2002年予算特別委員会 障害児学校充実の問題
社民党が「ノーマライゼーションの理念に基づいた学校教育推進に関する意見書」を提出 
(*この意見書は、賛成多数で可決されました。)

石川武彦議員が反対討論  本会議 (3月27日)

障害児学校の充実、新設こそ緊急重要な課題
障害児の実態に背を向けた社民党案


◆社民党が「意見書」で国・県へ要望した2点
@障害児の就学にあたっては、本人および保護者の意思を充分に尊重し、地域の普通学級への就学を希望するものに対しては、必要な支援措置が講じられるようにすること。
A地方分権により、就学事務が市町村の自治事務となっていることにかんがみ、就学基準の適用については、地域実情に応じた弾力的な運用を求めること。

◆「ノーマライゼーションの理念」とは
障害を持つ人も持たない人も、共に生きる社会を目指すという意味。

(石川議員)
わが党は議会の度に、市立養護の充実、新設、ひとりでも障害児学級設置など、障害児教育の緊急課題解決のため努力してきました。しかし、この意見書には賛成できません。 

障害の程度を無視して普通学級へ入れることのみ追及するのは発達保障を軽く見たもの
障害児教育を考える場合、国際的にも国内的にも合意している基本視点があります。それは、@障害児の発達保障のためには、障害と発達の現状に見合った教育を行う、A障害児教育に自治体ごとの格差が生じないよう国と自治体の責任で教育条件を整備する、B一人ひとりの健康と発達を考慮した民主的な就学指導を行う、C障害児教育は、現在の科学の成果を取り入れて、障害ごとにもつともふさわしい形態や内容、方法をとるべきであり、障害の程度を無視して普通学級に入れることのみを追及するのは、障害児の発達保障を軽く見た不十分な意見である、D障害児学級や学級と普通学校の連携を強める――ことなどです。
  市教委でもこうした取り組みは不十分とはいえ始まっています。ところが、意見書が求める2項目は、こうした障害児教育のあり方に照らして問題があります。
 
普通学校への就学を一面的に強調するのは、関係者から見ても不自然
意見書の第1の要請項目について。本人、保護者の意見尊重は当たり前です。しかし、子どもの障害の度合いによっては、障害児学校が発達保障にとって必要な場合が当然あります。そういう子どもにとっては、今の障害児学校の充実こそが緊急重要な課題です。広島市でも障害児学校に入りたいと思っても、市立養護が満杯のため普通学校へ行かざるを得ないというのが実態です。だから、広島の障害児の保護者団体からも、その要求が強く出ています。それを抜きにして、普通学級への就学を一面的に強調するのは、多くの障害児教育関係者から見て極めて不自然であるだけでなく、最近一部の文部官僚と県が、お金がかかる障害児学校の整備、充実に背を向けようとしているとき、「誰の水車に水をそそぐのか」と言わざるを得ません。
 
「地域実情」より「子どもの障害、発達の実情」に応じた教育こそ肝心
第2項ですが、この通り実施するとしたら、「地域実情」というとらえどころのない言葉で、地域によって障害児教育に格差が生じることは避けられません。大切なのは、「地域実情に応じた教育基準」ではなく、どんな地域でも、より科学的な就学指導基準に基づいて、子どもの障害、発達の実状に応じた就学指導と教育が保障されるよう国と県が責任を持つということです。肝心なことは「地域実情」ではなく、その子の障害、発達の実状に応じた教育です。この要請は、結局は障害児教育における国の責任をあいまいにするだけです。
  なお、意見書前文に、要請を根拠付けるものとして、国連の「子どもの権利条約」や「サラマンカ宣言」が引用されています。子どもの権利条約には、「障害児は普通学級に就学すべきだ」とは書いていません。障害児もきちんとした教育を受ける権利があるとあります。また、有名な「サラマンカ宣言」も、「障害児を普通学校に」を単純に規定してはいません。確かにサラマンカ宣言は、インクルージョン学校という新しい学校を提唱し、普通学校、障害児を含む多様な特別な教育的ニーズを持つ子どもにも対応できるよう改革すべきと言っています。同時に障害児学校の存続を認め、かつその機能の拡充の必要性を述べています。これら国際的文書を見ても、2つの要請項目が適切なものだと言えません。この点も申し沿えて、反対討論とします。  
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