2002年9月定例会 中森辰一議員の一般質問 9月27日(金)
秋葉市長 示せなかった「脱巨大開発」
市民生活重視の予算求める質問に市長答弁せず


【中森辰一議員】
 今年の予算審議の最中に財政当局から、平成15年度の予算組みの時には120億円もの財源不足が生じるとの報告書が出された。しかし、こうした財政状況を理由に、財政危機の原因にしっかりメスを入れずに、市民生活直結分野までも一律に予算カットしていくべきではない。
 これまでも指摘してきたが、決算カードでの比較で市民一人当たりの民生費は、政令指定都市の平均より2万円以上少ない現実がずっと続いてきた。100万人で200数十億円少ないということであり、福祉をやりすぎて財政危機になったのではない。
 この財政危機に至ったおおもとの原因は、身の程をわきまえず大型開発事業推進路線を突き進んだことにあるのは明らかである。秋葉市政の3年間をみると、財政危機のおおもとである大型開発推進路線は相変わらず聖域であり、基本的に前の市政と変わらない。
 財政が厳しいといいながら、なお、巨額の借金も伴いながら港湾開発や高速道路建設や都市再開発など、不要不急の大型公共事業が進められている。
 長野県の知事選挙では、ダムに代表される不要不急の大型公共事業推進政治が拒否され、巨大公共事業をやめて、借金を減らしながら福祉施設や教育施設の増設、30人学級の実現など、くらしの要望にこたえる県政を圧倒的多数の県民が選んだ。
 長野県だけでなく、徳島県や鳥取県など巨大公共事業優先の行政から住民の暮らし優先に転換する流れが広がっている。
 市民生活を支える施策を維持しながら、しっかりした子育て環境や介護体制の整備、急がれる学校施設の耐震調査や大規模修繕、子どもたち一人一人に行き届いた教育を行うための人的体制の整備、障害を持つ市民が安心して住み続けるためのまちと制度の整備などを着実に進めていかなければならないが、これこそ地方行政の本来の仕事である。
 長野県知事のように、これまでの大型開発事業推進行政を抜本的に見直し、暮らし、福祉、教育条件整備を第一に予算組みを行う方向に切り替えるべきではないか。

【平野隆財政局長】
 本市の財政状況は、長引く景気の低迷により市税が減少する中、基金は底をつき、市債残高が一般会計で8,700億円を超えるなど、大変厳しい状況が続いている。
 こうした中でも、本市には、都市の活力を維持・発展させるとともに、安定した生活のできる豊かな地域社会を築くことが求められている。
 その実現には、少子・高齢化や学校教育への対応も重要であり、また、都市基盤の整備、都市の魅力や活力の向上につながるプロジェクトの推進なども重要と考える。
 今後とも、厳しい財政状況が続くと思われるが、市にとって何を優先すべきか十分に検討しながら、限られた財源を最大限有効に活用できるよう努め、これらの諸問題に対応していく。

【中森辰一議員】
 このような財政危機の中で、アストラムラインの延伸、メッセコンベンション施設建設、東広島貨物駅跡地の野球場建設といった新たな巨大事業が動き出そうとしている。
 しかし、税収が減少する状況で財政健全化計画自体が厳しい状況におかれており、昨年の市の財政見通しでも、計画されている公共事業費は年に300億円足りないとなっている。
 今後、市民生活にしわ寄せをせずに、こうした巨大事業が実現可能だと考えているのか。

【平野隆財政局長】
 昨年9月時点で試算した「大規模プロジェクトの今後の見通し」では、一定の条件下ではあるが、現段階で平成20年度までに実施または予定されている巨大事業を含む大規模プロジェクトなどが、すべて実施できる状況にないことが示されている。
 また、今後とも厳しい財政状況や経済情勢が予想されるので、次なる財政計画の策定を検討しており、その中で、人件費をはじめとする消費的経費の抑制・削減などによって生み出された財源や個別具体的な国等の財源措置を有効に活用しながら、投資的経費の事業費を確保していくことが必要であると考える。
 大規模プロジェクトの今後の取り組みについては、現行の財政健全化計画との整合を図るとともに、基本的に次期実施計画の策定過程において、その段階で想定しうる財政の収支見通しを踏まえながら検討していく。

政令市平均より少ないのは被爆地の特殊事情?
「一人当たりの民生費が少ない」市が認める


【中森辰一議員】
 全国統一基準で比べた市民一人当たりの民生費が政令市平均より2万円以上も少ないのは、どこが違うと考えているのか。

【平野隆財政局長】
 民生費や土木費などの歳出の目的別の配分については、道路・下水道等の都市基盤の整備状況など、都市によって成熟度や高齢化率、生活保護率など様々な差があり、そうした行政課題等に対応した結果と認識している。
 また、本市の特殊事情として、本来、原爆被爆者でなければ高齢者や障害者として民生費でみられる経費が、原爆被爆者の場合、衛生費でみられていることにより、他都市と比較して民生費が少なくなっているという実態もある。
 なお、平成14年度当初予算における民生費は、国が直接執行することになった国民年金事務を除いて比較すると、対前年度比で伸び率が4.0%、額にして約38億円の増となっており、一般会計の当初予算規模が5年連続してマイナスとなる大変厳しい状況ではあるが、できる限りの充実を図っている。

 平野隆財政局長は、広島市民一人当たりの民生費が政令市平均より2万円以上も少ない理由として、「被爆地の特殊事情」をあげましたが、被爆者対策費のほとんどは健康管理手当等(約320億円・全額国庫負担)であり、被爆者の健康や生活に役立っていますが、これで高齢者施策に代えることはできません。しかも95%は国庫負担です。
 中森議員は、せめて政令市並に民生費を引き上げるために、巨大開発優先の予算を見直すべきだと強調しました。 

↑上に戻る
議会報告メニューへ戻る