた。県の相談支援センターも電話相談を含めて365日24時間体制ではない。しかし、いつ発生するかわからない暴力から女性たちを守る機関であり、24時間体制が当然ではないかと思う。こうした方向に拡充するお考えはあるのかどうか伺っておく。

(市民局長)
 本年12月1日に開設した配偶者暴力相談支援センターにおいては、平日の午前10時から午後5時まで相談をお受けしています。休日、夜間の相談については、現在、県の配偶者暴力相談支援センターにおいて、休日は午前10時から午後5時まで、月曜日から金曜日の夜間は午後5時〜8時までの電話相談を行っています。
 市の配偶者暴力支援センターでの相談対応を休日、夜間も行うことについては、県の相談状況や被害者のニーズを踏まえて、今後検討していきます。
 なお、休日、夜間の緊急対応が必要な相談はこれまでも県警において対応しており、本市においても緊急連絡網を活用し、必要な対応に努めることとしています。


(中森辰一議員)
 次に、緊急の場合に女性たちの安全を確保するための一時保護所、いわゆるシェルターは重要だが、民間の施設が1か所あるだけである。広島市当局は、件数が増えておらず県が設置している一時保護所で間に合っていると言っているが、県の施設では不十分だから県もこの民間施設に委託をしている。間に合わないときは制度が整っている鳥取県に避難する事態もあると聞いている。
 県の施設は10世帯分あるが、寝るところは独立していても、トイレや風呂、炊事、洗濯などいずれも共同生活をするようになっている。心に深刻な傷を負った女性たちであるのにプライバシーを保障する施設になっておらず、他の入所者に気を遣わなければならない施設である。「うつ」などになっていたり、子どもに重い病気があったり、大きな男の子がいたり、タバコをやめられない人だったり、外国の人で食習慣が違うなど、集団になじめない人が民間施設に回ってくる。こんな施設で十分なわけがない。
 市も、「民間の方が実情に即した柔軟な対応ができるので1か所は民間施設があった方がいい」とも言っているが、県の施設だけでは不十分だということを認めているわけである。
このような施設は、緊急の対応ができることや、心理的に追い込まれた状態で保護されることから、安心できる環境と懇切丁寧な対応が必要であること、様々な機関との連絡調整や、そうした機関に同行して手続きなどを支援すること、暴力を体験した子どもへの慎重で丁寧な、かつ継続した支援などが必要で、十分に機能を発揮するためには専従の体制が必要であり、人件費を賄える財政的な支援が欠かせない。
 現に広島市民の被害者がたくさんいて、相談件数は増え続けている。その点では、広島市が主体性を持って被害者を受け入れ、保護し、被害者の立場に立って自立のための様々な支援に繋げていくことは大変重要である。
 先進の千葉県野田市は、行政が関わることで様々な手続きがスムーズにでき、なおかつ民間の柔軟性も発揮できるとして、公設民営のシェルターを設置し、財政的にもその運営の継続に責任を負っている。少なくとも行政責任とはこのようにとるものだと思う。実際に、これまでがんばってこられた民間のシェルターは財政的に困難があり、いつやめるようになるかわからない状態にある。補助などという位置づけではなく、野田市のように設置に市が責任を負い、運営を民間のNPOに委託する公設民営の、広島市独自のシェルターをつくって、NPOの人たちと共同で被害者への支援に取り組むべきだと考えるがどのようにされるか、答弁を求める。

(市民局長)
 DV被害者の一時保護については、DV防止法の規定により、都道府県の設置する婦人相談所が自ら行うか、又は一定の基準を満たす者に委託して行うことになっています。
 また、県によると、一時保護施設の状況は、量的には対応できているとされており、本市としては、一時保護が必要なDV被害者については、県婦人相談所への同行などの支援を行っています。
 一方、DV被害者の保護を行う民間シェルターについては、その重要性を考慮し、平成16年度(2004年度)から50万円を補助限度とする補助金の交付を開始しました。
また、本年度からは、補助限度額を120万円に引き上げるとともに、家賃等の固定的な経費について10割の補助を行うよう制度の拡充を図っています。
 この補助制度による支援を引き続き行うとともに、市民からの幅広い支援がなされるよう働きかけを行ってまいります。

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障碍(がい)者施策について

(中森辰一議員)
 次に、障碍者施策について質問する。広島市は、2006年度に施行された「障害者自立支援法」をふまえて、2007年6月に「すべての人が互いに尊重しあい、住み慣れた地域で安心して暮らせる社会の実現」を基本理念に掲げた「広島市新障害者基本計画」を策定し、「地域における障害者の自立の支援」を基本的な視点として、2012年度までの具体的な方策を示した。
 広島市がこの基本計画をつくるにあたって、4,657人の障碍者、またはその家族からとったアンケートがあるが、これを見ても、障碍者の高齢化、重度化が顕著に進む中で、母親などの介護者がいなくなった後の将来の生活に対する不安が、障碍の種別を問わず高まっていることがわかる。
 地域で安心して自立した社会生活を送りたいと願っている障碍者の方が多数おられ、そうした障碍者や家族の切実な要求となっている地域での生活の場、すなわちグループホームやケアホーム整備の願いが大変大きくなっている。しかし、それに取り組もうという手がなかなか上がらないのが現状である。いまの制度では設置にも運営にもまともな支援がないからである。
グループホーム、ケアホームに対する市独自の助成制度をつくる必要がある。
 また、広島市のグループホーム、ケアホームの整備の見込み数は、2008年度では両方合わせて165人の利用者数を、2011年度までに315人にするというものであるが、これは障碍者の実態や意向を反映した目標数ではなく、市内外でわずか29法人の意向調査による単なるできる見込みだという数値である。
 実際には、市内にある各種の障碍者支援施設に通っている障碍者は、数千人いるはずであるが、その人たちのニーズに応えた、広島市行政の主体的な目標が必要である。
 市が行った他都市の調査でも、回答のあった16の政令市のうち12都市が、グループホーム、ケアホームの整備費や運営費で独自の補助制度を設けている。
 障碍者の要望に基づいた整備を行うため、他の政令市が行っているように、整備費や運営費に対する市独自の補助制度をつくっていただきたい。答弁を求める。

(健康福祉局長)
 グループホームやケアホームの整備にあたっては、多額の施設整備費が必要になることから、社会福祉法人がグループホームなどを整備する際には、初期負担を軽減するため、市が保有する未利用の土地や建物を貸与するなどの支援をしています。
 また、運営に関しては、これまで指定都市市長会などで、事業者報酬の引き上げ等を国に要望してきた結果、平成21年(2009年)4月から事業者報酬が平均で5.1%引き上げられました。グループホームとケアホームについては、入居者に対する世話人の配置割合に応じて幅がありますが、最大50%の大幅な引き上げになっています。
 今回の事業者報酬の引き上げの効果については、現在、国により施設の運営状況の調査が行われており、その結果を受けて、更なる報酬の引き上げを行うことも考えられることから、今後の国の動向を見守っていきたいと考えています。
 また、本市としても、事業者の運営状況を見ながら市独自の支援の必要性についても検討していきたいと考えています。

(中森辰一議員)
 次に、コミュニケーションをとりにくい重度障碍者の方が手術などが必要になった際に、必要な意思疎通が困難であるために適切な医療処置ができないとして、入院手術ができない例がある。平素から介助しているヘルパーさんなどがコミュニケーション介助につくことができれば、入院手術ができるが、現行の制度ではヘルパーさんの人件費がどこからも出ないため、そういう負担ができない障碍者は入院手術ができない。
 まさに、人道的な問題があるが、事例は少なく予算もわずかであり、ヘルパーさんをつけるための補助制度を広島市として独自につくっていただきたい。答弁を求める。

(健康福祉局長)
 現在の国の制度では、医療機関に入院されている障害者の方が病院の看護と重複して介護サービスを利用することはできません。しかし、市としては、直接障害者の方にヒアリングを行った結果、医療機関では重度障害者の
 介護ニーズに十分対応できていないと考え、国に対して対策を講じるよう要望を行っています。
 この問題は、医療サービスの提供のあり方にもかかわる問題であり、本来、国において検討されるべきものと考えています。しかし、本市としては、一人暮らしの重度障害者など入院時の生活に特に困っておられる方への支援の必要性は認識しており、福祉サービスとしての支援について検討したいと考えています。

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発達障碍(がい)者への支援対策について

(中森辰一議員)
 広島市は平成17年(2005年)の発達障碍者支援法の施行を受けて、今年3月、「発達障碍者支援体制づくり推進プログラム」を策定された。この分野での本格的な取り組みはこれからである。そこで、5点質問する。
 まず、発達障碍者支援に対する広島市としての基本的な認識と、今後の取り組みに当たってはどういう姿勢で臨まれるのかお答えいただきたい。

(こども未来局長)
 発達障害については、早期にその障害を発見し、それぞれの子どもの障害の特性や状況に応じた支援を行っていくことが重要であると認識しています。
 本市の発達障害者への支援について、医療・保健・福祉・教育等の関係機関が連携を図り、共通の視点に立って、総合的、計画的に進めていくため、本年3月に、「広島市発達障害者支援体制づくり推進プログラム」を策定しました。
 今後、このプログラムに掲げた「発達障害を早期発見し、速やかに適切な支援を行うための体制の充実」及び「乳幼児期から成人期までのライフステージに応じた一貫した支援」のこの2つの基本方針のもと、発達障害者支援に関する施策を展開してまいります。

(中森辰一議員)
 国の想定でも、発達障碍の発症率は6.3%といわれている。これを広島市の18歳以下の人口に機械的に適用すると、発達に援助が必要な子はおよそ1万3千人に上る。さらに毎年600人以上の援助が必要な子が生まれている。これだけ多くの子どもたちに、しっかりした発達の援助をするためには、大変な支援体制が求められる。
 ところが、その中核的な役割を担う「発達障碍者支援センター」は直営ではなく、社会福祉事業団に委託され、専任の職員も4名しかいない。
 また、発達障碍の診断には3つの療育センターの精神科医師5名、小児科医師5名、舟入病院の精神科医師3名があたっているが、現状でも受診予約が2〜3カ月待ちで、療育を受けたい場合はさらに半年待ちになっている。広島市に住んでいる18歳までの発達障碍児全体の診断、療育に対応できる体制ではない。
 まず、発達障碍者支援センターの職員を増員し、直営で責任を持って運営するべきだと思うがいかがか。
 また、早期の発達障碍の診断とその後の適切な療育、援助の体制を強めることが必要だと考えるが、どのようにされるお考えかお答えいただきたい。

(こども未来局長)
 診断や療育を希望する発達障害者の増加に対応するため、平成20年度(2008年)から西部こども療育センターにおいて週1日小児科の医師を1名増員しています。さらに、光町のこども療育センターにおいて、本年10月から週2日小児科の医師を1名増員しました。
 また、こども療育センターや舟入病院以外の医療機関においても、発達障害の診断ができる医師がおられるため、その情報を市のホームページにおいて紹介しています。
 子ども療育センターにおいては、発達障害の診断を受けた後、療育が必要な子どもや保護者に対して、外来療育教室において、基本的な日常生活習慣や子どもへの関わり方の学習等の支援を行っており、こうした取組は、子どもが成長していくうえで非常に大切であると認識しています。
 そのため、今後より多くの発達障害児や家族へ適切な支援ができるよう、こども療育センターにおける外来療育教室及び職員体制の充実を図ってまいりたいと考えています。
本市の発達障害者支援センターについては、発達障害の診断や療育に関する高い専門的知識及び技術を培っているこども療育センターと密接な連携を取る必要があるため、社会福祉法人広島市社会福祉事業団へ運営を委託しており、センター長以下5名の職員を配置しています。
 発達障害者支援センターでは、発達障害者やその家族への「相談支援」、支援計画の作成等の「発達支援」などを行うとともに、人材の育成を図るため、教員や保育士等を対象とした研修会を行っています。
支援が必要な発達障害児が増加している状況のなか、発達障害者支援センターの専門性を高めていく必要があります。それとともに、保育園・幼稚園・学校及び地域への支援を充実させていく必要があります。
そのため、こども療育センターと連携し人材育成を行うとともに、発達障害者の支援に関わるスタッフの充実を図ること等により、発達障害者支援センターの体制強化に取り組みたいと考えています。
 また、診断や療育を希望する発達障害者の増加に対応するため、平成20年度(2008年)から西部こども療育センターにおいて週1日小児科の医師を1名増員しています。さらに、光町のこども療育センターにおいて、本年10月から週2日小児科の医師を1名増員しました。
こども療育センターや舟入病院以外の医療機関においても、発達障害の診断ができる医師がおられるため、その情報を市のホームページにおいて紹介しています。
 こども療育センターにおいては、発達障害の診断を受けた後、療育が必要な子どもや保護者に対して、外来療育教室において、基本的な日常生活習慣や子どもへの関わり方の学習等の支援を行っており、こうした取組は、子どもが成長していくうえで非常に大切であると認識しています。
 そのため、今後より多くの発達障害児や家族へ適切な支援ができるよう、こども療育センターにおける外来療育教室及び職員体制の充実を図ってまいりたいと考えています。

(中森辰一議員) 
 また、学校での教育支援として、現在多くの学校に特別支援学級が設置され、また学校を超えた情緒障碍の通級指導教室も徐々に増えてきているが、今後まだまだ必要となってくるのではないかと思われる。現在の情緒障碍の通級指導教室の設置状況と今後の方針についてお答えいただきたい。
 また、高校や専門学校に進学した発達障碍の生徒への支援体制はこれからではないかと思われるが、現在と今後の対策についてもお答えいただきたい。

(こども未来局長)
 発達障害者支援センターでは、発達障害に関し広く相談を受け支援を行っており、高校や専門学校に進学した子どもも対象としています。
 また市内に居住する高校生等を対象に社会参加の促進を目的として、「発達障害児オープン相談の場」を開設しています。このオープン相談の場においては、子どもたちが人とのコミュニケ―ションのとり方や交通機関の利用の仕方等の日常生活に必要な知識や技術の学習に取り組んでいます。
 今後さらに、言語によるコミュニューションが苦手な発達障害者に対し、絵カードにより意思疎通を可能とするコミュ二ケーションボードの作成・配布をするなど、社会参加の促進を図ってまいりたいと考えています。
 また、発達障害者の課題である就労問題に関しては、就労しやすい環境づくりのために、企業・事業所を対象とした研修会を開催するなど、発達障害者の理解の促進に取り組んでまいります。


(教育長)
 情緒障害通級指導教室では、小・中学校の通常の学級に在籍している自閉症児や学習障害等のある児童生徒が、1週間に1〜3時間程度、個別または小集団での遊びや活動を通して人との関わり方を学ぶなど、一人一人の課題に応じた指導を受けています。
 現在の設置状況は、小学校では、5つの区に5校7教室を設置し、75人の児童が通っています。中学校では、今年度から1校1教室を開設し、10人の生徒が通っています。
 今後の教室の設置については、障害の状況や保護者のニーズ等を踏まえ、教員定数を管理している県教育委員会と協議を行いながら、検討していきたいと考えています。
 市立高校については、特別支援教育コーディネーターを中心に、校長、教頭や学年主任、担任等で構成する校内委員会を組織し、支援を行っています。さらに、教育委員会としても、大学教授や医師、臨床心理士等の専門家チームによる巡回相談指導を行うとともに、教職員を対象とした研修会を開催しています。今後とも、生徒の自立や社会参加に向けて適切な支援が行えるよう取り組んでまいります。


(中森辰一議員)
 最後に、児童総合相談センターの建物の老朽化が問題となっている。一時保護所も手狭で子どものプライバシーが守れないなども、これまで指摘してきた。
 急増する児童虐待への対応や発達障碍への支援体制など、子どもをめぐる状況は大きく変化しており、それに行政がしっかり対応できるためにも、児童総合相談センターの機能強化が求められている。そのためにも早急な建て替えが望まれているが、市長のお考えをお聞かせいただきたい。

(こども未来局長)
 児童相談センターは、昭和49年(1974年)に心身障害児福祉センターとして開設し、昭和55年(1980年)、児童相談所を設置するため増築し、現在の名称としました。現在の建物は、建設後35年を経過しており、これまで、明装工事や冷暖房設備改修工事等をするなど施設の維持補修を行っています。
 また、児童総合相談センターを構成するこども療育センターにおいては、その分館として、北部こども療育センター、さらに、西部子ども療育センターを設置します。
 しかし、こども療育センターにおいては発達障害に関する診察・相談の増加による一層の機能強化が求められていることや、児童相談所においても一時保護施設の拡充等の課題に対応する必要があることから、今後、児童総合相談センターの機能や組織体制のあり方について検討してまいりたいと考えています。


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子どもの権利条例について

(中森辰一議員)
 最後は子どもの権利条例についてである。広島市で子どもの権利条例をつくる取り組みが始まってから、市民からも議会からも様々な意見が出されているが、反対の立場で言われることの中心は、子どもに権利を教えることは「わがままを助長する」「権利を主張されると親や学校が困るようになる」といった、権利を持つ子どもを恐れる意見や、権利より義務を先に教えるべきだといった意見ではないかと思う。
 私は、「権利」が保障されて初めて「義務」が生ずると考える。お互いの「権利」を調整するのが「義務」というものではないか。
 権利は、それがあることを知らなければ役に立たない。権利がないところには、力の強い者の傲慢な支配と力の弱い者の卑屈な従属しかない。わが国では、何より基本的人権が憲法によって、子どもを含むすべての国民に等しく保障されているのである。
 わが国が批准した子どもの権利条約が保障している権利は、「生きる権利」「守られる権利」「育つ権利」と「参加する権利」である。
 子どもの「育つ権利」を否定する意見はないと思うが、子どもたち一人一人がより豊かに育つために「参加する権利」即ち「意見を表明する権利」が大変重要だと考える。子どもたちが自分の思いや考え、どういうことを目指しているのかを述べることができ、大人がそれをきちんと受け止めることができる関係があってこそ、子どもの最善の利益が叶えられることになる。
 子どもの最善の利益を叶える観点から、子どもが表明した願いについて大人と子供が話し合って、よりよい方向を見出す努力が大人に求められると考える。
 われわれ大人が、そういう努力をする決意を示し、その決意を広島市という地域の実情に沿って具体化するためにつくるのが広島市の子どもの権利条例ではないかと考える。
 子どもの権利条約が採択されて20年になる中、近々、子どもの権利条例案が発表されると聞いているが、改めて、市長の言葉で、なぜ広島市が子どもの権利条例をつくる必要があるのか、子どもの権利についての市長の思いと併せ、市民と議会に語っていただきたい。このことを求めて、一般質問とする。

(市長)
 我が国が平成6年(1994年)に批准した「児童の権利に関する条約」に掲げられている暴力や虐待からの保護、教育を受ける権利、意見を表明する権利などの子どもの権利は、子どもが生まれながらにして持っている基本的な権利であり、子どもが毎日を生き生きと過ごし、自立した大人に成長するために欠かすことのできない権利です。
 本市の子どもの状況をみると、いじめや虐待などの重大な子どもの権利侵害が依然として発生しています。また、都市化や少子化、核家族化の進行、地域のつながりの弱体化、情報機器の普及、有害情報の氾濫、所得格差の拡大など社会環境の変化も子どもの成育環境に大きな影響を与えています。こうした中で、遊びや自然体験、社会体験などを通して子どもが自立性や社会性を身に付けていく機会の減少や、生きる意欲や苦境を乗り越える力の源泉となる自己肯定感の低下などが課題として指摘されています。
 このような子どもの現状を踏まえ、子どもが健やかに成長していく上での様々な問題を解消するとともに、こどもを一人の人間として尊重し、その気持ちを受け止め、子ども自身が大切にされているという実感を持てるようにすることが必要です。そのために、子どもの最善の利益の確保や子どもの意見の尊重など「児童の権利に関する条約」の理念を本市において実現するための条例を制定したいと考えています。
 地方自治体の法規であり、市民への強いメッセージ性がある条例を制定することにより、子どもの権利についての市民の理解が深まるとともに、社会的な規範が強化され、社会全体で子どもを支援する環境づくりができると考えています。
 条例内容の検討に当たっては、昨年8月に、「子どもの権利に関する条例(仮称)」の骨子(試案)を公表し、市民意見募集を行うとともに、学校関係者や民生委員・児童委員協議会、医師会など各種団体への説明会を約90回行い、意見をお聴きしてきました。
 さらに、公募の子ども委員24名による「子ども会議」を4回開催し、子どもたちが置かれている状況の認識とその改善方策について話し合ってもらいました。その結果まとめられた本市への提言書には、子どもの視点から見たまちづくりについての具体的な提案といじめ解消などのために子ども自身が取り組むべきことについての決意も盛り込まれており、本市の未来を担う子どもたちの力や熱意に大変感銘を受けました。
 このような取組を経て、この度取りまとめた条例素案の骨子について、11月30日の市議会安心社会づくり対策特別委員会及び12月上旬に2回にわたり開催した「広島市子どもの権利に関する条例(仮称)について意見を聴く会」において意見を聴きました。
 それらの意見を踏まえて作成した条例素案を12月15日号の「ひろしま市民と市政」やホームページで公表し、意見募集を行うことにしています。さらに、市議会や学校関係者など各方面へ十分な説明を行い、いただいた意見を集約して最終的な条例案を取りまとめ、議会に提案したいと考えています。
 条例素案においては、条例題名を「広島市子ども条例」としています。この「広島市子ども条例」は、子どもの権利についての理念を掲げるとともに、子どもの幸福のための環境整備として、「子どもが安心して生きる環境」など4つの分野ごとに、本市が実施する施策や関係者の取組を定めています。
 また、子どもに関する総合的な相談支援拠点の整備や子どもの権利が侵害された場合の救済機関である「子どもの権利擁護委員会」の設置など、子どもの権利を擁護するための仕組みを盛り込んでいます。さらに、子ども施策を実施するための予算の確保や計画の策定の根拠を条例に定めることにより、将来にわたり、子ども施策の継続的かつ確実な推進が法的に保障されます。このように、実効性のある条例が制定されれば、子どもを取り巻く環境を改善する上で大きな力になるものと確信しています。
 「広島市子ども条例」は、私たち大人が、改めて子どもの存在を見つめなおし、子どもの思いを受け止め、一人の人間として尊重するという大人の決意表明であるとともに、子ども同士が互いを尊重し、自信を持って成長していくための基盤となるものです。
条例を制定し、子どもの権利を尊重し、擁護するための施策を全力で推進することにより、子どもが幸福に暮らし自立した大人へと健やかに成長することができる社会の実現に取り組みたいと考えています。

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トップ議会情報・議員の発言2009年第5回12月定例会 議員発言 >一般質問・中森辰一議員
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