トップ議会情報・議会報告2005年第4回 6月定例会 議会報告 > 一般質問


2005年6月28日 本会議 藤井とし子議員の一般質問

自治体のあり方と指定管理者制度
公立保育園の民間移管について


自治体のあり方と指定管理者制度

 小泉構造改革は「民間でできる事は民間で」と民間開放と規制緩和を進め、地方自治体へも行革推進を押し付け、公務・公共サービスへの民間営利企業の参入を一層進めようとしています。

 この背景には、財界が中心の民間開放・規制改革推進会議が政府に強く迫って民間委託や指定管理者制度導入などで、これまで公的責任でやってきた公務や公共サービス分野を新たな50兆円のビジネスチャンスと、金もうけの対象にしようとすることが真のねらいであったことを、既に3月議会で我が党の皆川議員が指摘しました。この流れの行き着く先は、すべての行政サービスが商品となり、商品を買えない社会的・経済的弱者が排除される社会ではないでしょうか。
 こうしたことについて、市長の考えを聞いたのに対し、市長は「地方自治の本旨ということもある。自治体存立の理念に立ち戻り、血の通った自治体の役割を果していきたい」と答弁されました。

 改めて伺いますが、市長がそのように考えておられるなら、「行政改革大綱」の最大の目標は「地方自治の本旨」にそったものと考えて間違いないでしょうか。行政改革は「憲法にもとづく地方自治の拡充に資するもの」と考えますが、いかがでしょうか。市長に答弁を求めます。

(企画総務局長)
 憲法第92条に規定する「地方自治の本旨」にもとづき、地方公共団体の組織及び、運営に関する事項が地方自治法で定められています。この地方自治法に従い「最少の経費で最大の効果を挙げる」とともに、「常にその組織及び運営の合理化」に努めながら、「市民の福祉の増進を図ることを基本」とし、諸施策の展開を図っております。

 これらの諸施策を、より一層効率的・効果的に展開していくためには、行政本質を変革する必要があることから、本市では行政改革大綱に基づき行政改革を推進しております。
 したがいまして、行政改革は「地方自治の拡充」に通じるものでございます。

 広島市の行政改革大綱でかかげられている目標の1つに、主権者である市民の意思によって、市民が住みやすく安心して暮らせる市政を実現する事が市政運営の根幹であり、これを支える行政体質を確立するとしています。そのために、積極的に民間委託や指定管理者制度の導入で、公益法人の縮小廃止等で経費の縮減を図るとしています。
 しかし、指定管理者制度を含め、公務・公共サービスの民間開放の最大のねらいはコストダウンであり、そのほとんどが人件費削減です。

 指定管理者制度の場合、公募となると最大で4年間しか雇用の保証がありませんが、それは、公共の職場から正規職員を追放し、臨時職員に入れ替えてしまうことになります。
 今日、労働者の3分の1がパートやアルバイト、派遣などの不安定雇用だといわれています。正規職員に比べて極めて給与水準が低く、それが働く人々の所得を引き下げ、景気への影響や少子化にますます拍車をかけるでしょう。広島市行政が社会問題を一層悪化させる役割を果すことになります。

 同時に、継続して経験を重ね、サービス提供の主体者として、より質の高い業務を追及するための条件を投げ捨ててしまうことでもあります。臨時職員ばかりで安心して暮らせる市政の担い手になりうるのでしょうか。これが市の行革大綱がめざす、安心して暮らせる市政なのか 市長のお考えをお聞かせください。

(企画総務局長)
 指定管理者制度は、平成15年(2003年)6月の地方自治法の改正にともない、公の施設の管理の実施者について、従来から認められていた公益法人等に加え、幅広く民間事業者なども対象とすることにより、市民サービスを向上させるとともに、管理経費を縮減することを目的として導入されたものです。

 本市では、指定管理者を公募により選定するにあたり、制度の目的にそって、
(1)市民の平等利用を確保することができること、
(2)事業計画書の内容が、施策の効用を最大限に発揮するとともに、管理経費の縮減が図られるものであること、
(3)事業計画に沿った管理を安定して行う物的能力、人的能力を有していると認めらる
ことなどを評価項目といたしております。
 また、募集要項の中でも、それぞれの施策の性格や目的を踏まえた上で、そのサービス水準を確保するために必要と考えられる従事者の配置や資格要件等の条件を示すことにしております。

 さらに、市が管理経費として積算していた額に対し、申請者が不当に低い価格で応募してきた場合には、調査の上、業務が適正に履行されないおそれがあるときには、評点を零点にするなどの対応をとることにしております。
 従事者の雇用形態にかかわらず、サービス水準は確保されると考えております。

 また正規雇用が臨時雇用に置き換わるかどうかについても、ご認識を伺っておきます。

(企画総務局長)
 議員御指摘のように、指定管理者制度が導入されれば、従事者の雇用形態が正規雇用から臨時雇用に代わることがあるかもしれません。施設でのサービスの提供の良し悪しは、従事者の意欲、責任感、人柄等によるところも大きく、一概に雇用形態のみで決まるものではないと考えております。

 本市としては、公募の場合は複数の申請者の中から最適な指定管理者候補を選定し、指定管理者の管理状況や業務遂行能力の点検などを行うことにしておりますので、従事者の雇用形態にかかわらず、本市が望むサービスは確保されると考えております。

 最後に、憲法15条は、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と公務員の本質を規定しています。「民間にできることは民間で」というなら、同時に「行政にしかできないことはなにか」ということが問われなくてはなりません。公共サービスを提供するうえで、行政と民間の決定的な違いについてお答えください。

(企画総務局長)
 平成15年(2003年)6月の地方自治法の改正では、従来の管理委託制度にかわって新たに指定管理者制度が創設され、民間事業者も管理できることになり、あわせて使用許可も行うことができるようになりました。サービスの提供という面では、行政と民間に決定的な違いはないと認識されるようになったと考えております。

 しかしながら、「公の施設」は、あくまでも地方公共団体が設置して住民にサービスを提供するものであり、行政の最終的責任は担保されていなくてはなりません。これから導入しようとする指定管理者制度にあっても、管理者指定の手続き等を条例で定めるとともに、指定に際しては議会の議決を必要としており、また、指定管理者に対する指導等、行政による様々な関与が行われることになっているのも、そうした考え方のあらわれであると思います。

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公立保育園の民間移管について

 次に、公立保育園の民間移管について質問します。
 行財政改革は、資源(人・もの・金・時間)の有効活用に眼目が置かれています。資源の有効活用はこれからのことだけが問題なのではなく、これまでに費やした資源も市民の財産として有効活用の対象とすべきものと考えます。

 これまで公立保育園に対し、その専門性を高めるために国基準に市独自の上乗せ措置をするなど、様々な資源を費やしてきました。民間移管にあたり、こうした税金を投入して積み上げられてきた専門性を高めるための蓄積は、市民の財産です。これが生かされるのか、失われるのかお答えください。

(社会局長)
 これまで、必要に応じて国基準を上回る職員配置や、保育士の専門知識及び資質の向上を図るための研修を実施するなど、保育水準の維持向上に努めてまいりました。
 公立保育園がこれまでつちかった知識、経験、ノウハウ等、資源については、民間移管後においても、保育園の運営指導等を所管している社会局児童福祉課などに蓄積されており、こうした資源を活用しながら民間保育園の指導・監督、研修及び人材の育成などを行い、本市全体の保育水準の維持向上に努めていきたいと考えております。

 児童福祉法第2条は、「国および地方公共団体は、児童の保護者とともに児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と児童の発達保障に対する自治体の責任をうたっています。もし、民間移管にあたり、公の施設を廃止する必要があるのであれば、児童福祉法が定める自治体の責任は果たせるのですか。わざわざ公の施設の廃止までして民間移管しなければならない理由は何か。

(社会局長)
 児童福祉法第2条では、国及び自治体は保護者とともに児童育成の責任を負う旨が規定されており、保育園は、この責任を果たすために必要な児童福祉施設です。また、児童福祉法第24条では、市町村は、保育に欠ける児童を保育園において保育しなければならない旨が規定されており、保育に欠ける児童に対する保育の実施は、自治体に課せられた責務となっております。

 一方、こうした責務をまっとうするためには、多額の財源が必要となりますが、現下の厳しい財政状況のなかで、今後の保育施策を推進するうえで、その手法等を十分に検討することが必要でございます。
 そうした中で、2004年3月に設置した公益法人等関係局長会議において、全ての公の施設への指定管理者制度の積極的導入及び、これに伴う課題やその対応策等について検討を行いました。

 その結果、保育園の果たすべき目的・役割は公立と民間とで違いはなく、今後の保育施策の推進にあたり、より一層の効率的な運営を図るためには民間活力の導入を進めていく必要があるという結論に至り、保育園については、指定管理者制度を導入した場合には、指定期間ごとに運営主体が変更となる可能性があり、保育環境が変わることなどによる児童への影響や保護者の不安などの課題があることから、「条件の整った園から順次民間に移管し、それまでの間は直営とする」ことにしたものでございます。
 本市としては、この後とも法例等に則った保育施策の推進に努めていきたいめていきたいと考えております。

 最後に、民間移管先は、社会福祉法人に限定するのか、営利企業の参入もあり得ると考えているのかお答えください。

(社会局長)
 現在、公立保育園のあり方について検討している段階であり、民間移管先の運営主体をどのような形態とするかについては、まだ決定しておりませんが、保育水準の維持向上が確実に期待できる事業者を選定したいと考えております。

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