2002年9月定例会 中森辰一議員の一般質問 9月27日(金)
ゼロエミッションは期限なしの「究極目標」
実現するまでは最終処分場必要と市答弁


【中森辰一議員】
 広島市が処理しているゴミ量は年々増えつづけ、平成7年度の年間43万5千トンに対して、5年後の12年度には49万トンと15%も増えている。最近の資料によると13年度は前年比で約3万トン減少してはいるが、現状では膨大な財政負担を余儀なくされ、処分場周辺では環境問題も発生している。
 広島市では26年前に5種類分別を導入し、市民の協力で政令市の中でもゴミが少ないと胸を張っているが、今日の事態はゴミ対策を根本から転換することを求めている。こうした中で、広島市では昨年11月の「廃棄物の増加を前提として処分施設を確保するという考え方から、ごみを可能な限りゼロに近づけ環境への負荷をきわめて小さくする考え方へ転換する必要がある」との、廃棄物処理事業審議会の提言を受け、今年6月に広島市ゼロエミッションシティ検討委員会を発足させた。
 日本共産党市議団が繰り返し求めてきた、ゴミが増える計画ではなくゴミをゼロに向けて減らす方向へ踏み出したものと考えているが、ゼロエミッションを掲げるなら、排出ゴミの減量方策や、リサイクル方策とともに、埋め立て処分や単なる焼却処分を止める方策が検討されなければならない。
 ところが、8月28日に県に提出された出島の産廃処分場建設に対する市長意見は、新たな産廃処分場建設が、「市民の安全で快適な環境を保全する上で必要不可欠」と述べており、ゼロエミッションの考え方と矛盾するのではないか。
 出島に産廃処分場ができれば、今後10数年にわたって、これまでどおりに安心して産業廃棄物を持ってくることができることになる。排出事業者のほうは、事業活動から出る廃棄物をいかになくすかという努力は、当分の間はする必要がないということになる。
 今日、廃棄物の種類が多い自動車産業まで含めて、製造業でも様々な業種で多くの企業が工場から廃棄物を出さない努力を進めている。このような努力に逆行するのが、新たな産廃処分場の建設ではないか。市長の考えを伺う。

【斉藤末男環境局長】
 広島市から発生する年間約210万トンの産業廃棄物のうち、87%に当たる約183万トンが企業、関係業界の努力によって再利用、減量化が図られている。しかし、残る13%の約27万トンは埋立処分されているのが実情。
 本市は、現在、究極の目標であるゼロエミッションシティの実現を目指して具体的な検討を行っているが、その実現には長期間を要することから、それまでの間、市民の安全で快適な環境を保全する上で、不法投棄等のない適正に処理されるための処分場が必要であると考えている。

【中森辰一議員】
 市として、産廃処分場を作らなくてもいいように、明日からでもあらゆる努力をするべきだと思うが、何もしないのか。広島市みずからも焼却灰や汚泥を持ち込まないために、直ちに期限を設けた技術的な検討などをするべきではないか。

【斉藤末男環境局長】
本市における廃棄物の再利用、減量化について、
1.下水処理施設から排出される有機性汚泥のコンポスト化、セメント原料化
2.清掃工場から排出される焼却灰の溶融スラグ化(平成16年度から)
3.県とともに進めている「広島県建設副産物リサイクル促進連絡会議」における建設汚泥の減量化・リサイクルの検討
などに取り組んでいる。今後とも、国、県の動向や技術革新等を十分調査、研究し、ゼロエミッションシティの実現に向けて積極的に取り組んでいく。

「10年後のことは10年後に考える」では
いつまで経っても最終処分場に頼らざるを得ない


【中森辰一議員】
10年後に県が新たな処分場をつくりたいといってきたら「必要不可欠」だと容認するのか。

【斉藤末男環境局長】
10年後の処分場への対応については、その時点における再利用等の状況を勘案して、適切な対応をしたい。

ゴミ減量には市長の強い決意が必要なのに
秋葉市長「最終処分場は必要」と処分場建設容認


【中森辰一議員】
 これまでも紹介してきたが、名古屋市では新たな埋め立て処分場の建設ができなくなり、ゴミ非常事態宣言を発して市民に協力を求めて大きな成果を上げつつある。
 埼玉県の大井町では、建設費が110億円と町の年間予算に匹敵する大型焼却炉の建設を中止し、職員が半年間、休日返上で夜でも町内会に出かけて町民とひざを突き合わせてゴミ減量への協力と意義を訴えた結果、21種類分別が始まり、8億円の小型炉を建設し、予算を福祉に回した。
 このように、ごみ減量で大きな成果を上げた理由のひとつは、行政が、もう新たな埋立地や大きな焼却施設はつくらないという思い切った決意をしたところにある。ところが、広島市はゴミの増加を見込んで焼却炉を大幅に増強する計画をもち、新たな埋め立て処分場は必要という姿勢。
 市長はゼロエミッションを掲げるなら、「新たな埋立地は作らない」「新たな、あるいは大規模な焼却工場は作らない」というような強い決意をするべきではないかと思うが市長の考えはどうか。

【秋葉忠利市長】
 21世紀の社会においては、大量生産、大量消費、大量廃棄型の従来の社会の在り方や国民のライフスタイルを見直し、物質循環を確保することにより、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷ができる限り低減される、いわゆる循環型社会の実現を図ることが必要となる。
 しかしながら、究極の目標であるゼロエミッションシティの実現には相当な期間が必要と考えており、その過程において発生する廃棄物について、環境への負荷に配慮した適切な処分を行うことができる規模の最終処分場などが必要になると考える。
 このゼロエミッションシティに社会を転換していくためには、国、県、市はもとより、市民、事業者がそれぞれの責務を認識し、役割を分担して取り組み、廃棄物の発生を抑制し、排出された廃棄物はできるだけ資源として利用する新たな枠組みを構築していくことが必要になる。
 このため、本市においては、昨年11月に廃棄物処理事業審議会からの提言を受け、本年6月、学識経験者や生産、流通、消費、廃棄に至る各段階の関係者で構成する広島市ゼロエミッションシティ検討委員会を設置した。
 現在、この委員会において、他都市の先進事例や廃棄物のリサイクルに関する最新技術などを参考に、本市の実情に即した廃棄物の排出抑制、資源化の方策など循環型社会システムを構築するための施策の方向性について検討している。
 今後は、この検討結果をもとに具体的な施策展開を進め、最終的に排出される廃棄物の量を限りなく少なくするゼロエミッションシティの実現に向け、市民、事業者と一体となって全力を傾注していく。

ゼロエミは究極目標・ゴミ減量目標も無しでは
従来の「燃やす・埋める」と変わらない

【中森辰一議員】
 ゼロエミッション実現の決意を具体化する上で、排出ゴミを減らす量と再生資源化する量について、思い切った期限を限った目標値を掲げる必要があると考えるが、そうした数値目標はあるのか。

【斉藤末男環境局長】
 ゼロエミッションシティを実現していくためには、市民、事業者、行政がそれぞれの役割を果たし、一丸となって取り組んでいく必要があり、このために目標値などを設定することは施策の実効性を高める上で有意義なものと考える。
 ゼロエミッションシティ検討委員会では、現在、施策の方向性を検討している段階であり、現時点では目標値などを設定することは困難であるが、今後、具体的な施策をある程度明らかにした段階で検討していく。

埋め立てや焼却を減らすために
今すぐ あらゆる努力をするべき

【中森辰一議員】
 次に、埋め立てや焼却を減らすためにいくつか提案する。
 今後、家庭ゴミは容器包装の分別が必要で、いっそう分別への協力をお願いすることになるが、他方、家庭ゴミの分別の努力に反して事業所ゴミの分別が極めてズサンである。ゴミ焼却工場に搬入される事業所ゴミは分別されないプラスチックゴミが大量に含まれているが、市の調査でも半数以上の事業所が分別をしていない。
 分別しない家庭ゴミは引き取らないことにしているはずだが、分別されない事業所ゴミも受け入れないという原則にするべきではないか。

【斉藤末男環境局長】
 焼却工場へ搬入される事業ゴミについては、指摘のように分別が不徹底な状況が見受けられる。このため、年間を通して夜間を中心に搬入チェックを行い、搬入不適物があった場合には持ち帰らせるなど、適正に搬入するよう許可業者を指導している。
 今後とも、工場への搬入チェックを随時行い、適正搬入の徹底を図っていく。

【中森辰一議員】
 事業所ゴミは全体の半分を占めており、ここを減らすことは大変重要。今の処理手数料自体、処理原価の半分以下となっているが、特に大量排出事業所は目標も示して、ゴミ減量を強力に進めるべきだと思うがどうか。

【斉藤末男環境局長】
 大量排出者である大規模事業所に対しては、分別方法や資源化等について個別訪問指導を実施しているが、対象を平成13年度、614事業所から715事業所に拡大し、取り組みの強化を図っている。
 この大規模事業所に対する減量化指導では、毎年度、ゴミの種類別に発生量、資源化量、処分量を記載した減量化計画書を提出させ、前年度の実績量に対する当該年度の計画量をそれぞれ目標値として設定させることで、ゴミの発生抑制や資源化を積極的に行うよう指導している。
 こうした指導を行うことにより、事業ゴミの適正排出、減量化および資源化をより一層推進していく。

【中森辰一議員】
 広島市の計画では、容器包装リサイクルのルートに乗らない家庭ゴミのプラスチックは焼却に回り、事業所ゴミのプラスチックは埋め立てに回る。新潟市では民間企業に委託して廃プラスチックの油化を実施し、プラスチックは原則として埋め立てないとしている。
 プラスチックの油化は容器包装のリサイクルルートでもあると思うが、埋め立てないための方策のひとつとして検討してはどうか。市長の考えを伺う。

【斉藤末男環境局長】
 事業系のプラスチックについては、平成13年度4月から埋立容量の大きいもののうち、民間でリサイクルまたは安定した処理が可能なものについて、玖谷埋立地への搬入規制を実施し、埋立地の負荷の軽減に努めている。
 事業系のプラスチックのリサイクルまたは処理は、ゼロエミッションシティを進めていく上で、重要な検討課題の一つであることから、現在、ゼロエミッションシティ検討委員会において、リサイクルを含めた処理の方向性について検討を進めている。

【中森辰一議員】
 燃えるゴミの中で生ゴミの比率は大きく、生ゴミを減らす取り組みが必要である。生ゴミを減らす上では堆肥化が重要だが、コンポストがどれだけ利用されているかが重要となる。
 コンポストの普及状況は、市のコンポスト購入の補助の状況でわかるのではないかと思うが、これが落ち込んでいるのはなぜか。

【斉藤末男環境局長】
 生ゴミ堆肥化容器購入費補助制度は、平成7年度から平成12年度まで行った事業だが、この間、当初約4千基の補助実績であったものが、最終年度の平成12年度には約8百基と約5分の1まで利用実績が下がった。このように減少した理由としては、
1.一定規模以上の庭や畑がないと活用できないという制約があること。
2.利用にあたっては、悪臭や虫の発生等、その適正な管理が難しいこと。
3.そうした制約下で、6年間の補助実績は延べ約1万2千基であり、一定程度は普及したと考えられる。
4.電動生ゴミ処理機の機能向上等により、コンポスト容器以外の生ゴミの減量法が普及しつつあること。
などによるものと考える。

【中森辰一議員】
 コンポストの利用をもっと増やすために、抜本的な助成を行うとともに、定着のためには使用方法について説明するだけでなく、うまくいかないときなどには適切な助言をするなどの、アフターケアも行うといった親切な対応も必要だと思うがどうか。

【斉藤末男環境局長】
 生ゴミの減量化策として、生ゴミ堆肥化容器や電動生ゴミ処理機は効果が大きいと考えている。
 本市では、平成12年度まで生ゴミ堆肥化容器の購入費補助制度を実施していたが、平成13年度からは生ゴミ堆肥化容器に加えて、比較的高額な電動生ゴミ処理機も普及させる観点から、「家庭用生ゴミ処理機等斡旋事業」に切り替えて、その普及を図っている。
 この斡旋事業は、生ゴミ処理機等を購入する市民の側からすれば、通常の販売価格から安くなった価格相当分について、間接的に補助を受けたと同様のメリットがあるため、本市としては、この事業を積極的にPRして普及を図りたいと考える。
 また、この事業においては、登録販売店との協定により、購入者に対して使用方法の説明およびアフターケアを行うよう定めているが、利用者の意見も聞きながら、今後ともより利用しやすい制度となるよう努めていく。

【中森辰一議員】
 有害ゴミのうちで乾電池がかなりの量を占めるのではないかと思われるが、この無害化の単価コストはどのくらいか。メーカーに引き取らせてリサイクルさせるべきではないか。

【斉藤末男環境局長】
 平成13年度の有害ゴミの処理状況をみると、無害化した有害ゴミ量464トンのうち、283トン(61%)が乾電池で、無害化処理に係る経費は、1トンあたり約14万6千円となっている。
 また、乾電池のメーカー責任によるリサイクルについては、現在、国において有害廃棄物を含めた様々な廃棄物の処理について、拡大生産者責任の考え方に基づいたリサイクル推進のための検討が行われていることから、本市としても(社)全国都市清掃会議等を通じて、乾電池についてもメーカー責任によるリサイクルが行われるよう働きかけていきたい。

【中森辰一議員】
 さまざまな方策を行って、結局残ったものをどう処理するかという点では、プラズマ溶融炉で処理するという技術がある。
 1400度の高温でガス化させ、分子構造を壊してしまうためダイオキシンの心配が基本的になく、重金属はガラス質で包まれた形でスラグ化できる。熱源は電力によるプラズマアークで重油などを使う必要がなく、ガス化した一酸化炭素を燃やすことで得られた電力は施設内の必要量をまかなえる。
 群馬県の吉井町には1日24トンを処理する実証プラントがあり、北海道の歌志内市にはシュレッダーダストを処理するための1日165トンを処理するプラントが11月の稼動をめざして試験運転を行っている。
 ここは、地域振興整備公団などが出資する第3セクターが建設したもので、発電量は7900キロワット。プラズマアーク発生用を含め施設内では半分しか要らないため電力を売る計画になっているようである。建設コストは、1日の処理量100トンあたりで62億5千万円ということで、建設中の新中工場と比べても建設コストは同等ではないかと思われる。
 あらゆるものを処理できるといわれ、そうであれば埋め立てに代わり得る処理方法ではないかと考える。広島市としても、研究してみてはどうか。

【斉藤末男環境局長】
 ゴミ焼却施設であるプラズマ式直接溶融炉は、次世代型焼却処理技術であるガス化溶融炉の一つとして位置づけられ、幅広いゴミ質に対応できる技術であると承知している。
 しかしながら、このプラズマ式直接溶融炉については、小規模な実証炉における焼却試験しか実施されておらず、未だ大型の実用炉が稼動していない状況である。
 今後、他都市における計画事例等を調査するとともに、焼却処理システムの実用性や安定性、および建設費や維持管理費などの経済性の視点からも併せて検討し、本市の将来のゴミ処理体制における利用の可能性について研究していく。

【中森辰一議員】
 ゴミ減量の体制をみると、名古屋市のゴミ減量・リサイクルの担当者は20人、東村山市は21人、大井町は収集要員も含め、ゴミ処理部門が3倍になっている。
 ところが広島市は6人で、これは本気でゼロエミッションをやる気があるのかという問題である。ここの体制強化はどうしても必要で、名古屋市並の体制にするべきである。また、ゴミ減量の窓口は各区にも設けるべきではないか。

【斉藤末男環境局長】
 本市におけるゴミの減量化・資源化の体制については、厳しい行財政改革の中、大幅な体制強化は困難であるものの、平成8年度には各環境事業所(7事業所)に減量指導担当の主査を配置するとともに、今年度はゼロエミッションシティの実現を目指すために環境政策課の中に企画調整担当職員を配置するなど、逐次体制の強化を図っている。
 今後とも、各区のゴミ収集を所管する環境事業所との連携や、ゴミの減量化・資源化のための各種施策の十分な執行ができる体制の確保に努めていく。

↑上に戻る
議会報告メニューへ戻る