2002年9月定例会 中森辰一議員の一般質問 9月27日(金)
「サービス水準の低下はさせない」
障害者支援費制度への移行に対して市が答弁


【中森辰一議員】
 来年4月から、障害者福祉制度が基本的に支援費制度に変わる。これまでは障害者の一人一人に応じて行政の責任で福祉サービスが提供されていた。今後は、行政は障害者の申請を受けて利用できるサービスと量、つまり支援費の額を決めるだけで、その枠の中で障害者自身が自分でサービス事業者と直接契約をしなければならない。
 この制度が少なくとも障害者の生活を守る機能を果たすためには、これまでどおり、行政が責任をもって必要なサービスと量を把握し、広島市に居住する障害者全体が必要とするサービスを十分確保することが必要である。さらに、障害者が自分で判断し契約するためには、この制度をはじめ必要な情報を十分提供し理解してもらうこと、みずから申請したり判断したりできない障害者に対しては、その代わりを果たす機能が行政の責任で確保されなければならない。同時に、最低限、今以上の負担にならないようにすることが必要である。
 しかし、現状は制度が変わることさえ周知されていないのが実態ではないか。そこでいくつか質問する。
 憲法第25条で生存権の保障が明記され、障害者基本法では「すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする」「社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする」とし、第4条で国と自治体の責務を明記している。
 私たちのところには、全身性障害者訪問介護やガイドヘルパーなどのサービスは、支援費制度移行後も、負担もサービス量もこれまでと変わらず利用できるのかという不安の声がたくさん寄せられている。こうした声に率直に答える必要がある。
 まず、支援費制度になれば、障害者にとってこれまでより何が前進するのか、また、負担がどうなるかは深刻な不安材料だが、増えるのか減るのか。自己負担などの内容は自治体が決められることになっているが、憲法と障害者基本法にのっとって少なくとも、自己負担の増加やサービス水準の低下は生じさせない、このことを広島市として保障する必要がある。市長の考えを伺う。

【守田貞夫社会局長】
 支援費制度は、ノーマライゼーションの理念を実現するため、これまで行政処分として障害者福祉サービスを提供してきた措置制度を改め、障害者自らがサービスを選択し、事業者との対等な関係に基づいた契約によりサービスを利用する新たな制度である。
 利用者である障害者がサービスを選択することにより、障害者の自己決定の尊重が図られるとともに、利用者本位のサービスが提供されるなど、サービスの質の向上が図られることになると考えている。
 利用者負担額については、9月12日に示された国の利用者負担基準を超えない範囲内で、本市の基準を決定するとともに、サービス水準についても、現在の水準を低下させないようにしていく。

【中森辰一議員】
 11月からの申請受付を前に、対象となるすべての障害者・家族に制度が変わることを周知徹底することが急がれる。有効で十分な方策が必要であるが、どのような方策をとっているのか。
 また、市町村は、申請のあったすべての障害児・者本人への訪問調査を行い、障害程度区分を定め、支援費の決定を行うわけだが、介護保険のような全国統一の基準もなく、調査員の資格や認定のための専門機関の設置もない。現状の人員では訪問調査もままならない。思い切って担当者を増やす必要がある。
 また、それぞれの障害者の生活状況を十分ふまえた認定を行なうために、この分野の専門性が求められ、障害者の立場をよく理解した人が担当することが必要である。この点で相談窓口に障害者またはその家族を採用することを考えてはどうか。また、専門性を確保できるだけの充分な研修が必要だと考えるがどうか。

【守田貞夫社会局長】
 障害者福祉サービスの対象者および家族の方々に対する制度周知については、.6月に制度改正のお知らせを障害者手帳所持者全員に送付し、7月から8月にかけて現行利用者にパンフレットを送付し、8月に制度説明会を開催したほか、随時、障害者団体、施設関係者の方々に対して説明を行うなど制度周知に努めている。
 10月には「市民と市政」で制度の詳細を説明するとともに、申請の受付が始まる11月には各区を単位とした説明会を開催する予定であり、今後とも市民の方々に支援費制度についての理解を深めていただけるよう制度の周知に努めていく。
 支援費の支給決定に際しては、区において相談支援を十分に行うとともに、利用者本人の意向を踏まえながら必要な福祉サービスが利用できるよう、区職員の研修の充実を図り、的確な支給決定等に努力していく。

【中森辰一議員】
 サービスの種類ごとの支援費支給申請も、事業者との契約も、支援費の管理も障害者本人が自分の責任で行わなければならないが、これらのことが自分でできず、代わってやる家族もいない人について、国は「成年後見制度」や「福祉サービス利用援助事業」で対応するとしている。
 しかし、いずれも費用がかかり、気軽に利用できる制度ではない。これは市の責任で申請手続きができるようにする以外にないが、どうするのか。

【守田貞夫社会局長】
 支援費の支給申請や事業者との契約にあたっては、家族のほか、友人など利用者本人の信頼する者が本人の意向を踏まえて、本人に代わり申請や契約を行うことができる。
 なお、支援費制度における自己決定を尊重するためには、自己決定が困難な人へのバックアップが大切であると認識しており、障害者福祉施設に相談窓口を設けるなど相談支援事業の充実を図っていく。

選択できるだけのサービス充実にむけて
基盤整備を早急に

【中森辰一議員】
 養護学校を卒業した子どもたちの行き場がない。やむなく在宅で過ごしているが在宅サービスも足りない。支援費制度に移行したら「障害者自らが必要なサービスを選び、契約することができる」ことになっているが、サービスが足りない現状では「絵に画いたもち」である。  選択できるほどのサービスの充実に向けて基盤整備が必要であるが、なにか計画があるのか。

【守田貞夫社会局長】
 障害者施策については、広島市障害者基本計画に基づき、保健、医療、福祉、教育、都市基盤など多くの分野にまたがる施策を総合的に推進しており、特に、在宅福祉サービスと施設整備については、数値目標を掲げて取り組んでいる。
 厳しい財政状況ではあるが、この目標に向けて計画を着実に進めることにより、障害者へのサービスを充実していきたい。

【中森辰一議員】
 以前、要介護の高齢者がおられる世帯では税の障害者控除ができることを周知するべきだと指摘し、周知の取り組みを行うとの回答だったが、どのような取り組みが行われたか、その後、申請者が増えたのか。

【守田貞夫社会局長】
 所得税法および地方税法の規定により、65歳以上の痴呆や寝たきりなどの状態にある高齢者のうち、知的障害者または身体障害者に準ずるとして福祉事務所長の認定を受けた方は、所得税および住民税の障害者控除の対象となる。
 この制度の周知については、対象となる高齢者の方々に、区役所の相談窓口で制度の紹介をすることに加え、本市のホームページや「保健・福祉の手引き」に制度の概要を掲載している。
 申請者の状況としては、平成11年度21件、平成12年度20件に対し、平成13年度は31件と増加している。

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